
(画像= Piyato/ShutterStock)
2018年「日本株市場と個別銘柄」はどうなる?プロにとことん聞いてみた
投資のゆくえを徹底解説!
日経平均が26年ぶりの高値を更新し、歴史的な株価水準まで回復した2017年の株式市場。
2018年はどのような年になりそうか、1年を振り返り日本株式市場の全体像を伺いながら、今年の先行きや個別銘柄の動向を詳しく解説していただきましょう。
今回お話を伺ったのは…
伊井哲朗さん
「コモンズ30ファンド」で知られる独立系の投信会社であるコモンズ投信の社長。
広木隆さん
2017年、2018年の日本株について、「日経平均3万円」のレポートを出されているマネックス証券のチーフ・ストラテジスト。
2017年を振り返って
それではお二人にさっそく2017年を振り返っていただくことにしましょう。まずはマネックス証券チーフ・ストラテジスト広木隆さんにうかがいました。
・バブルの高値を抜いた回復
「一言で言うと、大変良い一年でした。日経平均株価は、長年抜けなかったバブル崩壊後の高値を抜き、歴史的な株価水準まで回復しました。
同時に、年末終値で26年ぶりの高値を更新したり、過去最長となる16日連続上昇を記録したり、まさに記録ずくめで、マーケット自身が発信しているメッセージが印象づけられた年でした。
また、株高は、日本だけではなく、米国、ヨーロッパも同じです。ある意味、珍しいほどの好環境にあり、世界的な株高が起きました」(広木さん)
・他国にはない日本株の特徴とは?
また、日本株には他の国にはない特徴があると広木さんは続けます。
世界的には「高値更新」「史上最高値更新」など、株価は一本調子に上がって来ましたが、日本だけは史上最高値更新ではなく、26年ぶりの高値など、何かと「ぶり」が多い一年でした。
これは、つまり1989年頃、30年前のバブルの頃が無茶苦茶な水準だったため。
日本だけは、株価は89年につけた最高値から下げ幅に対して半分戻しただけ、史上最高値になるには、あと半分戻さなくてはいけません。バブル後の精算をするのに20年かかってしまい、そのために、20代30代の若い人は、株が下がっている時しか知らず、成功体験はありません。これが他国との決定的な違い、ということだそう。
「歴史の教科書や海外市場を見ると株は上がるものだと圧倒的にわかリます。
アメリカ150年の歴史を見れば、リーマンショックなど調整期はありますが、右肩上がりです。ヨーロッパや、貧困層がいるインドも右肩上がり、それが今の世界の株式市場の事実です。
実は日本も、リーマンショック後、日経平均は7千円台の最安値をつけてから、現在は2万円台前半と、10年近くも米国株と同じ上昇軌道を辿ってきてはいるのですが、成功体験がないために、実感が伴っていません。
しかし、2017年は、ようやく不透明感が払拭されて、実感され始めた、そういう意味でも重要な年でした」(広木さん)
・最も景気が良かった1年
つづいてコモンズ投信の社長・伊井哲朗さんに2017年がどんな一年だったかを振り返ってもらいました。
「リーマンショック以降で、最も世界景気が良かった年でした。日本株も20%程度の上昇をし、実力通り株が上昇した年になりましたね。
今までは世界の景気が良くても日本企業はイマイチという場合が多かったですが、世界の景気を日本企業が取り込めるようになってきたと言える年でした」(伊井さん)
・注目された「ESG投資」
「もう一つの視点としては、ESG投資が注目された一年だったのではないでしょうか。
ESG投資とは、『持続可能な会社に投資すること』。
例えばファッションなら、児童労働など新興国で行っていないかなど。
消費者の方でも、特にアメリカのミレミアム世代は、そのような企業の商品を選択して買うようになって来ています。
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がESG投資を始め、責任投資、責任調達というのがはっきりとして来た。昨年はまさに『ESG元年』。多くの金融関係者が認識をし、アクションした年でした。(伊井さん)」
2017年 印象に残った銘柄TOP5
昨年のおさらいをしたところで、個別銘柄のお話に。
まずは伊井さんが「2017年印象に残った銘柄TOP5」を丁寧に紹介してくださいました。
・伊井さんが選んだ銘柄TOP5
