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20代女性の転職、ライフプランに与える影響は?正規雇用と非正規雇用から考える

非正規雇用と正規雇用、現状の格差を調べてみました

近年広がりを見せている非正規雇用。特に、女性と若い世代で非正規雇用の割合が増えているといいます。

雇用形態の選択にはさまざまな要因が関係するので、非正規雇用で働くことを一概に否定することはできません。しかし、給与・待遇・生涯プランなどを考えると、やはり正規雇用のメリットは強力。女性の場合は、結婚や出産後のキャリア継続にも大きく影響します。

先を見越して、20代のうちに非正規雇用から正規雇用を目指すべきか?どのような道があるのか?今後のライフプランに迷っている女性に向けて、雇用形態が与える影響や女性の働き方を考察してみましょう。

雇用形態が女性のライフプランに与える影響とは?

転職, 女性, 20代 (写真=TuiPhotoEngineer/Shutterstock.com)

まず、雇用形態が女性のライフプランに与える影響を見てみましょう。

●大卒女性、働き方の違いで生涯所得はどれだけ変わる?

一般的に非正規雇用の給与は正規雇用に比べて低めですが、タイムスケールを広げてみると、さらに大きな差が生じます。

『大学卒女性の働き方別生涯所得の推計』(久我尚子、ニッセイ基礎研究所、2017年)から、女性のライフコースによる生涯所得の違いを見てみましょう。雇用形態や出産の有無、出産後の働き方などによって、11の働き方ケースを設定して行った推計です。

A. 同一企業で正規雇用者として就業継続した場合(ケース1~4)

この場合、出産なしで働き続けると、退職金を合わせた生涯所得は2億5816万円。2人の子を出産し、それぞれ育児休業を1年ずつ取得して復帰すると、フルタイムの復帰で2億3008万円、時短勤務を利用しても2億1234万~2070万円になります。

B.正規雇用で有職したのち出産退職した場合(ケース5~7)

第1子出産時に退職した場合だとどうなるでしょうか。第2子小学校入学時に非正規雇用者として再就職すると、フルタイムで9670万円、パートタイムで6147万円。生涯所得は実に、Aの場合より2億のマイナスとなってしまいます。退職してそのまま再就職しなければ、3795万円に留まります。

C.非正規雇用の場合(ケース8~11)

大学卒業後、最初から非正規雇用でスタートすると、出産なしで働き続けて1億1567万円。非正規雇用の場合、2人の子を出産し育休を2回利用しても、もともとの賃金水準が低いため、1億1080万円とそれほど大きくは変わりません。いったん出産退職し、第2子小学校入学時にパートタイムで再就職すると4806万円、そのまま就業しなければ2454万円です。

久我氏は、正規雇用者と非正規雇用者の所得差を問題視すると同時に、そもそも正規雇用者として同一企業に継続勤務していないと、育児休業や短時間勤務を利用しにくく働き続けられない現状についても、指摘しています。

●雇用形態と産休育休の格差

では、産休や育休の取得率と雇用形態の間には、どのような関係が見られるでしょうか。

国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査」(2015年)によると、2010~2014年において、妊娠前に正規職員だった女性の62.2%は子供が1歳のときにも正規の職を継続、6.3%がパートや派遣に変更しています。しかし、妊娠時にパート・派遣だった女性では、74.8%が無職、22.5%がパート・派遣労働となっています。

就業の継続における差には、育休の取得が大きく関係しています。正規職員女性では54.7%が育休を利用しているのですが、パート・派遣の女性では10.6%しか利用できていない現状があるのです。

正規雇用と非正規雇用の格差、現状は?

転職, 女性, 20代 (写真=photofriday/Shutterstock.com)

とはいえ、正社員のブラックな働きぶりも聞こえてくる昨今。「会社の要求に応えるからこその高待遇」ともいわれます。正規雇用と非正規雇用、それぞれの内実はどうなのでしょうか。

労働政策研究報告書No.185『働き方の二極化と正社員-JILPTアンケート調査二次分析結果-』(労働政策研究・研修機構、2016年)から、現状を把握してみましょう。

●正規雇用と非正規雇用の格差が少ない業種は?

