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扶養控除・配偶者控除をカンタン解説 結局年収はいくらがおトクなの?
103万の壁が150万に拡大!2018年からのお得な働き方
妻が夫の扶養内で働くときの配偶者控除、また親や子供を養ったときの扶養控除には「103万円の壁」「130万円の壁」をはじめとするいくつかのターニングポイントが存在します。
しかも最近の税制改正による所得税法の改正で配偶者特別控除では「150万の壁」という言葉も生まれています。
これら別名「扶養の壁」と言われているものです。
今回は、配偶者は扶養の範囲で働くことがどのようにメリットがあるのか、また親や子供を養ったときの扶養控除について詳しく解説していきましょう。
扶養に入るメリットは2種類
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扶養には「所得税にかかわる扶養」と「社会保険にかかわる扶養」の2種類があります。
1.所得税にかかわる扶養
所得税にかかわる扶養に入っていることで、
・扶養に入っている本人が所得税を納める必要がなくなる ・扶養する側(納税者)の所得税を計算する時に、「配偶者控除」や「扶養控除」を利用することができる(「配偶者控除」は納税者の合計所得金額1000万円以下の場合のみ) ・納税者(夫や親など)の勤務先によっては会社から家族手当や配偶者手当などの手当が支給される場合もある
これにより、結果として養っている人の負担を減らすことができます。
控除の対象が配偶者なら「配偶者控除」、配偶者以外の親や子等であれば「扶養控除」となります。
2.社会保険にかかわる扶養
また社会保険にかかわる扶養に入っていると、
・社会保険料を負担することなく、年金を受け取れる ・社会保険料を負担することなく、病院での診療時の窓口負担の軽減(通常は3割)措置を受けることができる
ただし、子どもが親に扶養されている場合には、20歳以上になると国民年金保険料を納める必要があります。
2018年度の国民年金保険料は月額1万6340円となっています。
扶養に入れる条件は?【所得税編】
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所得税にかかわる扶養の条件には「配偶者控除の条件」と「扶養控除の条件」があります。
条件となる金額が違いますので、それぞれ別々に見ていくことにしましょう。
・配偶者控除の対象となる要件
夫(給与所得者)が配偶者控除を受けるには、妻(配偶者)が以下の4つすべてに当てはまっている必要があります。
- 民法の規定による配偶者であること(内縁関係・事実婚の場合は該当しません)
- 納税者と同一の生計であること
- 年間の合計所得金額が38万円(給与収入のみなら103万円)以下
- 青色申告者の事業専従者として、その年一度も給与が支払われていない、または、白色申告者の事業専従者でないこと
年間の合計所得金額を38万円以下にするには年間の給与収入を103万円以内に抑える必要があります。
これがいわゆる「103万円の壁」です。 さらに2018年から、夫(給与所得者)にも所得制限が登場しており、合計所得金額1000万円(収入が給与だけなら1220万円)を超える場合は「配偶者控除」を受けられなくなりました。 一方、「配偶者特別控除」については、2018年から適用が受けられる範囲が増えています。
「配偶者控除」は103万円の壁であることは変わりませんが、「配偶者特別控除」は従来受けられる上限金額が141万円だったことが改正されて201.6万円となりました。また、「103万円の壁」を超えて働いても、妻の年収が150万円になるまでは「配偶者控除」と同じ金額の「配偶者特別控除」を受けられるように。これが新しく出現した「150万円の壁」です。 そして、配偶者特別控除も配偶者控除と同様に、夫の合計所得金額が1000万円を超えるとうけられません。
・配偶者控除で控除される金額
配偶者控除は2017年までは一律金額でしたが、2018年から夫の合計所得金額に応じて異なることとなりました。950万円超1000万円以下のケースですと、38万円だった控除金額が13万円まで下がっています。
・配偶者控除で控除される金額
配偶者特別控除額は、控除を受ける夫(納税者本人)のその年における合計所得金額及び妻(配偶者)の合計所得金額に応じて次の表のようになります