5位 三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>〜フィンテック 「5位は三菱UFJフィナンシャル・グループです。今、金融を取り開く環境は非常に厳しくなっています。
(イメージ画像= walterericsy/ShutterStock)
もともと銀行は民間企業でしたが、社会インフラであり、これまで変化がありませんでした。しかし自動車もそうですが、さすがに金融も大きく変わらざるを得ない。
そのような中、三菱UFJフィナンシャル・グループは、大手の中でも最もフィンテックの取り込みに強い企業です。自前主義を捨て、有望なIT企業と組んで新たな商品やサービスを拡充しています。日本の金融の中では一番変わりそうな企業です」 参考:三菱UFJフィナンシャル・グループ
4位 マネーフォワード<3994> 〜IPO(新規上場) 「4位はマネーフォワードです。昨年のIPO銘柄の中では、好印象に残っています。 銀行と組んで新しい金融を目指している、生活者の利便性を高めるというところでは、非常に可能性があるところです。有能な人材が多く、昨年新規上場した中では注目が高かった銘柄です」 参考:マネーフォワード
3位 ファナック<6954>〜IoT関連 「3位は、IoT関連銘柄から注目したのはファナックです。
経産省が進めているコネクテッド・インダストリーズ(IoT・ビッグデータの成長、人工知能(AI)の進化といった第四次産業革命の進展の中で、様々な『つながり』によって新たな付加価値の創出や社会課題の解決をもたらす産業の未来像)により、色々なものがIoTに繋がっていきます。
ロボットの世界では、ファナックは世界でトップ、最もビックデータを持っている企業です。そのビックデータを駆使してIoTのプラットフォームを作るとなると、ファナックが世界で一番強い会社になるのではないでしょうか」 参考:ファナック
2位 東京エレクトロン<8035>〜業績の伸び 「業績が伸び、という点では東京エレクトロンです。
IoTにより、世界的に半導体需要が加速しています。パソコン、スマホから車関係、新しいところへ、全ての家電がIoTで繋がる場合、半導体の機能を持つ必要があるためです。
東京エレクトロンは、半導体製造装置の会社で、昨年10月には、10期ぶりの過去最高益予想をさらに上乗せするなど、業績の伸びという点では、とても印象に残った銘柄です」 参考:東京エレクトロン
1位 資生堂<4911>〜経営者 「1位は資生堂ですね、昨年お会いした中で一番印象に残った経営者は資生堂の魚谷雅彦社長です。
資生堂は、数年前は会社として苦戦したのですが、魚谷さんが社長になってから結果が出て、日本でトップはもちろん、 世界で戦える化粧品メーカーとなりました。
魚谷さんと話をしていると、長期という視点をお持ちで、またマーケティングに強みを持ち、意思決定が早い。
本質的にお客様がどう変わってきているのかというところを経営として注意がいっていて、これは!と思えばアリババのジャック・マー会長と業務提携をして、中国層を活性化させたり、新しい女性の考え、スタイル、などに合わせて、米国のベンチャー企業の買収を即決されたり、非常に感応度の高い経営者でいらっしゃる。
また資生堂は、ESGの観点でも感度が高い企業です。業績も好調で、株価は上場来高値を更新しました。まさに、2017年を象徴するような銘柄ではないでしょうか」 参考:資生堂
・歴史ある企業の復活が目立った年
続いて広木さんにも、2017年に印象に残った業種・銘柄を伺ってみました。
「ソニー<6758>など歴史ある企業の復活と、AI革命による電子部品関連企業の好調でしょうか。
ソニー<6758>、任天堂<7974>など、不況にあえいでいた歴史ある企業が自律回復してきたのが印象に残りました。
また、AIによる産業革命が大きなテーマになった年です。東京エレクトロン<8035>、信越化学工業<4063>、SUMCO<3436>など、電子部品や半導体関連などが株式市場の牽引役になりました」
(イメージ画像 Calin Stan/ShutterStock)
2018年、これが気になる!業種・銘柄とは
それでは、2018年に気になる業種・銘柄をそれぞれに伺ってみることにしましょう。
・注目キーワードは全部で6つ
それではお二人からそれぞれ注目されるキーワードを教えて頂きました。
1.RPA
