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私たちの年金が始まる「2050年」の社会保障はこう変わる

30代のための年金とお金のことがすごくよくわかって不安がなくなる本(4)

この記事は佐藤麻衣子氏の著書『30代のための年金とお金のことがすごくよくわかって不安がなくなる本』日本実業出版社の内容を抜粋したものになります。

【『30代のための年金とお金のことがすごくよくわかって不安がなくなる本』シリーズ】
(1)30代は本当に年金がもらえないのか?その不安を分かりやすく解決しよう
(2)なぜ高齢者の年金が無くなると私たちが困るのか
(3)資産作りを「後押しする制度」でお金を守ろう
(4)私たちの年金が始まる「2050年」の社会保障はこう変わる

※以下、書籍より抜粋

「私たちの年金」が始まる2050年代までを予測してみる

●これからの日本はどうなると予想されているのか

30代が年金を受け取り始めるであろう2050年までに、何がどう変わっていくのかについて考えていきます。これからの日本は少子高齢化が進むだけでなく、人口自体も減っていくと予想されています。

問題はそのスピードです。「日本人口の歴史的推移」のグラフによれば、明治時代から急速に増えていった日本の人口は、2010年をピークに減少に転じています。

人口の減少が経済社会にどのような影響を及ぼすかについてはいろいろな考え方がありますが、単純に考えれば、生産人口が減って高齢者が増え、総人口が減っていくとなると医療や介護などの一定のサービスについては拡大されるものの、全体として経済は縮小するのではないかと予想されます。

日本の人口と総人口における65歳以上の人口の割合を示した高齢化率を見ると、今後約30年で人口は1億人を割り、高齢化率(総人口に占める65歳以上人口の割合)は約4割になると予測されています。

・2020年:人口1億2532万人、高齢化率: 28.8%

・2050年:人口9284万人、高齢化率: 38.1%

団塊世代が75歳以上の後期高齢者になる2025年には、医療・介護サービスの不足、介護離職、社会保障費の増大、空き家の増加などが現実問題として表面化してくると予想されることから「2025年問題」と称され、ここ数年での対応が一つの山場といわれています。

次に、テクノロジーの進化によって、いままで生じていた経済取引のムダが排除され、経済システムがスリム化されることも予想できます。

たとえば、「黄色いスカートが欲しい」と思って買い物をするとします。

昔であればクルマや電車に乗って出かけ、何店舗かで自分のイメージした服を探し回り、試着をして、購入するというプロセスでした。

それがいまは、スマホで「スカート 黄色 Mサイズ」と入力して検索すれば、オンラインで比較検討して、そのまま購入できます。電車代もかからず、時間も労力も少なく、その取引のあいだに介在する人も少なくなっています。

このようなことが、ありとあらゆるサービスで起こっているほか、3Dプリンタなどメーカーのコストを大幅に下げる技術の実現や、SNSを通じた個人間のダイレクトな取引の増加などにより、豊かさのレベルは落ちていなくても、経済的なコストは縮小しています。

そのため、GDPの増加など従来の経済成長を示す指標が「豊かさの物差し」として必ずしも適切ではなくなってくると考えられます。

少子高齢化が進むなかで人口減少によって国内経済が縮小すると予測されるほか、豊かさと経済成長がイコールでなくなるなど、あらゆる前提が崩れるという現象がこれからの30年で起こると考えられます。

そのなかで、人が人間らしく生きていくために必要とされる「安心」や「豊かさ」とは何かについて自分なりの視点を持って、生活設計においては何が大切なのかをとらえていくことが重要ではないでしょうか。

そんな観点から、私たちの生活に深く関わるいくつかのポイントについてピックアップして整理していきます。

●誰もが直面する医療・介護にどう対応する?

まずは、医療・介護について見ていきます。

実は、社会保障制度においては、年金より先に医療・介護において少子高齢化の影響が出てくるといわれています。

高齢期には医療費もたくさんかかるため、国全体の医療費も増えていきます。医療費は年金と違い、1人当たりにいくらかかるかをなかなか予想できません。

個人レベルで考えると、通常はかかった費用の多くとも3割負担で診療を受けることができますが、重い病気で治療を受ける場合などは、さらに医療費の負担に「高額療養費」という上限があります。

治療を受ける人はこの一定の上限の範囲での医療費負担で済み、その上限を超えた部分は国が負担することになります。

治療を受ける側としては安心できる制度ですが、急激な少子高齢化のなかで病気にかかりやすい高齢者が増えていけば、国の医療制度としては非常に大きな負担になってしまいますから、制度のしくみが変更される可能性は高いといえます。

健康保険組合連合会の発表によると2015年度に42.3兆円であった国民医療費は、2025年度には約1.4倍の57.8兆円になると見込まれています。

現状でもすでに、健康保険組合の約7割が財政赤字になっているのですが、その主な要因が、高齢者を支える支援金等となっています。

これから、働き手が減って支えられる高齢者が増えていくため、ますます財政赤字は増えると考えられ、いままで通りの医療保険制度を維持することはむずかしく、少しずつ負担を増やすような改正が進んでいます。

健康保険と同様に、介護保険制度においても、給付が縮小され、負担が増加する形での改正が進んでいます。

現状でも介護施設は不足していて、特別養護老人ホームへ入るための要件も厳しくなり、それでも入居まで何年も待つというような状況が続いています。

介護の負担がお金の面でも労力の面でも重くなるほか、介護を担う人手不足も深刻であるため、介護はできるだけ家族が自宅で行ない、さらに地域で支えあうような形で自助努力が求められる流れにあります。

そしてこれにより、家族の介護を理由に離職を余儀なくされる人が増えていくことが予想されます。

仕事と介護などの生活の両立ができる職場や、それに適した介護保険制度の利用ができなければ、生活にも経済社会にも大きな支障が出てくることは避けられません。

このように、いま当たり前にある医療保険制度や介護保険制度の給付に支障が出てきてしまうことや、保険料や自己負担割合が増えること、さらには介護離職等により収入を失うことは、個々人のライフプランに大きな影響を与えます。

個人としては、この変化を前提として、健康や予防医療・予防介護に投資をして備えるなどの自助努力をすることがとても重要になります。

言い換えると、健康であることの価値がより高くなるのですから、それを実現できることが大切です。

●空き家で不動産の常識が激変する?

