(写真=筆者撮影)

「夫に稼ぎがあっても、経済的に自立した方がいい」紫原明子さん語るお金の哲学

公開インタビュー 『家族無計画』著者・紫原明子さん(中) 

起業家の家入一真(いえいり・かずま)氏と31歳で離婚し、現在はエッセイストとして活躍中の紫原(しはら)明子さんに2017年6月6日、スルガ銀行とDAILY ANDSが共催で公開インタビュー(会場:東京・六本木ミッドタウン「d-labo」)を行いました。その様子を全3回にわたってお届けしています。

前回は家入氏との出会い、結婚時代の収入の変遷について紫原さんに語っていただきました。「中」となる今回は紫原さんの「お金の哲学」を公開インタビューという形で深堀りします。「夫に稼ぎがあっても経済的に自立した方がいい」という言葉に込められた思いとは?

経営者は妻に家計を公開しない

くすい:先ほどの講演では、著書『家族無計画』にないお話も含め、波乱万丈な人生をお聞きすることができました。かなり変わった結婚生活時代だったようですね。

紫原:そうですね。離婚してから新たに知る事実もあります。あるとき夕飯を食べながら子どもたちとテレビを見ていたら 夫がバラエティ番組で「やらかした企業家」というテーマで出演していて、「僕ね、六本木のキャバクラで3億使ったんですよ」と話していたわけです。家族全員でうつむきましたよ(笑)。

くすい:元ご主人が、一番稼いでいた時の収入はいくらだったんですか?

紫原:当時私は、元夫から必要な分だけ生活費をもらうという形で生活していましたので、月収がいくらかというのはそれほど意識していませんでした。給料が振り込まれる口座を私は見たことがありませんでした。当時の私と同じような立場(経営者の妻)のママ友からも話を聞いたことがあるのですが、そのお宅でもやっぱり必要な額だけ生活費を渡されるというスタイルでした。

くすい:経営者の方は、奥様にあまり収入を公開しないことが多いんでしょうか?

紫原:そうかもしれません。離婚しようとしたとき、数億円あったはずの 資産もほぼ消えていて。ただ、養育費は払ってもらうことにして、今でも本当にちゃんと払ってくれていて、それは良かったと思っています。東京で子ども2人を育てて、しかも都心に住み続けるというのはシングルマザーにとっては相当難しいことですから。世の中では離婚した後に養育費を払い続けてくれる人って2割にも満たないらしいんです。元夫は、今は新しい家庭もあります。そんな中でちゃんと払い続けてくれている、これは尊敬に値します。離婚する直前はそんな風にはまったく思えませんでしたけど。(笑)

imageTitle (写真=筆者撮影)

「カラオケ1時間12万円」のお付き合い

くすい:当時のお金の失敗談は何かありますか?

紫原:失敗談というわけではないのですが、稼げるようになってくるとお付き合いが発生するので、出ていくお金も大きいですよね。

こんなことがありました。家族ぐるみで付き合いのある友人達と、夫達がよく行くという六本木のカラオケ屋さんに行ったんですね。「今日はうちで払うから」と言って、ママ友が会計に行ったのですが、ちょっと戻ってきて小声でパパを呼んで指で「1」と「2」をつくっているんです。

1時間くらいしかいなかったのですが、高級そうなお店だったので、お会計が1万2000円だったのかと思い「いいよ、割り勘にしようよ、6000円払うよ」と言ったのですが、何とその金額は12万円でした。

くすい:カラオケ1時間で12万円ですか。そういう、お金持ちの独特のコミュニティみたいなものがあるんでしょうか?

紫原:家賃の高い賃貸マンションがあるようなエリアだと同じような生活水準の人が住んでいるので、そういうコミュニティはありますね。

豪華さでは測れない、幸せな引っ越し

くすい:紫原さんは最高で月120万円まで、都内でいろいろな高級物件に住んだそうですが、現在はどんなお家に住まれているのでしょうか。

紫原:築50年以上で、4階なのにエレベーターもなくて、トイレもすぐ詰まるような賃貸マンション住まいです。なぜそんなところにしたかというと、壁の塗り替えなどのDIYを自由にしていい物件だったからです。

離婚する前の住まいにはプールが付いていて、広くて、確かに豪華でした。プライドもあっただろうに、よくそんなところに引っ越しできたね?と言われることもありましたが、私にとっては、プールを手放してでも、壁を塗りたい気持ちでいっぱいになったんです。自分が好きなように暮らしたいなあと。

