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新婚でも決断すべきときはある。後悔しないスピード離婚、どう見極める?

熟年離婚と異なる点も解説します

新婚なのに離婚が頭をよぎる……。

悩む当事者の心のうちは、入社直後の早期離職で揺れる人に似たようなものだと思います。とはいえ、早期離職がブラックな職場環境への決別や将来への前向きな決断としてポジティブに評価されるようになってきたのに対し、スピード離婚はまだまだ本人の甘えや人生のつまずきとしてネガティブに見られがちではないでしょうか。

結婚したなら一生添い遂げるべき?結婚してすぐに離婚するなんて忍耐が足りない?それは本当でしょうか。スピード離婚への向き合い方を考えてみましょう。

じつは多いスピード離婚

新婚, 離婚 (写真=nathings/Shutterstock.com)

・結婚5年未満の離婚率がもっとも高い

スピード離婚なんて交際の派手な芸能人だけのもの……と思いきや、じつは、離婚は結婚してから5年以内のケースがもっとも多いのです。

厚生労働省の2017年「平成人口動態調査」によると、全離婚(※同居期間不詳を除く)のうち33.5%が結婚期間5年未満の離婚。熟年離婚を「結婚期間30年以上の離婚」と仮定すると、熟年離婚は5.5%に過ぎません。

これは2000年頃から変わらない傾向で、さらに言うと1970年代以前は5年未満の離婚が倍近くのパーセンテージになります。つまり、「昔からむしろスピード離婚傾向の方が強かった」のです。

・離婚の多い年齢層は30~34歳

同じく2017年の人口動態調査から離婚年齢の傾向を見ると、男性は35~39歳が16.2%、女性は34~35歳が18.0%、カップルとしては30~34歳同士の組み合わせが8.4%ともっとも多いです。2017年の平均初婚年齢を見ると、男性が31.1歳、女性が29.4歳。結婚から5年未満の離婚が多いという現状を裏付けるデータです。

半数は避けられない離婚?

新婚, 離婚 (写真=Sasa Prudkov/Shutterstock.com)

では、一体どんな理由でカップルは離婚に至るのでしょうか。全体の傾向をつかむために、司法統計の2013年のデータを見てみましょう。ただしこれは、全国の家庭裁判所に調停の申し立てがあった離婚事件における申し立ての理由をまとめたものなので、新婚カップルの離婚に限らず、また夫婦間の話し合いによる協議離婚を含みません。

これによると、男女ともトップは「性格が合わない」で、男性52.9%、女性37.4%が理由として挙げています。

しかし、女性を見ると、次に多いのが「暴力を振るう」の20.8%、「異性関係」の16.4%。これらを「相手に責のある理由」と考え、同様の「酒を飲みすぎる」「浪費する」をプラスすると、じつに52.9%と過半数を超えるのです。

乗り越えられないスピード離婚とは

新婚, 離婚 (写真=Dmitri Ma/Shutterstock.com)

・話し合いができない、相手が歩み寄らない

これだけツラい理由がそろうと、「乗り越えなくていいのでは……」という気持ちにもなってしまいますが、そう断言してしまうのも短絡的でしょう。また、4割近くを占める「性格が合わない」という理由には、結婚して初めて見えてきた生活や将来に対する価値観の違いなども含まれると考えられますが、もともと価値観の完全に一致する人などいません。

では、「離婚も致し方ない」と判断するポイントはどこにあるのでしょうか。

臨床心理士として長年DV被害者などの心のケアにあたってきた本田りえさんは、著書『みんな「夫婦」で病んでいる』(主婦の友社、2015年)で、「それぞれが描く結婚後の生活がまるで相手も了解済みであるかのように勘違いしていると、日々の生活にいろんな落とし穴が隠れている」と述べ、お互いの違いを認め合い、合意点を探る努力の大切さを説いています。

つまり、相手が自分と違う価値観を持っていると認められるかどうか、歩み寄りや努力の姿勢を見せるかどうかが、分かれ目になりそうです。

・DVがある

DVはdomestic violence(ドメスティック・バイオレンス)の略で、「配偶者や恋人など親密な関係にある/あった者から振るわれる暴力」のこと。相手と親密になり、結婚や妊娠・出産、転勤による移動など相手を自分の手中に収めたと確信する出来事をきっかけに発生すると言われます。

立正大学教授の米田弘枝さんは論文『ドメスティック・バイオレンス被害者が被害を受けていくプロセスの検討』(立正大学臨床心理学研究第12号、2014年)で、被害を受けた女性4名への丁寧な聞き取りを行っていますが、いずれの例でも、結婚前後や結婚を機に強要された退職後などに夫の暴力が始まり、限界まで関係改善のために努力した姿が浮き彫りになっています。

DVは新婚期だからこそ発生する可能性があること、そして結婚生活を継続しようと努力するほど暴力を容認してしまう結果になりかねないことを心に留めておくべきでしょう。

乗り越える道を探りたいスピード離婚とは

新婚, 離婚 (写真=Korelidou Mila/Shutterstock.com)

・十分なコミュニケーションを取っていない

一方、乗り越える道を探る余地のあるケースは、どんなものがあるのでしょうか。

いわゆる「性格の不一致」で一度目の結婚を終わらせた実業家の川崎貴子さんはその著書で、「離婚前、お互いに自分自身の意地やプライドを何より大切にし、関係修復に向けてするべき努力や働きかけをしなかった」と振り返っています(『愛は技術〜何度失敗しても女は幸せになれる』(KKベストセラーズ、2015年))。

再婚後に初めてそのことに気づいたという川崎さんは、「若いお嬢さん方に、このいつまでも抜けないとげのような後悔だけは経験してほしくありません」と語ります。この重みのある言葉を、わたしたちは大事に受け止めたいものです。

