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よりおトクになる確定拠出年金の受け取り方

大切なのは始め方だけじゃない。節税額は受給方法でも変わります

節税しながら老後の資産づくりができると注目を集めている「確定拠出年金(かくていきょしゅつねんきん、略称:DC)」。

手数料の安い金融機関はどこなのか、どんな商品を購入するのかといった「始め方」にチカラを注ぐ人が多いのですが、実は「受け取り方」によっても節税効果に大きな違いが生まれます。

今回は、そんな年金の受け取り方について紹介します。

☆確定拠出年金(かくていきょしゅつねんきん)とは?
公的年金や企業年金にプラスするかたちで自分で積み立てる「年金」のこと。拠出したお金を、投資信託などで運用する。個人でも節税ができることや、2017年1月から加入対象者が拡大したことから、いま、老後資金づくりの方法として注目を集めている。(参考:これなら分かる!「確定拠出年金」がお得と言われる理由

確定拠出型年金はいつから受給できる?

「確定拠出年金」の受け取り年齢は原則として60歳以降と決められています。

確定拠出年金には、掛け金を会社が支払う企業型と、自分で支払う個人型(いわゆるiDeCo、イデコ)の2種類がありますが、いずれにしても「年金」という名の通り老後のための資金であり、受け取りできるは60歳以降と定められています。

いっぽう、公的年金の支給開始年齢は原則65歳。もし60歳で定年を迎えるとなると、確定拠出年金は、この5年間を補うため、あるいは公的年金に上乗せするために活用したい制度です。

ただし、受給年齢が65歳まで遅れる可能性もあります。それは、加入期間が10年に満たないケースです。

▽加入期間と受給開始年齢

  • 加入期間10年以上…60歳
  • 8年以上10年未満…61歳
  • 6年以上8年未満…62歳
  • 4年以上6年未満…63歳
  • 2年以上4年未満…64歳
  • 1カ月以上2年未満…65歳

ただし企業型の確定拠出年金の場合、会社によって受け取り開始時期が別に定められている場合もあります。

確定拠出年金の受け取り年齢は遅らせることも!

確定拠出年金の受け取り開始年齢は、遅らせることも可能です。

例えば、十分な額の退職金がもらえたり、定年が65歳であるなど、60歳から確定拠出年金を受け取らなくても生活に困らない人もいます。そんな方は、70歳を上限に、いつでも受け取りを延長できます。

確定拠出年金のメリットの一つは、運用で出た利益に税金がかからないことです。もしすぐに使わないお金なのであれば、できるだけ受給を遅らせた方がメリットは大きい、という考え方もあります。

住宅ローンの返済や子どもの教育費など、ライフスタイルに合わせて受け取り時期を決めるとよいでしょう。

また、60歳までの間でも、所定の障害を負った場合には「障害給付金」が、加入者が死亡した場合には遺族が「死亡一時金」を受け取れます。万が一に備えるためにも確定拠出年金は心強い制度なのです。

確定拠出年金の受け取り方は3つ

確定拠出年金は60歳になった時点で積み立てが終了します。その後は、受け取り方法も次の3つから選択できます。これが、確定拠出年金の魅力の一つでもあります。

  1. 「年金」のように何年かにわたって少しずつ受け取る
  2. 一括で全額、「一時金」として受け取る
  3. 一部を「一時金」、残りを「年金」として受け取る

※ただし、会社で企業型の確定拠出年金に加入している場合には、受け取り方法が各社の規約で定められている場合もあります

いずれも、受け取り時に税金が軽減されますが、その軽減の方法に微妙に違いがあります。なので、3つのうちどの受け取り方が良いのか、については、その人の積み立て金額や、もらえる公的年金の額によってケース・バイ・ケースとなります。

ちなみに、確定拠出年金の受け取りには手続きが必要となりますが、70歳を超えても手続きを行わない場合は、強制的に「一時金」として受取ることになります。つまり、年金型の受取りをしたい場合は遅くとも70歳前に手続きをしなければいけません。

では、①〜③までそれぞれについて詳しく解説していきましょう。

1.「年金」のように何年かにわたって少しずつ受け取る

・概要
5〜20年の間で期間を決めて均等額を受け取る方法と、5%~50%の間で割合を決めて受け取る方法の2パターンがあります。プランによっては、終身年金(死ぬまで年金を受取るタイプ)が選択できる場合もありますが、この点についてはこの後の「保険商品の年金受け取りによる方法もある」にてご説明します。

・税金はどうなる?
確定拠出年金を年金として受け取ると「雑所得」とみなされます。そして、この金額にまるまる所得税がかかるのではなく、「公的年金控除」という優遇制度を使うことができます。