総務省「労働力調査」「就業構造基本調査」などの官庁統計から分析した結果では、非正規雇用者の数や割合の多い業種は「卸売業・小売業」「宿泊業・飲食サービス業」ということです。これらの業種で非正規雇用を活用する理由は、「賃金の節約のため」「1日、週の中の仕事の繁閑に対応するため」「長い営業(操業)時間に対応するため」が上位を占めます。

正規雇用者の賃金水準がそれほど高くないこともあり、正規雇用と非正規雇用の賃金格差はそれほど大きくありません。また、宿泊・飲食サービス業では正規雇用者の総労働時間が長いため、正規雇用のメリットが相対的に小さいという特徴も。

若手正社員の賃金の額や昇給を決定する要素を分析すると、小売業や宿泊・飲食サービス業では長時間労働が賃金上昇に反映される傾向が見られ、学歴や勤続年数などの実績や新卒採用か否かといった違いは、あまり影響しません。

つまり、正規雇用で長く働くことに積極的になる理由が少なく、このことも働く人の入れ替わりが激しい状況を作る一因と推測されます。

●非正規雇用が限定的な業種は?

一方、非正規雇用者の割合が少ない業種は「建設業」「製造業」「情報通信業」「金融・保険・不動産業」です。これらの業種では、正規雇用をする理由に次のような特徴が挙げられます。

・建設業:「即戦力・能力のある人材を確保するため」
・製造業:「景気変動に応じて雇用量を調整するため」
・情報通信業:「専門的業務に対応するため」
・金融・保険・不動産業:「正社員を重要業務に特化させるため」

これらを見ると、正規雇用者と非正規雇用者で仕事内容や職務が異なっていることが推測されます。情報通信業と金融・保険業では正規雇用の賃金水準が高く、正規雇用と非正規雇用の賃金格差は大きいものとなっています。

では、正規雇用を狙うならこれらの業種を第一選択にすべきかというと、それは早計といえます。例えば、情報通信業では成果報酬を採用している企業が多く、超過労働時間が長い傾向にあります。

また、金融・保険業では成果主義に加え、目標・ノルマの高さが従業員の心理的な負荷を強めているとの指摘もあります。自分の向き不向きや将来の目標もよく考えた方がよさそうです。

●企業規模による正規雇用間の格差

かつては中小企業のほうが割合の多かった非正規雇用ですが、2000年代以降大企業での導入が進み、現在では非正規雇用の割合は、企業規模による違いはほとんどなくなりました。

しかし、賃金水準と労働時間の面では、企業規模が大きく影響します。企業規模が大きくなるほど正規雇用の賃金水準が高く労働時間が短い傾向があり、正規雇用と非正規雇用間の格差だけでなく、正規雇用同士の働き方にも顕著な企業規模間格差があります。

賃金水準を見ると、1000人以上規模の企業では、キャリアが進むにつれて正規雇用の賃金が急角度で上昇し、非正規雇用との差が開いていきます。しかし、従業員数が少なくなるにつれて、賃金上昇のカーブは緩やかになります。

その傾向は特に男性において顕著ですが、女性にも見られます。さらに、女性の賃金の上昇度合いは男性に比べて低く抑えられており、999人未満規模の女性の正規雇用と99人未満規模の男性の正規雇用が同程度の上昇カーブになっています。

収入という観点から正規雇用を考えるとき、企業の規模による影響も考慮する必要がありそうです。

非正規雇用から正社員になる2つのルート

転職, 女性, 20代 (写真=Cat Box/Shutterstock.com)

非正規雇用者が正社員への転換を目指すとき、社内で非正規から正規になる内部登用と、別の会社に正社員として転職する外部採用の2つのルートがあります。それぞれの特徴を、同じく『働き方の二極化と正社員-JILPTアンケート調査二次分析結果-』から見てみましょう。

