『貧民、聖櫃、大富豪』(高橋慶太郎著、小学館)

【連載】「オタクFPの『金融マンガ』愛」

#06 経済とは、全てが信用で成り立つということ

『貧民、聖櫃、大富豪』(高橋慶太郎著、小学館)

「お金の本って難しい」と思うことはないでしょうか。でも、マンガとなると話は別。絵があるだけで、とっても分かりやすくなりますよね。そこで、この連載「オタクFPの『金融マンガ』愛」では、実はマンガオタクなファイナンシャル・プランナー(FP)の横川楓さんに、ちょっとでもお金のことを身近に感じられるような、お金にまつわる素敵なマンガを紹介していただきます

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こんにちは! ファイナンシャル・プランナー(FP)の横川楓です。

お金に関する漫画というと、解説的な漫画だったり、ちょっと意識が高めな漫画が多く、普段全くそういう話に興味がないと、専門用語や熱いストーリーがでてきただけで身構えてしまう方も多いのではないでしょうか。

一方、漫画のストーリーは時代が違ったり、実際に存在しない生き物がでてきたり、激しいバトルをしたり、こんなイケメン絶対いない!というような登場人物ばかりだったり……。 漫画を読むときには、現実ではありえないような物語に惹かれて読むことがほとんどだと思います。

今回ご紹介する『貧民、聖櫃、大富豪』(高橋慶太郎著、小学館)は、そんな生粋の漫画好きの皆さんにもおすすめな、マネー×ファンタジーという新ジャンルの作品!そしてもちろん、金融経済を学ぶことができるんです。

普通の女子高生がマネー×ファンタジーの世界へ

貧民、聖櫃、大富豪, 高橋慶太郎, お金, 経済 (写真=MorganStudio/Shutterstock.com)

主人公の信楽聖夜(しがらき・せいや)は決して裕福とは言えない家庭で母と二人で暮らし、漫画家である母の仕事を手伝いながらも、大学受験を控えている普通の女子高生。ある日友人と歩いている最中に突然異世界へ飛ばされ、金髪の少女アウレリア・デ・メディチと出会います。

自らを「箱(アーク)」の御使いと名乗るアウレリアにあるじとして定められた主人公は、他の「箱」の御使い&あるじ達との「箱」の再生を目指す戦いに巻き込まれていく……というのがこの作品。

一見すると、異世界からいきなり非現実的なキャラクターがやってきて、そのキャラクターと協力して敵と戦い、困難を乗り越え、目的を達成するという王道ストーリーなのですが、ストーリーが進むうえで「お金」が非常に重要な役割を果たしているんです。

お金が力!異世界でのバトルと現実世界がリンク

貧民、聖櫃、大富豪, 高橋慶太郎, お金, 経済 (写真= PhuShutter/Shutterstock.com)

この作品での御使い同士のバトルには、あるじが現実世界で持つ所持金が重要な役割を果たしており、攻撃や回復などの能力を使うには、あるじの所持金が必要なのです。つまり、お金があればあるほど、大技を出すことができます。

突如挑まれたバトルで、母親が主人公のために一生懸命貯めていた300万円を大技により使ってしまった主人公は、その300万円を取り戻すため、そして今後のために、大富豪の娘で経営・お金稼ぎの判断力に長けているアウレリアの助言の元、お金を稼ぐために事業を始めます。

主人公は会社を起業し、軌道に乗った事業を売却し新たな事業を始めるという方法でお金を増やしてそうとするのですが、他のあるじ達もそれぞれお金を稼ぐために多様な経済活動をしています。

ファンタジーではありますが、お金を得る方法は私たちと同じ。登場人物たちがどんなお金の稼ぎ方をしていくのか?というのがこの作品の見所のひとつです。

御使い達はお金にまつわる史実上の人物たち

貧民、聖櫃、大富豪, 高橋慶太郎, お金, 経済 (写真=Kaspars Grinvalds/Shutterstock.com)

主人公の御使いであるアウレリアをはじめ、登場する御使い達は、史実上の人物がモデルになっているようです。

たとえば、アウレリアはかの有名なイタリアの銀行家、「メディチ家」の娘。大富豪の一族で、当時の政治にもかなりの影響力があったとされています。

また、主人公に最初に勝負をしかけてきた御使いジャック・ド・モレーは、中世ヨーロッパで活躍したテンプル騎士団の最後の総長で、その当時テンプル騎士団はかなりの財を有していました。そのテンプル騎士団の財を得るため、総長である彼を処刑したのが主人公の親友・音無芙和(おとなし・ふわ)の御使いフィリップ4世なのです。

巻末には御使いの設定ノートという形で解説もされていますが、史実通りの因果関係もストーリーで登場するため、そのモデルとなった人物たちの背景を自分で調べると、さらに面白いかもしれません。

経済=信用で成り立つものということ

imageTitle 『貧民、聖櫃、大富豪』(高橋慶太郎著、小学館)

御使いは普通の人間ではなく、バトルでもお金があれば防御も回復の能力も使うことができるこの世界では、そう簡単に御使いが死にません。ですが、あるじからの信用がなくなった時に、御使いは死んでしまうとアウレリアは言います。

商売や仕事は信用が命なのはもちろんですが、国の信用によりその国の貨幣の価値も変わるなど、私達の世界の経済自体も、そもそもすべてが信用で成り立っています。信用がなければ、経済活動が行えないのです。

つまり、お金が全ての力のもととなるこの作品の世界で、信用がなくなるということは、その御使いの終わり=経済活動の終わりを意味するんですよね。深い。

そんな「信用」が重要な要素を担っているという一面が、この作品を金融漫画として読む時にとても面白いところでもあります。

まだまだ2巻とスタートしたばかりですが、2期にわたりアニメ化もされた人気作品『ヨルムンガンド』の作者である高橋慶太郎先生の作品。今後の展開がとても楽しみです!

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