
特集:つみたてNISAってなんだ?
知識ゼロでもわかる「つみたてNISA」3つの特徴。そもそもなんで登場したの?
つみたてNISAは何のための制度?
知識や経験はないけれど、投資をして将来に備えたい。そんなあなたにぴったりの新制度「つみたてNISA」が、2018年1月から始まります。
この特集では、つみたてNISAの全貌を、投資経験・投資知識ゼロの人でも理解できるくらい丁寧にお届けします。
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☆この特集に登場する人物
ほなみ……大学生。老後が不安になって将来に備えて投資をしたいが、投資に関する知識がなくて困っている。
あんずちゃん……DAILY ANDSのゆるキャラ。株とお酒が好物。
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ほなみ「わぁん、投資始めたいよぉ……」
あんずちゃん(以下、あんず)「ほなみちゃん、一体どうしたの?」
ほなみ「ニュースを見ていたら、自分の老後のことが不安になっちゃって……。将来に備えて今から投資したいんですけど知識がないし、そもそも投資に使う大金なんてないしもうどうしたらいいか(泣)」
あんず「来年から"つみたてNISA"っていう、ほなみちゃんにピッタリの制度が始まるから教えてあげよっか?」
ほなみ「つみたて……にーさ?」
つみたてNISAとは?3つの特徴
<あんずちゃんはまず、つみたてNISAとはどんなものなのか解説してくれました。内容を要約すると、次の通り>
つみたてNISAとは、2018年1月に始まる証券口座に関わる新しい制度のことです。投資信託(☆)などを一定額、積み立てて投資をすると、従来よりもおトクになります。
具体的には次のような3つの特徴があります。
①運用で出た利益、分配金が20年間は非課税
普通の口座で取引した場合、投資で得た運用益や分配金に20.315%の税金がかかります。
例えば100円で買った投資信託が値上がりして150円になったとします。本来ならば、50円の運用益に20.315%の税金がかかり、手元に残るお金は約40円となります。
【運用で出た利益にかかる税金の計算式】
・50円×20.315%=10.1575円 ←たとえ運用で儲けても、これだけ税金を納めなければいけない!
【手元に残るお金の計算式】
・50円-10.1575円=39.8425円 ←50円儲けたはずなのに、これだけしか受け取れない!
これではせっかく投資をして利益を得ても、資産形成しにくいですよね。
そこでつみたてNISA口座は、20年間という期限をおいて税金を免除してくれます。
ちなみに、運用益に税金がかからないのは、一般のNISA口座(☆)も同じです。ただし、非課税になる期間は5年間なので、つみたてNISAより短くなっています。
☆投資信託(ファンド)とは? 資産運用の専門家が株や債券などを取りまとめて運用してくれる金融商品。ひとたび資金を預ければ、その道のプロが経済動向や個別の企業についての情報収集をし、タイミングをはかって売買してくれる。ただし、プロが運用することに対する手数料がかかる。商品選びの際はよくチェックしよう。(参考:5分でわかる! 積立投資信託のアウトライン)
☆NISA(ニーサ)とは? 2014年1月にスタートした少額投資非課税制度のこと。通常、株や投資信託の取引などで出た利益には20.315%の税金がかかるが、NISA口座であれば利益に税金がかからない。世の中のたくさんの人に投資を始めてもらいたい、という趣旨で設けられた制度。(参考:税金ナシ!NISA活用法と、お金のプロがコッソリ教える「お得」情報)
②投資上限額は1年間に40万円
つみたてNISAの特徴2つ目は、口座を使って運用できるお金が毎年40万円までに定められていること。
これを12で割ると、毎月3万3000円を投資することができます。もちろん上限いっぱいまで積み立てる必要はなく、自分に合った無理のない範囲で毎月の積立額を設定できます。
一般のNISAの場合は1年の上限額は120万円なので、その3分の1ということになります。「細く、長く」利用できるのがつみたてNISAの特徴です。
③購入商品は金融庁の厳しい基準をクリアしたもののみ
3つ目の特徴は、つみたてNISA口座で運用できる商品は、金融庁が設けた厳しい基準をクリアする一部の投資信託とETF(上場投資信託)に限られていること。これは一般のNISAにはなかった、新しい注目ポイントです。
投資信託やETF(上場投資信託)は、資産運用の専門家が株や債券などを取りまとめて運用してくれる金融商品のことです。いわば投資商品の「詰め合わせ」のようなもので、少額でたくさんの金融資産に分散投資ができるため、投資初心者にもよくおすすめされています。
ところが、金融庁「家計の安定的な資産形成に関する有識者会議」(第2回)事務局説明資料によると、2017年3月時点、国内で販売されている投資信託は5406本。こんなにたくさんあったのでは、初心者はどれが自分に合う商品かを選ぶのは難しいですよね。
そこで、金融庁はつみたてNISAのテーマである「安定的な資産形成」を軸に、購入できる投資信託に基準を設けました。2017年8月末時点で、つみたてNISAの基準をクリアしたとされる投資信託は120本と報じられており、いかにその基準が厳しいかがよくわかります。
具体的な基準は、次回以降の記事であらためて解説します。
つみたてNISA 名前の由来
あんず「……こんな感じで、つみたてNISAは、あまりたくさんのお金を持っていない人でも、コツコツと投資信託の積み立て(☆)をしやすくなるために導入された制度なんだよ」
ほなみ「うーん、でも名前が覚えにくいです。どうして英語にするかなぁ、もう」
あんず「たしかに難しく聞こえるかもしれないね。もともとイギリスのISA(Individual Saving Account)を参考にして作られた制度で、頭にN(Nippon)をつけてNISAと名付けられたんだって。余談だけど、『つみたて』を平仮名にすることで、少しでも多くの人に制度に愛着を持ってもらおうとする国の意図が読み取れるね」
ほなみ「そういえば、もともとNISAっていう制度があるのになんでわざわざ『つみたて』バージョンを作ったんでしょうか?」
☆積み立て投資とは?
