(写真=筆者撮影)

「結婚の価値を下げたい」紫原明子さんの自由になれる人生論

公開インタビュー 『家族無計画』著者・紫原明子さん(下)

起業家の家入一真(いえいり・かずま)氏と31歳で離婚し、現在はエッセイストとして活躍中の紫原(しはら)明子さんに2017年6月6日、スルガ銀行とDAILY ANDSが共催で公開インタビュー(会場:東京・六本木ミッドタウン「d-labo」)を行いました。その様子を全3回にわたってお届けしています。

「上」では紫原さんの講演の様子をを、「中」ではDAILY ANDS編集長くすいともこによる紫原さんへの公開インタビューの前半を紹介しました。

最終回の「下」では引き続き公開インタビューの内容から、紫原さんが思う「自由になれる人生論」を伺います。

「モラハラ夫」との離婚を考える妻が相談に来る

くすい:今のお仕事は、文筆業や講演など、多岐に渡りますが、やることとやらないことは決めていますか?

紫原:基本的に私はキャリアの途中の人間なので、やらないことを決めるわけにはいきません。ただ、お請けしても、良い記事が書けなそうだな、とか、依頼してくださった方のお役に立てなさそうなものはお断りします。

仕事として、離婚の相談を受けることもあります。ずっと専業主婦で、これから離婚したいという相談です。稼いでいる男の人はどうしたって社会でちやほやされるし、結果、いわゆる「モラハラ」(モラルハラスメント、精神的な暴力や嫌がらせのこと)になる場合も多いですから。

くすい:モラハラですか?

紫原:だからお前はダメなんだ、と家庭の中で言われ続けたり。真に受けて「私はダメな人間」と自立心を折ってしまう女性も少なくないようです。気づいた時にはモラハラを受けすぎて立ち直れないような状態になっていて、涙ながらに離婚や就職の相談をされる方もいます。

自由になりたい妻は、小さな会社でチャンスを探そう

くすい:そんな人にはどのようなアドバイスをするのですか?

紫原:派遣でもアルバイトでもいいので、とにかくまずは家から出て外で働いてみることを勧めます。大きな会社の場合、派遣から正社員になれることはまれなので、小さな会社やベンチャー企業がお勧めです。たいてい人手が足りないので、意欲さえあれば何でもやらせてもらえたりします。

私も、非営利団体での活動がきっかけで出版社に入り、最初は食器を洗う係みたいな感じで雇われました。でも人手が足りず、あるときから急に広報をやることになりました。

そのときに仕事を通じて知り合った人から「PR会社で働きませんか」と言われて、PR会社で働きました。そのときは、大手ディベロッパーからの案件を担当しました。大卒でもない私がそうやって転職できたのも、最初は非営利団体の無償のお手伝いがきっかけです。

PTAの役員を引き受ける、でもいいと思うんです。仕事に前向きで、信頼できる人なら、そこから声がかかる可能性もあります。

もし少しでも疑問を持ったら、夫婦関係で理不尽な目にあわされる苦労と、外に出てキャリアを積み上げることと、どちらの苦労が大きいかということを、一度冷静に天秤にかけて考えるべきだと思うんです。

少なくとも都心部であれば 、人手不足の今は、やる気があればキャリアがなくてもチャンスはあると思います。

imageTitle (写真=筆者撮影)

結婚も「(仮)」で考えれば生きやすい

くすい:紫原さんは、次の結婚を考えたりしていますか?

紫原:はい。理由がありまして、私は結婚の価値を下げたいと思っているんです。結婚って、50年60年という長い間ずっと一緒にいるということで、「完遂」できた人は本当に素晴らしい、超ラッキーですが、でも、できなくても悪いことじゃない。

そもそも、結婚が大きな契約になりすぎていると思っています。結婚・離婚という選択をもっとカジュアルにできるようになった方が世の中のためだと思っていて、でも結婚したことのない人がそう言うのは難しい。だから私は一度離婚を経験している者として2回3回と結婚したいんです。それが自分の役目かなと思っています。

『家族無計画』にも書きましたが、結婚だけでなく、あらゆる肩書きを(仮)で決めればいいと思うんです。彼氏(仮)、彼女(仮)、結婚(仮)といった具合に。

「仮」なんだからしょうがないよね、というふうに、自分がいつでも自由になれる状態を自分で担保しておく。精神をある程度自立させておく、というか。それが生きやすくなる秘訣なのではないかと思っています。

女性はわがままになった方がモテる

くすい:独身女性からの相談も受けますか?

紫原:独身男女からの相談もめちゃくちゃ受けますよ。それで思うことは、男性と女性とで頑張っているベクトルがまったく逆であるということ。

彼女がほしいのにできない男性ってモテるために自分を向上させようとする。喋りが上手くなりたい、おしゃれになりたいって、関心は自分に向いていますよね。一方、彼氏ができない女性は相手に譲歩してしまっている。相手に合わせて自分を変えようとする。

本当は、男性は女性のことをもっと知ろうとして「君は何をしたい?」と耳を傾けた方がいいし、女性は「私はこうしたい」と、多少わがままに主張した方がモテるように思います、周りを見ていると。

