(写真=Dean Drobot/Shutterstock.com)

確定拠出型年金パターン別!所得控除を計算してみた

会社員・公務員から専業主婦まで6つのケースで解説します

老後のお金が心配だという人は年々増えています。筆者がFPとして家計相談を受けていても、老後の心配の悩みは年齢にかかわらず多くなっていると感じています。そんな老後の心配に応えるのが、今回ご紹介する「確定拠出年金」。

今回は、確定拠出年金を利用した際に所得控除を受ける方法について解説します。

確定拠出年金とは?

確定拠出年金とは、毎月一定の掛金を支払い、60歳以降に年金または一時金として受け取れることができる仕組みです。掛金は月々5000円から、元本保証で運用することもできます。

2017年1月から、制度改正によって現役世代のほぼ全ての国民が加入できるようになりました。公的年金だけでは心配な老後資金に上乗せして準備できるため、ぜひとも活用したい制度です。

節税のキーパーソン「所得控除」とは?

確定拠出年金に加入することで税金を安くすることができます。税金がなぜ安くなるのか、一緒に税金の支払額を決める仕組みを確認していきましょう。

所得税は、1月1日~12月31日の所得に対して課税されます。このときポイントとなるのは、課税されるのは「所得」であるということ。「所得」と「収入」は異なります。

会社員であれば「収入」とは給料のことです。ここから「所得」を計算するには、「収入」から給与所得控除(☆)を差し引きます。

給与所得控除とは、収入を得るための使った必要経費のようなもの。収入の金額に応じて上限が決まり、例えば、年収300万円なら108万円、500万円なら154万円まで、さまざまな名目で一定の金額を差し引くことができます。これが「所得控除」です。

「収入」から所得控除を差し引いた金額が「課税所得」。所得税はこの「課税所得」に税率をかけて算出します。

収入は多いほうがうれしいものですが、「課税所得」は少ないほうが税金の支払いは少なくなるのでお得ですね。つまり、所得控除は多ければ多いほど、支払う税金は減っていきます

そして所得控除には配偶者控除、医療費控除など14種類ありますが、確定拠出年金の掛金は「小規模企業共済等掛金控除」というものに該当します。

"☆控除(こうじょ)とは?
税負担がなるべく多くの人にとって平等になるように考えられた「配慮」のこと。例えば、妻または夫というパートナーを養っている人は単身者に比べると生活をするのが大変なので、税金の負担を軽くしてあげましょう、という制度が「配偶者控除」です。(参考:そもそも「控除」って?配偶者控除をもっと分かりやすく説明してみた)"

所得控除の計算方法

では、確定拠出年金の所得控除はいくらになるのでしょうか。確定拠出年金の場合、掛金の全額が控除されますので、掛金が最低金額の月額5000円とすると、所得控除額は5000円×12カ月で6万円です。

仮に所得税の税率が10%、住民税が一律10%とすると、税金を1万2000円分取り戻すことができます。

  • 所得税の負担軽減額=6万円×10%(所得税率)=6000円
  • 住民税の負担軽減額=6万円×10%(住民税率、一律)=6000円

パターン別!所得控除を計算してみた

ただし、人によって確定拠出年金の掛金の上限額は違います。そこで今回は働き方別に所得控除の金額を確認していきます。

以下のパターンでは、いずれも所得税の税率10%、住民税は一律10%として計算しています。

パターン1:自営業・フリーランス(個人事業主)の場合

  • 第1号被保険者(国民年金加入者)
  • 個人型確定拠出年金(iDeCo)=掛金月額6万8000円

自営業者・フリーランスの場合、公的年金は国民年金だけ。上乗せができる確定拠出年金の掛金は、他の制度の加入者と比べて高額に設定されていますです。国民年金基金に加入していれば、国民年金との合算で上限は月額6万8000円、付加年金を利用している場合は月額6万7000円が上限です。掛金を上限額の月額6万8000円としたら、12カ月で81万6000円になりますね。