積み立て投資とは、同じ金融商品を同じ金額分、1カ月に1回などタイミングを決めて買い付ける投資手法のこと。コツコツと買うことで、投資のタイミングを分散することができ、結果として長期的な値上がりを期待できるとされている。天引きの預金感覚で気軽に始められることも特徴。(参考:積立投資信託とは?メリット、デメリットから投資先4選まで)
現行NISAの現状と課題
<「もともとのNISA」とは、2014年から始まった少額投資非課税制度のことを指します。このNISA口座は、年120万円までの投資額であれば5年間、20.315%の税金を免除してくれます。すでにNISAという制度があるにも関わらず、さらにもう一つ、「つみたて」専用の制度を作ったのには次のような課題があったからなのです。(以下、金融庁「つみたてNISAについて」より>
NISA口座の稼働率が低い
2016年12月時点で、1069万のNISA口座が開設されています。そのうち、53.5%の528万口座は一度も取引が行われていません。せっかく作っても活用しない人が半数以上もいるのが現状です。
NISA口座が資産形成につながっていない
金融庁は、安定的な資産形成には「長期」「積立」「分散」が有効であるとしています。この3つのルールを守った長期の積立分散投資をすれば、元本割れのリスクを減らしつつ、世界経済の成長を享受しながら、安定的に資産形成する可能性が高まるということです。
しかしながら、NISA口座のうち積立投資が行われているのは全体の1割以下。
ただでさえ稼働率の低いNISAですが、NISA口座を使って投資をしている人のうち、安定的な資産形成を行うために利用している人はほとんどいないことになります。
あんず「つまり、『つみたてNISA』は投資期間を長くして、投資商品を一部に絞る(=厳選する)ことで、利用した人が自動的に『長期・積立・分散』を意識した投資ができるようになっているんだよ」
ほなみ「たしかに私みたいな投資初心者さんはあらかじめ選択肢を狭めてくれるのはありがたいです!でも、なんでこんなに国は私たちに優しくしてくれるんでしょうか?」
つみたてNISAは何のための制度?
あんず「主に2つの狙いがあると言われているよ。1つ目は安定的な資産形成を通じて国民の富を増大させること、2つ目は家計から直接、成長分野にお金が回るようにすることで、世の中の資金の流れを変えて、持続可能な社会にすること」
ほなみ「うーん、なんだか難しいけれど、投資をする人が増えたら巡り巡って世の中がよくなっていくってこと?」
あんず「簡単に言うとそういうことかな。国が『貯蓄から投資へ』のスローガンを掲げてからすでに数十年くらいたつんだけど、日本国民の預金額は増え続けているんだって。いきなり資産運用しましょうと言われても、ネガティブなイメージが広がっているんだろうね……(私は株が好きだけど)。つみたてNISA口座は、この現状を変えるために作られたんだって」
ほなみ「そうなんだ!実は、はじめてNISAの宣伝広告を見たとき、証券会社が利益優先で新しい売り方を提唱してるもんだと思ってました。でも、国が始めた制度ならひとまず安心なのかな」
あんず「制度をつくったのは国だから安心して使って大丈夫だよ!(最近の若者は疑り深い……いや、慎重なんだなぁ……)」
つみたてNISAの特徴まとめ
- お金がない若者でも投資しやすい社会を実現するために国が作った制度
- 毎年40万円までの投資額なら、最大20年間、運用益・分配金にかかる税金が0%(非課税)になる
- 購入できる金融商品は金融庁の基準を満たしたもののみ
ほなみ「つみたてNISA、やりたくなりました。でもその前に、もっと学びたい!」
あんず「ほなみちゃんみたいな女子大生でも投資をはじめやすいし、私みたいな働く女性にもつみたてNISAってピッタリなんだよね。次回はその話をしていくね!」