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話し合いで離婚する協議離婚の思わぬ落とし穴……! 後で揉めないために必要なこと

専門家の手を借りたほうがよいケースもあります。

「離婚」と聞くと、双方が弁護士を立てて争うイメージがあるかもしれませんが、大多数の離婚は夫婦間の話し合いによるものです。お互いが感情的にならず冷静に話し合え、離婚に際しての条件合意がスムースに進むなら、当事者同士の話し合いでも問題は起こりません。

ただ。婚姻関係とその解消は複雑で、揉めずに不備なく後々の面倒も起こさないように解決するのが難しい点も。話し合いによる離婚、どこに気をつけたらいいのか?ポイントを整理してみましょう。

離婚の大多数は「話し合い」により成立

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・離婚の種類とその内訳

離婚はそのやり方によって、大きく次の3つに分かれます。

・協議離婚
当事者である夫婦間の話し合いによって決まる離婚です。役所に離婚届を出すと成立します。

・調停離婚
夫婦間での合意が難しい時、家庭裁判所に間に入ってもらうやり方です。調停委員という第三者を介して話し合いを行い、弁護士に代理人として同席してもらうこともできます。合意ができたら調停調書という書面を作成し、離婚成立です。

・審判・裁判離婚
調停がどうしてもまとまらなかった時、家庭裁判所が職権で審判を行うことや、当事者が裁判の訴えを起こして判決を求めることもできます。ただし「調停前置主義」と言って、まずは調停で当事者同士の合意を目指し、それができなかった場合にのみ、裁判所の判断に委ねることになっています。

現在の日本では、離婚の8割以上を協議離婚が占めます。調停離婚は約1割、審判や裁判の判決に進むのは、全体の1%ちょっとといったところです。(厚生労働省『人口動態統計』2017年)

・協議離婚とはどのような離婚か

協議離婚は、手続き上は非常に簡単な離婚です。夫婦間で離婚の合意ができたら、婚姻中の本籍地か届け出時の住所地の市区町村役場に離婚届を提出します。それ以外の市区町村役場に提出する場合は、戸籍謄本を1通添付します。

離婚届には夫と妻がそれぞれ自分で署名し、印鑑を押します。そのほか2人の証人の署名押印も必要です。証人は当事者以外の成人であれば誰でもよく、妻側と夫側から1名ずつ立てる必要もありません。

未成年の子がいる場合は、離婚届に親権者の記載をしなければなりません。また、結婚前の氏に戻る方は、離婚後新たな戸籍を作るか元の戸籍に戻るかを決める必要があるので、その点についても記載します。

逆にいえば、協議離婚の成立はそれだけで事足ります。管轄役所は上記以外の点、たとえば夫婦間でどういった取り決めをしたのか、書類を取り交わしたのかなどには一切関与しません。ですので、協議離婚で気をつけるべき点は、まさにそこにあるといえるのです。

協議離婚の進め方・話し合うべきポイント

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離婚の際に話し合うべき事項は、協議離婚でも裁判所を介する離婚でも、変わりがありません。まとめると次のようになります。

・金銭の清算に関すること:財産分与・婚姻費用・年金分割・慰謝料

「財産分与」とは、離婚に際して婚姻中に作った夫婦の共有財産を分け合うことです。結婚中の財産は二人が協力して作った共有財産と考え、夫婦に収入差があっても名義が一方のものでも、等分するのが原則です。負債など負の財産も、分与の対象です。ただし、結婚前に得た財産や一方への相続・贈与などは一方の特有財産と考え、分与の対象にはなりません。

そのほか、別居期間などがあればその間の生活費を分担する「婚姻費用」の清算、厚生年金などで一方が被扶養者になっていた場合は年金算定の基準になる標準報酬を按分する「年金分割」なども、話し合うべき事項です。

「慰謝料」は離婚で必ず発生するものではなく、離婚原因を作った方がもう一方に対し支払う、一種の「不法行為に基づく損害賠償」です。私見ですが、当事者同士の話し合いで破綻原因と賠償額を決めるのは、難しいように思います。

・子供に関すること:親権・養育費・面会交流

子供がいる場合、夫婦は共同で親権を持ちますが、離婚すると一方が単独で持つこととなるので、親権者をどちらにするかを決めなければなりません。親権のうち子供を引き取り育てる権利を特に「監護権」といい、親権者と監護者は一致させることが原則です。

未成年の子供が生活するために必要な費用を「養育費」といい、親は子供に対して扶養義務を負っているので、養育費を負担する義務があります。勘違いされやすいですが、これは同居親に対する義務ではなく、子供に対する義務です。子供から親に直接請求することもできる性質のものです。

監護者とならなかった親が子供と会ったり電話やメールなどで交流を持ったりすることを「面会交流」といいます。

これら離婚後の親の義務や子供の権利に関する事項は、話し合って取り決めしておかなければなりません。

合意した事項は公正証書を作ろう

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前項のポイントについて話し合い合意ができたら、その合意事項を公正証書にしておきましょう。協議離婚で決めたことは、いわば「当事者同士の約束ごと」。もしも一方がそれを守らなかったとしたら、信義にもとる行為ではありますが、法的に対処することはできません。効力のある文書を作って初めて、その約束事が法に守られることになるのです。

・公正証書の効力

公正証書は、公証人という専門職が作成する公文書です。その役目は、争いが起こった後に解決を図る裁判所とは異なり、争いが起こるのを事前に予防するというところにあります。公正証書が持つ効力は、次のようなものです。

①当事者の意思によるものだということを保証する
公証人は中立・公正な第三者であり、権限を有する法律の専門家です。そのため公正証書は、勝手に作られたのではなく当事者の意思に基づいて作成されたものであるという強い推定が働きます。

