(写真=beeboys/Shutterstock.com)

不倫の慰謝料を「回避」「減額」する4つの方法

事前に知っていれば、行動が変わるかもしれません

近年、メディアを賑わせている不倫問題。

しかし、配偶者の不倫がわかった、または自身の不倫が配偶者にバレてしまった……という場合、どんな時にどの程度の慰謝料を請求できる、または相手から請求されることになるのかは、体験してみないとわかりにくいのではないでしょうか。

今回は、弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所の弁護士である中川翔伍さんに、不倫にまつわる慰謝料についてお伺いしました。

不倫の慰謝料を「回避」「減額」する4つの方法5708 (写真=筆者撮影)

不倫などで慰謝料を請求するための条件とは?

中川さんによると、不倫に限らず、誰かに「慰謝料」を請求するにあたって、必要となる法律上の要件は、下記の4つがあるそうです。

  1. 違法な加害行為があること
  2. ①が故意または過失によって行われたこと
  3. 損害が被害者に生じていること
  4. 加害行為と損害との間に因果関係があること

では、これらを不倫に当てはめると、具体的にはどのような行為が当てはまるのでしょうか?4つの要件について、中川弁護士にわかりやすく教えて頂きました。

1.違法な加害行為があること

ズバリ、不倫で言う「加害行為」は性行為のことを指すそうです。不貞行為とも呼ばれます。

「例えば、不倫相手とキスをしたというだけでは、不貞行為にはあたりません。もちろん、キスをしている写真などの証拠があって、自分の配偶者が他の人とキスをしたことで傷ついた、という理由で慰謝料を請求することもできなくもありませんが、金額は高くて数十万円程度と、通常の不倫の慰謝料よりも低くなるでしょう」(以下、かっこ内は全て中川弁護士談)

つまり「身体の関係があったかどうか」が、慰謝料請求の焦点になるのだそう。

2.故意または過失によって行われたこと

①の加害行為が、故意だったかどうか、という意味です。

ただし、不倫の場合、「故意だったか、過失だったか」を争うケースは少ないようです。

「不倫の場合の加害行為、つまり性行為は、過失(不注意で起きた過ち)はあまりないので、故意であることがほとんどです。ただし、無理やり性行為をされたケースであれば、もちろんそれは不貞行為には当たりません」

本人の意思に基づかない行為は不倫にならない一方で、「酔っぱらっていてうっかり身体の関係を持ってしまった」という場合も、過失には当たらないそうです。

「『どこまで記憶があったのか』がポイントになりますが、結局は頭の中のことなので、客観的な状況から判断するしかありません。例えば、酔っ払っていたとはいえ、2人で一緒に電車に乗って、相手の家まで歩いていたとしたら『故意だったのではないか』と推認されるでしょう。」

3.被害者に損害が生じていること

「加害行為」とは一旦離れて、どのような「損害」が、被害者にあるかという問題です。

「パートナーの不倫によって配偶者が心の傷を負う、ということは社会通念上明らかだと考えられます。そのため、ここは、①が証明できればその有無が争点になることはないでしょう。もっとも、どれだけの損害が生じているかということは争点になります。」

4.加害行為と損害との間に因果関係があること

③の「損害」が本当に、①の「加害行為」によって引き起こされたかどうか?という意味です。

「ここも、③と同様に、配偶者が不倫をすれば、配偶者の妻または夫が心の傷を負う、そしてその心の傷は、配偶者の不倫によって引き起こされた、と考えることに疑いの余地はなく、①が証明できれば争点になることはほとんどないでしょう」

中川弁護士によると、④が問題になるのは、例えば交通事故やパワハラでの損害賠償請求。「本当にその加害行為によって被害者が傷を負ったのだろうか?事故前から既に負っていた傷なのではないか?」と疑われるケースや、「労働者が鬱病になったのは家庭内の問題が原因ではないか?」と疑われるケース、さらには「約束を守ってくれなかったから営業の機会を損失して、これにより本来得られたはずの利益を失った」等と損害が際限なく広がりそうなケース等で争点となるそうです。

というわけで、不倫の場合、①の不貞行為がきちんと立証できれば、②③④の要件も満たしていることがほとんど、ということになります。

どうやって「不貞行為」を証明するか?

ただ、実際に配偶者と不倫相手との間に身体の関係があったのかは、証明することは難しいです。性行為中の画像などの証拠があればよい(それでも人物の同定の問題はあります。)ですが、実際には、そのような証拠を見つけることはほぼ不可能。そんな時、どうやって不貞行為を証明するのでしょうか?

