(画像=Monkey Business Images/shutterstock.com)

30代は本当に年金がもらえないのか?その不安を分かりやすく解決しよう

30代のための年金とお金のことがすごくよくわかって不安がなくなる本(1)

この記事は佐藤麻衣子氏の著書『30代のための年金とお金のことがすごくよくわかって不安がなくなる本』日本実業出版社の内容を抜粋したものになります。

※以下、書籍より抜粋

「ねんきん定期便」の金額は本当にもらえるの?

年金は国の社会保険制度の一つで、「保険料を納めていれば、老齢・障害・死亡など生活に支障が出る状態になったときに一時金や年金で保障を受けることができる」というものです。

このうちの「老齢」に対するものが老齢年金で、 65 歳になってから亡くなるまで受け取ることができ、いまも多くの高齢者の生活の支えになっています。

しかし、若い世代の過半数の人は「自分たちは将来年金がもらえない」と感じているのが現状です。国の公的な制度であるにもかかわらず、若い世代はどうして年金はもらえないと不安に思ってしまうのでしょうか?

その原因は大きく分けて「少子高齢化」「日本の財政状況」「制度改正」の3つにあると考えられます。

・少子高齢化
年金を受け取る高齢者は増えていく反面、年金を支える労働力人口は減っていくから

・日本の財政状況
年金の支給総額は毎年増えていて、社会保障の不足分は借金(国債)で賄っているから

・制度改正
制度維持のために今後も法改正が進み、給付が調整されていくことが決まっているから

こうした状況で「年金は将来も大丈夫」と言われても、不安に思うのは自然なことです。

年金が不安だと言うと「制度を理解すれば保険料を納めないのは損だとわかります」「受け取る年金は税金で半分賄われるのでお得な制度です」「積立金もあるから安心です」といった説明がされることがあります。

たしかにそうかもしれないのですが、私たちの老後というのは支え手が減り、高齢者の割合がもっと増えるといわれる30年後の話です。

また、公的年金は安心だと言う一方で、個人型確定拠出年金(iDeCo)や少額投資非課税制度(NISA)といった資産形成制度が生まれ、「自分で努力して資産形成をしましょう」というメッセージも発信されるようになりました。

要するに、「年金だけに頼らず、自分でも将来のお金の準備をしたほうがいい」ということです。

では、どれぐらい準備したほうがいいのでしょうか。

毎年1回、「ねんきん定期便」というものが送られてきますが、そこに記載されている年金試算はあくまで現状水準で計算されたものであり、将来にわたって約束されたものではありませんから、「30年後にどのくらいの年金がもらえるのか」のイメージが見えません。

そうしたなかでは、なかなか具体的に行動してみようという気になれないのも仕方がありません。

とくに30代は、現実の厳しさを実感している世代です。

待機児童問題、非正規雇用などを身近に経験している人も多く、年金についてもいまの高齢者への対応が優先されてしまって、自分たちは不利な立場に置かれるのではないかという不安を持ちやすいのではないでしょうか。

こうした不安に対応するために必要なことは2つあります。

まず、「30代の私たちが老後の年金を受け取る時期はいつくらいで、いくらもらえるのか」を具体的に考えるために、年金制度について理解していくこと。

そして、今後は年金だけに頼らず、働けるうちは働き続ける生涯現役社会へ移行することを前提に、「何歳まで働く覚悟を持ち、どの程度の収入を想定すればいいのか」といった家計やキャリアについての現実的な見通しを持つことです。

そこでまずは、実際の統計データや財政の状況をもとに、年金制度を取り巻くいまの状況を整理してみたいと思います。

●日本の少子高齢化は年金にどう影響するの?

