(写真=MIA Studio/Shutterstock.com)

【連載】「マネー相談は人生相談。女性FPたちのホンネ日誌」

#20 お金に色はないけれど…父が娘のために積み立てた保険の切ない結末

佐々木愛子のつぶやき【後編】

あまり表に出ることのないファイナンシャル・プランナー(FP)という職業の女性たちに、普段どんな相談を受けているのかリレー日誌形式でつづってもらう連載。FPの佐々木さんは要介護に近い状態となった父親に保険証券の名義人変更をするよう助言したところ、父親はこれまで世話になった長女だけでなく、実家にほとんど顔を見せない次女も保険金の受取人に指定しました。すると、音信不通だった妹さんから突然、驚くべき連絡がありました。

【前編はこちらから】

所在不明の妹から突然の電話

契約者に全ての権限が譲渡することを、お父様にお伝えし了承を得て、筆者は痺れで震える字の書類を受け取り、手続きは完了したかと思われたその数週間後、驚くべき連絡が入りました。

「解約してください」。こう電話してこられたのは、姿を消していた妹さんでした。

電話番号はわかっていても、住所を知らされていないご家族。おそらくはお母様が、一連の名義変更について妹さんに一応、知らせをしたのでしょう。妹さんは、すぐさま筆者に電話をし、「現金化して」と依頼してこられたのです。

必要書類をやり取りするのに住所をお聞きし、本人確認書類をそろえれば、解約の手続きは郵送で完了してしまいます。

父親の気持ちを話したけれど

そんなに裕福なご一家でないことは、ご実家の食卓で手続きを行った筆者であれば、わかります。一般的な家庭に介護を必要とする人がいれば、経済的に楽な状況でなくなることは、想像できることです。

先に記載したとおり、保険契約は「契約者」に解約をするかどうかの権利があります。僭越ながら、お電話口でご実家でのお父様の状況や、帰ってこない娘の為にも積み立ててきたお気持ちを、筆者はお話しさせていただきました。

「今解約すると、満期金より少ない金額で、既払い込み保険料を割ってしまいますが、よろしいですか?」

何の迷いもなく、即答で「はい」と答えられた「新」契約者。これ以上は他人である筆者が立ち入ることではないので、粛々と手続きを行いました。

お金の価値、家族のあり方を考えた

それ以降、ご実家のご家族とはお付き合いがあり、度々、保険の相談に呼んでくださったのですが、妹さん名義になった養老保険のことは、話すことはできません。

いくら家族でも、個人情報保護の関係上、本人の許可なくしては、一切話すことはできないのです。

同じ女性として、同じ娘という立場として、筆者は色々な考えや思いが頭を回りました。

同じ金額のお金でも、例えば宝くじで運よく当たった当選金と、親が想いをかけて積み立ててくれた満期金とでは、重みが違うように感じるのは、筆者の勝手な感情論でしょうか。

名義変更をするよう助言した理由

一応、今回養老保険の名義変更をするようアドバイスしたのには、いくつか理由があります。

まずは税金の観点から。「契約者≠満期金受取人」の場合、保険が満期を迎えたときに、その満期金は贈与とみなされ、「契約者=満期金受取人」の形態よりも多い税金がかかります。

また、今回はそれ以上に契約者である父親の身体状況が気になりました。契約者及び、死亡保険受取人であるお父様の状況が芳しくないと、生存しているものの(例えば認知症などで)意思決定ができない、ということが起きる可能性があり、不自由が発生することは想像できました。

今のうちに名義変更を希望されるのであれば、お手続きを行うことを提言したのです。

保険契約は、契約者・被保険者・(満期金・死亡保険金)受取人の形態によって、発生する税金の種類が異なり、状況によっては契約時と異なる形態に変更したほうが好ましいことがあります。

必ずしも「きれいな結末」を迎えるわけではない

このような理由から良かれと思い、FPとしていわば当然といえる助言をしたのですが、必ずしも「きれいな結末」を迎えるわけではない事を、このとき初めて痛感しました。

よそ様の家庭の出来事、個人の自由なので、こんなことをつぶやいても仕方がないのですが、妹さんが解約して受け取った数百万円、有意義な使途に生かされた事を、祈るばかりでした。

(佐々木愛子のつぶやき、おわり)

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