(写真=Anetlanda/Shutterstock.com)

「共有口座」はキケン!? 弁護士がすすめる夫婦の家計管理法

夫婦の家計管理について弁護士に聞いてみた・前編

既婚者の皆さん、夫婦の家計管理はどのようにしていますか?

「貯まる家計をつくるには、夫婦の共有口座をつくり、家計を見える化することが大切」

というアドバイスをよく見かけますが、いざ夫婦の共有口座について調べてみると、いざという時、つまり離婚や死別することになった時、財産をどのように分けるかが明確ではないようです。

筆者は入籍してから9カ月の新婚ですが、「万が一」ということも……いや、そうでなくとも、メリット・デメリットをしっかり把握した上で共有口座を作りたいと思っています。

というわけで、弁護士の神林均さんにお話を伺ってきました。

「夫婦の共有口座で家計を管理したら、いざという時(離婚・死別した時)どうなりますか?」

☆この記事の登場人物紹介

imageTitle (写真=DAILY ANDS編集部)

神林均さん…弁護士。メインとしている企業法務のほか、離婚や不倫、相続に関する法律にも詳しい。写真中央
くすいともこ…筆者、DAILY ANDS編集長。2017年1月に結婚したばかり、夫婦の共有口座を作ろうとしている。写真左
編集部員K…DAILY ANDS編集部員。写真右

そもそも夫婦の財産って何?3つの種類を解説

神林さんはまず、夫婦の財産の種類について解説してくれました。

<神林さんが解説してくれた、夫婦の「3つの財産」>

①特有財産…結婚する前から持っていた財産、あるいは結婚後でも相続など他方の協力によらないで取得した財産
②夫婦の共有財産…2人の共有名義となっている財産のこと。財産分与の対象となる
③潜在的共有持分のある財産…名義はどちらか一方となっているけれど、実際には2人の財産であるもの。財産分与の対象となるかどうかはケースバイケース

神林「いざという時、つまり『離婚する時』、3つの中だと一番問題になるのが③の財産です。そして今回のテーマである『夫婦の共有口座』はまさに③に当たります」

くすい「あちゃー。それはなぜでしょうか?」

神林「なぜなら、夫婦の共有口座をつくる時は必ずどちらか片方の名義にしないといけないためです。①と②は問題は特になく、あまり争いにはなりません。①は財産分与の対象になりませんし、②は2人のものだから、2人で半分ずつ分ける。ただ、③になった場合、どのように取得した財産であるかによって、財産分与の対象となるかどうか、問題になります」

「共有口座」の財産は離婚の時、2分の1になるのか?

筆者は夫の名義で共有口座を作り、お互いの口座から毎月、お小遣いを除いた金額をすべてその口座に振り込む、という家計の管理方法を考えていました。

夫婦の共有口座イメージ,画像縮小 (図=くすいともこ)

この場合、夫名義の共有口座に貯まったお金は、すべて名義人の夫のものになってしまうのでしょうか?

ドキドキして神林さんに聞いてみたところ、「今回は大丈夫でしょう」という回答が!

神林「くすいさんが作ろうとしている『共有口座』の場合、毎月、夫婦でお金を貯めていることがわかるので、離婚する時に全て旦那さんが持っていく、ということはあまり心配ないかと思います」

神林さんによると、共有口座に貯まったお金が夫婦の協力によって取得した財産であるかが財産分与で2分の1ずつ分けられるかどうか、のポイントとなるようでした。夫婦の協力によって取得した財産であることが証明できればよいのですね。

imageTitle (写真=DAILY ANDS編集部)

お小遣いは「特有財産」になりますか?

夫婦の「お小遣い」はどういう扱いになるのか、について神林さんに聞いてみると、その答えは「夫婦の共有財産になる」とのこと。

神林「お小遣いは結婚後に築かれた資産なので、2人の共有財産となります。離婚するときは財産分与の対象になる、ということですね」

くすい「例えばお小遣いで株式投資をして、たくさん利益が出たとすると、それは財産分与の対象外、つまり自分だけの『特有財産』にはなりませんか?」

神林「それだとグレーゾーンに入ってきますが、ならない可能性が高いのではないかと思います。株をできたのは、夫婦で一緒に生活して、パートナーの支えがあったから、と解釈できるためです。ただ、あまりにも、その利益に対する寄与の度合いが極端に片方だけに偏っていて、裁判で立証できるのであれば、片方の人に多めに配分される可能性もあります」

神林さんによると、「特有財産」になるかどうか、は結婚前に築いたかどうか、そして夫婦2人で使ったかどうか、が分かれ目になるそうです。

神林「例えば、父親から5000万円相続したとします。そのお金は、自分名義の口座に入っていれば『特有財産』となりますが、夫婦の共有口座に入れると、『特有財産』であることには変わりないのですが、『特有財産』であることを証明することが難しくなります。なぜなら、5000万円を2人の生活費として使ったのではないか、などと考えることができるためです」

夫婦の「共有口座」を作るときは隠し財産に要注意!

