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知らないと5万円損する「確定拠出年金」加入者の確定申告のやり方

控除の申請漏れで払い過ぎた税金の取り戻し方も解説します

いま老後の資産づくりとして話題となっている「確定拠出年金(かくていきょしゅつねんきん、略称:DC)」は、税制優遇を受けられることでも人気があります。

これは、「老後の資産形成に回すためのお金=掛金」を全額、所得から差し引いて税金額を算出できるためです。その分、所得税や住民税が安くなります。

実はこの恩恵、確定申告をしなければ受けられないのをご存知でしたか? 今回は、確定拠出年金制度(DC制度)にまつわる「確定申告」にフォーカスを当ててみましょう。

☆確定拠出年金(かくていきょしゅつねんきん)とは?
公的年金や企業年金にプラスするかたちで自分で積み立てる「年金」のこと。拠出したお金を、投資信託などで運用する。個人でも節税ができることや、2017年1月から加入対象者が拡大したことから、いま、老後資金づくりの方法として注目を集めている。(参考:これなら分かる!「確定拠出年金」がお得と言われる理由

確定申告とは?おさらい

まずは、確定申告の概念をおさらいしますと、確定申告とはその年の1月1日~12月31日の収入・支出、そして家族構成などを勘案し、収めるべき所得税額を確定させることです。

所得税=(収入-支出-各種控除)×税率

ここで言う「収入」とは、給与を含め事業で得た収入などを指します。

「支出」はその事業を行ううえで必要な経費やその年に納めた社会保険料などです。

「各種控除」(☆)とは、さまざまな状況に合わせて差し引かれるもののこと。配偶者控除や扶養控除などの「人的控除」と、生命保険料控除や医療費控除などの「物的控除」があります。

☆控除(こうじょ)とは?
税負担がなるべく色んな人にとって平等になるように考えられた「配慮」のこと。例えば、妻というパートナーを養っている人については、単身者に比べると生活をするのが大変なので、税金の負担を軽くしてあげましょう、という制度が「配偶者控除」です。(参考:そもそも「控除」って?配偶者控除をもっと分かりやすく説明してみた

確定拠出年金をすると、なぜ節税になるのか?

税金の計算をするときは、その1年間でたくさんお金を稼ぐことができたなら、それに比例して多くの税金がかかります。逆に稼ぎが少なければ、それに見合った税金が課せられます。

これを逆に言うと、計算のもとになるお金(所得額)が少ないほど、支払う税金の額も少なくなり、「節税」できるというわけです。

なぜ確定拠出年金をすると税金の負担が軽くなるのかといえば、先程説明した「物的控除」の中に「小規模企業共済等掛金控除」という項目があり、確定拠出年金の掛金は、この名目に該当するからです。

1年間に300万円稼いだ人が毎月2万円、確定拠出年金として積み立てていたとします。すると、本来ならば300万円稼いでいたはずなのに、確定拠出年金の掛け金(1年間で24万円)は税金の計算に組み入れなくてよいことになり、実質、276万円しか稼いでいない、と国がみなしてくれるのです。

「300万円稼いだ人」と、「276万円稼いだ(とみなされる)人」とでは、後者の方が税負担が軽くなる、というわけです。

確定申告の必要がある人・必要がない人

確定申告は「しなければいけない人」と「しなくてもよい人」の2つに分かれます。

確定申告する必要があるのは、主に次のような人です。

  • 事業所得や不動産所得がある人
  • 給与所得が年間2000万円を超える人
  • 副業(給与所得以外)の所得合計額が20万円を超える人
  • 2カ所以上から給与収入があり、その合計額から各種所得控除等を差し引いた金額が150万円を超える人
  • 災害などにより源泉徴収の還付や猶予を受けた人
  • 退職金所得がある人(※「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出した人は不要)
  • 海外転勤などの理由で出国する人のうち、出国期間が1年未満の人(※出国期間が1年を超える場合は非居住者となるため不要。ただし、出国前に国内在住期間の確定申告が必要】

確定拠出年金を利用している人は確定申告をしなければいけないのか?

