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どうして原油の動きが為替に影響を与えるの?ポイントを抑えよう

為替が動くと、世の中どうなる? (5)

この記事は角川総一氏の著書『為替が動くと、世の中どうなる?』すばる舎の内容を抜粋したものになります。

・『為替が動くと、世の中どうなる?』シリーズ
(1)為替相場を読むうえで知っておきたい「円キャリー取引」とは?
(2)世界が不安定になると「円が買われる」その理由とは?
(3)ドルだけではなくユーロも重要 外為市場はこう見よう
(4)いざ海外旅行!通貨の「為替レート」をおさらいしよう
(5)どうして原油の動きが為替に影響を与えるの?ポイントを抑えよう

※以下、書籍より抜粋

原油価格の動きは為替にどんな影響を及ぼすか?

●原油価格の動きは、教科書通りにはいかない!

為替相場を見る上で、目を離せないのが原油価格の動きです。そう言うと、次のように考える方がいらっしゃるかもしれません。

「日本って原油などエネルギー源を、最も海外に依存している国なんでしょ」
「ということは、原油価格が上昇すれば、かなり大きな打撃を受けるよね」
「であれば、円が売られて安くなるのが原則なんでしょ」

多くの教科書も、次のように言います。

原油価格の上昇は原油輸入代金を増やす。支払い代金の過半はドルだ。

つまり世界全体でドルへの需要が高まる。これはドル高要因。つまり円安になる。  

さらに、日本は大量に原油を輸入しているため、原油価格の上昇に伴う貿易収支の悪化度は他の国よりも大きい。

貿易収支の悪化とはドルの支払いの増加なんだから円安になる。つまり、以上を総合すれば円はやはり原油高には弱いんだ。

こんな具合です。しかし現実はどうでしょうか?

こんなとき、理屈はともかく、できるだけ早い時期にデータを見ればいい。これが私の基本的な考えです。

残念ながら、以上の説明とは逆です。

原油の国際的な価格動向に大きく影響するのは、WTI(ウェスト・テキサス・インターミディエイト)と言って、アメリカのテキサス州とニューメキシコ州を中心に産出される原油です。

たとえば1997年からの10年間は、ほぼ原油価格は上がりっぱなし。でもこの間は円高が進んでいます。

逆に2012年頃から2016年にかけ原油価格が急激に下がっているなかで円相場は下げています。

前述の理屈では説明できないのです。

では、どう説明すればいいのでしょう。

●原油高のときにはドルが安い

最大の理由は、ずばり「原油高のときにはドルが安い」からです。

原油の動向が米ドル相場に影響し、それによって円相場が動くというメカニズムの力が強いのです。つまり、原油とドル相場との間の関係がとても深いことに注目するのがポイントなのです。

さてそれにはどんなふか~い理由(わけ)があるのでしょうか。

主な理由は、2つあります。

1つは、米国は今日でも世界最大級の原油消費国です。

あれだけシェールガス、シェールオイルの生産量が増え続けているとは言え、原油はまだまだ大量に輸入しているのです。

何しろ、アメリカは極端な車社会ですからね。

さらには、米国はエネルギー消費効率がとても悪いことでも有名です。世界では、中国についでエネルギー効率が悪いのです。アメ車をイメージすればわかりますね。

しかし日本は、ドイツと並んで世界で最もエネルギー効率がいい国です。これが原油高→ドル安→円高の理由のひとつです。

2つ目は、逆の関係です。

ドル安が原因となって原油高をもたらす、というメカニズムが働くのです。ドルが安くなれば円、ユーロから見ればドル建ての原油価格が安くなります。

1バーレル(159リットル)=50ドルで変わらなかったとしましょう。

1ドル=200円から100円へと、ドル安になればどうなるか。

日本から見れば、1バーレル=50ドル(=1万円)から50ドル(=5000円)になる。「安くなったので購入量を増やそう」となるのが普通です。

この場合は需給バランスの原則が働いて、原油価格が上がるのです。つまり、ドル安のときには原油高になりがちなのです。

「原油高のときにはドル安・円高」ということは、実は私たち消費者にとってはラッキー、とも言えるのです。

なぜなら原油高のときには円高ですから、円建てで見た原油価格はそれほど上がらないのです。

円高になると、輸入品価格も下がります。

●円高と原油価格上昇のフクザツな関係

こんなふうに、

基礎知識1.(円高で輸入品価格下落)

基礎知識2.(原油価格上昇はドル安・円高をもたらす)

の2つを組み合わせると、原油価格上昇→ドル安・円高→円建てでの原油価格はさほど上がらない、と直感できるようになります。

少し難しいですが、原油価格の変動は直接日本経済に影響を与えるのではなく、為替相場の変動というクッションを挟んで、幾分その影響が緩和されるんだな、ということがわかるのです。

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角川総一(かどかわ・そういち)
(株)金融データシステム(KDS)代表。昭和24年大阪生まれ。京都大学文学部を経て、公社債関連専門紙で8年の記者経験後、独立。その後、わが国初の投資信託のデータベースを構築するとともに、各種雑誌、新聞、テレビ、ラジオなどでの金融、マネー評論、講演のほか、企業、各種団体などでセミナーを行う。著書は「図解 資産運用を読む事典」(東洋経済新報社)「バランスシート思考のすすめ!」(PHP研究所)ほか多数。証券経済学会会員。

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