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世帯年収800万円の共働き夫婦が4000万円のマイホーム購入を断念した理由

「一生で一度」だから高く?安く?

こんにちは、婚活FP(ファイナンシャル・プランナー)山本です。

結婚した方なら、誰もが一度は考えるのが「不動産の購入」ではないでしょうか。それは悪いことではないのですが、不動産といえば基本的に「一生で一度の一番高額な買い物」です。それだけに、これに失敗すると取り返しがつかず、しかも失敗例も多く聞きます。

そこで今回は「購入直前に失敗を回避できた女性」の実話をお伝えします。
あなたの不動産購入に、お役立て下さいませ。

友人の新居に招かれ、家が欲しくなった新婚夫婦

不動産, FP, 結婚 (写真=baranq/Shutterstock.com)

ある都心部に、30代前半の既婚女性、萌美さん(仮名:モエミ)がいました。萌美さんは中堅企業に勤める、年収約400万円の女性です。約一年前に、7歳年上の同じく中堅企業に勤める年収約400万円の男性、浩一さん(仮名)と結婚しました。

つい先日、二人にちょっとした変化が起こりました。

萌美さんの友人が新居を購入したという事で、萌美さんがその新居に招待されたのです。萌美さんは友人から新居購入の経緯を聞き、いかに新居が良いものかを実感しました。そして、自分でも新居が欲しくなってきたのでした。

まだ結婚して一年とはいえ、どのみち将来的には子供も欲しいと考えていた訳ですから、未来を見越してと考えれば、この願望はけっしておかしくありません。そこで萌美さんは、そんな自分の不動産への願望を浩一さんに話してみました。すると、浩一さんは「それもアリかもなぁ」と、自分の気持ちに同意してくれたのです。

萌美さんは本当に嬉しくなり、二人は週末の度に不動産を検索したり、住宅展示場を見て回ったりするようになりました。

夫婦で意見が対立!どちらも譲らず

しかし……ここから少しずつ二人は、言い争う一歩手前のような状態になっていきました。

萌美さんとしては、一生で一度しかしない買い物であり、しかもこれからずっと使うものなのだからと、なるべくより良い物件を欲しがったのです。

ところが浩一さんとしては、確かに萌美さんの気持ちは分かるものの、今後の年収上昇にも不安があり、しかもこれから子供も産まれるかもしれないのだからと、少しでも割安な物件を希望したのです。

萌美さんは、「自分もずっと共働きで協力するし、何よりも、例の新居を購入した夫婦も似たような年収だったから大丈夫」と、いっこうに譲りません。かたや浩一さんも中々「うん」と言ってくれず、萌美さんは途方に暮れてしまいました。

プロに相談すると驚愕の結果が!

不動産, FP, 結婚 (写真=Roman Samborskyi/Shutterstock.com)

膠着状態に陥った2人は結局、友人のすすめでファイナンシャル・プランナー(FP)事務所に相談へ行くことにしました。そのFPに聞かれるままに、色んなことを答え、また色んな情報を渡し、ひとまず萌美さんが希望する約4000万円の物件を買えるかどうかの計算を依頼しました。

すると……二人にとって驚愕の結果が。萌美さんと浩一さんの場合、4000万円どころか3000万円の予算でも家を購入するのはムリ、ということになったのです。その原因は、将来子供を2人希望しており、教育費がかかることでした。

また、二人の年齢からすると、住宅ローンを払い終わるのは、浩一さんが70代半ばになるような年齢だったことも大きいです。

当初は「浩一さんを説得できたらいいな」と考えていた萌美さんにとっては予想外の結果でしたが、FPの冷静な分析に納得せざるを得ませんでした。

世帯年収800万円、共働き夫婦のウラ事情

きっと今回と似たような、事情の夫婦も多いのではないでしょうか。そこで参考までに、この夫婦の細かな背景について少しお伝えします。

・月々の返済額は10万円

夫婦には500万円の貯金がありました。これを頭金に3500万円の住宅ローンを35年返済、ボーナス払いナシの金利1%で借りると、月々の返済は約10万円になります。

ちなみに、現在は家賃8万円の賃貸暮らし。差額はわずか2万円だから大丈夫じゃないの?と思われるかもしれませんが、意外とそうとは限らないのです。

・一生、年収は上がらない見込み

まず、今回は「一生年収が上がらない前提」で計算しました。

なぜかと言うと、夫婦共に、60歳の定年までは勤め続けるつもりではあるものの、50代で年収が下がる可能性があり、また定年後、65歳までの延長雇用時は年収が半減するという事情があったためです。65歳以降は各自アルバイトで年収180万円を稼ぐという前提で試算しました。

・1年間で60万円しか貯金できていない

さらに、この夫婦は結婚後の1年間で、貯金を約60万円しかできませんでした。世帯年収800万円を考えると、ちょっと使いすぎです。

もし、月々10万円のローンを返済したとすると、1年間で貯金できるのは36万円。これで将来的に二人分の教育費を賄う、それも年収が先細る中で……。

これだけで、きっとあなたの目にも「ムリ」と映るのではないでしょうか?