上の中に「確定拠出年金」の文字はありませんから、「申告しなければいけない」ではなく「申告することができる」というポジションになります。

確定申告することによって、「確定拠出年金にこれだけ掛金として納めていますので、所得からその額を差し引いて、所得税の計算をしてください」と、税務署に申請をすることができる、ということなのです。

申請、つまりお願いベースですから、当然ながら税務署は、申告をしてこない人に対してわざわざ「確定拠出年金に加入されていませんか? もし加入していれば、確定申告することで所得税を下げられますよ」などと親切に教えてはくれません。節税するには、期限内に自分から申請しなくてならないということですね。

知らないと5万円損する (写真=fizkes/Shutterstock.com)

確定申告が必要なiDeCo加入者はこんな人!

さて、所得控除の恩恵を受けることを目的として、個人型確定拠出年金(iDeCo)制度に加入されている人も多いはずです。しかし、所得控除を受けるためには基本的に確定申告をしなければなりません。

個人型は支払い方法が2つに分かれていて、あなたはどちらに該当するかで確定申告が必要かどうか分かれます。

もっともポピュラーなのは、銀行口座からの引き落しで、こちらの方は確定申告が必要になります。個人事業主や専業主婦などはこの分類に該当するでしょう。

確定申告の方法としては、

①10月ごろに国民年金基金連合会から「掛金払込証明書」が届きます。自動的に送付されてきますので、個人で送付請求をする必要はありません
②年明け、確定申告書の「小規模企業共済等掛金控除」欄に払込証明書の金額を記入し、支払った掛金の証明書を確定申告書に添付するか提示します。

10月の時点では、年内の支払予定額が記載されているので、実際に記載通り口座振替ができていればそのまま、もし、残高不足などでの理由で口座振替ができなかった場合は、その分を払込証明書の金額から差し引いて申告します。

確定拠出年金は、口座振替が不能だった月があったとしても、さかのぼって追納することができません。振替不能月があれば、その月分の拠出・控除をともにあきらめることになります。

確定申告が不要なiDeCo加入者はこんな人!

では、確定申告をしなくてもよいiDeCo加入者はどんな人でしょう。それは掛金を給与天引きにしている方です。

企業型確定拠出年金(☆)を導入していない企業にお勤めの方や、導入企業でも拠出上限額までの差額を個人型確定拠出年金として支払っている場合、毎月、給与天引きとなっている人もいるでしょう。

その場合は、企業が掛金を把握しているので、企業の年末調整時にそのまま反映させることができます。「掛金払込証明書」が届いたら、勤め先の担当部署へ提出すれば「小規模企業共済等掛金控除」として年末調整されるため、個人として確定申告をする必要はありません。

☆企業型確定拠出年金(きぎょうがたかくていきょしゅつねんきん)とは?
まず、確定拠出年金とは公的年金や企業年金にプラスするかたちで自分で積み立てる「年金」のこと。特に「企業型」は、会社が掛け金を年金として積み立ててくれる(拠出する)。(参考:企業型確定拠出年金とは? 個人型と併用できるってホント?

企業型DC制度、選択制DC制度の加入者は?

企業型の確定拠出年金(DC)制度を導入している企業に勤めていて、大企業などに多い一般的なDC制度に加入されている場合、年末調整も確定申告もする必要はありません。

なぜなら、掛金を支払っているのが「個人」ではなく「企業」だからです。中小企業に多い選択制DC制度でも同じです。そもそも、個人として掛金拠出がないのですから、控除もないということです。

企業型DC制度のマッチング拠出とは

企業型DCの「マッチング拠出」とは、会社のDC掛金に上乗せするかたちで自分でも掛金を支払う仕組みです。このマッチング拠出制度を利用している場合、企業の拠出分は企業が、自身の拠出分は給与の中から天引きで支払われるため、給与から支払った掛金分に関しては所得控除を受けられます。

給与天引きであることから分かるように、掛金額は企業が把握しています。年末調整で小規模企業共済等掛金控除として控除されているはずですので、個人として確定申告をする必要はありません。

そのほか確定申告を行うべき人

  • 企業で年末調整を実施する際に「掛金払込証明書」の取り付けを忘れた人
  • 「小規模企業共済等掛金控除」を記入せず提出した人

このような人も、年明け後に確定申告をすることで、所得控除の恩恵を受けることができます。

確定申告は誰でも行える制度。会社員の場合、本来なら年末調整で完結できることですが、書類不備などで完結できなくても恩恵がナシになるわけではないのです。

所得控除の恩恵を受けられない人

ここまでいろいろと所得控除についてお話してきましたが、所得控除の恩恵を受けられない枠の人もいます。

所得のない専業主婦(夫)

