(写真=g-stockstudio/Shutterstock.com)

残業しなくても残業代がもらえる!?「共働き子育てしやすい企業」の秘策

元ブラック企業が生まれ変わった理由

働くママとパパのための情報サイト「日経DUAL(デュアル)」の主催で行われた「共働き子育てしやすい企業グランプリ2017」。その上位50社が発表され、2017年12月1日に表彰式が行われました。

あの「消滅可能性都市」が「共働き子育てしやすい街」グランプリに輝いた理由」に続き、今回は「共働き子育てしやすい企業2017」の表彰式と1位企業の取り組みをリポートします。

共働き, 子育て, ワンオペ, 育児, ワーキングママ, ワーママ, 企業, ランキング, 育休, 産休 (写真=筆者撮影)

男性の育休取得率など実態を評価

同グランプリは、「仕事と育児の両立のしやすさ」を評価して企業をランキングしたもの。とはいっても尺度はいろいろです。制度そのものは整っていても、利用しにくかったり、社員が制度をよく知らないなど、実態とかけ離れている場合もあります。

では、どのように評価したのでしょう? 日経デュアルでは、共働きならではの視点を取り入れた13の評価ポイントを作りました。

「共働き子育てしやすい企業2017」評価ポイント13

1)  男性社員の多くが(3日以上連続の)育児休業を取得しているか
2)  産育休を取得する(している・した)社員を対象に、両立支援の取り組みを実施しているか
3)  2)の両立支援の取り組みには、社員の配偶者も巻き込んでいるか
4)  在宅勤務制度があり、多くの社員に利用されているか
5)  月ごとの平均残業時間が短いか
6)  恒常的な残業を削減する取り組みを行っているか
7)  イクボスを増やす取り組みを実施しているか
8)  社員の保活をサポートする取り組みがあるか
9)  フレックス勤務制度を取り入れており、多くの社員により利用されているか
10) 業務効率化の施策を行っているか
11) 「時間当たり生産性」を社員の人事評価に入れているか
12) 性別や年齢等の属性に関係なく受けられる、キャリア教育の機会があるか
13) 経営戦略に「育児中社員の両立支援」や「働き方の改革」という視点が盛り込まれているか
(出典:「共働き子育てしやすい企業2017」50社発表! | 日経DUAL)

共働き, 子育て, ワンオペ, 育児, ワーキングママ, ワーママ, 企業, ランキング, 育休, 産休 [日経デュアル 羽生祥子編集長(写真=筆者撮影)]

日経デュアル編集長の羽生祥子(はぶ・さちこ)さんは、13の評価ポイントの中でも、編集部は特に次の4項目に注目したといいます。

共働き, 子育て, ワンオペ, 育児, ワーキングママ, ワーママ, 企業, ランキング, 育休, 産休 (写真=筆者撮影)

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【1. 男性育休の取得率と日数】

1つ目は「男性社員の多くが(3日以上連続の)育児休業を取得しているか」。

2016年の同調査では、「1日だけ育休を取得して、実は家で仕事をしていた」といった、実際は育児の戦力になっていない「なんちゃって育休」も多かったそうです。それに比べ、2回目の今回は日数も伸びてきました。

今後は「男性育休の取得率と日数」がランキング上位を左右するカギとなりそうです。

【2. 家族を巻き込んだ両立支援】

2つ目のポイントは「産育休を取得する(している・した)社員を対象に、両立支援の取り組みを実施しているか」「両立支援の取り組みには、社員の配偶者も巻き込んでいるか」という「両立支援」です。

産休・育休を取得する本人に面談するのはもちろんですが、配偶者や上司も交えた4者で面談を行う企業もあります。

今、共働きママの間で、牛丼屋さんの深夜営業になぞらえた「ワンオペ育児」という言葉が広まっています。働きながら1人で育児を背負い込むのは本当に大変。会社が家族を巻き込む制度作りをしていれば、夫婦でともに育児をするという意識がいまひとつ足りない夫に対しても、育児参加への説得力が生まれそうですね。

【3. 評価制度】

3つ目は「時間当たり生産性を社員の人事評価に入れているか」という評価制度です。育児中を理由に時短勤務をしている社員の生産性の高さは、皆さん認めるところでしょう。

人事評価に「時間当たりの生産性」を取り入れている企業が高得点を獲得しました。

【4. 在宅勤務制度】

最後のポイントは、「在宅勤務制度があり、多くの社員に利用されているか」。リモートワーク人気の昨今ですが、「制度を導入した」だけでなく、子育て中の社員による利用率も上がっているかどうかで点数に差が出ました。

「共働き子育てしやすい企業2017」上位10社

そんな厳しい審査の結果、トップ10にランクインしたのは次の10社でした。

10位:セイコーエプソン <6724>  89点
9位:朝日生命保険 92点
8位:大同生命保険 93点
6位:NTTコミュニケーションズ 95点
6位:積水ハウス <1928>  95点
5位:アメリカンファミリー生命保険 96点
4位:サントリーホールディングス 98点
3位:ピジョン <7956>  100点
2位:丸井グループ <8252>  110点
1位:SCSK <9719>  122点