所得税、住民税の税率を10%で計算すると、所得税8万1600円+住民税8万1600円で16万3200円の節税になります。**

自営業者やフリーランスに退職金はありませんので、老後資金はしっかり用意しておきたいもの。その働き方ゆえに、収入が不安定になることも否定できません。無理のない範囲で所得控除の節税効果をフル活用し、手堅い運用で着実に老後資金を準備しましょう。

パターン2:会社員の場合

  • 第2号被保険者(厚生年金加入者)
  • 個人型(iDeCo)=掛金1万2000円~2万3000円

【ケース①】会社員で企業年金がない+企業型確定拠出年金がない
・個人型(iDeCo)=掛金月額2万3000円

会社員は、まず勤務先の年金制度を確認しましょう。企業年金も企業型確定拠出年金(☆)もなく、厚生年金のみの加入であれば、月額2万3000円までかけられます。12カ月で合計27万6000円。所得税2万7600円+住民税2万7600円の5万5200円が節税できることになります。

【ケース②】会社員で企業年金がない+企業型確定拠出年金がある
・企業型=掛金月額3万5000円
・個人型(iDeCo)=掛金月額2万円

企業型確定拠出年金では掛金を会社が拠出し、その金額は会社が決めます。企業型確定拠出年金の掛金上限は5万5000円ですが、会社の規約でiDeCo加入が認められている場合、上限は3万5000円となります。

企業によっては、企業型確定拠出年金の掛金が上限より少ないこともあるでしょう。その場合、上限額までの金額を従業員が追加で拠出できる制度があります。これを「マッチング拠出」といい、この制度で個人が拠出した金額を所得控除として所得から差し引くことができます。

ただし、マッチング拠出には会社と従業員の合意が必要で、また、従業員が拠出する掛金は企業の掛金より多くすることはできません。

もし、会社がマッチング拠出をしていなくても、iDeCoに加入することで将来の年金を増やすことはできるのです。このときの掛金上限は月額2万円です。注意していただきたいのは、会社の規約にiDeCoの加入者になれることが記載されている必要があること。この機会に、会社の規約を確認しておくといいですね。

マッチング拠出なしとした場合、iDeCoの掛金上限2万円×12カ月で24万円。節税できるのは所得税+住民税の4万8000円です。

【ケース③】会社員で企業年金(確定給付型)がある
・企業型確定拠出年金=月額1万5500円
・個人型(iDeCo)=掛金月額1万2000円

企業年金を実施していて、さらに企業型確定拠出年金も導入している会社の場合、企業型の掛金上限は2万7500円です。しかし、こちらもケース②と同様に、会社規約でiDeCo加入を認可しているときは、企業型の掛金上限は1万5500円と下がります。

前述の通り、マッチング拠出の制度があれば上限の範囲内で掛金の拠出が可能ですが、ここではマッチング拠出なし、iDeCo掛金を上限の1万2000円として、12カ月の支払総額は14万4000円。所得税+住民税の2万8800円を節税できます。

パターン3:公務員の場合

  • 第2号被保険者(厚生年金加入者)
  • 個人型(iDeCo)=掛金月額1万2000円

2015年10月から、公務員が加入していた共済年金は厚生年金に統一化されました。ですから現在、公務員が加入しているのは厚生年金ということになりますが、そもそも企業型確定拠出年金に加入できるのは「企業型年金規約の承認を受けた企業に勤務する従業員」で、公務員は対象外です。

ただし、iDeCoには2017年から公務員も加入できるようになりました。会社員のケース③と同じく、掛金上限は1万2000円と多くはありませんが、公務員の場合、勤め先が倒産することはありません。また、退職制度もしっかりしていますから、ある程度リスクをとった積極的な運用をすることも考えられますね。

上限の1万2000円であれば12カ月で14万4000円。所得税+住民税の2万8800円の節税メリットは確実なので、高リターンを目指すのもよいでしょう。

公務員の年金制度についてはこちらも参考にしてください。
公務員は確定拠出年金に参加できる?
年金の種類を教えて!国民年金・厚生年金・共済年金について調べてみた

パターン3:専業主婦・主夫など

  • 第3号被保険者(年金保険料負担ナシ)
  • 個人型(iDeCo)=掛金月額2万3000円

専業主婦・主夫には退職金はありませんが、iDeCoなら主婦・主夫業の退職金の代わりとして準備することもできます。

iDeCoは60歳以降に年金として受け取る以外に、一時金での受け取りもでき、退職金と同じく受け取り時の「退職所得控除」が利用できるのです。収入がゼロであれば所得控除による節税効果はありませんが、運用中の利益が非課税になるメリットがあるので、自分名義の老後資金作りにはピッタリといえるのではないでしょうか。

