
(写真=筆者撮影)
気軽に投資をはじめるなら「iDeCo」よりも「つみたてNISA」?
Good Moneyger 清水社長インタビュー・後編
金融の基礎知識を学べるカードゲーム「Asset Allocation(アセットアロケーション)」を開発した、Good Moneyger設立者・社長の清水俊博さんにインタビューをしています。
前編ではゲームの遊び方を、中編では投資で失敗する人の特徴を、それぞれお聞きしました。
最終回となる今回は、「これから投資を始める女性へのアドバイス」を聞いてみました。
これから投資を始める女性にアドバイス
ーーこれから投資をはじめたい女性にアドバイスを。
「投資」というのがどういうことなのか少しだけでも理解すること、基本的なマーケットのルールを知ることから始めるのが良いのではないでしょうか。さらに、無理をせず、やれるところから始めるのが一番いいということ。やれる範囲でしかやっちゃだめ、ということでもあります。
ーー基本的なルールを学ぶこと、やれる範囲でやること、が失敗しないためのコツなんですね。
「お酒を飲んだらクルマに乗らない」のと一緒ですね。
あと、いきなり大きな額を投資して失敗すると、「もうやらない」となって、やめちゃう人が多いです。なので、ソロリソロリと始めていく方がいいと思います。いきなり大人用のプールで泳がないで、まずは子供用のプールで練習して、少しずつ泳ぐことに慣れていきましょうね、みたいな感じです。
おいしい話は絶対にないので、やっぱり少しは勉強しないと勝てるようにはなりません。
ーー続けることも大切のような気がします。
そうですね。
例えば僕がプログラミングを学ぼうと思ったとしても、やっぱりなかなかやらないですよね。何から手を付けていいのか分からない。よく分からないし、聞いたこともない言葉ばかりだと、無理矢理やるのは難しい。
資産運用もそれと同じだと思います。ちゃんと信頼できる人であったり、信頼できる何かを持って、勉強するほうが続きますね。
つみたてNISAとiDeCoどっちがおすすめ?
ーー来年からつみたてNISAが始まります。iDeCoとつみたてNISAはどちらがおすすめですか?両方利用することも可能ですが、あえてどちらか片方を選ぶなら?
iDeCoもつみたてNISAも、投資の上限額が決められているのはいいと思います。月1万円、2万円くらいの金額から始めてみるというのはすごくいいことだと思います。
簡単に言うと、「節税メリット」があるiDeCo、「手軽で低コスト」なつみたてNISA、という違いがあります。iDeCoは積み立てた資金を60歳まで引き出すことができませんので、しっかりと老後の資金を作りたいということならばiDeCoが良いかもしれません。一方で、気軽に投資を始めてみたい、ということであれば、いつでもやめられるつみたてNISAが手軽と言えそうです。
なお、iDeCoは投資できても年間27万円程度(働き方や勤務先の制度によって異なる)が上限で、つみたてNISAは年間40万円が上限です。そのため、両方を同時に使ってみる、という選択肢もあります。
ーーiDeCoは所得控除の恩恵が受けられるのでオトクという意見もあります。
そうですね。オトクだと思います。
僕が大切だと思うのは、リターンをトータルで見ることです。本当は、「iDeCo」や「つみたてNISA」で、手数料、ファンドのリターン、所得控除などをトータルで見て、得をする方法でやればいいと思います。
金融機関はなかなかそこまでは教えてくれません。「iDeCoがいいよ」「つみたてNISAがいいよ」としか言わないです。何を買ったらいいか?は絶対に言わないので、結局、どうしたらいいのかわからなくなってしまいます。
ーー金融機関は金融商品取引法もあるので、なかなか「これを買ったらいい」とは言えません。でも、富裕層に対しては「プライベートバンカー」という人がいて、資産運用のアドバイスをしています。
そうですよね。なので、僕らとしては、富裕層だけではなく、一般の人にも同じアドバイスをする。もちろん、富裕層と一般の人では持っているお金が違うので戦略は変わります。でも、アドバイスをするかどうかというところで差別をしたくはないと思っています。
これから金融機関はどうなる?
ーー今、Good Moneygerさんのような新しい金融サービスがたくさん出てきている中で、これからの金融機関はどうなると思いますか?
難しい質問ですね。まず、金融機関にはいくつかの役割があります。
そのうち、誰でもできるところはどんどんコスト競争になると思います。例えば決済。アリババは支付宝(アリペイ)を出していますよね。誰でもできることは、どんどん新しい価値を生み出さないと、よりコストの低いサービスに顧客が流れていくので苦しいところがあるかもしれません。
資産運用に関しては、要するにリターンを出せるかどうかです。今、預金ではほとんどリターンが出ません。なので、よりリスクを取ってでもリターンが出るところにお金が集まる「リスクオン」のマーケットになってきています。ビットコインだったり、ベンチャー投資だったり、いろいろあると思うんですけど。
そこで言うと、もともと「リスクオフ」(あまりリスクを取らない)でやってきた金融機関はちょっと苦しいだろうなと思います。なので、金融機関がベンチャーキャピタルをやったりしている。
つまり、オールドスタイルのところはどこも辛い。いままで投資をしてリターンが出ていたものが出なくなっているので、よりリスクのあるものに投資をしなくてはいけない。
ーー新しいフィンテックサービスが生まれると、「既存の金融機関がやったらいいのに」と思うことがあります。
今のところ、フィンテックサービスというと、ブロックチェーンなどのセキュリティ―という分野の方が盛り上がっている印象です。ですので、あまり金融機関の売上貢献になっていないのかもしれません。コストダウンにはなると思いますが。
金融っていうのは、基本的には人のお金を預かって、それを運用してリターンを出すっていうビジネスモデルなので、運用して利回りが出せないとやっぱりキツい。
僕らとしてはそこをうまく、何か支えられるといいなと思っています。「利回りをもっと出そうぜ」「頑張ろうぜ」って。そういうところをビジネスにしていきたいなと思っています。
投資を始める時は「損しても納得できるか?」を問う
ーー個人も同じような気がします。どんどんリスクを取って、高いリターンが期待できるものを探しています。
なんとなくですけれど、僕は今の状況はリーマンショックの前とちょっと似ている雰囲気も感じます。あのときも、「サブプライムローン」が証券化されて、その商品がずっと「上がる」と言われていたのでみんな買っていました。利回りが出るものにみんな飛びついて、それがバブルになってはじける。
手を変え品を変え、利回りが出そうな商品をみんな探しているということだと思っています。
ーー私たちはその「バブル」を見極める必要がある、と。
今は何かとっつきやすいものからいきなりやるんじゃなくて、ちゃんとリターンが出るかどうかを見極めないといけない、ということです。
今、金融機関は個人のお財布を取り合っているので、「良さそうに見えるもの」を次々と提案してくると思うんですけど、「それで損をしても納得できますか?」と自分に問いかけてみるといいと思います。
利回りだけを期待しすぎるのもダメなんですけど、ちゃんとリターンを追い求める発想を持っていないと「なぜか上がった、ラッキー」で終わってしまうので、それはあまり本質的ではありません。ライトに始められるのはいいことですが、とはいえ、最低限知っておかなきゃいけないことは知っておいたほうがいいよ、ということですね。
ーーありがとうございました!
(Good Moneyger 清水社長インタビュー、おわり)
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