(画像=Jacob Lund/shutterstock.com)

資産作りを「後押しする制度」でお金を守ろう

30代のための年金とお金のことがすごくよくわかって不安がなくなる本(3)

この記事は佐藤麻衣子氏の著書『30代のための年金とお金のことがすごくよくわかって不安がなくなる本』日本実業出版社の内容を抜粋したものになります。

【『30代のための年金とお金のことがすごくよくわかって不安がなくなる本』シリーズ】
(1)30代は本当に年金がもらえないのか?その不安を分かりやすく解決しよう
(2)なぜ高齢者の年金が無くなると私たちが困るのか
(3)資産作りを「後押しする制度」でお金を守ろう

※以下、書籍より抜粋

年金はあるけれど「自分で頑張る」ことも大切

●「本当に困っている人」の姿が変わっている

年金制度は長生きのリスクや、障害・死亡に備えるセーフティネットとして私たちの生活設計においても必要なしくみです。

とはいえ、少子高齢化によりいまのままでは支え合いに限界が見えてきました。

支え手の保険料や税金は重くなるばかりで、生活を圧迫しています。そこで、いままでの「現役層が高齢者を支える」という構図自体を見直すべきではないかという話が出てきました。

老齢年金は、加齢により収入を得ることがむずかしくなってしまうのにもかかわらず、いつまで生きるかわからないという長生きのリスクに備える保険です。

そうであれば、高齢者でも収入を得られて元気に生活できるのなら、できるだけ長く支え手側となって、現役層の負担を減らしていこうという考えです。

もともと、老齢年金は定年後の高齢者には仕事がないものと想定されています。

年金制度ができた当初はまだ肉体労働の比率もいまより多かったでしょうし、加齢により体力が落ちてしまうことは、仕事ができず収入を失うことと密接にかかわっていたかもしれません。

また、会社に勤める以外に安定した報酬を得る方法は乏しく、定年後に収入を得られる人は限られていたと思います。

しかしいまは、工場などにおける肉体労働者の仕事の多くは機械に代替されるようになりました。サービス業の比率が増え、ホワイトカラーと呼ばれるような頭脳労働者の比率も増えています。

高齢の会社役員もたくさん活躍していますし、シニアの雇用や独立開業など、年金制度ができた当初と比較すれば定年にかかわらず高齢期においても仕事ができる環境に変化しています。

このような変化からも、年金財政が厳しいなかでは、一律の年齢で線引きをして給付をしていくということが、適切とはいえなくなってきています。

一方で、非正規雇用や共働き家庭の増加により新しい問題が発生し、年齢にかかわらず生活が苦しい現役層が増えてきました。

親の収入が少なく多額の奨学金を返済しながら働く社会人が、生活に行き詰まり自己破産するケースも出てきています。

共働きで成立していた家庭において、保育園に入れずにどちらかが離職をせざるを得なくなれば、家計は一気に苦しくなります。他にも、介護や闘病と仕事の両立で苦労している人も増えています。

このように、時代の変化で「本当に困っている人」は、加齢を理由とするものに限らず多様化しています。若いから支える余力があるものだと一律に決めてしまうこともまた、時代に合わなくなってきています。

これからは、年齢を問わず、自立できる人はできるだけ自立して、すべての世代で、本当に困っている人を支え合っていくしくみに変わっていこうとしているのです。

●iDeCoやNISAは自分で資産をつくることを後押しする制度

自立できる人が、できるだけ自立する社会をつくるために、ここ数年、年金制度の見直しと並行して、老後のための資産を自助努力によって準備することを後押しする制度が普及しています。

計画的に老後のための資産形成をする際には税金を優遇することによって応援しますよ、というものです。

ここでは、そうした制度の概要とともに、なぜこのような制度ができたのか、そしてどう利用していけばいいのかを説明していきます。

・個人型確定拠出年金(iDeCo)
まずiDeCo(イデコ)ですが、「個人型確定拠出年金」という名称にもあるように、老後に備える任意加入の年金制度です。

iDeCoは60歳まで引き出すことができないかわりに、3つの税制優遇を受けることができ、老後に備えた資産形成を効率よく行なうことができます。

3つの税制優遇とは「掛金を全額所得控除できる」「運用益が非課税」「受取時には退職所得控除や公的年金等控除が利用できる」というものです。

とくに掛金の所得控除は次に挙げるNISAにはない優遇措置で、その人の所得税率にもよりますが、掛金の2~3割近くの税金が還付されることもあります。

このiDeCoについては、2017年の1月に法改正があり、加入対象者に公務員や専業主婦が加わり、年金に加入している現役層がほぼ全員加入できるようになったことをきっかけに急速に普及しています。