なので、「都落ち」ではなく、私にとっては幸せな引っ越しだったんです。お金では気づかない価値がある、そのことが引っ越しで分かりました。

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妻に稼ぐ力があれば、自由になれる

くすい:紫原さんに「お金の話をしていただきたい」と最初にお願いしたとき、「どんなに夫に稼ぎがあっても、妻も稼いだ方がいい」というお話がありましたよね。

紫原:やっぱり、お金はいろんなことを媒介してくれますので。子育てをしていると時間も人手もいくらあっても足りなくなりますし、お金は足りないそれらを補うことができますから。

電車に乗らなければならないところを、時間を節約してタクシーで行くとか。自分が稼げると「自由度が上がる」というのはそういう意味もあります。

それと同時に金額は少なくても「自分は社会に役立っている」という充実感も、めちゃくちゃ得難いたいものです。ほかがいろいろだめでも、仕事で誰かの役に立てれば、自分自身が価値あるものだと思わせてくれますから。

くすい:自分にも稼ぎがあるといいな、と思われたのはいつ頃でしょうか?

紫原:離婚したくてもできないと思ったときなので29歳くらいでしょうか。可能なら今すぐにでも離婚をしたいけれど、夫はキャバクラでお金を使い尽くして家にはお金がない、私にも稼ぐ能力がない、という中で「仕事をしないとやばい」と切実に思いましたね。

くすい:お金がないと離婚もできないという事実。

紫原:はい、事実を突きつけられたわけです。ただ、それまでもずっと、自分が「働いていないこと」の後ろめたさというものは持っていたと思います。

子育ても社会にとっては重要な仕事の1つなんだけど、子育てをしているときは自分の価値を自分で認めてあげられない時があって。

自分は社会に役に立っていないんだな、人のお金で食べさせてもらっているんだな、というところにずっと負い目を感じていました。私はビジネスメールの書き方も知らない、とか。

子どもたちの「体験」にお金をかける

くすい:現在、お金の管理はどのようにしているのでしょうか?

紫原:レシートをスマホで撮影すると仕分けされるアプリを使っています。クレジットカードを登録することもでき、家計簿をつけなくても家計管理ができます。

このアプリ、体重計と似ているなあと思います。2、3日体重計に乗らないと体重計に乗るのが怖くなってしまうのと同じ で、2、3日開かないと開くのが怖くなってしまう。

支出も体重もそうですけれど、目を離したすきに増えているので、毎日見ておかないといけないということに最近気がつきました。

節約はなかなか難しいですが、頑張っています。理由は、子育てにむちゃくちゃお金がかかるので。

子どもたちは15歳と11歳ですが、私立校に行くと学費もかさむし、塾代も、多いときは家賃と同じくらいかかります。それに地味に歯列矯正も結構な負担です。トータルでは1人80万円はかかっています。

くすい:逆にお金を使うように、心がけていることはありますか?

紫原: 子どもに体験をさせる、ということですね。うちの子たちはデジタルネイディブで、バーチャルな情報にあたりまえに浸っていますから、バランスをとる目的で、小笠原とか屋久島、八丈島など色々な島に行きます。

自然が売りの観光地にはたいてい、ネイチャーガイドさんがいるので、その方にお金を払って安全なルートで山に登らせてもらったり、シュノーケリングをしたり。ひとり親家庭、特に母子家庭だとアウトドアが疎遠になりがちなんですが、ガイドさんに頼るといいですよ。

くすい:今までを振り返った中でお金に関して「もっとこうしておけばよかった」ということはありますか?

紫原:私がもっと早く、お金に興味を持てばよかったと思います。お金がなくなってから興味を持ちましたから、お金が残っているうちに興味が持てればよかったですね。まあ後から言ってもしかたないんですが(笑)。

次回は「自由になれる人生論」

波乱万丈の結婚時代の「お金の話」について、ここでは紹介しきれなかった小話も含め、紫原さんはあくまで淡々とした口調でお話ししてくださいました。それが逆にリアルで、来場した人たちは圧倒されていたように思います。

最終回となる次回は、紫原さんが世の女性たちに贈るエール、「自由になれる人生論」についてお届けします。お金はもちろん、女性のキャリア、恋愛、結婚、人生観に直結する盛りだくさんの内容となりました。(公開インタビュー『家族無計画』著者・紫原明子さん「下」に続く)

登壇者プロフィール

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紫原 明子(しはら・あきこ)さん:写真左

エッセイスト。1982年福岡県生まれ。高校卒業後、音楽学校在学中に起業家の家入一真氏と結婚。のちに離婚し、現在は2児を育てるシングルマザー。著書に『家族無計画』(朝日出版社)、『りこんのこども』(マガジンハウス)などがある。

くすい ともこ:写真右

DAILY ANDS編集長。1988年富山県生まれ。地方紙で5年間記者として勤務後、ZUUに入社。ZUU online編集部を経て16年より働く女性の投資メディア「DAILY ANDS」編集長。「無理のない範囲でコツコツ」をモットーに資産運用を実践中。

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