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30代女性の転職成功のカギは「限定正社員」の働き方?可能性を探ってみた

勤務地や労働時間……無限定な働き方はもうできない?

30代はキャリアもプライベートも充実させ積み上げていく大切な時期。しかし女性にとっては、結婚をきっかけに家庭と仕事の間で難しい選択を迫られる時期でもあります。

結婚した女性が、家庭を大事にしながらキャリアを諦めず、そして自分もパートナーも心にくすぶる不満を抱えないためには、どんな働き方を選択していけばいいのでしょうか。

女性のキャリアを妨げる要因を掘り下げるとともに、夫婦がお互いのキャリア達成をかなえるひとつの道として、「限定正社員」の可能性を見ていきます。

女性のキャリアを助ける柔軟な働き方とは

転職, 女性, 30代 (写真=TierneyMJ/Shutterstock.com)

●女性には「正規雇用」「残業なし・転勤なし」が必要

結婚した女性の働きづらさというと、出産で休職したり時短勤務で思うような仕事ができなかったり、あるいは子供の病気で頻繁に休まなければいけない状況が思い浮かびます。では、出産・育児期の支援が手厚ければ、既婚女性はキャリアを伸ばせるのでしょうか?

労働政策研究報告書No.192『育児・介護と職業キャリア-女性活躍と男性の家庭生活-』(労働政策研究・研修機構、2017年)は、企業の人材活用という観点から、男女が職業キャリアを形成するうえで課題となっているのは何かを探った研究です。この中で、企業の中にある女性活躍を推進するアクセルと妨げるブレーキの相反する作用を明らかにしています。

この研究では、女性がキャリアを積み昇進するために必要な要素は、「そもそもの女性正社員雇用を増やすこと」、そして「働きやすい職場環境を整えて女性が基幹的業務を担当できるようにすること」と導き出しています。

女性の非正規雇用は、キャリアの中断につながりやすくなります。そして、長時間労働や転居を伴う転勤があるなど、家庭事情を考慮しない男性社員の働き方を基準としている職場では、女性は責任の重い基幹的業務に就くことができません。

これらの制約によって基幹的業務から排除されてしまう職場環境では、女性はキャリアを伸ばしにくいと言えます。

●男性には「育児休業」「定時退勤」「休日の確保」が必要

既婚男性の働き方とその妻のキャリアとの関係では、次のようなことが明らかになりました。

男性が育児にかかわることを難しくする要素は、総労働時間ではなく、定時退勤できる日数の少なさと交代制やシフト制、日曜出勤といった非典型な勤務形態です。夫が交代制やシフト制で働いている場合、妻が常勤・フルタイムで働くことが難しくなる可能性が指摘されています。

また、男性の長期の育児休業、特に1カ月以上の取得が妻のフルタイム就業や男性自身の労働時間を短縮する可能性を高めることも分かりました。

女性のキャリアを妨げる「転勤」

転職, 女性, 30代 (写真=VGstockstudio/Shutterstock.com)

●転勤制度のある企業では女性が昇進しにくい?

女性のキャリアにマイナス影響を与える要因として、特に転勤制度の影響が大きいことも見えてきました。

日本では女性管理職が男性管理職に比べて顕著に少ないことが以前から指摘されており、その原因は日本的な雇用システムにあると言われています。研究報告書『育児・介護と職業キャリア-女性活躍と男性の家庭生活-』では、日本の人事制度の中身を諸要素に分けて、何が女性の昇進を妨げているのかを分析しました。

すると、新卒一括採用や長期雇用、内部昇進といった雇用体制の影響よりも、キャリア形成過程における広範な人事異動、特に転勤が大きな壁となっている可能性が明らかになったのです。

これは、女性個人が転勤を余儀なくされるか免除されるかといった問題ではありません。制度の運用ではなく、制度それ自体が女性のキャリアにマイナス影響を及ぼしていることがデータから示唆されています。

●既婚女性は「配偶者の転勤」の影響も受ける

転勤制度は女性の昇進を阻む一因となっていますが、既婚女性の場合はパートナーの転勤制度の影響も受けます。この場合、女性側が離職を余儀なくされることも珍しくありません。

『共働き社会における転勤のあり方』(的場康子、第一生命経済研究所、2017年)は、現代日本の転勤の現状やそれによる女性の就業への影響、働き方の課題などをさまざまな調査結果から分かりやすくまとめています。

それによると、2015年の厚生労働省の調査において、末子妊娠時に正社員であった女性で妊娠・出産を機に退職した人のうち約1割が、「夫の勤務地や転勤の問題で仕事を続けるのが難しかった」と答えています。

実際、転勤制度がある企業はまだまだ多数です。2017年の独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査によると、正社員(総合職)のほとんどおよび一部に転勤の可能性のある企業は6割以上。人材育成や組織の活性化、事業拡大への対応などを目的に実施しているのですが、同時に9割近い会社が、子育て期や介護中の社員、既婚女性社員の転勤に難しさを感じるというジレンマも抱えています。

●労働時間・勤務地に制限がある「限定正社員」とは

2010年の厚生労働省雇用政策研究会で言及されて以来、多様な働き方を可能にする「限定正社員」が注目を集めるようになりました。限定正社員とは、無限定な働き方を求められる正社員に対し、労働時間や勤務地などに一定の限度を設定して雇用される正社員の区分です。

育児休業後の時短勤務など、限定的な働き方は従来女性が行ってきたものですが、長時間勤務や転勤が家庭生活と女性のキャリアに及ぼす影響を考えると、「夫が限定正社員」であることは夫婦がお互いのキャリア達成をかなえるひとつの道なのかもしれません。

以下、「限定正社員とはどんな社員なのか?」を見ていきましょう。

「限定正社員」という働き方から見える可能性は?