恋愛も結婚も妊娠も「運」でしかない

紫原:婚活にも思うところがあります。

お見合いサービスって、お金を払ってお見合いをするのだから、より多くの人にアピールできるように、みんな最大公約数のプロフィールを書くみたいなんです。

くすい:全員が無難なことを書いてしまうと、逆にミスマッチが増えそうな気がします。

紫原:そうなんですよ。それにデートしていても、突然仲人さんを介して断りの連絡が来てそれきり会えなくなることもあるそうで。理由もわからないので、傷ついたり、人間不信になってしまう人もいます。

くすい: 何がいけないんだろうって落ち込んでしまいそうですね。

紫原:やっぱり結婚の価値を下げないといけないって思うんです。結婚も恋愛も妊娠も出会いがなければ始まらないし、出会いって自分だけじゃどうしようもない、最終的には「運」でしかないじゃないですか。

たまたま出会って結婚して子どもができて、という流れになるのでそうした運に左右されることに対して自分が「できる」「できない」で悩む必要はない。

imageTitle 会場の「d-labo」には、夢をキーワードにした図書が飾られています(写真=筆者撮影)

女性はどんな生き方でも責められるもの

紫原:女の人って何をやっても責められますよね。結婚しなくても責められる、結婚しても子どもがいなければ責められる、働かなかったら楽をしているといわれ、働いたら「子どもがかわいそう」となる。

以前のママ友には専業主婦が多かったので、働き出した直後は「子どもがかわいそう」と言われたことがあります。実は私もそう思っていました。

でも今振り返ると、別に悪いことじゃなかったと思っています。子どもだって、たまには1人でぼーっとしたいこともあるでしょうし。家族を養うために働いているんだから。

くすい:つまり女性は、万人を説き伏せるような生き方はできない。

紫原:そうです。で、じゃあ男性が楽かというと、確かに働いていれば万人を納得させられるけれども、働く以外の選択をした場合の辛さは女性以上にある。

私、無職の男の人と付き合ったことがあります。無職の人は平日にデートができるので、子持ちにはいいんですよ(笑)。どこかに魅力を感じられれば、無職でも何でもいいと思います。

失敗した後は、生きやすくなる

紫原:私は、離婚するまでは、すごく華々しい人生だったと思っています。

高校時代は、いい学校に行っていて、勉強もできるほうでした。ですから大学受験をやめて18歳で結婚した時点で「あの子も終わったね」みたいな存在になったんです。

ところが「あの子、お金持ちになっているらしい」「旦那さんが起業して、雑誌に出ていた」「豪邸に住んでいるんだって」となりました。

でも離婚とともに「旦那さん」はいなくなり、お金もなくなり、 それはとても悲しいことのようですが、実はそこでやっと自由になれた。

裸一貫になったといいますか、足かせが外れたような気がするんです。一度レールを外れると戻りにくい世の中だとは思いますが、たまたま外れてどうしようもない、でも何とかラッキーなことに楽しい生活が続けられている、今は結果として良かったと思っています。失敗した後は、生きやすくなると思うんですよ 。

くすい:そのためにも、結婚と離婚の価値を下げたいということなんですね 。

「みんな、自由でいいよ!」を伝えたい

最後に、会場となった「d-labo」から「紫原さんの夢は何ですか?」という質問がありました。

紫原: 「みんな、もっと自由でいいよ!」と言いたいのですが、そのまま言っても説教くさくてなかなか伝わらないなということを感じています。伝え方には色々なやり方があると思うので、アプローチを変えて、最近はフィクションに取り組みたいと考えています。もっと色々なものを書けるといいな、というのが私の夢です。

人生をもっと「生きやすく」

元気が出ないとき、人生に悩んだとき。何度でも読み返したいフレーズが盛りだくさんの公開インタビューとなりました。

「やる気があればキャリアがなくてもチャンスはある」
「結婚生活を『完遂』できた人は本当に素晴らしい。でも、できなくても悪いことじゃない」
「結婚や出産など、運に左右されることに対して自分が『できる』『できない』で悩む必要はない」
「あらゆる肩書きを(仮)で決めればいい。自分がいつでも自由になれる状態を自分で担保しておくと生きやすくなる」
「失敗した後は、生きやすくなると思う」

あらためて紫原さんの言葉を並べてみると、もしかしたら世の中には「生きにくさ」に悩んでいる方が多くいるのかもしれない、と思えてきました。

この公開インタビューが、一人でも多くの読者にとって、生きやすくなるための助けになれば幸いです。

(公開インタビュー 『家族無計画』著者・紫原明子さん、おわり)

【紫原さん公開インタビュー そのほかの記事はこちら】
上:資産10億円から転落。紫原明子さん「日本一炎上しがちな夫」と離婚するまで
中:「夫に稼ぎがあっても、経済的に自立した方がいい」紫原明子さん語るお金の哲学

登壇者プロフィール

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紫原 明子(しはら・あきこ)さん:写真左

エッセイスト。1982年福岡県生まれ。高校卒業後、音楽学校在学中に起業家の家入一真氏と結婚。のちに離婚し、現在は2児を育てるシングルマザー。著書に『家族無計画』(朝日出版社)、『りこんのこども』(マガジンハウス)などがある。

くすい ともこ:写真右

DAILY ANDS編集長。1988年富山県生まれ。地方紙で5年間記者として勤務後、ZUUに入社。ZUU online編集部を経て16年より働く女性の投資メディア「DAILY ANDS」編集長。「無理のない範囲でコツコツ」をモットーに資産運用を実践中。

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