
(画像=Foxy burrow/shutterstock.com)
今更聞けない「クラウドファンディング」の仕組みをマスターしよう
クラウドファンディングでおトク生活(1)
この記事は板越ジョージ氏の著書『「ショッピング」の新しいカタチ クラウドファンディングでおトク生活』(ゴマブックス)の内容を抜粋したものになります。
クラファンとは
クラウドファンディング(クラファン)とは、「こんなモノやサービスをつくりたい」「世の中の問題を、こんなふうに解決したい」といったアイデアやプロジェクトを持つ起案者が、クラファン・ サイトを通じて世の中に呼びかけ、その呼びかけに共感した人から広く資金を集める方法です。
この仕組みを理解していただくために、まずは言葉の意味から説明しましょう。
クラウドファンディングの「クラウド(Crowd)」の日本語訳は、「群衆」です。
IT用語の「クラウドコンピューティング」などで使われる「クラウド(Cloud)」と同じ単語と勘違いされがちですが、こちらの日本語訳は「雲」。
クラファンの「クラウド(群衆)」とはまったくの別物だということを覚えておきましょう。
この言葉通りにとらえれば、クラウドファンディングとは、「群衆」を意味する「クラウド(Crowd)」と、日本語の「資金調達」の英訳である「ファンディング(Funding)」を組み合わせた、目標を達成するために群集から資金を調達する仕組み、ということになります。
ただ、「群集」から「資金調達」をするという行為自体は、決して新しい発想というわけではありません。
たとえば昔、自由の女神像をつくろうとしたり、神社をつくろうとした際には、資金を群衆から集めていました。
そして、呼びかけに応じて資金を拠出した人に対して、「修理が終わった神社に名前を書き残しておこう……」といった具合に返礼が与えられるケースも珍しくはなかったのです。
このような資金集め~返礼の提供という流れは、クラファンとほぼ一緒です。つまり、はるか昔からおこなわれていた資金集めがインターネットでできるようになったのが「クラファン」ともいえます。
クラファンの歴史
クラファンはいつ生まれて、どう成長していったのか。ここではアメリカと日本を比較して解説します。
■アメリカのはじまり
アメリカでは、2003年に「ArtistShare(アーティストシェア)」というクラファン・サイトが立ち上がったのが最初です。
これは、ボストン在住の音楽家がアーティストを支援する資金を募る目的でスタートしました。
クラファンをさらに有名にしたのは2008年。
クラファン・サイトの草分け的存在「Indiegogo(インディーゴーゴー)」がスタートし、翌2009年には世界最大のクラファン・サイト「Kickstarter(キックスターター)」が立ち上がりました。
私は、この2社がクラファンを有名にしたとみています。
2008年から2009年にかけては、アメリカの投資銀行リーマン・ブラザーズ・ホールディングスの経営破たんに端を発した金融危機「リーマン・ショック」のために、世界経済が大きなダメージを負いました。
そのようななかで立ち上がったクラファン・サイトは、銀行や証券市場とは違った資金調達の仕組みとして着実に存在感を増していった、というのが私の自論です。
■日本のはじまり
日本でクラファン・サイトが初めて立ち上がったのは、2011年3月。アメリカより8年ほど遅れてのことです。
まず「共感をテーマに、社会をよくするクリエイティブな活動や新しいことに挑戦する人々を応援する」をコンセプトに「レディーフォー」が立ち上がりました。
それに続き同年6月には「キャンプファイヤー」が、7月には「モーションギャラリー」が相次いで立ち上がり、続々とクラファン・サイトがスタートしていきました。
2011年といえば、東北地方の太平洋沿岸を中心に未曾有の被害をもたらした、東日本大震災が発生した年です。
日本のクラファン・サイトはこの震災復興を機に立ち上がり、急速に成長していったともいえます。
そのため、スタート当初は「原発と放射能の見えない恐怖と知っておくべき本当の話」、「~みんなの力で~東北元気玉弁当プロジェクト」、「東日本大震災チャリティーフットサル大会“DREAM.TICKET.CUP.3 .11”」など、震災復興支援に関する社会貢献系のプロジェクトが大多数を占めていました。
■世界に広がるクラファン・サイト
クラファン・サイトは今、世界に1,200以上あるといわれています。
ただ、クラファン先進国のアメリカではすでに淘汰されており、KickstarterとIndiegogoしかないといわれるほど他社から抜きん出た存在になっています。
日本は、アメリカに遅れてスタートしたこともあって、数々のクラファン・サイトが現在ひしめき合っている状態です。
しかし、そう遠くない将来、日本もアメリカのように大手2~3社にしぼられていくものと私はみています。
いずれにしても、圧倒的な資金力と技術力を持っているところが今後は勢いを増していくはずです。
クラファンの3つの類型とは
クラファンは「購入型」、「寄付型」、「金融型」と3つの類型に分かれます。まずはこの違いをしっかりと理解しましょう。
■基本的には「購入型」