転職, 女性, 30代 (写真=TuiPhotoEngineer/Shutterstock.com)

●「限定正社員」とは

「限定正社員」の定義は明確ではありませんが、2012年の厚生労働省『「多様な形態による正社員」に関する研究会報告書』では、次のように整理しています。

① 無期の労働契約である点で有期労働契約の非正社員とは異なる
② 配属先の事業所、活用業務が限定されている、残業がない、短時間勤務であるなど、非正社員の働き方と共通する点がある

雇用区分として実際に企業で採用されているのは、「職種限定」「勤務地限定」「労働時間限定」などで、限定される事項が複数の場合もあります。

●「限定正社員」の4類型

このように、限定正社員は「多様な働き方」を実現できるとされながらも、企業ごとに導入の仕方がさまざまで実体が曖昧なものでした。

労働政策研究報告書No.185『働き方の二極化と正社員-JILPTアンケート調査二次分析結果-』(労働政策研究・研修機構、2016年)は、分析の結果、次の4つの類型が混在しているとしています。

A.周辺的な労働を担う正社員
① 「事務職」タイプ
もともと正社員として雇用されているが管理職になる可能性は低い。女性割合が高く、「一般職」に近い働き方。

② 「生産・技能職」タイプ
非正社員からの転換割合が高い。男性割合が高く、製造業などの「労務職」に近い働き方。

B. 基幹的な労働を担う正社員
③ 「営業職」タイプ
通常の正社員からの転換割合が高く、基幹的正社員に時間や勤務地など何らかの制約が生じた場合に導入されているもの。男性比率の方が高く、管理職への昇進もある。

C.周辺的な労働から基幹的な労働へ移動する中間地点にある正社員
④「接客・サービス職」タイプ
非正社員から正社員への転換割合も管理職割合も高い。飲食店の接客・調理や介護職など、パート・アルバイトから同じ職種の正社員に転換し、その後店長や施設長など管理的地位に就くような働き方。

表面上の区分よりも、企業が実際にどのように活用しているかに注目する必要があることが分かります。

●限定正社員のメリット・デメリット、仕事の満足度

前述の報告書では、さらに限定正社員自身による自分の仕事への評価も分析しました。すると、次のようなことが分かりました。

① 仕事の裁量度や労働時間、給与などは、限定正社員は通常の正社員と非正社員の中間に位置する。ただし、労働時間や給与は通常の正社員の水準に近い。
② 「一般事務職」タイプの限定正社員は、ワークライフバランスへの満足度が高い。一方、「生産・技能職」タイプや「営業職」タイプは、勤務地や労働時間におけるメリットがさほど見いだせず満足度が低い。
③ 非正社員から限定正社員に移行した人、正社員から限定正社員に移行した人の満足度は、初めから限定正社員だった人より高い。選択の自発性と就業形態の変更可能性が、仕事の満足度にプラスに働く可能性が高い。

「限定正社員」という雇用区分は、非正規雇用から正規雇用へのステップアップにも、正社員のワークライフバランスの実現や働き方の多様化にもどちらにもつながり得ます。あなたやパートナーの現在の働き方と比較してメリットが大きいようなら、限定正社員への転換や転職を考えてみてもいいのかもしれません。

これからの私たちは「無限定」には働けない

転職, 女性, 30代 (写真=MediaGroup_BestForYou/Shutterstock.com)

結婚して家庭を持ったとき、男性も女性も仕事において何らかの制約を抱えます。介護と仕事の両立も問題になっていますし、研究報告書『育児・介護と職業キャリア-女性活躍と男性の家庭生活-』は、既婚者よりも制約が少ないと見なされて過重労働になりやすい未婚者の問題も指摘しています。

パートナーの「無限定」な働き方を支えるには、一方が大幅に「限定的」に働かざるを得ません。そうすると今度は、その「限定的」な働き方をカバーするために誰かが「無限定」に働くことになります。男性も女性も仕事を持つ現代、私たちはもう「無限定」には働けないところにきているのかもしれません。

これまで夫婦の働き方を両立できないときには、退職や転職を含め、妻の方が仕事を調整することが普通でした。しかし、家庭を顧みることのできない働き方に「No」を出す若い父親たちも増えています。

家庭とキャリア、夫婦のどちらかが一方を諦めるのではなく、両立できる道を探っていきましょう。それがかなうような転職や配置転換を個人が実現していくことで、それぞれの幸せのみならず、やがてはそれが企業を変え、みんなが働きやすい社会へとつながっていくのではないでしょうか。既婚者も未婚者も、子供を持つ人も持たない人も。

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