
(写真=Africa Studio/Shutterstock.com)
子どもの学費を投資で賄いたい!は危険な考え方?
投資信託の積立や株式投資でねん出できる?
今回は、お子様の学費に関してのご質問です。学費というのはどの親にとっても大変頭の痛い問題ですね。おっしゃりたい事は、よく理解できます。
今後5年以内の資金が足りないので、投信積立か株を検討したい
●2016年12月:TF様(男性・50代)よりのご質問
教育資金・老後資金という単一の目的に対し目標金額を定めて、積立投資をする利点はわかりました。
私は定年まで7年・現在の子供の大学卒まで5年あり、子供の教育資金にある程度のたくわえがあります。現在手元にある資金はほぼ教育用になっており、いまのところ大学4年までの資金は何とかありそうなのですが、大学院ということになると、その分の資金が不足することになります。
ただ、定年後401Kである程度の老後資金が時期がくると手元にくるのですが、その資金を手にする時期より前に必要となり、資金繰りに苦慮しています。
3から5年後の用途のために財形貯蓄のように投信を積み立てながら、必要になれば売却していく方法は、投資効率としていかがなものでしょうか?
ローンでもと思いますが、できたら自己資金でいきたいので単なる財形積立より投信積立ならどうか? また、手元の資金を運用(経験がない場合は危険が大きいとは思いますが)する場合は投信ではなく、株とかですか?
財形などの貯蓄での資産形成でやってきましたので、投資は初めて行う予定でいます。
ご回答:典型的な、「やってはいけない投資」になります
ご質問を頂きまして、ありがとうございます。ちょうど退職金が支払われる直前にご子息の大学費用が重なって、だいぶ苦慮されておられますね。
当方にもようやく4年間の私立大学を卒業して就職予定の息子がおり、学費は500万円かかりました。これで一丁上がりと思いきや、次男が大学に進学予定になっていて、ここからまた泣きそうな500万円が出ていくものと思われます。
いくぶんご質問とは逸れますが、この次男、「父親にこれ以上大金を出させるわけにはいかない」と言って(高校でカナダ留学に行かせて200万くらいかかったのです)、「バカな大学を受けてトップで入学して特待生になって学費を無料化する計画」に邁進しています。
お金が好きな私の遺伝子を受け継いでしまったのか、実にアホらしい作戦ではありますが、親さえ気にしなければ、意外とユニークな節約の方法になるかもしれません。
短期間で学費を投資で賄うというのは、ギャンブルそのもの
さて本題に入りましょうか。まず最初に申し上げなくてはならないのが、近い時期にやって来る、絶対確実に用意しなくてはならない資金用途に対して、投資で用立てするという発想は、絶対に持ってはいけません。
当サイトでは一般庶民の堅実な投資法としてインデックス投資を強くお勧めしておりますが、これは10年20年と言うスパンで、少しずつ資産を増やしてゆく方法です。
仮に息子さんが大学院に進学したとして、その学費が3年で300万円かかったとすると、修士課程在籍中の4年間に、月額6万2500円を貯蓄しなくてはなりません。
これを、投資の力を借りて、なんとか楽したいと思っているのですよね? 話を分かりやすくするために、日本株だけで積み立てるとします。日本株はいったい、1年あたりどのくらい儲かるのでしょうか。
ブログ・グローバルな投資でセミリタイアによると、 日本株の期待リターンは年率5%です(ここではコストを考えない事にします)。となると、5%の複利効果が働くので、月額5万6600円の積立で300万円に到達します。貯蓄だけより、月額5900円「お得」です。
(楽天証券の複利計算シミュレーションを使って計算しています。)
しかし、投資の力を借りても、たった月額5900円しか、楽にならない訳です。一方で、このリターンを実現させるためのリスクを、決して忘れてはなりません。日本株のリスクは先ほどのブログによると、25%になります。リスクとは価格のブレの事を言います。
リターンが5%でリスクが25%なので、運用が上手くいくとプラス30%の利益が、失敗するとマイナス20%の損失を、1年あたりで食らう事になるのです。(ちなみにこの時の確率は、およそ70%になります)
注意すべきは、これは年率だという事です。翌年も、7割の確率でプラス30~マイナス20%の数字に納まる事になりますので、2年連続でマイナス20が続く、という事もありうるのです。
毎月たったの5900円を節約する一方で、世界でリーマンショックみたいな金融危機が襲って、捕らぬ狸の皮算用をしていた学費の種銭が、信じられないような暴落で元本割れしてしまったら、息子さんは確実に進学が不可能になります。
