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「人・本・旅」で脳みそに刺激を。ライフネット出口会長が語る、働き方改革

ライフネット出口会長×Money&You・前編

「働き方の改革で長時間労働をやめるというのは、『メシ・風呂・寝る』から『人・本・旅』に切り替えるということです」

「男性が早く帰ってくるようになれば、家事・育児・介護はシェアできるので、女性も働けるようになりますよね。これが、経済が伸びるために必要なことです」

これは、先日退任が発表されたライフネット生命の出口治明会長の言葉です。

出口会長といえば60歳で開業し、4年で上場。「インターネット生命保険」という新市場を切り開いた「スーパー創業者」。しかし、2017年6月25日の株主総会後に会長職を退任する予定となっています。

長年、保険業界を見てきた経験豊富な出口会長は、いま話題の女性のキャリアやお金についてどのように考えているのでしょうか?

出口会長が登壇したイベント「未来の自分のために知っておきたい!女性の働き方、お金や保険との付き合い方」(2017年3月23日、Money&You主催)から、その様子をリポートします。

介護・医療費をまかなうためには、効率的に仕事をするしかない

※以下、出口会長談

日本は世界一高齢化が進んでいる国です。何もしなくても予算ベースで年間5000億円ものお金が介護・医療にお金が出ていってしまいます。このような状況の中では、みんなで等しく貧しくなるか、GDPを上げて高齢化の分を取り戻すかの2択になります。

GDPは人口×生産性です。

まず、人口はそう簡単に上がらないのはわかりますよね。それならば生産性を上げるしかない、ということです。

『生産性を上げる』というのは、簡単にいうと、今まで5時間かかっていた仕事を4時間でできるようになる、皆さんが成長するということです。

自分で一所懸命考えて良いアイデアを出し、効率的に仕事をすることが、日本のGDPを上げる方法なのです。

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長時間労働だけで知恵は出ない

ある出版社があるとします。そこにAさんとBさんという2人の編集者がいると考えてください。Aさんは朝早く出勤し、夜遅くまで働き続けます。でも、どうしても発想が陳腐で大したヒットを出さない。

一方、Bさんは出社したと思ったらすぐにカフェに行って人と話し、また、定時の18時になったらすぐに帰ってしまいます。でも、ベストセラーをたくさん輩出します。あなたが上司だったら、どちらの編集者を評価しますか?

もちろんBさんですよね。ここに、戦後の経済の中心だった『工場モデル』と、現代の『サービス産業モデル』の違いが表れています。

工場モデルの時代にはとにかく長時間労働すれば良かった。そのためには、筋力、体力のある男性の方が圧倒的に向いています。戦後は経済を発展させるために、工場モデルベースで、男性が長時間働き、女性は家にいて、男性の『メシ・風呂・寝る』をサポートする。そうやって経済がうまく回っていました。

しかし、先進国の仲間入りをし、工場モデルからサービス産業モデルへと変化した現代ではどうでしょうか。サービス産業はアイデアが生命線です。長時間労働をしているだけではアイデアが出ません。

『人・本・旅』で脳みそに刺激を

働き方の改革で長時間労働をやめるというのは、『メシ・風呂・寝る』から『人・本・旅』に切り替えるということです。

いろいろな人に会って、本を読んで多くを学び、いろいろなところに行く。そのように常に脳に刺激を与えることで、良いアイデアが生まれてきます。

ところが、この四半世紀、正社員の労働時間は2000時間で全く変化していないんですね。これは、男性は『メシ・風呂・寝る』は女性が面倒見てくれると思っていて、工場モデルの時と変わらない働き方をして、女性は男性の面倒を見た上で、2000時間働いて勝負しなければならないということです。

これでは、男女雇用機会均等法以降、正社員が減っているのは当たり前ですよね。これを解決するために、ヨーロッパを参考にしてはどうでしょうか。

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男性が早く帰れば、女性も働ける

男女同権だけでなく、経済の成長のためには女性の力が必須です。例えば、デパートに行くと、女性物の売り場面積の方が圧倒的に広いですよね。ここからもわかるように、サービス産業の消費者は女性が中心です。当然、企業サイドにも女性がいないと経済は回りません。

そのため、ヨーロッパでは、管理職の4分の1以上を女性にするというクオーター制を導入している企業が多くあります。厳しい国では、これを守らないと上場取り消しになるケースもあるようです。