国税庁のホームページによると、公的年金に関わる雑所得の金額は、

【収入金額✕収入に合わせた「割合」ー控除額】

で求められます。

imageTitle (画像=DAILY ANDS編集部)

例えば、65歳以上の方が、1年間で公的年金200万円と確定拠出年金300万円の合計500万円を受け取るとしましょう。すると、所得税がかけられるのは、「346万5000円」となります。計算式は次の通り。

(200万円 + 300万円)✕85%-78万5000円= 346万5000円

本来なら500万円に対して所得税がかかるところ、346万5000円に減りました。これが、公的年金控除の効果となります。

この金額にほかの所得を合わせて、所得税率を掛けたりして計算した金額が所得税となりますが、税負担は「500万円」の時よりも少し軽くなります。

・注意点は?
この方法ですと、当然のことながら受け取る金額が大きくなると、税金の支払い増額につながります

その結果、健康保険料や介護保険料にも影響が出ることにも注意が必要です。また、受け取る際には、事務手数料や振込手数料がその都度かかることも覚えておきましょう。

2.一括で全額、「一時金」として受け取る

・概要
その名の通り、積み立てた金額を一括で受け取る方法です。先程も紹介しましたが、70歳を超えても手続きを行わない場合は、強制的に「一時金」として受取ることになります。

・税金はどうなる?
一時金として受け取る場合、「退職所得」とみなされます。この時もやはり、まるまる所得税の課税対象になるのではなく、「退職所得控除」という優遇制度を利用することができます。

退職所得控除とは、老後を安心して暮らせるように、退職金にかかる税金が、他の収入に対する税金よりも優遇される制度のことです。これが、かなり影響が大きいのです。

例えば、確定拠出年金に24年3カ月間加入し、1500万円を積み立てたとしましょう。

退職所得は、

【(収入金額ー控除額※)✕1/2】

で求められますので、課税対象は175万円となります。

控除額については、勤続年数によって決められています

▽控除額の求め方

  • 勤続年数20年以下のとき……40万円✕勤続年数(80万円に満たない場合には80万円)
  • 20年超のとき……800万円+70万円✕(勤続年数ー20年)

※今回の場合の計算式は800万円+70万円×(25-20年)= 1150万円
※積立期間を勤続年数と読み替えて計算(1年未満の日数は切上げ)

本来なら1500万円に対して所得税がかかるところ、175万円に対してしか、所得税がかけられなくなるのです。退職所得控除に非常に大きな効果があることがわかります。

・注意点は?
ただ、この方法は会社から支給される退職金も合わせて計算するため、退職金額が大きくなると税金の支払い額が増えることになります。その場合は時期をずらして受け取ることも考えたいところです。

注意したいのは、それ以前に別途退職手当が支給されている場合などには、勤務期間と積立期間の重なった時期が「なかったもの」とされ、退職所得控除額の調整が行われることも。事前に税務署や税理士に相談し、税制面でもタイミングのよいときに受け取れるよう、時期を決めたいところです。

3.一部を「一時金」、残りを「年金」として受け取る

年金受け取りと一時金としての受け取り、どちらの場合も一長一短があります。そこでおすすめしたいのが、一部を一時金、残りを年金として受け取る方法です。

60歳が定年なら、65歳までの5年間は年金をお給料のように受け取り、公的年金が支給されたら、残金を一時金として受け取るという使い方ができますね。

☆控除(こうじょ)とは?
税負担がなるべく多くの人にとって平等になるように考えられた「配慮」のこと。例えば、妻または夫というパートナーを養っている人については、単身者に比べると生活をするのが大変なので税金の負担を軽くしてあげましょう、という制度が「配偶者控除」です。(参考:そもそも「控除」って?配偶者控除をもっと分かりやすく説明してみた

よりおトクになる確定拠出年金2 (写真=Natee K Jindakum/Shutterstock.com)

保険商品の年金受け取りによる方法もある

確定拠出年金を年金として分割で受け取るには、10年などの期間を決めて均等額を受け取る方法と、5%~50%の割合を決めて受け取る方法があります。その他、積立金を「確定年金(①)または「保証期間付き終身年金(②)」に移し替えて、保険で受け取る方法もあります。

①と②のどちらを選んでも年金としての受け取りになるので、「公的年金控除」を利用し税金の軽減が可能になります。

①確定年金で受け取る

年金を一定の期間を決めて受け取ることが「確定」しているので、「確定年金」と呼ばれています。例えば、60歳時点の資産残高100万円を10年の期間を決めて受け取るとすると、1年間に10万円を受け取ることができます。

