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投資するリスクより「投資しないリスク」の方が大きくなる状況って?

1000円からできるお金のふやし方(2)

この記事は大槻奈那氏の著書『超・初心者のための投資のキホン 1000円からできるお金のふやし方』(ワニブックス)の内容を抜粋したものになります。

・『超・初心者のための投資のキホン 1000円からできるお金のふやし方』シリーズ
(1)1万円節約しても3万円使ってしまう「矛盾」の原因は
(2)投資するリスクより「投資しないリスク」の方が大きくなる状況って?

※以下、書籍より抜粋

投資のリスクとリターンを理解する

いま一度、投資のリスクとリターンについておさらいしましょう。

投資のリスクは、投資した資金(元本)がどう増減するかわからないことです。

購入したタイミングなどがよければ、2倍、3倍になることもあるでしょう。

しかし、景気が悪化するなどして半分になる可能性もあります。

この「増えるかもしれないし、減るかもしれない」という不確実な状態のことをリスクといいます。

株はその代表的な例です。未来の株価や地価は誰にもわかりません。そのような商品のことを、リスク性商品といいます。

一方、預金はリスク性商品とは呼びません。なぜなら、いくら増えて、いくら減るかが、あらかじめわかっているからです。

まずは減る可能性について考えてみると、預金は元本割れすることがありません。

銀行が破綻した場合は預金が引き出せなくなる可能性がありますが、預金保険制度によって1つの金融機関につき元本1000万円(と破綻した日までの利息)まで保護されます。つまり、1000万円までは減るかもしれないリスクがないということです。

増える可能性については、預金はあらかじめ金利が公表されています。

仮に金利が0.1%の時に100万円を定期預金すると、1年後に利息として1000円増えます。「1年後に1000円増える」ことがほぼ確実で、500円に減ったりする可能性がほぼないため、預金はリスクがほぼゼロということなのです。

リターンはリスクをとる見返り

リターンが何を指すかというと「リスクをとる見返り」と考えるとわかりやすいでしょう。

例えば株は、2倍になるかもしれませんし半分になるかもしれません。

「半分になるかもしれない」という大きなリスクをとるから「2倍になるかもしれない」という大きなリターンが狙えるわけです。

預金はその逆で、リスクがほぼないため、リターンもほぼありません。

保険についても同じことがいえます。

例えば生命保険は、30年後に3000万円受け取れることがわかっています。

「わかっている」という状態はリスクがない状態を指しますので、保険もほぼリスクゼロの商品なのです。

ここで重要なのは、リスクとリターンの大きさが同じだということです。

リターンを大きくするためにはリスクも大きくなり、小さければ小さくなります。

減るかもしれない可能性を抑えるということは、増えるかもしれない可能性を諦めるということになるわけです。

また、リスクとリターンの大きさが同じということは、低リスクで高リターンの商品は存在しないということでもあります。絶対儲かる投資商品もありません。

投資をしようと考え、色々な商品を見ていくと「低リスク・高リターン」をアピールする広告などを見つけることがあるかもしれません。

しかし、それはあり得ないことです。

仮に本当に低リスク・高リターンなら、他の投資家が放っておきません。あっという間に売り切れてしまうでしょう。

投資をする際には、そのような“ウソの商品”に引っかからないようにすることが大事です。そのためにも、リスクとリターンを正しく理解しておく必要があります。

投資資金と投資しない資金を分ける

リターンは「リスクをとる見返り」であるため、「効率よく増やしたい」「大きく増やしたい」という人は、リスクをとるしかありません。

そこで重要になるのが「どれくらいのリスクをとるか」という判断です。

例えば、結婚資金や住宅購入の資金として近々使う予定があるお金は、減らしてしまっては困ります。そういうお金は、低リスクの預金として保管しておくのがよいでしょう。

教育費も同じです。減っては困るお金は、リスクに晒さないことが大事なのです。

余談ですが、かつて私も自分の大学に学費として払う予定のお金を高金利の定期預金に入れたことがありました。

親から学費を預かり、そのまま大学に納めればよかったのですが、ふと立ち寄った銀行で金利がよい定期預金があることを知り、全額預け入れてしまったのです。

その後、私はすっかり預け入れたことを忘れてしまいました。その結果、学費の納付期限をすぎてしまい、大学から実家に未納の連絡が行き、たまたま電話を取った祖母が、私が借金で苦しんでいるのではないかと心配するという一大事になったのです。

幸い、定期預金でしたので元本割れすることはなく、すぐに解約して大学に払いました。

もし株を買っていたとしたら、値下がりして学費が足りなくなったかもしれません。このリスクのことを、価格変動リスクといいます。

また、不動産を買っていたとしたら、売り手が見つからずに困っていた可能性もあります。このリスクは、流動性リスクにあたります。流動性は、簡単にいえば「すぐに現金化できるかどうか」という意味です。