法律上の「推定」とは、「そうではない」ということを証明しない限り否定されないということ。つまり、一方が後から「そんな約束はしなかった」「その約束は無効だ」と言い出しても、それを証明しない限り揺るがないということです。

②金銭債務の執行力を持つ
公正証書の中で金銭のやり取りが約束されている時、これについて「強制執行に応じる」旨も記載されていれば、もし支払いがなかった場合、裁判所に訴えて判決を待つことなく直ちに金銭の回収をすることができる効力を持つ文書となります。これを「執行力を有する」といいます。

執行力を有する公正証書を特に「執行証書」といいます。公正証書が自動的に執行力を持つわけではないので、必要な場合は「強制執行認諾」の条項を加えておきましょう。

・公正証書を作成する方法と手順

公正証書の作成は、次のように進めます。

ステップ1:夫婦間で話し合いを持ち、離婚に関する合意・取り決めをする。
ステップ2:合意事項をまとめる。(公正証書の原案となるもの。「離婚協議書」としてまとめても)
ステップ3:公証役場に夫婦で赴き、内容を法律的にチェックしてもらい、公正証書を作成してもらう。

離婚に関する公正証書を作成する時には、本人確認書類と印鑑、戸籍謄本、合意内容に関係する書類などが必要です。証書の扱う法律行為ごとに、手数料も決まっています。必要書類やトータルの費用は、依頼する公証役場に問い合わせるなどして確認しておきましょう。

また、公証人は合意事項の内容には関与しません。公証人がチェックするのは、条項が法令に違反していたり無効だったり、取り消しうる法律行為だったりしないかどうかという点です。

たとえば、養育費の額の算定や妥当性の判断は、公証人の職務ではありません。一方、合意内容に「養育費は支払わない」「親権者が再婚した場合は支払いを止める」などの事項が含まれているような場合、養育費は子供の権利であり親が勝手に放棄することはできないので、「法的に問題がある」という判断がなされる可能性はあります。

大切なのは、文言の一字一句に不備のない原案を作ることではありません。当事者同士の合意をしっかりしておき、その上で法的に確実な形を与えてもらいましょう。

協議離婚の落とし穴

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・養育費不払いの最大理由は「もともと取り決めをしなかった」

現状、養育費の支払いを受けているひとり親は、母子家庭で26.1%、父子家庭で3.3%しかいません。(厚生労働省「平成28年度全国ひとり親世帯等調査」2016年)

母子家庭、協議離婚のケースに絞って、もう少し詳しく見てみましょう。母子家庭で、離婚してから一度も養育費を受けたことのない母親の割合は、全離婚の53.4%に上ります。そのうち協議離婚のケースだと、59.0%にまでアップします。

協議離婚で養育費の取り決めをそもそもしなかったケースも、不払いと同じく59.0%。つまり、協議離婚をする際養育費の取り決めをしないと、ほぼ確実に養育費は支払われないということです。

・二人で話し合いをするのが危険なケースも

協議離婚をする際、取り決めは二人の話し合いに委ねられるので、そもそも話し合いが成り立たない場合は進めるのが非常に困難です。

最も危ないのは、相手が暴力を振るう可能性がある時。最悪の場合は命を落としかねませんし、そのような対等でない関係性では、公平な合意は望めないでしょう。このような場合は、迷わず調停を選ぶべきです。

また、条件交渉の前に二人で話をする必要があったとしても、第三者の目の届かない場所での話し合いはおすすめしません。基本的に自宅は一番の密室です。実家の一室を使い親やきょうだいに別室に控えてもらうなどすることで、相手の暴力の抑止になります。いざという時に助けを求めやすい場所を選ぶことが大切です。

・相手が条件に同意せず交渉が行き詰まる

二人で話し合っていれば、どうしても合意ができず話が行き詰まることもあるでしょう。誠実な人を相手にしているのであれば正攻法で着地点を探るべきだと思いますが、そうでない場合、少し変則的な手を使わざるを得なくなることもあります。

嘘のような本当の話ですが、筆者は離婚する時、一言で相手の譲歩を引き出したことがあります。ターゲットは元夫名義で支払いも彼がしていた筆者使用のスマートフォン。解約を防いで譲渡させたい。結婚期間も短くその間作った財産より負債の方が大きいくらいだったので、得たいものといえばそれくらいでした。

元夫は言動から察するに、分与対象財産に誤解があって、要求されることを恐れている。そこで、元夫が譲渡を渋り出した時「それは私への財産分与ということでいいんじゃないですか」と一言言ったのです。

それ以上の要求が怖かったのでしょう、無条件譲渡となりました。筆者が「財産分与」を持ち出したのは、離婚交渉中、後にも先にもこの時だけです。たかだか数万円レベルの小さな例ですが、参考になれば。

協議離婚は「穏便に・冷静に・禍根を残さず」、外部の力も借りながら

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離婚する際、相手を責めることなく穏やかに冷静に、お互いの後々までを考えて話し合いができるのなら、協議離婚はスピーディで負担の少ない方法です。

ただ、こじれて複雑な感情を抱えた者同士が、お互いにやさしい気持ちで別れ話をするのは難しいもの。条件交渉が難しい場合や約束を確実にしたい場合に、専門家の手を借りるのも別に躊躇するようなことではありません。

日本では、家庭内の問題は外に知られないよう秘密裡に解決したがる傾向が強いように感じます。ただ、家庭は容易に孤立した場と化しますし、それゆえに危ういものにもなり得ます。必要に応じて外につながることも、大事なことだと筆者は思います。自分にとってベストな方法を取っていきましょう。

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