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不妊治療の助成金を分かりやすく解説。申請期限や手続き、限度額は?

「特定不妊治療助成金」があなたの妊活をサポート

あなたの人生プランにおいて、子どもを持つのはいつごろだと考えていますか?

今回のお話は「妊活、始めよう」と思ったときに、ぜひ読んでほしい不妊治療の基礎知識と、最近改正された「特定不妊治療助成金」制度についてです。

「不妊治療」ってそもそもどういうもの?

不妊,助成 金  (写真=Masson/Shutterstock.com)

・「不妊症」の診断基準

「不妊」とは、妊娠適齢期にあるカップルが避妊せずに通常の性交をしていても一定期間内に妊娠しないことを指し、その状態にあることを「不妊症」と言います。ただし、妊娠するために治療を必要とする場合は、不妊期間の長さにかかわらず不妊と言えます。

この「一定期間」にはさまざまな見解がありましたが、世界保健機構(WHO)やアメリカ生殖医学界(ASRM)などの諸機関が1年と定義づけていることを受け、2015年に日本産科婦人科学会は、それまで2年としていたところを「1年が一般的」と修正する結論を出しました。

一般社団法人日本生殖医学会では、妊娠を望むカップルが1年を経過しても妊娠していなかった場合、男女で不妊症の検査を受けることを勧めています。

ただし、女性が35歳以上で月経不順や量の異常、性感染症や骨盤腹膜炎、子宮筋腫、子宮内膜症などの既往症があるとき、あるいはそれらの異常がなくても40歳以上の場合は、6カ月程度で受診してもよいという見解を示しています。

これは、治療を開始するのが早ければ、不妊につながりやすい症状の早期改善が期待できること、また、体外受精や顕微授精などの生殖補助医療に進んだ場合、年齢の若い方が成功する確率が高いためです。

男性側の不妊につながりやすい要因としては、ヘルニアや停留睾丸、おたふく風邪からの高熱や睾丸炎など小児期の既往症、成人してからの糖尿病などがあります。これらの病気が思い当たる場合は、早めに精液検査を受けておくとよいでしょう。

・不妊治療のステージと「特定不妊治療」

不妊症で医療機関を受診すると、女性であれば子宮、卵巣、卵管の異常やホルモンの値などの検査を行います。男性の場合、精液の量や濃度、精子の運動や形の異常などを精液検査で調べます。こうした基本的な検査の結果、何らかの疾患が疑われるときは、より詳しい検査を行うことになります。

検査と並行して、不妊治療もスタートします。治療にはタイミング法、排卵誘発法、人工授精、生殖補助医療(体外受精・顕微授精)があり、多くの場合、治療はこれらをステップアップしていく形で進みます。

最初の3段階は「一般不妊治療」と呼ばれています。

<一般不妊治療>

  • タイミング法=排卵のタイミングを見計らって性交する。
  • 排卵誘発法(ホルモン療法)=内服薬や注射で卵巣を刺激して排卵を起こさせる。
  • 人工授精=採取した精液の中から精子を選び出し、妊娠しやすい期間に子宮内に注入する。

そこからさらに進んだステージとなる生殖補助医療は、女性の体の外で受精を試みる方法で「特定不妊治療」と呼ばれています。

<特定不妊治療>

  • 体外受精=男性から採取した精子を、女性から採取した卵子の入った培養液に加えて受精を待つ。
  • 顕微授精=細いガラス針の先端に入れた1個の精子を、顕微鏡で確認しながら卵子に直接注入して受精。その後、受精卵を女性の体内に戻す。

「特定不妊治療助成」とは?

不妊,助成 金 (写真=Antonio Guillem/Shutterstock.com)

「特定不妊治療費助成事業」は、2004年に厚生労働省が創設し、全国の都道府県、政令指定都市および中核市の自治体が主体となって進められてきました。

2013年までの10年間で、助成件数は延べ約14万8700件に上り、不妊治療を受ける人の増加に加えて年齢の上昇もあることから、2016年に制度改正が行われました。女性の年齢に制限が設けられた反面、年間助成回数の制限がなくなり、男性の不妊治療も対象となるなど内容が大きく拡充され、現在はその新制度のもと、支援が行われています。

不妊治療のうち、タイミング法、排卵誘発法は健康保険でカバーできる治療ですが、人工授精、体外受精、顕微授精は保険が適用されません。自己診療となるそれらの治療費は、それぞれ1回につき人工授精で1~3万円程度、体外受精で約30万~50万円程度、顕微授精で35万~80万円程度がかかるとされています。

「特定不妊治療助成」は、この特に高額となる体外受精・顕微受精(=特定不妊治療)の費用の全部または一部を助成して、不妊治療を受ける夫婦を経済面からサポートしてくれる制度なのです。

不妊治療助成を受けるための条件って?