「銀行は、日銀がデフレ脱却のため出口政策を行わず、金利が上がらないから儲からない。今後、徐々にインフレとなりマイナス金利が変わる。金利が上がれば銀行は良くなる。
また、AI革命による半導体、電子部品のニーズや、働き方改革によるRPA(Robotic Process Automation)、人間の手で行っていた事務作業をロボットが行う。
(イメージ画像 tuaindeed/ShutterStock)
このRPAが銀行の事務をオートメーション化し、効率化する。RPA、ロボティクス、プロセスオートメーションのためにシステム投資が行われるので、例えば、野村総合研究所<4307>や伊藤忠テクノソリューションズ<4739>、オービック<4684>など、システム構築を手がけている企業が良いのではないでしょうか(広木さん)」
2.ESG(Environment、Social、Governance)
「ESG投資は、大きな時代の流れで今年は一段と注目されてくるでしょう。中でも、オリエンタルランド<4661>のように人々を幸せにする、をコンセプトにしている企業など、コーポレートバリューと呼ばれる、本業で社会に貢献している企業が注目される年になるのでは。(広木さん)」
3.オンリーワン
「またスタートトゥデイ<3092>のような、存在感が際立っている企業ですね。財務諸表に現れない企業価値を持っている会社、センスは金で買えない、ということを実践するようなオンリーワン企業が注目されるのではないでしょうか(広木さん)」
4.働き方改革
「働き方改革でいうと、経済産業省が掲げている『健康経営銘柄』が良いのではないでしょうか。(伊井さん)」
(画像=Foxys Forest Manufacture/ShutterStock)
5.環境
「働き方改革と環境を括ると、ESGという考え方がキーワードになって、例えば、EVに注力している自動車関連など、
環境に配慮した企業が人気になる傾向にあります。今後の投資には、そのような観点が必要でしょう。(伊井さん)」
6.産業革命 「新しい産業革命は、5年後の世界は劇的に変化していると多くの経営者は見ています。新しい企業、新しい産業がテクノロジーの世界で出てくるでしょう(伊井さん)」
日経平均株価、3万円到達はあり得る?
また広木さんは、日経平均株価が3万円に到達すると予想されています。
「2018年も基本的に右肩上がりと予想しています。2018年は2019年のためにある、2019年に向かって、走っていくイメージですね。我々はつい区切って考えてしまうが、時間は連続的ですから」
広木さん曰く、背景には、2018年は「平成のラストイヤー」があるとのこと。
天皇陛下がご存命のまま退位されるのは200年ぶり、様々な大イベントが催されたり、システムが変わったり、戦後最長の景気拡大で平成が終わって2019年を迎える可能性があります。
春闘も賃上げ3%を要求していますし、実感を伴った景気拡大で、来年春に向かって人々の気持ちが明るくなり、経済活動にプラスが出てくる年になりそうです。
まさに景気は「気」から。どんな経済理論よりそれが重要だとのことだそう。ロジック的にも、来期の企業業績の伸びの予想から日経平均は3万円に到達可能だとのことです。
投資のプロからのメッセージ
最後に、広木さん、伊井さんにそれぞれDAILY ANDSの読者のみなさんが株式投資を行う際のアドバイスをいただきました。
(画像=Rawpixel.com/ShutterStock)
「株は上がるものだ、と心の底から理解することですね、2018年はそれを体感できる、実感できる年になりそうです。(広木さん)」
「手触り感のある企業を選ぶことが大切です。手触り感=自分が共感できる企業を買うと良いでしょう。
2つ目は時間を分散する。タイミングを取らず、お金があっても一回で買うのではなく時間を分けて買うことが重要です。
3つ目は、積み立てNISAをやる、初心者は投資信託などを活用して、プロはどうしてこの会社を選んでいるのか学ぶ。まずは少額から始めてみて、投資に慣れ親しんだ上で、学んでいくことが大切です(伊井さん)」
プロの投資家が2018年の日本株相場をどう見ているのか、個別銘柄をどのように見ているのか、インタビューを通して見えてきたのではないでしょうか。ぜひ、今後の資産運用の参考にしてみて下さい。
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