・結婚に夢を見ていた

もう一つ、筆者が注意を呼びかけたいのは、「結婚に夢と憧れを持っていて、いざ願いが叶ったら思っていた結婚生活と違い失望した」というケースです。

先述の本田さんは著書で「女性に多いのは王子様願望。男性に多いのは『妻たるものはこうあるべき』といった古い男女の役割幻想」と指摘しています。「こんなはずじゃなかった……」という思いを解決しないまま、いわば現実よりも理想を追いかけて離婚を決めてしまうと、その後どんな人に出会っても同じことを繰り返しかねません。

これは、妥協せよ、ということではありません。理想を投影するのではなく、目の前の相手に向き合おう、ということです。結局のところはそれが、誠実で確実なパートナーシップを築くことにつながるのだと思います。

スピード離婚を決意したら

新婚, 離婚 (写真=Yuri Shebalius/Shutterstock.com)

・熟年離婚と何が違うのか

結婚期間の短いスピード離婚は、熟年離婚など長い年月を経ての離婚とどこが違うのでしょうか。離婚に至るプロセスや手続きは結婚年数が短くても長くても同じですが、違いが生じるのは次の3点だと思います。

  1. 当事者間で離婚の合意ができなかった場合
  2. 夫婦の財産問題
  3. 子供の有無や年齢

・法定離婚事由と婚姻破綻の判断

離婚の合意が成立すればスムーズに協議離婚に至ることができますが、折り合わない場合は調停から審判、訴訟と、家庭裁判所の助けを借りることになります。民法が定める裁判上の離婚事由は、次の5つです。

  1. 配偶者に不貞な行為があったとき
  2. 配偶者から悪意で遺棄されたとき
  3. 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
  4. 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
  5. その他婚姻を継続し難い重要な事由があるとき

相手が浮気をしたり、収入がありながら生活費を渡さなかったりというケースは1、2の離婚事由となりますし、暴力や浪費、生活に支障をきたすほどの飲酒などは5の「婚姻を継続し難い重要な事由」として個別に判断されることになります。

難しいのは「性格の不一致」の場合です。日本の司法は基本的に「夫婦のどちらが悪いという訳ではないが婚姻が破綻している場合、離婚を認める」という「破綻主義」を採用する立場。

ですが、婚姻関係の破綻状態を判断する際、別居期間が重要な要素となるのです。スピード離婚はそもそもの結婚期間も短いもの。明らかな離婚事由に当てはまらず、結婚継続の困難さも第三者からは理解されにくいとき、婚姻関係破綻の証明も難しくなりかねません。

その場合は、相手と根気強く話し合い、合意の道を探りつつ、離婚を見据えての別居を考える必要があるでしょう。どのくらいの別居期間があれば離婚やむなしと判断されるかは個別の事情も勘案されるので一概には言えません。

ただし、婚姻関係の破綻を離婚の意思表明や離婚調停の申し立てをした時点に認める判例や、離婚意思をひるがえし関係を修復することは難しいとして3年の別居で離婚を認めた判例もあります。強い離婚の意思を貫くことが大きな力となるのでしょう。

・財産分与や年金分割の違い

夫婦が婚姻中に形成した財産は、たとえ名義が一方のものであっても、夫婦が平等に貢献して築いた共有財産として扱われます。離婚時に発生する財産分与の問題は、この共有財産をどう清算するかという問題です。結婚前に貯めた預金や親からの相続・贈与など一方のみが権利を持つ財産については、一方の固有財産とみなされ、分与の対象にはなりません。

新婚期のスピード婚だと婚姻期間の長い夫婦に比べ共有財産は多くないので、分与問題は比較的すんなり解決すると思われます。また、将来の年金額算定の基準になる厚生年金記録は、婚姻期間中のものについては離婚時に分割することができますが、婚姻期間が短いのでこれもそれほど大きな違いにはならないでしょう。

ただ、結婚を機に2人の住居として購入した物件の住宅ローンを組んでいたり、一方が他方の連帯保証人になっていたりすると、離婚と同時に自動的に解消される訳ではありませんので、きちんと協議して解決することが必要です。

・子供の有無や年齢の影響

離婚時にもめるのが、子供の親権と養育に関する問題です。子供が生まれる前に離婚するのであれば、離婚に際し取り組まなければならない困難は、かなりの部分で解放されていると考えてよいでしょう。

また、スピード離婚の場合、子供がいたとしてもまだ幼いことが多いでしょう。日本では母親が親権者となることが多く、就学前の乳幼児だと、特にその傾向が強いです。

小さな子供を抱えてシングルマザーになる場合、一番心配なのは経済的な問題でしょう。働く場所の確保や仕事と育児を両立するための体制を整えること、養育費の取り決めをしっかりしておくことなどが重要になります。

スピード離婚のその先へ。たくましく進むために

新婚, 離婚 (写真=Dubova/Shutterstock.com)

スピード離婚すべきか否か。そう悩んでいるあなたが30代半ばだとしましょう。考えてみてください。人生100年時代、あなたの人生はこの先まだ3分の2も残っているのです。

筆者は30代の終わりに結婚し、その2年後に離婚しました。スピード離婚経験者の1人であるわけですが、それで人生終わったかといえばそんなことはまったくなく、むしろ離婚後にどんどん開けていった実感があります。

離婚はタフな経験でもあり、無差別におすすめしたいものでもありませんが、離婚してもしなくても、あなたがよく考えて決断したのなら、その決断はきっとプラスの推進力を生み出してくれるものだと思います。

自分のこれまでとこれからをよく見つめ、悔いのない人生を進んでいきましょう、お互いに!

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