配偶者の所得金額が85万円(給与収入150万円)を超えると、123万円(給与収入201.6万円)になるまで少しずつ夫(納税者本人)が受けられる控除額が減っていきます。
・扶養控除の対象となる要件
税法上の「扶養親族」の場合、原則その年の12月31日現在において以下の4つの要件すべてを満たしている人を指します。
そして、さらに扶養控除の対象である「控除対象扶養親族」は、要件1~4に加えて16歳以上である必要もあります。
- 配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族 ☆)または里子や養護老人であること
- 納税者と同一の生計であること(定期的な仕送りや送金で生活が成り立っている場合は別居も可)
- 年間の合計所得金額が38万円(給与収入のみなら103万円)以下
- 青色申告者の事業専従者として、その年一度も給与が支払われていない、または、白色申告者の事業専従者でこと
要件4は、簡単にいうと、家族が経営する事業の雇用者や家族従業員でないという状態を指します。
これは、家族従業員などにはまた別の控除が適用されるためです。
☆「6親等内の血族および3親等内の姻族(いんぞく)」とは? 扶養控除の説明でよく目にする「6親等内の血族」には、いとこの孫、はとこ(親のいとこの子など)、曾祖父母のいとこなどまで、「3親等内の姻族」には配偶者のおじ・おばや甥・姪などまでという、広い範囲の親族が含まれます。 ちなみに、一般的に「血族」は自分の血縁者、「姻族」は配偶者の血縁者を意味しますが、法律上においては「法的に血縁関係が認められた者」を指しますので、養子や養親も親族に含まれます。反対に、生物学的な父親であっても認知されていなければ(法的な)親族とは認められません。
・扶養控除で控除される金額
扶養に入れる条件は?【社会保険編】
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社会保険(年金・健康保険)の被扶養者、つまり扶養範囲でいるための要件のひとつとして、「年収130万円未満」という項目があります。
つまり年収が130万円未満の場合は夫の扶養で社会保険に入れるため、妻の負担はありません。
しかし、130万円以上になってしまうと、妻は自分で社会保険料を払うことになります。、だからと言って夫の負担がそれまでより下がるわけではなく変わりません。
これがよく聞く「社会保険の130万円の壁」です。
2016年10月からは、短時間労働者に対する厚生年金・健康保険適用の基準が拡大しています。
勤務先が一定の条件に当てはまる場合は、年収106万円を超えると社会保険に加入することになります。
これが最近現れた「106万円の壁」で、社会保険料の負担が増えるターニングポイントです。
【社会保険適用基準拡大の条件】
- 勤務時間が週20時間以上
- 年間給与収入が106万円以上(月額賃金8.8万円以上)
- 1年以上の継続雇用が見込まれるとき
- 勤務先の従業員数が501人以上であるとき
- 学生でない
要件4については、従業人数500人以下の会社でも、社会保険の加入が労使で合意されている場合は社会保険に加入することになります。
扶養内で働くほうがお得なのは年収いくらまで?
・配偶者の場合
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それではまず、配偶者の場合を見ていくことにしましょう。
配偶者の場合は「配偶者控除」「配偶者特別控除」が適用されます。
ただし、夫(納税者本人)の年収が1000万以上になってしまうと、配偶者控除・配偶者特別控除はうけられません。
ここでは妻(配偶者)の収入が給与収入だけで、夫の年収が1000万円以下のケースを配偶者の年収別に見ていくことにしましょう。
配偶者の年収が上がるにつれて、各ターニングポイントで次のような変化が訪れます。
▽年収約100万円
年収が100万円までの場合は住民税・所得税ともに原則発生しません。
なお、配偶者控除の範囲内になるため納税者にも負担はありません。
ただし、自治体によってボーダーラインとなる年収・税額に差があるので正確な数字は居住地の自治体に問い合わせましょう
▽年収103万円超
住民税の支払い義務が発生してくるとともに、所得税を支払う必要が出てきます。
所得税率は所得金額に応じて決まります。
所得金額が195万円以下であれば所得税率は5%です。
例えば年収110万円の場合は103万円を超えた7万円の5%の3500円が1年間にかかる所得税額となりますが、年収が増えた分の方が多いので手取りは純粋に増えます。