「直接の証拠はおっしゃる通り難しいので、性行為を『推認(推測して事実を認めること)』させる証拠があればよいのです。例えば、男女がホテルに2人で行った証拠があれば、それは性行為が目的と考えられますよね。入ったホテルがラブホテルではなくシティホテルでも、ホテルに入る前に手をつないで歩いていたり、路上でキスをしていた写真が証拠としてあるとしたら『だったらホテルでそういうこと(性行為)をしているだろう』と、推認できます」

中川さんによると、不倫の慰謝料を請求する場合には、証拠の「質」が大事なのだそうです。

「例えば、男女2人でホテルに入っていく写真などがあれば証拠の『質』は高いでしょう。『昨日のエッチは気持ちよかったね』など、不倫関係を匂わせるメールなどもよいと思います。また、相手の家がある住所へ複数回行っていたなどの移動記録が取れていれば、それが証拠になることもあります。要は、男女がホテル・マンションなどの部屋に2人で入った、ということが立証できればいいんです」

不倫を疑われても「一緒に部屋に入っただけで何もなかった」という言い訳をする人もいますが、その言い訳が通用しないこともあるそう。例えば「ただの友人関係で、トイレを借りるために相手の部屋に入った」と主張するのなら、どれくらいの時間一緒に部屋にいたのか、ということが問題になるのだとか。

「相手が酔っぱらっていたから部屋で介抱していた」という主張の場合でも、夜12時に部屋に入って、朝7時に部屋から出てきた証拠があれば「部屋の中で寝ているだろう」とか。もし、それが1回ではなく、2回同じことがあったら怪しい、など。

「裁判所側も、柔軟にいろいろなことを総合して『この行動からすれば、性行為があったと考えるしかない』と推認しています」

不倫の慰謝料を「回避」「減額」する4つの方法5705 (写真=筆者撮影)

不倫で慰謝料を請求される時の相場

不倫で慰謝料を請求されてしまった時、どの程度のお金を支払わなければいけないのでしょうか。中川弁護士によると、相場は次の通りです。

  • 特殊な場合:300万円〜
  • 一般的な不倫の場合:100万〜300万円
  • 少ない場合:数十万〜100万円
  • 平均:約150万円

「平均すると150万円程度が多いのではないでしょうか。100万~200万円がボリュームゾーンかと思います。300万円を上回るのは、不倫関係が何十年も続いていた等、特殊な事情がない限りは少ないと思います」

慰謝料の金額をアップさせる要因には、次のようなものがあるそうです。

  • 不倫の期間が長い
  • 不倫の頻度が高い
  • 不倫が原因で離婚することになった
  • 子どもがいる

「例えば、配偶者の不倫が原因で夫婦関係が破綻して離婚した、という事情があれば、通常の相場よりも50万円ほど上乗せされることもあります」

不倫の慰謝料は誰に請求できる?

不倫には加害者が複数います。そう考えると、慰謝料を請求するのは不倫相手なのでしょうか?それとも、自分のパートナーになるのでしょうか?

「民法719条に共同不法行為という言葉があるのですが、不倫の場合、不倫相手だけでなく、配偶者と共に悪いことをしていることになりますよね。なので、不倫相手と配偶者の2人に慰謝料を請求することができます。また、不倫をした証拠はあっても、不倫相手が特定できない場合には、不倫相手ではなく配偶者に慰謝料を請求するケースもあります」

お互いに配偶者がいる「W不倫」も、最近では珍しくなくなっています。

例えば、次のような場合があるとします。

  • 田中家…夫:太郎、妻:花子
  • 佐藤家…夫:ジョン、妻:メアリー
  • 太郎がメアリーとW不倫

この場合、被害者である花子(田中家:妻)と、ジョン(佐藤家:夫)の両方が、太郎とメアリーの両方に慰謝料を請求できるそうです。

imageTitle (図=くすいともこ)

ちなみに、先ほどの田中家・佐藤家のW不倫にて、不倫をした男性(太郎)が、不倫相手の夫(ジョン)にお金を支払ったとします。

この時、なんと、不倫の当事者である太郎もメアリーに「俺が慰謝料を全部払ったけれど、お前も加害者だから、お金を払えよ」と、「求償請求」をすることもできるのです。

求償請求の金額は、もともと支払った金額の50%が相場だそうです。お金の流れを順を追って見ていくと、次のようになります。

  1. 太郎とメアリーのW不倫が発覚
  2. 太郎がジョンに慰謝料(仮に100万円)を支払う
  3. 太郎がメアリーに求償請求をする
  4. メアリーが太郎に50万円を支払う

<結果>

  • 田中家:太郎 ▲50万円、花子 変化なし
  • 佐藤家:ジョン +100万円、メアリー ▲50万円

不倫による慰謝料請求を回避・減額する方法

不倫の慰謝料は決して安くはありません。

もし自分が加害者だった場合、不倫をして慰謝料を請求されても、支払わなくて済む方法はあるのでしょうか。

中川弁護士に慰謝料請求を回避、もしくは減額する方法を聞いてみました。中川弁護士いわく「いずれも、不貞を推奨する趣旨でないことは予めお断りした上で、実務感覚を率直に申し上げると……」という前提でした。

1)身元を特定されないようにする

「偽名で連絡を取り合う」など、自分を特定されないようにすれば、慰謝料の請求もしようがありません。ただ、探偵に身元も含めて調査される可能性はありますので、これだけで安心ということはありません。

また、不倫の慰謝料請求が確定するのは、最初に紹介した4つの条件のうち、①が証明された時。「移動中はマスクやサングラス、帽子などで顔を隠す」探偵に写真を撮られても、顔が隠れていて誰だかわからないような見た目であれば、写真を見せられた時に「これは自分じゃない」と主張できる可能性があるのだそうです。

