(写真=Amirul Syaidi/Shutterstock.com)

【連載】「マネー相談は人生相談。女性FPたちのホンネ日誌」

#22 「乳がん発覚」でもがん保険の診断給付金を受け取れなかった理由

タケイ啓子のつぶやき【後編】

あまり表に出ることのないファイナンシャル・プランナー(FP)という職業の女性たちに、普段どんな相談を受けているのかリレー日誌形式でつづってもらう連載の後編。前編でFPタケイさんは、「乳がん告知を受けたのに保険がおりなかった」という38歳の女性に、まずは利用できる公的な保障について説明しました。ところでなぜご相談者の保険がおりなかったのか。調べてみると、相談者が把握していなかった契約内容が判明しました。

【前編はこちらから】

保険会社から「手術はいつですか」と聞かれた

彼女が加入していた保険は3つありました。がん保険、医療保険、個人年金保険です。がん保険には診断給付金があるのですが、保険会社に問い合わせてみたところ、給付金は出ないと言われてしまったと言うのです。

詳しく聞くと、「手術はいつですか」と聞かれたので「まだ決まっていません」と答えたら「では給付金は出ません」というやりとりだったようです。

がん診断給付金が受け取れる条件とは?

がん診断給付金が受け取れる条件は、保険商品によって違いがあります。診断がついたら受け取れる保険もありますが、がん治療のための手術が条件になっているもの、入院して手術をすることが条件のものなどがあるのです。

彼女のがん保険は、入院して手術をすることで給付金が出るものでした。保険会社の担当者も、もう少し親切ならいいのにと思いました。せめて、「手術の日が決まったら連絡してください」と教えてくれたら、ご相談者はこんなに悩まなかったかもしれません。

医療保険は、入院と手術に給付金が出るので、こちらも手術日が決まれば手続きの書類を請求できます。年金保険には医療特約などは付いていなかったので、今回の給付はありませんでした。

「隠れた保険」の存在が判明

彼女は住宅ローンの支払いの心配をしていました。そこで、筆者は「もしかして、もう一つ相談者は『隠れ保険』に入っているかもしれない」と思いました。

それは、団体信用保険のことです。団体信用保険とは、住宅ローンを組むときに強制的に加入させられるもので、住宅ローンの返済中に契約者が亡くなったとき、代わりに残りのローンを支払ってくれるという保険です。

確認してみると、住宅ローンはご主人と同額で組んでいて、団体信用保険にも加入していました。しかも、三大疾病特約付きで、がん・脳卒中・急性心筋梗塞の場合はローンの残債がなくなるタイプ。

ご相談者は「すっかり忘れていたけれども、これはいい保険に入っていた」と喜んでいました。

ただ、条件をよく読むと「がんであることが病理組織学的所見(生検)により診断確定された時」とあります。一般的に診断確定は手術後、組織の病理検査をしてからになります。念のため保険会社に確認をしましたが、やはりローンの残債がなくなるのは、手術後の診断確定後とのことでした。

ファイナンシャル・プランナー, タケイ啓子, がん (写真=Guschenkova/Shutterstock.com)

相談はここで終わり…ではありません

ひとまず、ご相談者の「なぜ保険がおりなかったのか?」という疑問はクリアーになりました。

しかし、FPとしてはもちろんそこで相談は終わりません。キャッシュフロー表をつくるのです。キャッシュフロー表は、収入と支出の予定を書き出して計算するもので、今後、ご相談者の収支が赤字になってしまわないかチェックをすることができます。

通常は年単位で作るところ、今回は月単位でキャッシュフロー表を作りました。

キャッシュフロー表を作ってわかったこと

まずは治療計画をもとに、月ごとに治療費がいくらかかるか概算を出し、生活費や教育費などその他の支出を織り込んでいきました。治療が進んでいって、住宅ローンの支払いがご主人の分だけになったり、保険の給付金を受け取ったりすることになれば、家計の収支は大きく変わります。

今回、キャッシュフロー表を作ってみると、手術前の抗がん剤治療の間は貯金の取り崩しが必要になりますが、術後は給付金等で補てんできるということがわかりました。

ひとりで抱え込まないで

ご相談者も治療費の見通しが立ったら気持ちが落ち着いてきたようです。大きな病気がわかった直後は気持ちの整理がつかず、どうしたらいいのかわからなくなることが多いもの。そんな時は、ひとりで抱え込まないことが大切です。

彼女との相談は、その後仕事をやめたり休んだりしたらどうなるか、子供の進学の準備はいつ頃から始めたらよいかなどにも及びました。いろいろなシミュレーションをしていくうちに、自分の状況を受け入れていくことができたようでした。

がん治療は「情報戦」とも言われます。お金のことも情報のうち。情報を広く取り入れて、治療が奏効するように心から願いました。(タケイ啓子のつぶやき、おわり)

【これまでの相談事例はこちらから】

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