(写真=webサイトより)

天才女性たちが教える 意外な仕事スタイル・ルーティンとは

名作を生んだ偉人から学ぶ意外なワークスタイル

芸術の部門において、天才と呼ばれて秀でた作品を作り出し、世間から評価されるということは簡単なことではありません。ましてや、過去の時代であればあるほど、女性が突出した才能を世に発揮していくことは、どんなに難しいことであったのか計り知れません。

しかし、意外とどの時代にも、現代に通じる理想と現実に苦悩する考え方や、気がのらない自分を鼓舞するための行動が存在していたようです。

『天才たちの日課 女性編-自由な彼女たちの必ずしも自由でない日常-』(メイソン・カリー著、フィルムアート社)より、優れた作品を生み出すための意外な仕事スタイルやルーティンを紹介します。

クリエイティブと現実の生活の共存

本著は、日本版として2014年に刊行された『天才たちの日課−クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブではない日々』の続編であり補正版であるといいます。

前作には、作家や画家、哲学者などといった、傑出した才能を持つ人たちの日々の暮らしや仕事がまとめられていました。

しかし、著者曰く、今になってみると大きな欠陥があったのだとか。その欠陥とは、取り上げられている161人のうち、女性が27人しかいなかったということです。

前作に見られた男女比のバランスの悪さを解消するとともに、女性による創造的な活動が無視され否定されていた時代に、多くの才能ある女性たちがどのようにアーティストとしての活動を維持し、展開してきたかについて、今作にはまとめられています。

したがって、彼女たちがクリエイティブな仕事と家庭内のごたごたや義務などをどのようにさばいているのか―中略― その点を明らかにすることが、彼女たちの日常をありのままに描くために欠かすことができなかった。(17ページより引用)

前作で描かれている多くの男性アーティストの場合、何らかの問題にぶつかったときに解消してくれたのは、献身的な妻や使用人、巨額の遺産などであったといいます。

その事例は、現代を生きる女性たちにとっては、役に立つとは言いにくい部分があります。さらに、多くの天才的な男性たちの日常では、お金を稼いだり食事の支度をしたりといった心配事とは無縁であるなど、現実離れしていたパターンが多かったようです。

今作においても、その女性たちは特権階級出身者が多く、すべての人が日常的にトラブルにあっているわけではないようです。しかし、かつての天才女性たちが生み出すべきクリエイティブと現実の生活の運営を、どのように組み合わせてきたのかを知ることは、今を生きる私たちが多くの課題を超えていく参考になると言えるでしょう。

名作を生み出す驚異的な仕事スタイル

本著は、大きく13の章に分けられています。年齢やテーマ別といったカテゴリーではなく、どことなく互いの内容が響きあうグループでまとめられているのだといいます。

「ちょっと変」「退屈をとるか苦難をとるか」「単なる責任放棄」「聖域」など、くくりとされている章のネーミングを見ただけでも興味を感じます。

例えば、「渦」の章には、こんな人物が紹介されています。

オルコットは大変な創作エネルギーにあふれ、なにかに憑かれたように、食事もせず、寝る間も惜しんで書きまくった。(74ページより引用)

ルイザ・メイ・オルコットは、『若草物語』の作者として有名です。その執筆スタイルは独特で、渦に飲み込まれるように書き続けて、右手がけいれんしてしまい、左手で書けるように練習したほどであったのだといいます。

執筆に入ると、食事も睡眠もほとんどとらずに書き続け、書き終えると飛び込んだ渦の中から出てきて、ぐったりと疲れ果てた状況であったのだとか。

ところが、意外なことに、かの有名な『若草物語』は、オルコットが強い創作意欲を持って書いたものではなかったようです。

オルコットは高尚な文学の世界に飛躍したいと願っていましたが、企画として持ち込まれた少女向けの本の企画に取り組んだところ、大評判になってしまったという経緯だったようです。

長い下積み生活を経て、『若草物語』によって、作家としての経済的な自立を果たすことができたオルコット。しかし、「若い人たちのための“道徳的なお話”を書くのは、おもしろくないけれど、お金になる」と、手紙にしたためたというのです。

驚異的な集中力で仕事をこなし、世間で大きく評価されていたとしても、その仕事内容が自身の意向と合っているとは限らないという意外な現実が分かるようです。

現代を生きる私たちにも、どこか通じる場面があるのではないでしょうか。

気がのらないときのルーティン

「気球か宇宙船か潜水艦かクローゼットのなか」の章では、アメリカ人画家ジョーン・ミッチェルについて紹介されています。

ミッチェルは、自然の風景を抽象画で生き生きと再現することで、非凡な才能を発揮していたのだといいます。

しかし、ミッチェルはおもに夜、蛍光灯の明かりの下で絵を描いていた。中略 起きるのはだいたい午後に入ってから、絵を描き始めるのは日が暮れてからということが多かった。(165ページより引用)

自然の風景が得意なはずなのに、早起きが苦手で生活そのものも夜型であったようです。

そして、ミッチェルにはいろいろな決め事やルーティンがあったのだとか。例えば、仕事を始める前には、ジャズやクラシックのレコードに針を落として大音量でかける。

音楽をかけて聴くことによって、自分を使いやすくすると同時に、周りの人間に対して、これから絵を描く体勢に入るから邪魔しないでほしいということを知らせていたのだというのです。

「絵を描いたり、書き物をしたり、なにかを感じたりするためには、無防備にならなければならない。そして、ほんとうに強くなければ無防備にはなれない」と、ミッチェルは語っています。

クリエイティブな仕事に携わる人はもちろん、そうではない職種であったとしても、仕事に気がのらないといったことは、日々よくあることでしょう。

どんな状態であっても仕事に向かうための自分だけの方法を作っておくことは、安定して良い仕事をしていくにあたって大事なことなのかもしれません。

タイトル:『天才たちの日課 女性編-自由な彼女たちの必ずしも自由でない日常-』
著者:メイソン・カリー
発行:フィルムアート社
定価:1800円(税抜)

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