春の阿蘇五岳、2017年4月撮影(写真=®アクリオ)

熊本地震から1年。被災したときにもらえたお金・もらえなかったお金

現地在住ライターさんに寄稿していただきました

2016年4月14日の熊本地震発生から1年がたちます。震度7を2回記録した上益城郡益城町(かみましきぐん・ましきまち)。そこから8キロメートルほどの場所にある私の家も、激しく揺れました。特に、本震と呼ばれる4月16日深夜の揺れを思い返すと、今も心がキュッと冷えるような気がします。

益城町に住む友人は家、車、土地を失いました。私自身も車が全損し、心だけでなく、金銭的にも大きな傷を負いました。この体験をもとに、地震で被害を受けたときに地震保険はどこまで補償してくれるのか、義援金はもらえるのか――といった疑問に触れてみたいと思います。

保険でどこまでカバーされる?地震の補償について

自動車は補償対象になる?

私の車は、隣の店舗から落ちてきた瓦によって全損したというパターンでした。この場合、自動車保険は車両保険に入っていたとしても補償は適用されませんが、東日本大震災以降、地震・噴火・津波に対応した「特約」を販売する保険会社が多くなりました。この特約を車両保険にプラスしていれば、最大50万円が補償されます。

というのも、地震保険の補償対象は、生活の安定に関わる住居用の建物と家財(生活用動産)のみで、自動車や事業用建物とその家財などは補償の範囲外なのです。さらに、地震、台風、津波などの天災時には、私のケースでは車を損壊させた瓦の持ち主であった隣の店舗にも、補償義務は発生しません。

しかし私の場合、ラッキーなことに隣の店舗が地域に根ざしたお店だったこともあり、評判を考えてか、店舗の社長と交渉の末、車を再調達するための費用の半分程度を頂くことができました。ですから、そのお金の名目は「補償金」ではなく、「お見舞金」となりました。

家が損害を受けたら?

当時、地震保険補償の認定基準は全損、半損、一部損の3段階でした。「地震保険に関する法律施行令」の改正により、保険期間初日が2017年1月1日以降の契約からは、半損が「大半損」「小半損」に分かれ、4段階基準になっています。

また、地震保険は法律に基づき政府と民間の損害保険会社が共同運営する保険です。保険金は国庫に積み立てられるため、一般的な保険とは仕組みが異なります。たとえ地震保険をいくつも掛けていたとしても、受け取れることができるのは1つのみなのです。

全損とは、保険の対象である建物が、家財も含め住居不可能となるような大きな被害を受けた状態を言います。限度額はありますが、契約金額の100%を受け取ることができます。私の友人は全損でしたが、地震保険に加入していなかったので、補償金は全くありませんでした。

半損は、大きな被害を受けながらも、全損とは言えないような状態を指し、契約金額の50%が支払われます。法改正後の4段階基準では、以下のようになりました。

大半損=保険金額の60%が支払われる
  ・損害額が時価額の40%以上50%未満
  ・床面積が50%以上70%未満の喪失

小半損=保険金額の30%が支払われる
  ・損害額が時価額の20%以上40%未満
  ・床面積が20%以上50%未満の喪失

一部損は、床上浸水、壁にヒビが入っている、瓦が落ちて雨漏りするといった、全損・半損に至らない被害を指し、保険金額の5%が支払われます。わが家は一部損で、わずかですが保険金を受け取ることができました。

ちなみに益城町で、古い家屋が横倒しになり、新築だった隣の家に倒れかかったために新築家屋が全壊した例がありました。けれども、この古い家屋の住人に補償義務は発生しません。なぜなら、天災が原因だからです。

imageTitle 震度7を2回記録した益城町。2016年9月(写真提供=なないろネットワーク)

imageTitle 2017年4月の益城町。上の写真と同じ場所で(写真=筆者撮影)

義援金ってもらえるの?

いろいろなパターンがありますが、日本赤十字社や自治体を通じて義援金を受け取るものが最も多いようです。

私が住んでいる熊本市では、現在、義援金の第4次配分が行われており、初めて「一部損壊」でも義援金の対象とされることになりました。自治体では一般的には、「全壊」「大規模半壊」「半壊」「一部損壊」といった基準で災害の被害程度を判定しています。これは地震保険と関係なく、居住者からの求めに応じて自治体が派遣した鑑定人により、認定されるものです。

筆者の場合、自宅のヒビとズレを写真に撮って一部損壊を申請し、認められました。しかし、第4次配分では、わが家は対象の範囲外となりました。

益城町で自宅が「全壊」した友人は、全体を通して80万円ほどの義援金を受け取っています。しかし、家に車、住む土地を失った人にとって、その金額は決して大きいとは言えません。

熊本の今

熊本市内では全壊となった場所は、更地から建て直しが始まっています。被害の大きかった益城町では、やっとすべて更地になりました。きれいさっぱり、がらーんとして寂しい限りです。ここに来て、やっと出発できるといったところでしょうか。

そんな状況でも、失われた商店の多くは仮店舗を出し、元気に出発しています。人間、前に進むしかないのだなと、つくづく感じます。

筆者が熊本に住むようになってから15年とちょっとですが、阿蘇のカルデラを取り囲む自然はすばらしく、清らかな水と四季折々の食べ物には、いまだに驚かされることばかり。今、阿蘇も熊本市内も、そして益城町にも、震災前と同じように桜が咲いています。

熊本地震の後も、国内のあちこちで起こる地震を見ていると、地震もまた、自然の営みのひとつであり、地震は日本という島国に住む私たちにとって、切り離せないものなのかもしれません。

補償される範囲は限定的

天災の被害に遭って補償される範囲は意外に限定的なものであることを、筆者は身をもって知りました。日本は災害が多い国です。日頃から防災意識を高くもち、避難グッズを作っておくだけでなく、地震保険に入っておくなど「何かあったとき」の備えも十分に行っておくことが大切だということを、強く実感しています。

この機会に、防災について一度見直してみてください。

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