しかしながら、2年連続でプラス30%が続く可能性だってあります(というか3年連続だってありうる)。どちらに触れるのかは、専門家だって後講釈の世界で、神様以外は誰にも見通す事は出来ません。
超長期の投資においては、リターンはリスクを乗り越えてプラスの方向に収れんされていきます。しかも投資に終わりはありません。ずっと運用を続けられる環境です。
けれども終点がハッキリした短期で見ると、プラス60%になるのかマイナス40%になるのか、完全にギャンブルの世界になります。まだプラスの可能性の方が高いので、パチンコや宝くじよりは猛烈に良い事だけは確かでしょうが、博打であることは変わりありません。
したがって、ギャンブルに負けてもリカバリー出来る人以外、このような事は考えてはならないのです。日本株全体に分散投資をするから価格のブレはまだこの程度ですが、個別株などをやったら、この比ではありません。
企業型401Kをやってらっしゃるとの事ですが、投資の経験は無いとの事でしたので、もしかしたら積み立ては定期預金になさっているのかもしれませんね。
心に深く刻んでいただきたいのですが、投資の世界は、投資の勉強をしていない人はほとんど確実に、市場の良いエサに成り果てます。「何としても投資で学費を稼ぐぞ」という決意が強いのであれば、あり得ないほどの勉強をして頂いて、何度も負けて手痛い資金ロスをして頂いて、その上でやっと勝てるようになる世界です。
ものすごいざっくりとしたイメージだと、偏差値60くらいはある頭脳明晰な人で、かつギャンブルで大きな金を賭けられる胆力のある人で、株式市場に数十万円単位の負けを食らった経験が有って、更には他人の裏を平気でかけるような人だけが、短期売買においては勝利できると思っていただいて良いかと思います。
したがって、結論を申し上げると、「そのような美味い話は無い」となります。投資経験がない人が、学費を投資でねん出するなどは、あり得ません。
公庫の教育ローンがお勧め
私が同じ立場ならどうするかなと、ふと考えてみました。
多分私なら、政府系金融機関である、日本政策金融公庫の教育ローンを利用します。貸出金利1.8%、最長15年以返済であり、例えばメガバンクの三井住友銀行の教育ローン(金利3.475%、10年以返済)よりもはるかに良いです。
300万円を公庫に15年返済する場合、月額1万9000円になります。三井住友銀行に10年返済する場合は2万9000円になります。(参考までに奨学金をもらうと、金利3%、16年返済)
仮に現状、貯蓄で月に3万円を用意することが出来るとしたら、修士課程期間中に144万円が貯まります。不足分だけを公庫の教育ローンで賄えば、返済の負担は半分に減ります。(融資期間によって大きく変動するので、ご自身にとってふさわしい借入期間にすると良いです)
私の場合、さらに将来の子供から、借り入れの元本に相当する部分か、あるいは利息に相当する部分かは何とも言えませんが、どちらかは返してもらうと思います。
半分冗談半分本気で、大学院に進学するという「投資」に対して、将来の給与面での「リターン」はどの程度見込めるのか、「投資効果が低くなるようなら大学院を止めれば?」なんて投げかけもするような気がします。
特段の投資効果が無いものに対して、借金をしてまで学校に行く価値があるのか、シビアに見るだろうなと思います。もちろん子供の教育については家庭によって様々な方針が有ると思いますので、そこに口出しするつもりはありません。
子供が生まれる前ならば、学費を投資信託で用意するのはアリ
ところで、あと数年に迫ったギリギリのところで学費を用意する必要があるから、このようなけっこうシンドイ事を計算することになる訳ですが、これがまだ、「結婚したけども子供はまだいません、でも学費は準備しておきます」というケースならば、投資もアリです。
子供が0才ならばまだ18年近くあるわけですし、妊娠もしていなければ、20年とか25年とかの、じゅうぶんな長期に渡って、資金を教育費のために「熟成」させることができるでしょう。
この場合は、あえて教育費と決め打ちして貯めずに、老後も含めた将来の資産形成のためとして積み立て投資をして、そのうち大学期間中には一時的に500万円を取り崩す予定にしておけば良いと思います。
もちろん取り崩しを行いますので、確定拠出年金に積み立ててはなりません。学費部分だけは通常の証券口座で積み立てて、老後資金の大半は確定拠出年金というのでもOKです。
投資はとにかく、余計な事は考えずに、一にも二にも若いうちからサッサとやれというのが肝心です。私も、「もっと早くから投資に気付いていたら」と後悔することが多々あります。
若い年代の人がこのページをご覧になっていたとしたら、理由は今後考え、あるいは勉強していただくとして、今すぐ直ちに、積み立て投資をするようにしましょう。