日本ではすでに、人口の減少と少子高齢化が始まっています。2016年に約1.2億人だった日本の人口は、2050年には約1億人になると予想されています。

また、総人口に占める65歳以上の人の比率も、2016年に27.3%であったものが、2050年には37.7%となり、3人に1人が高齢者になるといわれています。

その少子高齢化は、年金制度にどの程度のインパクトを与えるのでしょうか。

日本の年金制度は「賦課方式」といって、現時点での現役層が、現時点での高齢者を支える形で制度が成り立っています(自分が現役時代に払い込んだ金を積み立て、老後にそのお金を受け取るしくみではありません)。

ですので、高齢者が増えれば現役層1人当たりの負担は重くなります。

したがって、高齢者1人に対する労働人口が現在よりも減ってしまえば、現状維持はむずかしくなるのは当然です。

今後は年金の給付を調整(受け取り始める時期を遅らせる、支給額を減らすなど)すると同時に、現役世代(現状では64歳までの人のことを指す)がそれ以上の年齢の人を支えるという前提も変えて、「生涯現役社会」に近づけていくことなども検討されています。

年金制度はこれまでにも、給付額を減らし、負担を増やす形での制度改正が行なわれてきました。たとえば1994年(平成6年)および2000年(平成12年)の改正では、年金の支給開始年齢は原則60歳からであったものが、段階的に65歳に引き上げられています。

そして、年金の保険料は毎年引き上げられてきました。少子高齢化の進行で現役世代の負担増加が懸念されるなか、現状では、厚生年金保険料率は2017年に 18 .3%を上限にとどまり、国民年金の保険料は2019年に月額1万7000円を上限にとどまるとされ、今後は保険料を上げずに、決められた収入の範囲で給付を調整して対応することになっています。

このように、過去にもかなり手を打ってきて、すでに打ち手が少なくなっているなかで、私たちはいよいよ本格的な高齢化社会を迎えようとしているのです。

また、高齢者の割合が高くなることのほかに、人口自体が減っていくことも年金に影響を与えます。

年金は物価や賃金の動きに連動して、受け取る金額が決まるしくみになっています。

人口が減ることによって物価や賃金にどのような影響が出るかについてはいろいろな考え方がありますが、たとえば、人口減少が経済にマイナスの影響を与え、長期的に物価や賃金が下がることになれば、年金額も減ってしまうことになります。

ここで知って欲しいのは、年金は「そういうしくみになっている」ということです。

そして、今後はさらに急速なスピードで少子高齢化だけでなく人口減少も進んでいくのであれば、制度改正についてもこれまで以上に大きくなる可能性があることも、想定しておきたいところです。

●年金制度の見直しは少子高齢化のスピードに追いついていない

結局のところ、年金不安の原因は「制度の見直しが現状に追いついていないと多くの人が感じている」ところにあるといえるでしょう。

しかし、年金制度を見直すのに時間がかかるのは当然です。

2016年度(平成 28 年度)の『国民生活基礎調査』によると、高齢者世帯における所得のうち 65.4%が公的年金等となっています。

また、所得は公的年金等だけという世帯は54.1%にものぼり、「老後は年金に頼る」という前提で生活設計をしている世帯が多いことがうかがえます。そうしたなかで、「制度の維持がむずかしいので、いまの給付を削ります」ということは無理です。

年金制度の見直しをしてもそうした影響が出ないようにするためには、ただ年金を減らすだけでなくて、高齢者の働く場所や機会をつくったり、高齢期の医療や介護などの負担を減らすために健康増進の施策をしたり、地域での助け合いのしくみをつくったりするなど、高齢者の生活を取り巻くしくみづくりも同時に進める必要があるのです。

そのような事情を考えれば、年金制度の見直しが少子高齢化のスピードに追いつかない状況になるのはある意味仕方がないことです。

そうしたなかで、「年金制度は破綻する」などいたずらに年金不安、将来不安を叫ぶことは生産的ではありません。

それこそ、破綻を避けるために制度改正は適宜進められていきますから、支給額が減るという事態はあると思います。

しかし、年金制度は賦課方式なので、仮にいまある年金積立金が底をついても、現役世代がゼロにならない限り、支給自体がなくなることはないのです。

年金制度は、いまよりも手厚くなることは考えにくいですが、歳をとってからの生活を支えるベースではあり続けます。

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佐藤麻衣子(さとう・まいこ)
1981年生まれ。成城大学経済学部経営学科卒業後、上場企業の経営企画室にて主にIR業務を担当。その後、信託銀行へ転職。在職中、リーマンショックを経験したことで知識不足を痛感し、CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。信託銀行を退職したのち、税理士事務所、社会保険労務士法人等に勤務をしながら、社会保険労務士試験に合格。ウェルス労務管理事務所を開業。

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