●内部登用・外部採用が活発な企業の特徴

内部登用の多い業種を見ると、契約社員からの登用では「医療・福祉」、パートやアルバイトの登用だと「医療・福祉」「娯楽業」「宿泊業・飲食サービス業」となっています。「医療・福祉」では外部採用も活発で、正社員転換先として「医療・福祉」分野が注目されます。

また、内部登用や外部採用に影響を与える要因を分析してみると、次のようなことが分かりました。

正社員と同じ仕事をしている非正規雇用者が多い事業所ほど、内部登用や外部採用の確率が高くなります。内部登用と強く関係する要因は、「非正規雇用者のための能力開発の仕組み」「即戦力重視の方針」「継続年数に関係なく抜擢する方針」、外部採用との関係が強い要因は「中途採用への注力」です。

非正規雇用者の能力開発、そして正社員転換後の職務レベルや賃金水準の向上まで総合して考えると、外部採用より内部登用の仕組みの方が優れていることも示唆されました。

●途中から正社員になりにくい企業の特徴

一方、内部登用・外部採用ともに負の影響を与えているのが、正社員と非正規雇用者の賃金格差です。正社員と契約社員の賃金格差が大きいと内部登用確率が低くなり、正社員とパート・アルバイトの賃金格差が大きいと外部採用確率が低くなっています。

報告書では、正社員とパート・アルバイトの格差が大きいほど、外部からの正規雇用採用に影響を与えている点を興味深い現象だと指摘していますが、要因は定かではありません。

●正社員に転換した後の女性の働き方は……?

内部登用や外部採用によって正社員になった後は、うまく働き続けることができるのでしょうか。正社員に転換した人の実状を分析すると、次のようなことが分かりました。

まず、勤務地や時間などの制限を置く「限定正社員」というポジションが、正社員転換後の受け入れ先として機能している可能性があり、必ずしも「正社員転換すると長時間労働に直面する」わけではない、ということです。

しかし、次のような問題もあります。

要求される職務レベルや、一定の時間や労働に対して支払われる賃金=賃金率を見ると、新卒正社員>転職正社員>内部登用社員>外部転換社員の順で低く、正社員転換が新卒と同レベルのキャリアや待遇に届かないこと。また女性の場合、男性に比べて正社員転換後の定着状況が悪く、新卒者に比べて離職しやすい傾向も見られます。

報告書ではその原因を直接的に明らかにはしていませんが、可能性として指摘できるのは女性が正社員転換後に求められる職務レベルや賃金水準が極めて低いことであろう、と述べています。

女性の場合、そもそも新卒正社員においてもそれらの水準が高くないという背景があり、女性のキャリアの安定のためには、正社員全体における男女観の格差是正が欠かせないのです。

女性の一生、転機はたびたび訪れる

転職, 女性, 20代 (写真=Olena Yakobchuk/Shutterstock.com)

『働き方の二極化と正社員-JILPTアンケート調査二次分析結果-』は、労働政策担当者や企業経営者、人事担当者などへ、就業環境を整えるための提言としてまとめられた報告書です。ですが逆方向から見れば、働き手である私たちの視界も照らす、一種の海図となるのではないでしょうか。

好むと好まざるとに関わらず、現状では女性は男性よりも、結婚や出産、結婚相手の働き方などによって働き方を変える選択に迫られます。この先もまだ、非正規雇用を選ばざるを得ない局面もあるでしょうし、正社員を続けられない心理状態になることもあるでしょう。あるいは覚悟を決めてパートナーとタッグを組み、正社員をやり通す選択が必要になるかもしれません。

どんな場合でも、「不本意な非正規雇用」「不本意な正社員」で長年過ごし、「こんなはずじゃなかった……」と後悔するのは嫌ですよね。知ること、考えること、決断することは自分の手から離さずに。そして、変化する人生をフレキシブルに渡っていきましょう!

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