神林さんは、夫婦の共有口座について「どちらかというと相手が隠し財産、つまり『へそくり』を作らないかどうか、の方が問題ですね」と話します。

例えば、共有口座に2人の給与を入れることに決めたけれど、実は一部の財産を入れずに隠していた、というケース。この時、隠し財産については、離婚の時の財産分与の対象にしたくとも、その存在を知らないがためにできなくなってしまうのだそうです。

神林「普段からその口座をよく見て、キャッシュカードも2枚作って見ておくとよいでしょう」

くすい「口座にお金がどれぐらい入って、どこにどう出てるかというのを見えるようにしておいたほうがいい、ということですね」

神林「そうです。相手方がイニシアチブを握って管理すると、隠し財産を作りやすくなるので注意しましょう。特に現金のタンス預金をされてしまうと発見は難しいですね」

imageTitle (写真=DAILY ANDS編集部)

「共有口座」の名義人が亡くなると、相続の対象になる

次に、夫と死別した場合はどうなるのか、神林さんにお聞きしてみました。

すると、銀行口座の名義が夫になっていると、まるまる相続の対象となり、相続税もかかってしまうのだそうです。

くすい「それはちょっと納得いきません!半分は私の財産なので、残りの財産が相続の対象になるべきでは?」

神林「おっしゃることは分かるんですけど、それを立証するのは難しいですね。別途、遺産の範囲はどこまでなのかを争うことになるのですが、そのときに自分の財産であるという証拠がないと難しいですね」

くすい「毎月給料を入れていたとしてもですか?銀行口座なので履歴が残るので、それを見たら明らかに半分は私のものだと分かると思うのですが……」

神林「その場合でも、もし他に相続人がいると、毎月振り込まれていたお金は妻が夫にあげていたのではないか、などと主張される可能性がありますので、争いになるおそれはありますね」

くすい「例えば夫が亡くなった後、自分もキャッシュカードを持っているので、先に半分引き落としちゃうのはどうでしょうか?」

神林「他の相続人から、『夫が亡くなった後におろしているお金を返してください』と言われてしまいますね」

くすい「他の相続人が『これは夫婦の共有口座だから、半分はくすいさんに権利があるから、遺産分割の対象にしなくていいわよ』と言ってくれればどうでしょうか?」

神林「もちろん、遺産分割のときに他の相続人が要らないと言えば、半分を自分のものにすることが可能です」

くすい「そうですか……。親戚のみなさんとは今のうちから仲良くしておこう……」

弁護士夫婦の家計は「別々」で管理

ちなみに神林さんの周囲の弁護士夫婦についてお聞きしてみると、夫婦とも弁護士の共働き世帯の方々は、家計は別々で管理していると聞くことが多いそうです。

くすい「ファイナンシャル・プランナーさんとお話すると、夫婦で家計を一緒にした方がお金が貯まるとよく言われていますが……」

編集部員K「そのアドバイスは離婚を前提にしてないからかもしれないね」

神林「将来はどうなるかはわかりませんからね……。もし離婚を見据えるのであれば、2人のお金はきっちり2人で分けて管理した方がいいとは思います」

夫婦で共有口座を作る時のポイントまとめ

今回の取材の内容をまとめると、次のようなことがわかりました。

  • 共有口座の財産は離婚時、半分は自分のものだと主張できる可能性は高い
  • ただし隠し財産があると、財産分与の対象にしたくてもできなくなってしまうので要注意
  • 共有口座の名義人が亡くなった時は、相続の対象になる可能性が高いので要注意
  • 離婚・死別を見据えるなら、夫婦別々に家計管理をしておいた方が手間は少なくて済む

ファイナンシャル・プランナーさんのおすすめの家計管理法と、弁護士さんのおすすめの家計管理法が異なる、ということがよくわかった取材でした。

離婚や死別を見据えて家計管理をするのかどうか、は人それぞれ違った判断があると思います。

いずれにしても、万が一の時のことを知って判断しているかどうか、が大切なのではないでしょうか。

次回は離婚時、夫婦の財産をめぐって揉めた事例を紹介していただきましょう。(後編に続く)

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