(写真= Catalina M/Shutterstock.com)

返礼品問題からもう1年。2018年ふるさと納税制度はどうなっていく?

2018年展望・ふるさと納税編

ブランド肉や高級フルーツ、ジュエリーやバッグ、温泉宿泊券やお食事券まで……。ふるさと納税サイトを眺めているだけで心踊る、と感じる人も少なくないのでは。

ただ、返礼品目当てで寄附をすることが「本来のふるさと納税の趣旨と異なっている」という指摘もあり、2017年には政府が自治体へ「自粛」を要請する事態になりました。

2018年、ふるさと納税を取り巻く環境はどう変化するのでしょうか。ファイナンシャル・プランナーの水野綾香さん、ふるさと納税サイト「ふるなび」を運営するアイモバイル 執行役員 事業企画本部長 加藤秀樹さんのおふたりにお話を伺いました。

2017年のふるさと納税を振り返る

・話題に事欠かない1年

ふるさと納税 返礼品, ふるさと納税 2018年 (写真=Alfa Photostudio/Shutterstock.com)

制度がスタートして約10年が経過した2017年を振り返り、「ふるさと納税の話題に事欠かない1年だったと思います」と話したのは加藤さん。

  • 総務省から返礼品に関する自粛要請の通知がされた
  • 山形県の吉村知事が総務省からの通知に反旗を翻した
  • 埼玉県所沢市がふるさと納税をやめた
  • 2015年に寄附額全国2位の長野県伊那市が家電製品の取り扱いを中止した
  • 文京区がふるさと納税を財源に活用した困窮する子育て世帯に食品を届ける『こども宅食』を開始した
  • 「ふるさと納税感謝券」の取扱い中止を求めた総務省に群馬県草津町が異を唱えた

・返礼品競争は加熱

ふるさと納税 返礼品, ふるさと納税 2018年 (写真=Robert Kneschke/Shutterstock.com)

寄附する側の私たちは、税負担が減るうえに、寄附額の5割以上の価値に相当するような豪華なお礼の品を受け取れることから、年々寄附総額は上昇していきました。しかし、その裏で起きていたのは、地方自治体間での“返礼品競争”でした。

「ふるさと納税は地域活性を目的に創設された制度ですが、本来の趣旨からはずれたことをしている自治体もあると、総務省は感じていました。そこで返礼品に関して見直し要請が入ったというわけです」(水野さん)

2018年の展望その1:規制がつくられる可能性

では、2018年はどのような1年になるでしょうか?

・総務省からの要請内容をおさらい

ふるさと納税 返礼品, ふるさと納税 2018年 (写真=Freedomz/Shutterstock.com)

2017年の出来事の中でも特に注目されたのは、やはり総務省からの「自粛」要請です。

要請の内容は、返礼品の金額を寄附額の3割までに抑えること、高額な返礼品を自粛すること、商品券や感謝券、電化製品や宝飾品など換金性や金銭類似性が高い返礼品を自粛すること、自分が暮らす地域へ寄附した人には返礼品を贈らないこと、などが挙げられます。

・自治体が「二極化」

ふるさと納税 返礼品, ふるさと納税 2018年 (写真= Pressmaster/Shutterstock.com)

要請に強制力はないものの、多くの自治体が方針転換を余儀なくされた、と加藤さんは話します。

「通知に従う自治体とそうでない自治体の二極化が起き、寄附総額をさらに積み上げる自治体とそうでない自治体の差が開き始めました」(加藤さん)

・総務大臣が変わり、3割以上に戻す自治体も

ふるさと納税 返礼品, ふるさと納税 2018年 (写真=KSLight/Shutterstock.com)

ただ、2017年8月、総務大臣が高市大臣から野田聖子大臣に変わり、自治体側の動きに変化が見られ始めていそうです。

「野田大臣が同年9月、返礼品の選択を自治体に任せ、2018度は通知を出さない方向で検討する方針を明らかにしてから、返戻率を3割以上に戻す自治体もぽつぽつと出てきています。2018年も引き続き、返礼品合戦は続くことが予想されます」(加藤さん)

