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扶養の範囲で働きたい人へ。税制の意味や改正ポイントを徹底解説

2018年分からの改正ポイントも解説します!

共働きの世帯が増えていますが、その半数を占める妻の働き方はパート勤務です。夫の扶養の範囲内で働くことを選ぶ方も多いでしょう。

しかし、「扶養」の種類や対象範囲について、しっかり理解していている人は少ないようです。思いがけず扶養外にならないために、扶養範囲で働くための基本的なルールをご紹介します。

そもそも「扶養」って何なの?

扶養, 範囲, パート (写真=safriibrahim/Shutterstock.com)

そもそも「扶養」とはどのような意味なのでしょうか。

「扶養」とは、生活上の面倒をみて養うことです。

扶養する対象は「(主に経済的な面で)自立できない人」であるため、例えば、家庭の中で一家の大黒柱として働く夫が、家事や子育てを一手に引き受けているが収入が少ない妻や、収入が得られない子どもを養っている状態を「妻と子どもを扶養している」と言います。

扶養には2種類の意味がある

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扶養には「所得税にかかわる扶養」と「社会保険にかかわる扶養」の2種類があります。

両方とも夫の扶養でいるための要件として、妻の年間収入が関係します。ただし金額が異なるため、それぞれ理解することが大切です。

・所得税にかかわる扶養とは?

年収の壁でもっとも注目されているのが「103万円の壁」でしょう。

会社員の妻がパートなどで103万円を超えて働くと、妻自身にも税金がかかるうえに、夫の会社から支給されていた配偶者手当(家族手当)が打ち切られるなど、世帯の手取りが減ってしまう場合があります。

さらに、夫の所得税額を左右する配偶者控除を受けられなくなり、夫の税金が増えてしまうということが、2017年分までは起こっていました。

・社会保険にかかわる扶養とは?

社会保険(年金・健康保険)の被扶養者、つまり扶養範囲と見なされる要件の一つに、年収130万円未満という項目があります。これがよく耳にする「130万円の壁」です。

妻の年収が130万円を超えてしまうと、夫の被扶養者でなくなりますので、妻自身に社会保険料の納付義務が生じます。

そして2016年10月から、短時間の労働者に対する厚生年金・健康保険適用の基準が拡大されたため、一定の条件(※)に当てはまる会社に勤めている場合は、年収106万円を超えた時点で社会保険に加入することになり、保険料の負担が生じます。これが最近現れた「106万円の壁」です。

(※)社会保険適用基準拡大の条件

  1. 週20時間以上の勤務
  2. 月額賃金8.8万円以上(年収106万円以上)
  3. 雇用期間の見込みが1年以上
  4. 学生でない
  5. 勤務先が従業員501人以上の会社(社会保険の加入について労使で合意がなされている場合は500人以下の会社も含む)

扶養を知るために必要な税金の基礎知識

「扶養内で働くか」または「扶養を超えて働くか」を自分で選択できるようになるには、「給与所得控除」「所得控除」という言葉の意味をしっかり理解する必要があります。税金の言葉は難しいものが多いので、順を追って説明しますね。

・給与所得控除とは?

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「給与所得控除」とは簡単に言うと、給与から一定金額を会社員の必要経費として差し引く仕組みのことです。

国に納める税金は、収入全額にかかるわけではなく、得られた収入からその収入を得るための経費を差し引いた金額に対してかかります。

自営業の場合は、交通費や印刷費といった経費が目に見えるため分かりやすいのですが、パートや会社員のように給与をもらって仕事をしている人にとって、経費という概念はあまり馴染みがありませんよね。

そこで、給与をもらって仕事している人には「これくらいは経費として認めてあげますよ」という配慮が、「給与所得控除」として用意されているのです。

・所得控除とは?

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所得控除を簡単に言うと、配偶者がいる人・いない人、子どもがいる人・いない人などのように、個人の抱えている事情に応じて税金が減額されるシステムのことです。

所得税は、個人がその年の1月1日~12月31日の1年間に得た収入から、先述した給与所得控除(経費)や、これから説明する所得控除を差し引いた金額(課税所得)に対して課される税金ですから、この「課税所得額」が小さいほど、言い換えれば「所得控除額」が大きいほど、納めるべき所得税額が少なくなるわけですね。

・パート妻も知っておきたい2つの所得控除

扶養, 範囲, パート (写真=igorstevanovic/Shutterstock.com)

所得控除には14種類ありますが、ここではパートで働く妻にも適用される所得控除、そして妻のパートの働き方によって夫の税金に影響を与える所得控除について詳しく説明します。

