
『銭』(鈴木みそ著、KADOKAWA、電子版あり)
#03 「儲かる仕組み」がわかると、思いやりが芽生える
漫画『銭』(鈴木みそ著、KADOKAWA、電子版あり)
「お金の本って難しい」と思うことはないでしょうか。でも、マンガとなると話は別。絵があるだけで、とってもわかりやすくなりますよね。そこで、この連載「オタクFPの『金融マンガ』愛」では、実はマンガオタクなファイナンシャル・プランナー(FP)の横川楓さんに、ちょっとでもお金のことを身近に感じられるような、お金にまつわる素敵なマンガを紹介していただきます。
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こんにちは! ファイナンシャル・プランナー(FP)の横川楓です。
今回みなさんにご紹介するのは、『銭』(鈴木みそ著、KADOKAWA、電子版あり)です。
この漫画は、交通事故にあい、幽体離脱してしまった中学生の「チョキン」が主人公。お姉さん幽霊の「ジェニー」が、新米幽霊のチョキンに「いのちの値段の計算方法」について問いかけるところからお話がスタートします。
投資、不動産、貯金……などでなく、「お金」とはそもそも何か?ということをあらためて考えることができるのがこの作品です。
【前回の記事はこちら】
・#02 学園マンガで経済がわかる!『市場クロガネは稼ぎたい』
「いのちの値段」の計算方法
事故などで人が死んでしまった場合、もしその人が平均寿命まで生きていたら一生でいくら稼いだか、が「いのちの値段」となり、大卒なのか、高卒なのか、どういう職業に就いていたのか……などによって金額が決まっていくとジェニーは言います。
自分が死んでしまった場合にもらえる金額がたくさん、と聞いて最初は喜ぶチョキンですが「死んでしまったらお金お金なんて意味がない」ということに気がつき、ジェニーと一緒にいろいろな場所に飛び出して、お金の流れを見て回ることに。
商売の大変さ、思いやりの大切さ
『銭』には、さまざまな業界のお仕事が登場します。私は1巻のコンビニの話がすごく印象的でした。
フランチャイズのコンビニ経営に携わることになったある一家がいました。コンビニ経営を通して父親が別人のように変わっていき、家庭は崩壊。父親と家族、そしてコンビニはどうなっていくのか……というお話です。
コンビニを立て直そう!という方向でストーリーは進んでいくのですが、商売がうまくいかないときの家族の問題や本人たちの葛藤がとてもリアルで、実際にこういうこともあるんだろうなぁ、と考えさせられてしまいます。
商売をすることの大変さを学べるのはもちろん、この作品を読んでいると、どんな職業の人もみんなそれぞれ頑張っているから、普段から思いやりを持って接しなくちゃという気持ちがさらに芽生えてくるんですよね。
(写真=GUNDAM_Ai/Shutterstock.com)
原価計算、利益の割合も赤裸々に
働いて、会社からお給料をもらって、その中で生活費をやりくりして……というように、自分の手元にきたお金の流れは把握しているものの、じゃあその私達に分配されているお金はどのようにめぐってきているのか?ということは、なかなか考える機会は少ないのではないでしょうか。
この連載でご紹介しているような漫画や、毎日つい寄ってしまうコンビニ、女子ならよく行くおしゃれなカフェなど、普段何気なく接しているモノたちが、どういうお金の流れで成り立っているのか。
原価計算だったり、利益の割合だったり、価値のつけ方だったりを、具体的な数字を使ってわかりやすく教えてくれ、「こんなに儲からないのか……」という部分まで赤裸々に明かしていくところがこの作品の見所です!
お金の流れを色々な視点から
この作品が書かれたのが2002年~2009年と10年ほど前なので、今とは少し状況が違うかもしれませんが、根本的な部分は変わらないものも多いはず。絵も読みやすいです。
声優やメイド喫茶、カフェやコンビニなど色々な仕事の裏側が描かれおり、業界レポートのようにも楽しめる作品でもあります。
色々な仕事や身の回りの出来事の値段を知るという事は、経済がどのように回っているのかを知ることにもつながります。
きっとこの作品を読み終わる頃には、つい普段から色々な業種の利益の仕組みを考えてしまうようになってしまうかも?!
投資や税金などの仕組みを知るのも大事ですが、この作品で身近なお金の流れをぜひ学んでみましょう!