・厳しい規制がつくられる可能性

ふるさと納税 返礼品, ふるさと納税 2018年 (写真= Sergei Drozd/Shutterstock.com)

ただ、要請があまりにも守られないようであれば、厳しい規制が作られる可能性もある、と水野さんは見ています。

「ふるさと納税の寄附総額(全市区町村合計)は毎年最高額を更新し、非常に大きな経済効果となっています。これによって恩恵を受けている自治体もあれば、本来得られるはずの税収が他の自治体に流れてしまうといった問題を抱える自治体もあります。今後方針が変わっていくことは十分に考えられます」(水野さん)

2018年の展望その2:寄附総額の右肩上がりが続く

ふるさと納税 返礼品, ふるさと納税 2018年 (写真= Kutlayev Dmitry/Shutterstock.com)

ふるさと納税への寄附総額がまとめられた、総務省の「各自治体のふるさと納税受入額及び受入件数(平成20年度~平成28年度)」によると、2012年度は約104億円、2013年度は約145億円、2014年度は約388億円、2015年度は約1652億円、2016年度は約2844億円。数字は右肩上がりに伸びていて、水野さんが言うように、その経済効果は計り知れません。

2017年度の寄附総額が発表されるのは、2018年6〜7月ですが、加藤さんは「2018年もふるさと納税の市場は拡大し、2017年度の寄附総額は、3300〜3500億円ほどの規模になるのでは」と予想しています。

「業界内では寄附総額をまずは1兆円まで伸ばそう、とする動きがあります。ふるさと納税の市場規模は2兆円といわれています。まだまだ伸びしろがありますし、規制が入らない限り、1兆円前後までの伸びは期待できるのではないでしょうか」(加藤さん)

2018年の展望その3:クラウドファンディングと融合

・自治体がクラウドファンディングで資金調達

ふるさと納税 返礼品, ふるさと納税 2018年 (写真= fendyrodzi/Shutterstock.com)

「2018年、特に注目されるのが、自治体がクラウドファンディングを使ってお金を集める試みに、ふるさと納税の寄附が融合する動きだと思っています」と話すのは加藤さん。

これまでのふるさと納税は、返礼品のラインナップを見て自治体を選び、寄附をするのが一般的でした。寄附されたお金の使途は自治体が考えます。

ところが、クラウドファンディングを活用したふるさと納税では、まず、寄附者が寄附金の使途を選択します。その後、返礼品を選ぶ、という流れになります。

・従来型ふるさと納税との違い

ふるさと納税 返礼品, ふるさと納税 2018年 (写真=Syda Productions/Shutterstock.com)

自治体から返礼品が届くという点はこれまでのふるさと納税と同じですが、寄附したお金の使われ方も選ぶことができるということが異なります。

また、通常のクラウドファンディングとの違いは、寄附したお金のうち、2000円を超えた分は所得税や住民税の優遇措置を受けられるということです。

「自治体側には、集めた寄附金を何に使うのか、寄附者に対しより具体的なメッセージを示すことが求められるようになるでしょう」(加藤さん)

ふるさと納税の趣旨や目的と現実が乖離している今、制度の見直しは今も議論の真っ最中。返礼品ではなく、寄附金の使い道を重視する「クラウドファンディング✕ふるさと納税」が2018年に広がりを見せていくことで、ふるさと納税の制度自体もブラッシュアップされていきそうです。

2018年の展望その4 :ふるさと納税を軸としたビジネスモデルが生まれ、広がる

・地方創生の切り札「地域商社」

ふるさと納税 返礼品, ふるさと納税 2018年 (写真= Rawpixel.com/Shutterstock.com)

3つ目の展望として、ふるさと納税を軸とした新たなビジネスモデルが生まれ、確立されつつある、と加藤さん。その一例が、地方創生の切り札として注目を集める「地域商社」。「ふるなび」でも地域商社との連携に力を入れていきたい、と語ります。

