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【FP解説】扶養家族数の書き方を分かりやすく。年収要件はどのくらい?
知って得する、扶養家族数の考え方。
履歴書にある「扶養家族」の欄。いざ書くときになって、扶養家族は誰をどこまで数えればいいの?と迷ったことがある人も多いのではないでしょうか。この記事では「扶養家族」の考え方や人数の判断基準について解説します。
そもそも扶養家族って?
収入が少ないなどの理由から、経済的な面で生活能力のない人を、収入のある人が養うことを「扶養」と言います。
誰かを「扶養」していることで、税金の上では「配偶者控除」や「配偶者特別控除」、「扶養控除」が受けられ、所得税や住民税の負担が減ります。また、社会保険の上では、本来、扶養されている人が自ら加入すべき国民保険料や国民年金保険料の負担がなくなるため、世帯でみたときの支出が少なくなります。
扶養家族数を書くときの注意点
主に収入を得ている人の扶養家族の人数を記入する場合は、扶養家族に自分自身は含めません。また、扶養家族の条件に当てはまる場合でも配偶者については別に記入するケースが多いため注意が必要です。
例えば子どもを扶養家族とする場合、主に収入を得ているどちらかの扶養家族とします。同じ子どもを重複して夫と妻の両方が扶養家族とすることはできません。また、子どもが高校生以上になるとアルバイト収入を得るようになることもありますが、アルバイト収入が年間で103万円を超えてしまうと扶養家族から外れるため、ここにも注意が必要です。
働く女性ケース別・扶養家族数の注意点
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●自分が夫の扶養に入っている場合
専業主婦の妻が、夫の収入で生計を維持している場合、扶養家族数は「0人」となり、「配偶者の扶養義務」は無と記入します。
●子どもがすでに配偶者の扶養に入っている場合
夫婦の給与を合算して生計を共にしていたとしても、夫の扶養家族になっている子どもを妻の扶養家族とすることはできません。もし、子どもがすでにパートナーの扶養に入っている場合、扶養家族は「0人」と記入します。
●シングルマザーの場合
母親だけの収入で子どもの生計を維持していることになります。扶養の要件に当てはまる子どもの人数を扶養家族の欄に記入します。
●60歳以上の家族がいる場合
60歳以上の家族がいる場合、扶養の要件に当てはまれば扶養に入れられる可能性があります。
注意点としては、60歳以上でも働きながら年金を受給している場合などは年収要件に引っかかる可能性もあります。すべての収入を合算した金額が基準となりますので注意しましょう。また、75歳になると後期高齢者医療制度の対象となるため、健康保険の扶養家族にすることはできません。しかし、税制面での扶養家族となることはできます。もし当てはまる場合は扶養家族として記入したうえで特記事項を記載するのが望ましいでしょう。
「扶養家族」として認められる条件
「扶養家族」であるかどうかの基準には大きく分けて2つあります。1つ目は所得税などの税制面、2つ目は健康保険・介護保険や厚生年金保険などの社会保険です。
扶養家族となるには税金と社会保険でそれぞれ条件があります。誤った記載をしないためにもしっかり確認をしましょう。
●税制面(所得税)における扶養家族となる条件
所得税法では、12月31日現在の年齢が16歳以上の人で以下の要件にすべて当てはまると「扶養家族」となることができます。
(1) 配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族をいいます)または都道府県知事から養育を委任された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること。
(2) 納税者と生計を一(いつ)にすること。
(3) 年間の合計所得金額が38万円以下であること。
(4) 青色申告者の事業専従者としてその年を通して一度も給与の支払を受けていないこと、または白色申告者の事業専従者でないこと。
所得38万円以下の条件に当てはまるには、例えば給与なら年間の収入が103万円以下、公的年金などを受給している場合は、年間の受給額が65歳以下なら108万円以下、65歳以上なら158万円以下であることが必要となります。
●社会保険(健康保険・介護保険・厚生年金保険)における扶養家族となる条件
社会保険において、誰かの扶養に入っている人を「被扶養者」といいます。上でも少し触れましたが、社会保険の上での「被扶養者」は、本来自ら健康保険や年金に加入し保険料の支払いをすべきところを、保険料の負担なく加入することができます。
・被扶養者(誰かの扶養に入る人)の条件
- 同居している必要のない人
配偶者、子・孫および兄弟姉妹、父母・祖父母などの直径尊属 - 同居していることが必要な人
「1.」以外の3親等内の親族・内縁関係の父母・連れ子
同居が必要な「1.」以外の3親等内の親族とは、例えば配偶者の連れ子や父母などです。
・被扶養者の収入要件
年間収入130万円未満(60歳以上または障害者の場合は年間収入180万円未満)であり、かつ以下のとおりとなります。
同居の場合:収入が扶養する人の収入の半分未満
別居の場合:収入が扶養する人からの仕送り額未満
しっかり理解して入社後の手続きをスムーズに
企業は履歴書の扶養家族人数の記入欄を、税制面・社会保険・家族手当などの判断基準にすることがあります。一口に「扶養家族」といっても税金や社会保険の基準や要件が異なりますが、しっかり理解したうえで記入しましょう。また、これらの基準や要件を理解しておくことで、入社後の手続きをスムーズに行うことができるでしょう。