クラファンのプロジェクトには、プロダクト、食、開業、社会貢献、国際協力、映画、アート、演劇、音楽、ゲーム、出版など、さまざまなジャンルのものがあります。
それらの多くは、支援者が返礼品を“購入する”ことで支援が成り立つようにできています。
これを「購入型」のクラファンといいます。海外では「リワード型」とも呼ばれています。
アメリカでは、「クラファン=インターネットショッピング」と認識している人が非常に多く、Amazonで品物を購入するのと変わらない感覚でクラファンを利用しています。
一般的にクラファンといったら、購入型のことを指します。
■見返りのない「寄付型」
クラファンには購入型ではないタイプのクラファン・サイトもあります。
ひとつは「寄付型」。支援者がプロジェクトの趣旨に賛同して金銭を支払ったとしても、その対価、つまり返礼品は原則として得られません。
これが購入型とは大きく違うところです。
チャリティの文化が根付いているアメリカでは、寄付型のクラファンも当たり前のようにみられます。
「寄付は寄付」、「購入は購入」の概念がはっきりしていて、起案する側も支援する側も、自分が関わろうとしているプロジェクトがどちらなのかを明確に理解している、ということです。
いっぽう、東日本大震災の震災復興支援を機にクラファンがスタートした日本では、当初は「寄付型」のプロジェクトが数多くみられました。
そのために、「クラファン=寄付」という認識の人が、いまだ少なくありません。
震災から7年半が過ぎ、現在の日本のクラファンでは、寄付型のプロジェクトは少数派です。
購入型がそのほとんどを占めています。
日本で寄付型があまり定着しなかった理由のひとつには、クラファンがスタートした2011年以前より、「オンライン・キャンペーン」というインターネットを使って寄付を募る専用サービスがすでにあったことがあげられます。
また、ふるさと納税のように、寄付を謳っていながら時に過剰ともいえる“お礼の品”が用意されていることも、返礼のない寄付型を定着させない原因のひとつと考えられます。
■金融商品が返礼品の「金融型」
購入型と寄付型のほかにもうひとつ、「金融型」のクラファン・サイトもあります。金銭の支払いに対する返礼が株式や配当金など金融商品の場合が、これにあたります。
金融型以外に、投資型、融資型とも呼ばれていますが、日本ではまだあまり知られていないタイプです。
金融型は、日本では2015年に合法化され、まだまだ歴史の浅いクラファンタイプです。取り扱う商品が商品だけに、広く認知されるまでに法整備などがしっかりなされるよう、期待したいものです。
クラファンの2つの掲載タイプ
クラファンでは、プロジェクトが公開される時点で「プロジェクト達成に最低限必要な資金(目標金額)」、「資金調達の募集期間」が必ず設定されています。
ここで気になるのが、では期限内に目標が達成しなかった場合、支援した金銭や返礼品はどうなるのか、ということです。
もしも募集期間が終わる前に最低限必要な資金を上回る支援金を募ることができれば、集まった資金を全額受け取れます。
一度受け取った資金は、支援者に返金する必要はありません。
しかし、募集期間が終わるまでにプロジェクトが目標金額に到達しなかった場合には、1円もお金を受け取れません。
これは「目標達成型(All.or.Nothing)」と呼ばれる、最も一般的なクラファンの掲載タイプのひとつになっています。
いっぽう、募集期間に目標としていた金額に足らなくても、集まった金額を受け取れる「実行確約型(All.In)」と呼ばれるクラファン掲載タイプもあります。
これは、たとえばネイルサロンの開業資金は自力で用意できるけれど、できあがったサロンを多くの人に知ってもらうための広告宣伝費が足りないので、それをクラファンで集める……のような、集まった資金でプラスαの活動をするための資金集めが該当します。
「資金が満額集まらないと、プロジェクトが企画倒れになるので、支援者は返礼品を受け取れないのでは?」そんな素朴な疑問を抱く方がいるかもしれません。
しかし、実行確約型の掲載タイプでクラファン・サイトに登録されているクラファンのプロジェクトの場合は、目標金額が達成できなくてもプロジェクトは実施されます。
これは、クラファン・サイトの運営会社に実施可能だと認められているもののみとなっています。
支援をしたら、目標達成の如何にかかわらず返すことのできる返礼が用意されているから認められている、ともいえます。
板越ジョージ(いたごし・じょーじ)
東京都出身。都立高校卒業後、サウスカロライナ大学国際政治学部卒業、中央大学大学院戦略経営研究科修了(MBA)、同大学院総合政策研究科博士後期課程修了(学術博士)。
1995年にニューヨークで起業して上場寸前までいくが、9.11の影響で倒産を経験。その後、ニューヨークで海外進出を支援するGlobal Labo, Inc.を設立し、海外進出を目指す企業やアーティストなどにコンサルティングを行う。クラウドファンディングの第一人者、「クラファン™️」の名付け親として、日米で講演やコンサルティング、執筆を行っている。著書に『クラウドファンディングで夢をかなえる本』(ダイヤモンド社)、『日本人のためのクラウドファンディング入門』(フォレスト出版)等多数。