投資にはこのようなリスクがありますので、まずは使う予定があるお金や生活費と、投資に使ってよいお金はしっかり分けることにしましょう。減らしてはいけないお金は、元本割れリスクが低く、流動性が高い方法で保管しておくことが大事です。

「投資しないリスク」も考えよう

さて、投資というと値下がりのリスクが注目されがちですが、実は投資しないリスクもあります。

その原因となるのが、これまでにも触れてきたインフレです。

インフレはお金の価値が下がることで、物価上昇によって買えるものの量と質が下がります。そのため、使う予定のないお金を現金として持っておくと、額は減りませんが価値が下がります。それが、投資しないリスクなのです。

資産を守るという視点から見ると、インフレ率と同じくらい価値が上がる何かに持ち替えることが重要です。その何かに相当するのが、株なのです。

では、インフレが進むことによって、現金として持っている資産はどれくらいの影響を受けるものなのでしょうか。

近々使う予定のお金であれば、多少のインフレになっても影響は小さいでしょう。仮に数年で物価が1%上がったとしても、100万円の必要資金が101万円になる程度です。

しかし、インフレが長期的に続くとどうなるでしょうか。

もし年1%ずつ物価が上がっていくと、 20年後の物価はいまよりも20%上がっているかもしれません。すると、生活費も20%増えます。1カ月の生活費が 30万円だとしたら、どこかから6万円稼いでくるか、それができなければ、月 24万円の生活レベルに下げなければならなくなるのです。

インフレと生活レベル

インフレ対策として、物価上昇に合わせて給料も上がるのであれば問題ありません。

20年後の給料が、月6万円、年72万円くらい増えていれば、資産が減ったり生活レベルが下がったりする可能性も抑えられます。

ただし、それは今の生活レベルを続けた場合の話です。

子供が生まれたり住宅ローンを組んだりして生活環境が変わると、支出も増えることでしょう。そう考えると、月6万円のプラスでは足りなくなります。何か手を打たない限り、資産が減り、生活レベルが下がることが目に見えているのです。

または、預金の金利上昇を期待することもできます。

仮に物価上昇率が年1%で、預金の利息も1%なら生活費が増える分を補えます。

実際、80年代からバブル経済期にかけては定期預金の金利が3~5%ほどついた時代もありました。そういう状況であれば、あえてリスクを取らなくても資産と生活レベルは守れます。

しかし、現状の金利は0.01%ほどです。現状のゼロ金利状態から抜け出すのにはまだまだ時間がかかりそうですし、その状態で物価だけが上がっていくと年々生活が苦しくなります。理論上、インフレは将来的に給料や金利の上昇をもたらします。

しかし、そこにたどり着くまでの期間をどう耐え忍ぶかが重要なのです。

投資はもっとも現実的なインフレ対策

給料が増えず、金利も上がらないとなれば、残っている手段は投資しかありません。物価上昇によって増える生活費の負担額を、投資の利益で補うということです。

攻撃は最大の防御という言葉もある通り、元本割れから逃げず、積極的にリターンを狙うことが、効果的なインフレ対策になるのです。

仮に物価上昇率が年1%で、生活費が年360万円であれば、1年につき3.6万円ずつ増やせれば、資産が減らず、生活レベルも下がりません。年3.6万円以上増やすことができれば、生活レベルを維持しながら資産を増やすこともできます。

では、そのためにはどんな運用をすればよいのでしょうか。

投資資金が500万円あるなら、年1%弱の利回りが得られる商品を持つことによって3.6万円のリターンが得られます。この程度なら、投資信託でも実現可能でしょう。

ただ、資金が100万円の場合は年3.6%のリターンが必要となり、50万円の場合は7.2%となります。

これくらいの高いリターンを得るには、投資信託では難しいのが現状です。

つまり、もう少しリスクを取り、株などへの投資でリターンを得るという方法に絞られてくるわけです。

投資の利益は「元本×利回り×期間」ですから、元本が多いほど利回りは低くてもよくなります。リスクも抑えられます。

その状態に近づけるために、積立によってコツコツと元本を増やしていくことと、使う予定のないお金や、預金として眠っているお金を投資資金に使うことが重要になるのです。

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大槻奈那(おおつき・なな)
マネックス証券 チーフ・アナリスト兼マネックス・ユニバーシティ長。
東京大学卒、ロンドン・ビジネス・スクールでMBA取得。スタンダード&プアーズ、UBS、メリルリンチ等の金融機関でリサーチ業務に従事、 各種メディアのアナリスト・ランキングで高い評価を得てきた。2016年1月より、マネックス証券のチーフ・アナリストとして国内外の金融市場やマクロ環境等を分析する。現在、名古屋商科大学大学院教授、二松学舎大学国際政治経済学部の客員教授を兼務。東京都公金管理運用アドバイザリーボード委員、貯金保険機構運営委員、財政制度審議会分科会委員。ロンドン証券取引所アドバイザリーグループのメンバー。

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