2)ホテルの部屋を2部屋とる

シティホテルを2部屋とって、チェックインした後に部屋を移動して不倫相手と会うようにすれば「わざわざ部屋を移動して会うのなら、最初から部屋をひとつしか取らないはずだ」という理屈が成り立つ可能性もあります。

3)夫婦関係がすでにうまく行っていなかったと主張する

不倫の事実があったと証明された場合でも、支払う慰謝料の額を減らすことができる方法はあります。

その一つがすでに夫婦関係がうまく行っていなかったと主張すること。夫婦関係がうまくいっていなかったことは、別居していた、家庭内別居をしていたことなどをつかんで主張することができます。ただ、家庭内別居の場合は証拠の問題があります。カーテンでリビングを仕切っている写真等があれば一応の立証はできそうです。

4)相手から言い寄られたと主張する

慰謝料を減額する方法の2つ目は、「あなたの配偶者からアプローチしてきたのだから、不倫相手である自分の責任割合は低い」と主張する方法です。男性側が不倫相手の女性に対して強引にアプローチをしたり、結婚していることを隠していたり、「妻と別れるから結婚しよう」などと言っていた場合、不倫相手の女性の責任割合が少なくなる、というケースもあります。

不倫による慰謝料請求権が消滅する「時効」とは?

5年前、10年前の不倫が配偶者にバレてしまった!という場合、慰謝料の請求はどうなるのでしょうか。

中川弁護士によると、慰謝料の請求権があるのは

  • 不倫を知った時から3年以内
  • 不貞行為が始まってから20年以内

だそうです。

「3年と聞くと短いと思うかもしれませんが、その間に法律事務所に相談に行くこともできますし、意外と十分な時間があります。『10年前の不倫を昨日知った』という場合でも、知ってから3年間は慰謝料の請求が可能です」

ただ、10年前の不貞行為を証明するのは難易度が上がる、とのこと。

なお、配偶者の不倫が発覚しても、許してしまうとその後の慰謝料の請求はしにくくなるそうです。

「不倫を許してしまうと、不貞行為の要件がなくなります。それを、宥恕(ゆうじょ・許すという意味)と呼びます。少しおかしな話にはなるのですが、不貞は夫婦の間の概念なので、宥恕をすると、たとえ実際に不倫の事実があったとしても慰謝料との関係では『配偶者の不貞がなかったこと』になるんです。そのため一度『許す』と言ってしまうと、慰謝料の請求はしにくくなります。もちろん、本音で『許す』と言ったかどうかという問題は残りますけどね」

配偶者の不倫にどうしても納得がいかない場合、簡単に「許す」と言わない方が良さそうですね。

事実婚や同棲だと、慰謝料は請求できるの?

また、近年増えている事実婚(婚姻届は出していないが、結婚生活に類似した生活を送っている)のケースでも、慰謝料の請求はできるそうです。一方で、ただ同棲しているだけでは、慰謝料の請求はできないのだそう。

「婚姻届は提出していないけれど、同居していたり、結婚指輪を渡していたり、結婚式を挙げていたりと、婚姻関係とほぼ同じ関係であることを立証できれば、不倫による慰謝料を請求できる可能性もあります。ただし、実態によっては、慰謝料の額はかなり低くなってしまう可能性があります」

不倫の慰謝料請求を弁護士に依頼するといくらかかる?

実際に不倫の慰謝料請求を弁護士事務所へ依頼した場合、かかる費用の相場は数十万円程度だそうです。

「私が所属している事務所の場合、訴訟だと着手金20万円と、相手から受け取った慰謝料のうち成功報酬として20パーセントを頂く、という料金体系です」

もし受け取る慰謝料が100万円だった場合、40万円が弁護士事務所に支払う費用となり、60万円が手元に残る計算となります。もし、弁護士に相談しなければ、もらえる慰謝料がもっと少なくなっていた、と考えると、相談する価値はある、ということでしょうか。

ちなみに不倫の慰謝料請求に関する案件は、初回相談料を無料にしている弁護士事務所も多いそうなので、一度、その事務所の報酬体系を相談してみてもよいかもしれません。

不倫の証拠は消えやすい。できるだけ早く対応を

最後に、現在配偶者が不倫をしている・自分の不倫が相手にバレて慰謝料を請求されている人に向けて、中川弁護士からアドバイスを頂きました。

「どちらにしても、できるだけ早く弁護士に相談した方がよいでしょう。配偶者の不倫が疑われる場合、大切なのは不倫の証拠を手に入れること。証拠もないのに相手に『不倫しているでしょう』と言うと、配偶者が警戒して証拠が取りづらくなってしまいます。逆の場合も、いかにして慰謝料の請求を回避・減額できるか、対策を早めに打つことができます」

人生何があるかわかりません。

ただ、いざという時のお金について知っておくのと知らないのとでは、自分の行動が変わってくるかもしれませんね。

▲TOPページへ

この記事をシェアする

個性的な連載で「投資」を身近に

一つのテーマを深掘り、おすすめ特集