▽基礎控除
所得控除の一つで、所得税や住民税の計算をする際に、誰でも一律で差し引かれる控除です。他の所得控除のように要件はありません。

所得税と住民税の基礎控除は異なり、所得税の基礎控除は38万円、住民税の基礎控除は33万円となります。

▽小規模企業共済等掛金控除
聞き慣れない小難しい言葉ですが、今話題のiDeCo(個人型確定拠出年金)を活用して節税するときにも関係する所得控除です。

納税者がiDeCoなど(※)の掛金などを支払った場合に、その掛金全額分が控除されます。
(※)iDeCoの他に、中小企業基盤整備機構が運営する小規模企業共済などがある

妻の年収が103万円を超えた場合の影響

扶養, 範囲, パート (写真=pikselstock/Shutterstock.com)

1.妻の自身の所得税が発生

パートで働く妻自身の所得税を計算するとき、収入から控除できるのは「給与所得控除」、そして「基礎控除」の2つです。

パート収入が103万円で他に収入がなければ、給与所得控除の65万円、基礎控除の38万円を控除できるため、妻自身の所得は0円となり税金はかかりません。103万円を超えると、他に受けることができる控除がなければ、増えた金額に税金がかかります。

ちなみに、所得控除の項目で紹介したiDeCoに加入している場合は「小規模事業共済等家計金控除」を受けられるので、妻自身に所得税がかかることなく、掛金分のパート収入を上げられます。

※住民税は年収100万円を超えると課税されます。

2.夫が所得税の「配偶者控除」が受けられなくなる

夫が配偶者控除を受けるためには、配偶者の合計所得金額が38万円以下、年収で言えば103万円以下である必要があります。妻の年収が103万円なら、給与所得控除の65万円を控除すると合計所得金額が38万円となるからです。

3.「配偶者控除」にかわり「配偶者特別控除」が受けられるようになる

妻の年収が103万円を超えると、「配偶者控除」にかわり「配偶者特別控除」が受けられるようになります。

夫の扶養範囲という意味では、妻の年収が103万円以内であれば夫は「配偶者控除」を受けられます。そして、妻の年収が103万円を超えた場合でも、「配偶者控除」にかわって「配偶者特別控除」を受けることができると分かりましたね。

ただし「配偶者控除」も「配偶者特別控除」も、2018年分から夫の所得金額が1000万(給与収入1220万)円以下でなければ受けられなくなります。

配偶者控除と配偶者特別控除について

ところで、2017年度の改正により、2018年分から配偶者控除・配偶者特別控除が変わります。

何がどう変わるのか、変更前の2017年分までと、変更された2018年分からの制度を比べていきましょう。

・2017年までの配偶者控除と配偶者特別控除

扶養, 範囲, パート (写真=Syda Productions/Shutterstock.com)

1.配偶者控除
これまでは控除を受ける人(夫)の給与所得額に関係なく、配偶者(妻)の所得が38万円以下であれば、一律38万円の配偶者控除を受けることができました。

2.配偶者特別控除
配偶者控除と同様に、これまでは控除を受ける人(夫)の給与所得に関係なく、配偶者(妻)の所得が38万円を超えて配偶者控除が受けられなくても、妻の所得金額に応じて(所得38万円超76万円未満であること)、一定金額の所得控除を受けることができました。

なお、先ほども言いましたが、夫婦の間でお互いに受けることはできません。

以上がこれまでの控除内容です。では、2018年分以降はどのように変わるのでしょう?

・2018年からの配偶者控除と配偶者特別控除

扶養, 範囲, パート (写真=Ditty_about_summer/Shutterstock.com)

変更の適用は、2018年1月1日の所得からになります。大きな改正点は以下の3つです。

▽1.配偶者控除の控除額が変わります
妻の所得が38万円以下と条件は同じですが、夫の給与所得が900万円を超えると、その所得額によって控除額は26万円、13万円……と縮小していきます。

▽2.配偶者特別控除の控除額が変わります
配偶者控除と同様に、夫の給与所得額によって配偶者特別控除の控除額も縮小していきます。

ただし、配偶者である妻の所得額に応じて段階的に控除額が少なくなるのはこれまでと変わりません。

ここで押さえておきたいのは、夫の給与所得が900万円以下の場合、妻の所得が38万円を超えたとしても、85万円以下であれば配偶者控除と同額の38万円の控除が受けられる点です。

妻の所得が85万円以下ということは、給与所得控除65万円を足した150万円が、38万円の控除を受けるための年収上限となるわけですね。これが新たにできた「150万円の壁」です。

▽3.納税者本人(夫)の給与所得が1000万円を超えると配偶者控除も適用されなくなります
夫の給与所得が1000万円を超えると、配偶者控除、配偶者特別控除ともに適用外となり、配偶者関係の控除はなくなります。

今回の改正で、これまでは夫の所得にかかわらず一律であった「配偶者控除」や「配偶者特別控除」に、夫の所得による控除額の調整が入りました。

所得が1000万円を超える高所得世帯では、これまでよりも税金の支払いが増えます。そして、世帯所得が低い場合には、税金負担が軽くなる仕組みですね。

自分たちはどこに当てはまるのかを確認をして、いくらまでなら控除があり、いくらを超えると控除の縮小して税金の支払いが発生し、世帯手取りが減ってしまうのか、まずはしっかり把握しておくことが大切です。

扶養を外れて働くとどうなるのか?