続いては不動産について考えていきます。

人生における三大支出は、「教育」「住宅」「老後」の資金といわれ、人生でいちばん大きな買い物の代名詞とされる不動産は、ライフプランにおける重要なポイントです。

この不動産の常識が今後30年のあいだに激変することが予想されています。

人が増えていた時代は、住むところがどんどん必要になるので不動産の需要は高かったと思いますが、これからは人が減っていくので、いままで住んでいた住居が不要になり、不動産が余っていきます。

すでに、空き家の増加は問題になっていて、総務省統計局の『住宅・土地統計調査(平成25年度)』によれば、空き家数は820万戸あり、全国の住宅の13.5%を占めています。

今後も、高齢者用の介護施設等への転居が増えたり、亡くなって相続が発生した際に住む人がいなかったりという状況に歯止めがかからなければ、空き家は増え続け、さらにはそのスピードに地方自治体の対応が間に合わず、街の景観が損なわれたり、住む人が減って地域のサービスに支障が出ることなども懸念されています。

人口減少により住居のニーズは減ることに加え、今後は、在宅勤務(テレワーク)の普及も進み、会社に出勤しなくてもオンラインで仕事ができるようになることなども考えると、高いお金を払ってまで都心に住む必要性も少なくなっていきます。

また、いままでは多くの人は一つの会社で定年まで勤め、重大な理由がなければ離婚や別居もしない(またはできなかった)時代でした。

でもいまは、転職や起業、離婚や再婚は昔より一般的なものになっています。

そうすると、人生のなかで生活環境を変えていく必要があるため、長期の住宅ローンを組んで、同じ家に縛られることは不利益になる可能性がでてきます。

このような変化から起こる影響を考えてみます。

いままでは、住宅を購入するのと賃貸するのではどちらが得かという話になったら、似たような物件であって月額の家賃より住宅ローンの返済額の方が少なければ購入しようとか、持ち家なら資産になり、長生きしても家賃の心配がないといった考え方が一般的でした。

しかしながら、もしこのまま人口が減り、空き家が増えていくのであれば、不動産の需要と供給の面から人口が安定している住みやすい街の駅前といったような、ほんの一部の物件を除いては価格が下がることが予想されます。

そういった変化もふまえ、資産価値やローンと家賃といった金銭面だけではなく、自分の価値観やライフプランを軸に、柔軟性や流動性なども意識して住居を選ぶという視点がより大切になってくるでしょう。

●学び続けること(生涯学習)が普通に

また、教育面でも大きな変化が考えられます。

現在、従来の日本の教育スタイルではこれからの社会で通用する人材は育ちにくいことや、社会人になってからの学び直しへのニーズが高まっていることから、国をあげてその対策が検討されています。

そして、生涯にわたって教育と就労や余暇などの他の活動を交互に行なうことができる教育形態を「リカレント教育」といいます。

リカレント教育の普及を進める背景としては、教育・就職・老後といった従来のライフプランから、変化に対応しながら生涯現役社会を実現していくという流れになっているというだけでなく、技術革新によってせっかく築いたキャリアやスキルが機械に代替され、無価値になってしまうリスクのある時代になっていることも挙げられます。

オックスフォード大学の准教授であるマイケル・A・オズボーン氏が2014年に発表した論文『雇用の未来』でも、20年後に米国の雇用者の47%の仕事は機械によって代替されるとされているように、これからの社会においては、働きながら学び、変化に適応していくことが求められていきます。

そうなってくると、いままでの教育についてのライフプランも見直す必要が出てきます。

新卒のときに大企業に入ることや、医者などの専門職に就くことが人生の安定につながるのであれば、いい大学に入学する意味がありましたが、いまは企業に属さなくても仕事ができるようになり、いい大学に入らなければいい生活ができないというわけでもありません。

また、インターネットの普及によって情報はいつでも検索して調べることができるようになっているので、知識が豊富であるということの価値が下がるなど、求められる能力も時代とともに変わってきています。

社会がこれほど急速に変わっていくなかでは、国による教育制度の見直しを待つだけでなく、個人レベルでも教育の費用対効果を考え、可能な範囲で見直しをしていくという視点が大切になってきます。

さらに、成人する前の基礎的な教育においては、高校でも所得に応じて授業料が支援されていますし、大学進学においても返済不要の給付型奨学金が始まるなど、経済的な理由で進学ができないという状況も改善されていく流れになっています。

今後は、社会人になってからの学び直しにおいても、雇用保険による教育訓練給付という給付金の活用や、会社が教育のための制度を整備していく流れを受けて個人を支援する環境になっていくのではないかと感じます。

このような流れから、今後の教育にかかるお金や、教育をする時期の概念は大きく変わっていくと予想されます。

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佐藤麻衣子(さとう・まいこ)
1981年生まれ。成城大学経済学部経営学科卒業後、上場企業の経営企画室にて主にIR業務を担当。その後、信託銀行へ転職。在職中、リーマンショックを経験したことで知識不足を痛感し、CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。信託銀行を退職したのち、税理士事務所、社会保険労務士法人等に勤務をしながら、社会保険労務士試験に合格。ウェルス労務管理事務所を開業。

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