不妊,助成 金 (写真=Antonio Guillem/Shutterstock.com)

助成の対象となる要件は、

  1. 法律上の婚姻関係である夫婦
  2. 特定不妊治療以外の治療法では妊娠の見込みがないか、極めて少ないと医師に診断された
  3. 治療のスタート時に妻の年齢が43歳未満

となっています。

ただし、自治体によって設けている要件は異なります。

東京都では、2018年4月1日以降に開始した1回目の治療から、事実婚の夫婦も助成対象となりました。また、鹿児島県鹿屋市など、治療開始時の年齢に制限を設けていない自治体もあります。

その他にも、夫婦合算の所得額が730万円までの夫婦という所得制限や、治療を受ける医療機関が都道府県や指定都市、中核市の指定医療機関であること、申請する自治体に夫婦の両方もしくは一方の住所があること、などの要件があります。

自治体によっては、卵子や精子、胚の第三者提供、代理母、借り腹での不妊治療を除いているところや、市税の滞納をしていないことを条件にしているところもあります。

・不妊治療助成の申請期限はいつ?

助成は1回の治療ごとに行われ、治療の終了後に申請します。

申請期限は受け付ける自治体によって異なりますので、お住まいの自治体で確認しておきましょう。東京都の場合、助成対象となる1回の特定不妊治療が終了した日から年度末、つまり3月31日までに申請を行うこととなります。3月31日の消印日有効ですが、その期限を過ぎると申請できないことにご注意ください。

「特定不妊治療助成」をもう少し詳しく知ろう

不妊,助成 金 (写真=Africa Studio/Shutterstock.com)

・助成額は確認が必要

基本的には、1回の治療につきその費用の15万円までが助成されます。採卵を行わず凍結して保存しておいた受精卵を移植するだけの場合、また、採卵をしたけれども途中で中止した場合については7.5万円、初めての治療に限っては30万円が上限となります。

これを原則としつつ、助成を行う自治体は、特定不妊治療の内容によっていくつかのステージを設定し、ステージごとに助成額を定めています。

多くの自治体では上限額15万円を採用していますが、東京都のように20万円や25万円に増額しているところもあります。また、さいたま市のように、妻の年齢が35歳未満の場合、初回の助成に10万円上乗せしたり、不妊検査や一般不妊治療、流産や死産などを繰り返す不育症治療の費用を助成したりといった自治体もあります。

自治体によっては、複数の助成を受けることも可能です。東京都では、都の助成した額を治療費が上回る場合、その残りを助成する制度を設けている市区町村もあります。市町村で単独の助成事業を行い、県の助成とダブルで受けられるところもあります。

このように、助成額は一律ではありません。自分の住む自治体のホームページなどを確認し、自分の受けた治療はどういった助成に対応するのか、複数の自治体の助成を受けることができるのかなど、調べておきましょう。

・助成を受けられる回数は?

2016年の制度改正から、1年間に受けられる助成回数の限度、助成を受けられる通算期間の限度がなくなりました。ただし、助成を受けられる通算の回数には限度があり、初めて特定不妊治療を受けた時点で妻の年齢が40歳未満なら通算6回まで、40歳以上43歳未満なら通算3回までとなります。43歳以上は助成を受けられません。

しかし、制度改正前の2013年以前や一部施行の2014~2015年にかけて助成を受けたことがある人は、注意が必要です。

旧制度は対象年齢や回数、期間などが異なっていましたので、それまでに助成を受けた通算期間や治療開始時の年齢によって、2016年以降に受けられる助成回数が変わってきます。また、通算回数はその過去の助成もカウントされますし、他自治体で受けた助成の回数も含みます。

札幌市やさいたま市、金沢市など、第一子のときに特定不妊治療助成を受けていた人が第二子以降にまた特定不妊治療を開始するとき、それまでの通算回数をリセットして改めてカウントする制度を設けているところもあります。福井県や高崎市などは、助成回数の制限を設けていません。