確定拠出型年金パターン別 (写真=DenisFilm/Shutterstock.com)

所得控除の金額をシミュレーションする方法

上限額が分かっても、実際に掛金をいくらにするかは、それぞれの家計事情によって変わってきます。いろいろなライフイベントを考慮しつつ、各条件で所得控除の金額や節税額を計算するのは骨が折れますね。そんなときの強い味方が、確定拠出年金のシミュレーションができるウェブサイトです。

たくさん有る中でも特に、今回は特定の商品や会社に偏っていない中立的な立場で運営されているサイトをご紹介します。

「iDeCoナビ」

確定拠出年金教育協会が運営している「iDeCoナビ」は、個人型確定拠出年金の仕組みなどを動画で解説していて、とても分かりやすくなっています。短時間の動画であれば、スキマ時間にもチェックできますね。また、各金融機関の比較検討ができるページは、各社のラインナップを知るのにも便利ですので、ぜひ活用してください。

「iDeCoポータル」

JIS&T(日本インベスター・ソリューション・アンド・テクノロジー)が運営する「iDeCoポータル」は、年金制度や確定拠出年金の基礎知識、働き方や収入金額ごとに分かるiDeCoでの節税メリットシミュレーション、各金融機関のiDeCo商品比較など、幅広く情報を集めることができるiDeCo総合サイトです。「マンガで分かる確定拠出年金」はスマートフォンでも読みやすいコンテンツで、まずは概要をざっと頭に入れておきたい人にもオススメですよ。

所得控除を受ける方法

iDeCoの掛金は、会社員であれば給与天引き(源泉徴収)か、自分名義の銀行口座から口座振替で支払います。掛金の支払いが給与天引きであれば、所得控除を受けるための手続きは必要ありません。会社が源泉徴収する際に掛金分を差し引き、残りの金額を給与として計算しているのです。

銀行口座振替の場合は、10月頃に国民年金基金連合会から「小規模企業共済掛金払込証明書」が送られてきます。年末調整のときに、その払込証明書を会社に提出をすることで所得控除が受けられます。還付金は12月の給与と合わせて受け取ることができますので、こちらもあまり手間ではないでしょう。

自営業やフリーランスであれば、確定申告をします。会社員でも2カ所以上から給与を受けている人や、副業で得た所得(給与所得以外の所得)が20万円を超える人、年収が2000万円を超える人などは確定申告が必要です。

確定申告では「小規模企業共済等掛金」として計上し、証明書を添付します。確定申告の期間は概ね2月16日~3月15日ですが、払い過ぎた税金を返してもらうための「還付申請」は1月1日から可能なので、早めに手続きをするとよいでしょう。還付金は、自分名義の銀行口座に振り込まれます。

住民税は、所得が確定してから所得控除後の課税所得で計算されるため、還付ではなく、翌年の税金が安くなるかたちで調整されます。

年末調整や年度末の確定申告期間は、ただでさえ忙しい時期。けれども、iDeCoの節税効果は、年末調整や確定申告をしなければ得られません。手続きは忘れずに行いましょう。

所得控除以外にもメリットはたくさん!

確定拠出年金は、掛金の所得控除のほかにも、運用益が非課税になる、受け取り時は公的年金等控除や退職所得控除が受けられるというメリットがあります。60歳までは基本的に引き出しできないことも、老後資金を確実に準備するにはメリットといえるでしょう。

公的年金だけでは不安な老後準備に、節税しながら資金作りができる確定拠出年金を、ぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。

タケイ啓子
ファイナンシャルプランナー(AFP)36歳の時に2人の子をつれて離婚し、大手生命保険会社に営業として就職。そ の後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを発症。現在はがんとお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。FP Cafe登録FP

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