(画像=KimSongsak/shutterstock.com)

為替相場を読むうえで知っておきたい「円キャリー取引」とは?

為替が動くと、世の中どうなる?(1)

この記事は角川総一氏の著書『為替が動くと、世の中どうなる?』すばる舎の内容を抜粋したものになります。

※以下、書籍より抜粋

「円キャリー取引」がキーワード!

●「円キャリー取引」って?

今、現実の為替相場を読む上で避けて通れないのが「円キャリー取引」です。

これはひと言で言うと、低金利の通貨で資金を借り、米ドルや新興国などの高金利通貨で運用してより高い収益を上げようする一連のお金の流れを指します。まず結論から言うと──、

世界情勢が不安定になると、円が買われて円高になる。これが、今の為替相場を読む上での大前提です。

「円」を中心に、世界全体の為替相場の原理を読めます。

その最大の理由が「円キャリー取引」と「その巻き戻し」という為替市場を通じた独特の資金の流れなのです。

●円キャリー取引は、なぜ生まれたの?

円キャリー取引では、世界で最も低い金利の円を調達し、それを日本国外に持ち出して米ドルなど外貨に転換します。

その上で、米国の株式、豪ドル、カナダドルなどの高金利通貨の債券、さらにはBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)と称される新興国の株式や金、原油などの商品先物に投資するという一連のお金の動きを示すものです。

「円」を調達するには、金融機関から「借りる」、「金融市場などの市場から調達する」、円以外の通貨を売って「円」を買うなど様々です。

長年にわたりわが国の金利が、世界でダントツに低い水準を続けてきたことが背景にあります。

わが国の金利水準は1990年代後半から、飛び抜けて低い水準を続けてきました。

1980年代後半の不動産・株式バブルの崩壊で、大手銀行が巨額の不良債権を抱えたまま相次いで破綻、それが日本経済を叩きのめしたのです。これに対処するために、極端な低金利政策がとられました。

それが1999年に始まったゼロ金利政策です。金利をゼロにして、経済を立て直そうとしたわけです。

さて、ここで予想しないマネーの動きが出てきました。それが「円キャリー取引」です。

米国などの巨大年金ファンド、ヘッジファンド、投資銀行などは、世界経済が順調に拡大してリスクも低いときには「円資金の調達」→「日本からの持ち出し」→「米国や新興国の高金利債券、株で投資」──という「円キャリー取引」を行なってきたのです。

ところがこのマネーは、とてもリスクに敏感なのです。

そこで、いったん世界景気に黄信号がついたり、中東での政情不安などが高まったりすると、逆にその円を返済しようとする「円キャリーの巻き戻し」が起こったのです。

これらの資金は、純粋に利益を上げることだけが目的です。世界経済が不安定になって、投資先の株価や投機的な商品価格が下がったり、債券価格が下がったりすれば、大きな損失を被ります。

これを避けるために、これらの投資先から資金を回収して、円に戻し、その円を返済しようとするわけです。

こうした「円キャリー取引」と「円キャリーの巻き戻し」というマネーの動きが、その後の世界中のマネーの動きの主流をなすに至ったというわけです。

以上を整理すると、世界景気が良く、政治的な不安がない時期には円が売られて安くなる、不安が高まると円が買われて円高になる、というわけです。

さらにこれは日本株の動きにも影響してきます。つまり、不安なし→円安→日本株上昇、世界不安の高まり→円高→日本株下落、というわけですね。

これから円相場はどうなる?と考えるときには、まずこの大原則を思い出してください。

●機関投資家などだけが円キャリー取引をやったのではない

ここまでは、円キャリー取引をヘッジファンドなどの大手の機関投資家の動きとして説明しました。しかし、私たち個人も似たような行動をとっていたことに気づきませんか。

つまり、日本の低金利を嫌って海外の高金利債券や上昇著しい海外株式に投資信託を通じて投資するという行動です。

その後、世界的に景気が後退したり、中東、アジアで政情不安が高まったりするにつれ、米国や新興国の株価などが下がると、これらのファンドを売ってしまう。こうしたプロセスも、円キャリー取引、並びにその巻き戻しの一種です。

●「円キャリー取引」が頻繁に行なわれる条件はあるの?

「円キャリー取引」は一般に、為替相場が安定している時期によく利用されます。

もともと、低い金利の円を調達してより高金利の、あるいは高い収益性が期待される海外の株式や商品市況で運用して、その差益を 稼ごうとするのが主な狙いです。

ということは、その間に為替相場が大きく変動すれば、株式や商品先物などで儲けた分が為替差損の変動で帳消し、あるいは逆に損失になってしまう可能性が高くなるからです。

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角川総一(かどかわ・そういち)
(株)金融データシステム(KDS)代表。昭和24年大阪生まれ。京都大学文学部を経て、公社債関連専門紙で8年の記者経験後、独立。その後、わが国初の投資信託のデータベースを構築するとともに、各種雑誌、新聞、テレビ、ラジオなどでの金融、マネー評論、講演のほか、企業、各種団体などでセミナーを行う。著書は「図解 資産運用を読む事典」(東洋経済新報社)「バランスシート思考のすすめ!」(PHP研究所)ほか多数。証券経済学会会員。

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