・申請方法

特定不妊治療費助成の実施主体は自治体ですので、申請期限までに必要書類をお住まいの自治体に提出します。

東京都の場合、必要書類は下記の8点です。

1.特定不妊治療費助成申請書(夫婦が記入)
2.特定不妊治療費助成事業受信等申請書(指定医療機関が記入)
3.住民票
4.戸籍謄本
5.夫婦それぞれの前年度の所得を証明する書類
6.指定医療機関発行の領収書のコピー(保険適用外診療分)
7.精巣内精子生検採取法等受診等証明書(医療機関が記入、※夫が手術を受けた場合)
8.7を行った医療機関発行の領収書のコピー(保険適用外診療分)

申請先・申請方法は自治体によって異なります。申請期限や助成内容とともに、各自治体のホームページなどで確認しておきましょう。

男性の不妊治療も助成される

不妊,助成 金 (写真=g-stockstudio/Shutterstock.com)

不妊症カップルの50%程度は、男性側にも原因があると言われています。2016年の改正では、男性の不妊治療が助成の対象となったことも注目されました。

精液の状態が悪化していて、他の方法では精液中から精子を回収できない場合は、精巣または精巣上体から精子を直接採取するために「精巣内内精子生検採取法」などの手術を行います。助成対象となるのはこの手術で、このとき採取した精子を使って体外受精または顕微受精を試みることになります。

男性不妊治療助成は原則として、体外受精や顕微授精という夫婦で行う特定不妊治療の一環として扱い、単独での助成は想定されていません。ですが、一部の自治体では、採卵前や採卵後に行った男性不妊治療で精子が採取できず体外受精や顕微授精につながらなかった場合に、単独での助成を行っているところもあります。

通算助成回数は1夫婦あたりで数えられますので、男性不妊治療も1回としてカウントされます。男性不妊治療の助成上限額は、1回につき15万円です。

なぜ助成に年齢要件があるの?

不妊,助成 金 (写真=Solis Images/Shutterstock.com)

「年齢が上がるほど妊娠しにくくなるからこそ助成が必要なのに……。どうして年齢で切られてしまうの?」

不妊治療を考える女性なら、助成制度に年齢制限があることを知ったときにこう感じてしまうかもしれません。けれども、これには理由があるのです。

2016年の特定治療支援事業制度改正に向けて、厚生労働省では検討会を重ねてきました。そこで、女性の年齢と妊娠出産に伴うリスクについて、妊産婦の死亡率や流産率、合併症リスクなどが40歳前後から急激に増加することが確認されました。また、特定不妊治療を受けた人のほとんどのケースにおいて、治療回数を重ねるほど出産に至る割合は増えますが、6回を超えるとほぼ横ばいとなり、さらに40歳以上の場合、回数を重ねても出産に至る割合はほとんど増えないことも認められたのです。

それらのデータを踏まえた結果、できるだけ早いうちに集中的に治療をして、妊娠・出産につなげてほしい。そのような考えから、年齢に上限を設け、通算の回数を6回までとし(自治体によってはそれに限りません)、その分、年間の治療回数や通算期間の制限をなくしたというわけです。

この検討会では、男性にも年齢制限を設けることは時期尚早であるとして見送りましたが、将来的には、あらためて医学的知見などを検証し、見直しを検討する必要があるとしています。

「不妊かも」と悩んだら、まず検査を受けることからスタートを

不妊,助成 金 (写真=Andrei Zveaghintev/Shutterstock.com)

先述した検討会は、「子どもを産むのか産まないのか、いつ産むのか、といった判断については、当事者である男女が自らの意思で行う事柄である」という考え方を基本としています(「不妊に悩む方への特定治療支援事業のあり方に関する検討会報告書」2013年8月23日)。

不妊治療をすべきかそうでないかは、特定不妊治療助成の要件に合致しているかで決めるものではありません。妊娠しにくいのなら不妊治療をしよう! と治療を推進するものでもなく、あくまで当事者の意思が大切で、治療する意思に沿う立場をとった制度なのです。

不妊治療を受ければ、必ず子どもが授かるというものではありません。しかし、治療を始める時期が早いほど、妊娠の可能性は高くなります。

もし、子どもがほしいと思っているのであれば、「高齢で産む人も増えているし……」と先送りすることなく、ぜひ夫婦で一緒に、まずは検査を受けるところから始めてみてください。

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