(写真=Mocha)

働き女子が「がん」になったら。使える社会保険制度とは?

「がん」治療にも使える公的な社会保険制度を知っていますか?

「がんに備えて保険に加入したほうが良いですか?」

働き女子から、最近増えている相談です。私のところに相談に来られたA子さんも、がんの治療費は高額になるとの不安から、前もっての備えとして生命保険への加入を検討していました。「もうすでに、公的な保険に入っているよ!」と言うと、不思議そうな顔。皆さんは「がん」治療にも使える公的な社会保険制度を知っていますか?

医療費の負担を軽くする「高額療養費制度」

「高額療養費制度」は、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が1ヶ月(1日から末日まで)の上限額を超えた場合、加入している健康保険から超えた額が支給される制度です。

働き女子,がん,生命保険,社会保険制度 出典:厚生労働省「高額療養費制度を利用する皆さまへ」(平成29年8月から平成30年7月診療分まで)

A子さんは38歳の会社員。年収は約400万円です。上記の表では80,100円+(医療費-26万7000円)×1%が適用されるので、病院の窓口で医療費30万円を支払ったとすると、8万7430円が自己負担の上限額。支払った30万円のうち差額の約21万円が戻ってくる計算です。

医療機関での窓口負担:100万円 × 3割負担 = 30万円
自己負担限度額:8万100円 +(100万円 - 26万7000円)× 1% = 8万7430円
高額療養費の支給額(差額):30万円 - 8万7430円 = 21万2570円

「なぁんだ!思っていたより負担は少額で済むのね!」A子さんは安心したようですが、乳がんを例にとると、放射線治療やホルモン治療、抗がん剤など手術後も通院メインでの治療が続きます。自己負担額が上限に達する月が何ヶ月も続くことがあり、もう無理!と治療の途中で病院に行かなくなる人も見受けられます。

大手の会社の健康保険組合に加入している人や公務員の方は、「付加給付」といって自己負担額の1部を会社が負担してくれる場合もあります。また、高額療養費制度には「多数回該当」という仕組みがあり、直近の12ヶ月の間に3回以上、上限に達した月があれば、4回目以降は上限額が下がります。制度の内容を知っていれば、治療を続けられたかもしれません。

この制度を利用するにはご加入している健康保険組合や国民健康保険などに、A子さん自身で申請が必要です。保険外の診療や差額ベッド代、入院時食事代の自己負担分については高額医療費制度の対象高額療養費制度の対象ではなく全額自己負担。ウイッグや、リハビリにかかる費用など予想外の出費もあるので、「面倒だわ!」と思わず、入院や手術がわかった時点で申請しておくことをオススメします。

休職中の収入を補う「傷病手当金」

「傷病手当金」は、健康保険組合や協会けんぽなどに加入している休職中の会社員とその家族の生活を保障するために設けられた制度です。次の(1)から(4)の条件をすべて満たせば、給料のおおよそ2/3の金額*が支給開始の日から最長1年6ヵ月支給されます。

*支給開始日の以前12ヵ月間の各標準報酬月額を平均した額 ÷ 30日 × (2/3)
(支給開始日の以前の期間が12ヵ月に満たない場合を除く)

[条件]
(1) 業務外のケガ・病気であること
(2) 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
(3) 就労できない旨の医師の診断書があること
(4) 給与が減額または支給されないこと

働き女子,がん,生命保険,社会保険制度 (画像=Mocha)

制度を利用するには事業主の証明が必要ですが、有給休暇をすべて消化してからでないと、証明しない企業もあります。経過観察など職場に復帰した後でも通院で会社を休むこともあるので、できれば会社の担当者と話す時間を持ち有給休暇を残せるようにしておきたいですね。

また、傷病手当金は休職ののち退職となっても最初の給付から通算して18ヶ月までの期間、継続して受け取ることができます(条件によります)。A子さんが、もし病気で辞めることになったら、長年勤めた会社を辞めるときには「花束贈呈くらいはしてほしい」と思っていました。でも、退職日前に短時間でも出社してしまうと、傷病手当金の支給条件にある「就労できない」という事項に引っかかり、退職後に傷病手当金がもらえなくなる可能性があります。その場合は淋しいことですが、会社の外で花束贈呈をしてもらいましょう。

ちなみに、自営業者など国民健康保険加入者には傷病手当金はありません。働けなくなると収入が途絶えてしまいますから、健康なうちに貯蓄や保険加入などで備えることを検討しましょう。

障害を持ったときの支援制度「障害年金」

障害年金は、病気やけがが原因で生活や仕事などが制限されるようになった場合、生活を保障するために支給される年金です。障害年金の対象となる病気のうち、「がん」では、人工肛門や新膀胱の造設、抗がん剤などの治療が原因で起こる全身衰弱・機能障害などが認定対象とされています。

医師の診療を受けたときに国民年金に加入していた場合は「障害基礎年金」、厚生年金に加入していた場合は「障害厚生年金」が請求できます。障害基礎年金は1級もしくは2級の状態に該当しないと受給することができません。それに対し障害厚生年金では、障害の状態が2級に該当しない軽い程度の障害のときは3級、または障害手当金を受給することができます。

「がんと告知されてからの1年、本当にしんどかった・・・」。がん経験者が、ふと漏らす声です。A子さんは会社員なので「がん」になっても使える制度が多くありますが、万が一退職すると途端に治療費や生活費に支障が出ます。いろんな事態を想像して、必要な部分の補足としての生命保険加入を検討してください。

辻本 ゆか
おふたりさまの暮らしとお金アドバイザー
企業の会計や大手金融機関での営業など、お金に関する仕事に約30年従事。暮らしにまつわるお金について知識を得ることは、人生を豊かにすると知る。43歳で乳がんを発症した経験から、備えることの大切さを伝える活動を始める。結婚を機に奈良に転居し、現在は奈良で独立系のFP事務所を開業。セミナーを主としながら、子どものいないご夫婦(DINKS・事実婚)やシングルの方の相談業務、執筆も行っている。
FP Cafe登録パートナー

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