男性は長時間労働をやめて『メシ・風呂・寝る』から『人・本・旅』に。男性が早く帰ってくるようになれば、家事・育児・介護はシェアできるので、女性も働けるようになりますよね。

これが、経済が伸びるために必要なことです。

フランスの出生率を回復させた「シラク三原則」

現在、日本政府が目標としている出生率は1.8、直近だと1.4と、少子高齢化は年々深刻になっています。 1990年代、同じく少子高齢化だったフランスでは、政府が『シラク三原則』という取り組みを行い、1.6〜7だった出生率が2.0まで回復しています。この取り組みは以下のようなものです。

シラク第1原則:出産に関しては女性の意志に全権を委ねる

女性しか赤ちゃんが産めないのだから、男性は出産に関して発言権などない。女性が子供を産みたいと思ったら無職でも学生でも良い。政府が社会保障で手厚くサポートすることで、「産みたいときに産める」を整えた。

シラク第2原則:待機児童ゼロ

希望者全員を義務保育にしたら瞬時に待機児童ゼロになる。これは、少子化で小学校が空いているので、小学校に幼稚園と保育園を作ることで解決する。

シラク第3原則:育児休業後、元の人事評価から再スタート

育児経験は仕事の生産性を上げることにも役立つ。育児をすることによって、より賢くなって帰ってくるのだから、会社でのランクは変わらない。

フランスに学び、このシラク3原則を真似していくことで、日本の出生率は改善していけるのではないでしょうか。

定年の廃止は良いことだらけ

さて、皆さんは、大好きなおじいさんおばあさんを大切にしたいと思いますよね。しかし今、平均寿命と健康寿命の間には約10年の差があります。大好きなおじいさんおばあさんが動けなくなってから、10年15年、肩車で面倒を見るのも全然平気だよと思う方はいますか?

一般論や他人事だとみんな大切にしたいと思いますが、自分ごとで考えると辛いと考えるのは普通のことです。このことは、社会が敬老原則ではもう持たないということを表しています。

そこで、高齢化対策のひとつは『健康寿命』を伸ばすことにあると思います。では、この健康寿命を伸ばすにはどうしたら良いでしょうか。

僕が考えるのは『定年の廃止』です。

僕のかかりつけの医者も『働くことが健康に一番良い』と言っています。仕事というのは、『意欲・体力・スペック』だけで採用するもの。グローバルでは、履歴書に年齢を書く欄がないことは、そういうことですよね。定年を廃止して世界に合わせれば良いだけです。

定年を廃止することで、
・健康になって健康寿命がのびる
・年金・医療の財政安定
・年功序列がなくなる

一石三鳥、良いことだらけですね」

本当に困っている人を助けるためのマイナンバー

今から約20年前、高齢化が進んだヨーロッパは『年齢フリー原則』に変わりました。これは、医療や年金などの社会保障を年齢で決めるのではなく、シングルマザーなど、経済的に本当に困っている人に集中するというものです。

本当に困っている人を見つけるためには、社会のインフラを所得税と住民票から『消費税』と『マイナンバー』に変える必要があります。

まず、高齢者にも税金を払ってもらおうと思ったら消費税しかないですよね。そして、単に敬老パスを配るだけなら住民票で良かったのですが、本当に困っている人に社会保障厚くしようと思ったら、マイナンバーで資産状況などがわかるようにしないといけません。

このように、社会の基本を所得税から消費税に、住民票からマイナンバーに変える政策を、ヨーロッパの国々は行ったのです。僕たちもこれに見習って、本当の少子高齢化対策をするべきではないでしょうか。

※出口会長談ここまで

後編は女性FPの高山さんとのトークセッション!

いかがでしょうか。少子高齢化に伴う様々な日本の問題点を、出口さん独自の視点から現状分析し、解決策を提示してくださいました。

1つでも実現していけば、日本の課題が解決するかもしれない!そんな勇気をもらえたような気がします。

後編では、出口会長とファイナンシャル・プランナー(FP)の高山一恵さんとのトークセッションの様子をお届けします。

会場参加型のトークセッションで、未来の自分のために知っておきたい女性の働き方、お金や保険との付き合い方、現役キャリア女性の悩みをどんどん解決していきます!(続く)

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