しかし、これは裏を返せば期間が過ぎると受け取る年金がなくなるということでもあります。その後の暮らしをどうするかも考えておく必要があるでしょう。年金の受け取り期間中に本人が亡くなった場合は、遺族に一時金で支払われます。

②保証期間付き終身年金 

「終身年金」は一生涯、自分が生きている間は一定金額を受け取り続けることができる年金です。ただし保障期間付きであるため、10年などの保証期間を過ぎて本人が亡くなった場合には、積立金が残っていても遺族には支払われません。本人がなくなった時期が保証期間中であれば、積立金の残りは一時金として遺族に支払われますが、場合によっては一部掛け捨てになる可能性もあることに注意が必要です。

確定拠出年金の運用商品は、大きく分けて、元本保証があるかないかの2種類です。

  • 元本が確保される商品=預金、保険
  • 元本が確保されない投資商品=投資信託

保険商品は「元本が確保される商品」だから安心だと思っていても、マイナス金利が続く今の時代、安定した運用ができないうえに、商品自体が取扱商品からなくなるというケースも出ています。加えて、自分で途中解約すると解約控除で元本割れすることも。受け取り方を選ぶには、情報収集がポイントとなります。

受け取るときはどこに連絡したらいいの?

年金制度は自分で手続きを進めることにより受け取りが可能になる制度です。ハガキなど連絡が来ることはあっても、何もせずとも自動的に受け取りができることはありません。

確定拠出年金では、裁定請求書類の提出先である「記録関連運営管理機関」に、裁定請求書やマイナンバーなどの必要書類を添えて申し込みます。このとき、申込先が「運用関連運営管理機関」ではないことに注意しましょう。一時金として受け取りたい場合には「退職所得の受給に関する申告書(退職所得申告書)」の提出も必要です。

記録関連運営管理機関は、取引している金融機関によってそれぞれ違っています。確定拠出年金の加入時に送られてきた一式の書類を確認してみてください。詳しい連絡先が記載されているはずです。

個人型(iDeCo)に加入している場合は、取引している金融機関に問い合わせることでも裁定請求書類が入手できます。まずは加入先金融機関のWebサイトを確認しましょう。

裁定書類を提出すると給付を受ける権利の裁定が行われ、支給または不支給が決定します。その後、規約などで定められたスケジュールに従い、問題がなければ、1カ月から2カ月程度で資産管理機関などから指定口座に老齢一時金が振り込まれます。

注意していただきたいのは、手続きに期限があることです。70歳の期限までに手続きをしないと「老齢一時金」の請求書類が送付され、もし一定の期限までにその書類を提出しなかった場合、個人別管理資産は最終的に法務局に供託されてしまいます。受け取りたい年齢に達したら速やかに手続きするとともに、確定拠出年金に加入していることを家族にも伝えておくといいでしょう。

確定拠出年金、企業型と個人型(iDeCo)で受け取るときの違いはあるの?

企業型の確定拠出年金に加入している場合は、掛け金を会社が支払う手前、企業が定めたルールに従うことが原則です。退職金代わりにしたいから一時金で受け取りたいと思っても、年金としてのみ受け取りが可能ということもあり得ます。

また、就職してから3年未満で退職した場合には、事業主が積み立てた掛け金の全部または一部を事業主に返すことができることも覚えておいた方がよいでしょう。これを「事業主返還」といいます。詳細は加入プランの規約で定められているので、どんな規約があるのか確認しておくことをおすすめします。

対して、個人型(iDeCo)は、自分の意志で加入して掛け金を支払うものですから、受け取り方を自分で選ぶことができます。

その他、企業型なら勉強会への参加といったサポート体制が充実しているのに対し、個人型は自分で情報を取りに行く姿勢が大切ということが大きな違いでしょう。個人型では特に、前もっての準備が必要となります。

控除額の差を念頭に、受け取る時期と方法を選ぼう

確定拠出年金は、受給のタイミングと受け取り方で控除額に差が出ることがご理解いただけたでしょうか。60歳までは基本的に引き出しができないことは、老後資金を確実に準備できるというメリットとも言えます。自分の決断が老後を決めることにつながるので、慎重にかつ最大限に確定拠出年金を利用してください。

辻本 ゆか
夫婦ふたりの暮らしとお金アドバイザー、CFP。大手金融機関にて個人向け営業に従事。その後、乳がんを発症した経験から、備えることの大切さを伝える活動を始める。FP Cafe 登録FP。

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