もちろん萌美さんは、必要な分だけ節約もするし、残業をする覚悟もしておられましたが、ものには限度があります。

そして、今回の件で必要な努力量を、数字と具体的な生活水準でお伝えしたところ、本人も「さすがにすぐにはムリかも……」という結論に至ったのです。

マイホーム購入時に陥りやすい3つのワナ

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もしかしたら、中には「なぜそんな状態で4000万の新築が買えると思ったの?」などと感じた方がいるかもしれませんね。

・ローン返済額と家賃を比較しがち

ですが、案外こういう方は多いのが現実です。少なくともあなたも、住居費にかかる差額がわずか月2万円なのですから、同じ判断をする可能性があるのではないでしょうか。

そこだけ考えれば、一見、確かに買えそうに思えるのも当然です。そして、ここが不動産購入をする時の落とし穴になります。不動産は不慣れな方が考えると、どうしても金額が大きすぎてピンとこず、月々の支払額と現在の家賃を比べるのみで判断しがちです。

・「夢のマイホーム」という言葉に引きずられる

また不動産は、「夢のマイホーム」という言葉もあるほどに人生に与える影響が大きいです。

その結果、つい願望が大きくなったり、または「戸建てにするかマンションか」や「都心にするか郊外か」などの部分が気になったりするなど、とにかく不動産問題に集中しがちです。

・将来の大きな出費を無視しがち

その結果、例えば萌美さんのように、未来の教育費や年収を無視して考えてしまう傾向にあります。これはけっして萌美さんに限った問題ではなく、一般的な人なら誰もが陥る問題です。

そもそも一般的な人は、老後や35年後など、想像すらしないものですからね。

ですが住宅ローンは基本的に35年後まで続き、教育費も22年分必要ですから、最後までを考えて行動を取ることが重要になります。

・隣の夫婦はアテにならない

なお、萌美さんの一つの判断基準は「年収がほぼ同じ友人夫婦が買えたから」でした。審査さえ通れば、萌美さん夫婦も一応購入できますから、何のアテにもなりませんし、友人夫婦が大丈夫かどうかも不明です。

ちなみに余談ですが、住居費差額は、実際には2万円では収まらず、固定資産税や火災保険料、リフォーム代なども考えることが大事ですよ。

業者や銀行は売るのが前提

ところで、不動産購入を検討している方や実際に購入した方の中には、簡単にいえば、買えるかどうかの判断を、不動産業者や銀行に一任している方も一定数います。

つまり、そういったところで相談し、その上で相手が売ったり貸したりしたのだから大丈夫という事でしょう、ということですね。

あなたがそう考えてしまうのは仕方ありませんし、けっしてそれが悪いことでもありません。

ただし……けっして業者を悪くいう訳ではありませんが、彼らは一言でいうなら、「売る、貸す」が仕事です。

もちろん一定の限度やローン審査もありますが、それでも売ることが、貸すことが前提となっています。仕事なのですから当然です。

このため、どうしても独立系FPのように「買わない方が良い」というアドバイスはしませんし、できません。

そして先ほどのように、顧客を不動産問題に集中させるほどに、購入を促すことは簡単ですから、普通にそうします。

その上で、直接的な不動産物件や住宅ローンに問題がない限り、彼らには特に何らの問題も責任も、基本的に発生しません。あくまで自己責任です。

だからこそ不動産購入は案外失敗することも多く、子供のために不動産を購入したのに、その子供の教育費のために住宅ローンを払えなくなることもあります。

不動産を購入する時は一度、あなたに物件を販売することでメリットを得る人以外から意見を聞いた方がいいのかもしれません。

物件選びの前に、収支の計算を

不動産, FP, 結婚 (写真=Somjork/Shutterstock.com)

不動産を購入する時には、不動産以外の支出を未来に至るまで考えた上で判断することが重要です。

しかし、不動産は一生で一度しか買わないものですから、普通に不慣れなものであり、すると金額にピンとこず、またどうしても物件選びに集中しがちです。

なるべくなら事前に独立系FPに相談し、その上で購入の判断をしていきましょう。

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