改正の目的に「労働の多様化が進むなか、生涯にわたって継続的に老後に向けた自助努力を可能とするため」という一節があります。

終身雇用で会社から多額の退職金を受け取ることができた時代と比べ、いまは転職も多く、十分な退職金をもらえる人は少なくなっています。非正規雇用だとそもそも退職金がないこともあり、意識して老後のための資産を準備する必要があります。

iDeCoの口座は国や会社ではなく個人に紐づいていて、持ち運びができるのが特徴です。どのような働き方をしても自分で管理しながら有利な老後のための資産づくりが確実にできるため、いまの時代に適しているといえます。

iDeCoは「自助努力の土台」として早めに利用していくのがいいでしょう。

・少額投資非課税制度(NISA、つみたてNISA)
続いてNISA(ニーサ)ですが、これは「少額投資非課税制度」といって、年間の決まった枠のなかであれば、株式や投資信託などへの投資により得られる譲渡益への税金が非課税になるという制度です。

前述のiDeCoのように、掛金の額に応じて税金が還付される(所得控除される)という措置はありませんが、60歳まで引き出せないという制限がなく、お金の流動性という面では使いやすい制度です。

NISAとつみたてNISAは、どちらかを選択する必要があります。

NISAの非課税枠は年間120万円/5年間であるのに対して、つみたてNISAの非課税枠は年間40万円/ 20年間となっています。

非課税枠の期間の長さで考えれば、老後のための資産を準備するにはつみたてNISAのほうが適しているといえるでしょう。

60歳まで使う予定のない資金はiDeCoで、大きな出費が必要になったときは使う可能性がある資金はNISAでというように、時間軸での流動性を考えて組み立てておけば、急なライフイベントがあったときに対応できるのでおすすめです。

ポイントは、iDeCoやNISAでいつまでにどのくらい用意できるのかをざっくり逆算しておくことです。

一度家計を整理してライフプランを立て、iDeCoやNISAを活用した土台のしくみをつくれば、公的年金にプラスアルファするものとして自分に合った形で設計できます。

年金が減り、生涯現役社会への移行が進められるなかで、きちんとこのような優遇措置も準備されています。不安をなくすためにも制度を上手に活用していくのが得策でしょう。

●自分が困らないためにできるだけ早くライフプランを描いてみよう

年金を取り巻くさまざまな変化を見てきましたが、全体像として、今後、老齢年金はどうなるのでしょうか。

できるだけ長く働き、自助努力で老後の生活費を補う人を増やしていくことができれば、老齢年金の役割は昔より小さくなっていくと考えられます。

いまのように、一定の年齢からみんなが受け取るというスタイルも、少しずつ変わっていくでしょう。

この大きな変化に対応するなかで、若い世代は経済的な面において「高齢者を支えながら自分は自立に向き合わないといけないのか」と損しているように感じるかもしれません。

しかし、これについても、本来自分が扶養するべき自分の親を社会で支えてもらっていると思えば、負担はさほど変わらないはずです。

「親世代までは、年金制度がないと老後生活は維持しにくい社会だったけれど、これからは老後も自分でなんとかできる社会に変わっていく」ととらえれば、見え方も変わってきます。

そして、そうした時代の流れが避けられないのであれば、できるだけ早く個人でも対策を進めていくことが大切です。

老後の生活資金が足りなくなってしまうことは、社会や政治の問題ではなく、第一には自分自身の生活をどうするかという問題だからです。

国や企業にライフプランを依存しすぎていたら、いちばん困るのは自分なのです。

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佐藤麻衣子(さとう・まいこ)
1981年生まれ。成城大学経済学部経営学科卒業後、上場企業の経営企画室にて主にIR業務を担当。その後、信託銀行へ転職。在職中、リーマンショックを経験したことで知識不足を痛感し、CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。信託銀行を退職したのち、税理士事務所、社会保険労務士法人等に勤務をしながら、社会保険労務士試験に合格。ウェルス労務管理事務所を開業。

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