そもそも、所得のない専業主婦(夫)は控除を受けることができません。2017年のiDeCo加入者枠の拡大で、専業主婦(夫)もDC制度の加入が可能になりましたが、所得のない者に対して所得税は課せられないのですから、当然、所得控除もないわけです。

ただし、所得のない専業主婦(夫)の方がまったくもってDC制度に加入するメリットは無いのかといえばそんなことはないと筆者は考えます。

・安い信託報酬(手数料)で投資信託の運用ができる
・運用期間中、利益が出た分について非課税
・60歳以降、それまで積み立てたお金を受け取るときに非課税

といったメリットがあるからです。

所得税の支払額がゼロの人

住宅ローン控除などで大幅な所得控除を受ける場合、課税対象の所得が計算上ゼロとなっている人も多いと思います。

課税額がないのですから、それ以上の所得控除はできません。ですから、このような人が確定申告で小規模企業共済等掛金控除として掛金を記入したとしても、節税効果は得られません。仮に、会社の年末調整で支払証明書を出し忘れたとしても、わざわざ確定申告を行う必要もないということです。

確定申告が必要な時期はいつか

それでは、DC制度に加入していて確定申告を必要とする人が、確定申告すべき時期はいつでしょうか? 皆さんもうお分かりですよね。

2017年の確定申告期間は、2017年2月16日〜3月15日でした。1年間で支払った「掛金」の総額が所得から控除されるわけですから、「掛金の支払いがあった年」に確定申告するということになります。

とはいえ、この期間に「申告漏れ」しても、5年以内であれば「還付申告」により、控除申請は何度でもやり直せるのです。

還付申告による還付方法では、「更正の請求」という手続きを取ります。税務署から受け取った「所得税の更正の請求書」に必要事項を記入し、該当年の掛金払込証明書を添付して、所轄の税務署に提出してください。払込証明書を紛失した場合でも、再発行してもらえますので、国民年金基金連合会に問い合わせましょう。なお、請求書は、国税庁や税務署のWebサイトからもダウンロードできます。

所得税の還付は、還付請求をしてから約1カ月後に指定した銀行口座に振り込まれます。

ただし、住民税については所得税とは異なり「還付」という概念がなく、翌年の住民税から差し引かれるかたちになります。住民税は前年の所得に応じて算出されるもの。その計算のもとになる所得額は、確定申告が終わった後に税務署からお住まいの区役所へ自動的に情報が渡され、明らかになるからです。

還付申告で所得の計算を改めて行ってから、翌年の住民税を計算するときに、本来支払う必要のなかった住民税額が調整され、還付と同等の効果を受けられるというわけです。

時期になって慌てないように

仮に確定申告の申請を忘れたとしましょう。

中小企業(企業型DCがない)に勤務のAさんは課税所得額300万円。月々、2万3000円のiDeCo掛け金を支払っていたとすると、節税額は5万5200円となります。

  • 所得税の節税額=2万3000円×12カ月×10%(所得税率)=2万7600円
  • 住民税の節税額=2万3000円×12カ月×10%(住民税率、一律10%)=2万7600円

控除し忘れてしまうと、5万5200円の余分な税金を払うことになります。

まだ暑い最中、皆さんは確定申告なんてまだ先のこと……と思われているかもしれません。けれども、そのときになってあわてないよう、制度の仕組みや利用するには何が必要かなどを早いうちから把握しておくのは、悪いことではありません。

また、まだ確定拠出年金に加入していない方は、この記事を読んで加入を検討されるのも賢い貯蓄ライフへの一つの手ですよ。

佐々木 愛子
ファイナンシャルプランナー(AFP)、証券外務員二種、相続診断士。国内外の保険会社で8年以上営業を経験。リーマンショック後の超低金利時代に、リテール営業を中心に500世帯以上と契約を結ぶ。FPとして独立し、販売から相談業務へ移行。10代のうちから金融、経済について学ぶことの大切さを訴え活動中。FP Cafe登録FP。

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