「地域商社は、地元のさまざまな関係者を巻き込みながら、地域全体の代表として、地域の特産品の販路を開拓する組織です。これまで取引がなかった東京や大阪、名古屋など大都市の飲食店に地元の食材を卸し始めた地域商社もあり、新たな販路を増やしています」(加藤さん)

・宮城県都城市の事例

ふるさと納税 返礼品, ふるさと納税 2018年 (写真= jazz3311/Shutterstock.com)

政府も地方創生を掲げ、全国に地域商社を100社設立する目標を掲げ、活動を後押ししています。そんななか、「地域商社の機能を持ち始めた自治体」として注目されるのが宮崎県都城市です。

同市は返礼品を特産品の肉と焼酎に絞り、ふるさと納税を地域をPRする手段として活用。「集中と選択」が功を奏し、2015年度の寄附額は全国一となる約42億円、2016年度は約73億円を集める快挙を見せました。

その流れを受けて、同市内の事業者たちも「ふるさと納税振興協議会」を設立し、特産品の販路開拓に取り組み始めています。

2018年にふるさと納税を始める方への注意点

ここまで読んで、ふるさと納税未経験者の中にも、今年は寄附をしてみようかな、と思った人がいらっしゃると思います。最後に、水野さんにふるさと納税ビギナーに向けた注意点を挙げていただきました。

・1年の寄附スケジュールを決めよう

ふるさと納税 返礼品, ふるさと納税 2018年 (写真= Andrey_Popov/Shutterstock.com)

ふるさと納税は、1年間で時期を分散して、計画的に進めていくのがおすすめだと水野さんは言います。

寄附の時期を分散することで、「一度に大きな支出をしなくてよくなる」、「ムダがなくなる」といったメリットがあると言います。

「年末にまとめて手続きしたため、お礼の品が一度に大量に届いてしまい、冷蔵庫に入りきらなくなったり、消費しきれずに腐らせてしまった……という失敗談をよく聞きます。分散して寄附をすることで、すべてムダなく確実に消費できます」(水野さん)

年初に「ふるさと納税スケジュール」を立て、「○月は△△自治体にXX万円寄附する」など決めて進めるのが水野さん流です。

・iDeCoとふるさと納税の組み合わせに要注意

ふるさと納税 返礼品, ふるさと納税 2018年 (写真= pathdoc/Shutterstock.com)

「また、意外と知られていませんが、老後資金づくりの制度iDeCo(☆)を利用している方は、ふるさと納税の上限額に要注意です」(水野さん)

水野さんによると、iDeCoは、掛け金が所得控除されます。ふるさと納税の上限金額を計算するときには、iDeCoで1年間に拠出する金額を収入から引いた上で計算することが必要になります。

「これを含めずにふるさと納税で寄附をたくさんしてしまうと、その分は所得税還付や翌年の住民税軽減の対象外となってしまいます」(水野さん)

私たちにとって、おトクな要素が多いふるさと納税は魅力的。制度本来の目的と私たちが寄附するメリットの両方が損なわれない形で、より良い制度へと整えられていく1年になりそうですね。

☆iDeCo(イデコ)とは?
個人型確定拠出年金(こじんがたかくていきょしゅつねんきん)のこと。公的年金や企業年金にプラスするかたちで自分で積み立てる「年金」のことで、いま、老後資金づくりの方法として注目を集めている。(参考:これなら分かる!「確定拠出年金」がお得と言われる理由

取材に協力してくれたのは……

・水野綾香(みずの・あやか)さん

ファイナンシャル・プランナーとして、自分らしくハッピーにお金と付き合える女性を増やして行くことをミッションに、これまで全国で6000人以上の女性にマネーセミナーを講演。DAILY MORE、DRESS、三井住友銀行「Money VEVA」などマネーコラム執筆も多数。

・ふるさと納税サイト「ふるなび」

2014年にオープン。全国140自治体以上のふるさと納税PRを行い、他サイトにはない、高額所得者向けのふるさと納税代行サービス「ふるなびプレミアム」やふるさと納税で各地の地域食材がレストランで楽しめる「ふるなびグルメポイント」などを運営。

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