グランプリ1位企業「昔はブラックでした」

共働き, 子育て, ワンオペ, 育児, ワーキングママ, ワーママ, 企業, ランキング, 育休, 産休 (写真=筆者撮影)

1位を獲得したSCSK(エスシーエスケイ)はIT企業。ITといえば、ハードな長時間労働というイメージがあります。グループで約1万2000人もの社員がいる大きな会社が、どのように社内改革をしていったのでしょうか。

共働き, 子育て, ワンオペ, 育児, ワーキングママ, ワーママ, 企業, ランキング, 育休, 産休 「どこでもWORK」は在宅やサテライトオフィスでのテレワーク(写真=筆者撮影)

「まず意識改革からでした」と語るのは、人事グループ・副グループ長の小林良成さん。同社では2013年度から、残業を減らして有休をきちんと取得する「スマートワーク・チャレンジ」を始めたといいます。

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上のスライドでも分かるように、月間残業時間と年次有給日数の2つの「20」という数字がポイントだったとのこと。どう達成するかは各グループに任され、社員は現場で試行錯誤しながら、コツコツ実践していったそうです。

しかも同社は、2012年度と比べて実総労働時間を190時間削減しているにもかかわらず、5期連続の増収総益。成長のスピードも衰えていません。

残業しなくても残業代がもらえる

「残業代が入らないと、お給料が減ってしまう」

社員にとって、これは大問題。この残業手当のジレンマが、企業でなかなか長時間労働が減らない原因の一つだといわれています。

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そこでSCSKは、残業をしなくても20時間分(役職によっては35時間分)の残業代をつけるようにしました。当初はボーナス形式でしたが、今では給与に上乗せされています。

「安心して仕事を効率化してほしい、という会社からのメッセージでもあります」(小林さん)

共働き, 子育て, ワンオペ, 育児, ワーキングママ, ワーママ, 企業, ランキング, 育休, 産休 (写真=筆者撮影)

共働き, 子育て, ワンオペ, 育児, ワーキングママ, ワーママ, 企業, ランキング, 育休, 産休 (写真=筆者撮影)

ポイントとなってくるのは、制度を整えたあとの「風土」です。みんなで取り組むという姿勢がないと「風土」は変わらず、使われない制度になってしまうでしょう。いかに社員を巻き込んでいくかに、会社としての本気度が表れます。

SCSKは2017年度の調査で、有給取得日数3日以下のケースが70%を占めるものの、男性の育休取得率は83%とかなり高い結果を見せました。また、有給休暇取得率は一般社員も管理職も90%を超えています。この数字を見る限り、制度だけでなく風土も整ってきていると言えそうです。

会場では、制度が変わる前後で産休・育休を取得した女性社員が、職場復帰したら会社のあまりの変わりように驚いたというエピソードも披露されていました。

共働き, 子育て, ワンオペ, 育児, ワーキングママ, ワーママ, 企業, ランキング, 育休, 産休 表彰式では座談会も。左端がSCSKの小林さん(写真=筆者撮影)

「夕ごはんサービス」「有給トラベル」登場

表彰式では特別奨励賞として、ランキング2位の丸井グループ、3位のピジョンの取り組みも発表されました。

また、同調査からは、共働き育児に有用な制度を実施している会社もあることが分かりました。編集部が特に注目した制度が「夕ごはんサービス」と「有給トラベル」です。

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子どもの「お迎え」時間に間に合っても、その先には「夕ごはん」の問題があります。「夕ごはんサービス」は、会社が家族の夕飯まで用意してくれるというもの。「夕ごはん」をピックアップして子どもを迎えに行けたら、帰宅後の家事と育児がずいぶん楽になりそうです。

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もう一つの「有休トラベル」は、休暇に旅行はどうでしょう? とばかりにツアー情報が届くなど、休暇を楽しめるプランを社員に紹介していくサービス。実際のところ、「やることがないから有給休暇を取らない」という人は多いのだとか。

こんなふうに有給休暇を取って余暇を楽しむことが推奨されると、介護などのプライベートな事情がある人も含めて、みんなが休みやすくなりますね。

勤め先がランクインしていなくても

人生100年時代。働いて、勉強し直して、また働く。そういった生き方が当たり前になっていく社会に向けて、働き方も「時間」ではなく「質」が問われるようになってきました。

自分の勤め先がランクインしていなくても、SCSKの例にように何らかのきっかけで会社が危機感を持ち、自ら社員の意識を変えていこうとすれば、制度や環境が劇的に変わる可能性もあります。

自分が「変えていく側」になるように、今の会社の中でがんばるのもいいですし、ランクインした企業に転職するという選択だってできますね!

そんなことも考えつつ、1位~50位のランキングをじっくり見直してみるのも悪くないですよ。

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