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ただし、注意したいのは、夫(給与所得者)の勤務先からの家族(配偶者)手当がある場合です。
なぜなら、家族手当の支給額は夫(給与所得者)の勤め先によっては月1万円などであるケースがあり、影響がかなり大きいのです。
たとえば、家族手当が月1万円ある場合、年間の手当の合計額は12万円になります。
家族手当の支給額が高い場合は、手当のカット分を考慮して、多めに働くなどの工夫が必要でしょう。
ちなみに103万円を超えると配偶者控除の対象から外れますが、150万円までは同じ金額の配偶者特別控除を受けられますので、そこまでは影響はありません。
▽年収130万円以上
年収130万円を超えると住民税・所得税に加えて社会保険料(年金・健康保険)を支払う必要性が出て来ます。
例えば年収140万円だとすると、東京都協会けんぽのケースで社会保険料が年20万円程度になるため、年収が増えてもそれ以上に手取り収入が減ることになります。
ただ配偶者特別控除がまるまる受けられるのでまだメリットは大きいと言えるでしょう。
▽年収150万円超
年収が150万円を超えると、配偶者特別控除で夫が受けられる控除額が徐々に減り始め、夫の税負担が増え始めます。
配偶者の年収が155万円の場合、納税者の控除額は38万円から36万円と2万円少なくなりますが、納税者(年収600万円/所得税率10%)の税負担は年間2000円増える程度と負担額はそこまで大きくありません。
尚、年収が201.6万までは配偶者特別控除が受けられますが、徐々に減っていきます。
このように、年収が上がるにつれ、少しずつ負担すべき金額が増えていくのが分かるかと思いますが、特に影響が大きいのは年収130万円〜150万円の間と言えそうです。
もし年収130万円を超えてしまうと社会保険料で手取りが大きく減り、年収150万円を超えると、次第に税金面での恩恵が受けられなくなります。働いた分だけ手取り額が増えるようになる目安として、160万円以上を目指して働くと良いかも知れません。
・子(学生・フリーターなど)の場合
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それでは、控除対象が子供を含めた親族はどうなるのでしょうか。
こちらは扶養控除が適用されます。
ここでは子供がアルバイト中の学生やフリーターの場合を見ていくことにしましょう。
例えば、父親(給与所得者)の年収が800万円、所得税率が20%の世帯で見て行きます。
なお、住民税は年齢にかかわらず前年の所得などで金額が変わり、地域や世帯構成による違いも多いため、ここでは考慮しないことにします。
・20歳の子がアルバイトで扶養ラインとなる年収103万円を超えて、年収104万円を得た場合
所得税への影響は以下となります。。
- 父親の所得税=12万6000円増加
- 子の所得税=500円(103万円超で税負担発生)
ちなみに、子にも所得税が発生しますがあまり影響はありませんね。
一方、父親の所得税はぐんと上がります。
これは、子の年齢が19歳以上23歳未満の場合、控除額は63万円なので、控除が受けられなくなったときの影響が大きいためです。
また、妻のときと同様、父親の会社から家族手当が支給されていれば、子の年収が103万円を超えたことで手当がカットされる可能性も十分に考えられます。
負担が増えた分よりさらに手取りが増えない限り、世帯的な負担は大きくなるでしょう。
これらを踏まえると、控除対象の子が学生であれば、住民税も考慮して年収は100万円以下に抑えたほうが得策といえます。
家族手当を考慮するなら、年収を増やすにしても103万円以内にしておくほうが世帯負担の増加は防げます。
しかし、家族手当がなく、控除対象の子が23歳以上であれば、社会保険料の負担が発生しない130万円まで年収を増やして世帯収入を上げるといった選択肢も出てくるでしょう。
扶養控除や配偶者控除を利用してお得な働き方をしよう
扶養範囲内で働くといっても、扶養する側、扶養される側の状況によってお得ラインは変わってきます。
扶養控除の恩恵はどのような条件で変わるのか。そして、扶養対象の範囲を超えて働くことを考えるタイミングはいつなのか。
適切な判断をするためにも、現状を把握しておくことが大切です。
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