女性は、結婚や出産などをへて、生活状況によっては夫の扶養内となる短時間で働くことが必要になる場合も多いでしょう。

しかし、その期間が過ぎフルタイムで働くことができる時期になったときには、思い切って扶養を外れて仕事をしてみることも考えてみてはどうでしょう。

例えば、東京都内在住で、現在103万円の年収を得ている妻が、働き方を変えて年収を180万円まで増やしたとき、どのような影響があるでしょうか(夫の給与所得700万円、所得税率23%、妻の所得控除は基礎控除のみとする)。

・妻に及ぶ3つの影響

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1.妻が自身の所得に応じて所得税を払うことになります
妻は、1年間に3万5000円程度の所得税を納めることになります。

・180万円(年収)-72万円(給与所得控除)-38万円(基礎控除)=70万円(課税所得)
・70万円(課税所得)×5%(税率)=3万5000円(年間所得税額)

2.所得に応じて住民税も増加します
約70万円年収が増えますので、その分、住民税も増加します。

住民税には所得割と均等割の2つがありますが、均等割は自治体によって異なりますので、ここでは所得割分のみ影響されたとしましょう。

一般的に所得割は課税所得×10%ですので、約7万円増加します。

3.勤め先の社会保険(厚生年金・健康保険等)に加入し、保険料を負担します
妻は社会保険料として年25万円~27万円程度、負担が増えます。

厚生年金保険料:年間16万4700円
健康保険料(東京都の場合): 8万9190円(40歳未満の場合)
              10万4040円(40歳以上の場合)
※日本年金機構(厚生年金保険と協会けんぽ管掌の健康保険・保険料額表2017年)参照

1、2、3を合わせると、妻の負担は年間で37万円程度増えます。

・夫への2つの影響

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1.配偶者控除にかわり配偶者特別控除を受けることになります。
配偶者控除(38万円)が配偶者特別控除にかわり控除額は16万円となるため、これまでより22万円少なくなります。

よって、夫の所得税および住民税は年間で6万6000円程度の増税となります。

2.会社からの配偶者手当がある場合は打ち切りになる
夫が会社から配偶者手当や家族手当が支給されていた場合、打ち切りになります。

これまで103万円以内に年収を抑えていた妻の収入が180万円に増えたことで、収入自体は77万円増えています。

しかし、妻が夫の扶養を外れたことによる年間の負担増額は、妻自身が約39万円、夫が約7万円とすると合計約46万円となるため、実際に増える世帯収入は約31万円となります(配偶者手当は考慮していません)。

扶養から外れて働くメリット

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妻が扶養の範囲から外れて働くことを考えたとき、世帯収入の損得も大切ですが、見逃せないのが制度利用のメリットです。

・将来受け取る年金額が増える

例えば、妻自身が厚生年金に加入することで、将来受け取る年金額を増やすことができます(積立金は会社と折半)。

・「傷病手当金」を受け取れる

また、妻自身の健康保険加入で「傷病手当金」の受給が可能になります。傷病手当とは、病気やケガなどで4日以上仕事することができない場合、その4日目以降休んだ日数分について、最長1年6カ月にわたって標準報酬月額の2/3が支給される制度です。

・「育児休業給付金」を受け取れる

さらに、これから出産の可能性がある方は、雇用保険に加入することで育児休業中に支給される育児休業給付金を最長2年にわたり受けられます。

・節税可能な制度を活用できる

また、妻自身に所得税支払いが発生すれば、その分で節税が可能になる制度(iDeCoなど)も活用できるようになり、将来に向けた資産形成手段の選択肢も増えるでしょう。

自分自身の働き方をコントロールしよう

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扶養の範囲内で働く、範囲を超えて働く、どちらにしても「思いがけず」ではなく、家庭ごとの事情を含めて家族の意志により選択していくことが理想的です。

よく分からないから、損をするからという理由で夫の扶養の範囲にとどめて働くのではなく、妻自身がいつまで夫の扶養範囲内で働くのか、いつから扶養を外れるのか、その目的を意識していくことが家族にとっても有効になるでしょう。

女性が働きやすい環境になりつつあります。妻自身が、これを意識的にコントロールしていける時代ですよ。

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