(写真=筆者撮影)

「子育て費用も全然違う」移住女子に学ぶ、本当の豊かさ

『移住女子』著者の伊佐さんにインタビューしました

仕事、プライベートと選択肢に迷うことも多いアラサーの女性たち。そんな中、自分らしく生きていける場所を求めて、都会から地方に移住する女性に光をあてた『移住女子』という本が新潮社より刊行されました。

彼女たちが実現しているのは、のびのび、イキイキという言葉がぴったりな豊かなライフスタイル。「都会女子」たちが抱えがちだと言われる将来に対する不安は、ほとんど感じられません。

「移住女子」はどのようにして、自分らしい生き方を見つけたのでしょう。そして、気になるお金や仕事の事情は……?

『移住女子』著者であり、これからの暮らしを考えるウェブメディア『灯台もと暮らし』の編集長でもある伊佐(いさ)知美さんを直撃し、移住女子たちの実態をインタビューしました。

移住女子1 『移住女子』伊佐知美/著 新潮社/1404円(税込)

疲れたわけでも、気負いでもなく、自然な流れで「移住」

ーー『移住女子』執筆のキッカケは何だったんでしょう?

書籍執筆の直接のきっかけは、2015年に東京で行われた「全国移住女子サミット」でした。「移住女子」という名前で活動されていた、新潟・長野県に移住した女性たちに出会えなければこの本はなかったです。

私は『灯台もと暮らし』というメディアの編集長の活動を通して移住した女性たちと話す機会が多いのですが、彼女たちに将来の夢を聞くと、主語が「私」ではなく「私たち」なんです。

彼女たちが移住したきっかけは人それぞれ。しかし、地域とともに暮らし、自分のできることを考えて進んでいくうちに、「自分の夢」が「地域の夢」と重なっていくようだぞ、と気がついたんです。そこが本当に素敵だなって思って、彼女たちのリアルな姿をまとめることにしました。

——「私」ではなく「私たち」のことを考えているというのは、経営者や投資家の考え方に近いようにも思います。

移住した女性たちは、これからの人生のお金と時間の投資をどうするか、ということを考えたのではないでしょうか。自分のこれからの人生をどうするか、それを真面目に考えたとき、都会ではないという結論に至ったのです。

移住した方の中には、東京から完全に離れたわけではなく、始発の新幹線に乗れば朝9時に東京につけると言った距離感を保って行き来している人もいます。東京は物理的に遠くても、心理的には近い距離を保てる。そうしながら、地方の価値観と東京の価値観を上手に使い分けていらっしゃる気がします。

私がこの本を書いたのは、全ての人に移住をおすすめしたいから、というわけではありません。どんな人生でもいいけれど、「移住という未来もある」と思うだけで楽になることもあるかもしれない。選択肢の一つとして移住も考えていただければと。

輝いていられるのって、自分で自分の人生を選んでいる自信があるからですよね。納得感のある選択を自分でしているかということです。

「移住女子」のお財布事情は?

ーー地方では、都会に比べて地方では平均給与が安い、仕事が少ないということも聞きますが、その辺はどうなのでしょうか。

地方に行くと仕事がない、と考えている方はとても多いのですが、そんなことは全然ありません。

『移住女子』には、シェアハウスの経営をする方もいれば、エッセイなどの創作活動をする方、農業や漁業に携わる方など、さまざまな肩書の女性が登場しますが、1人でいくつもの肩書を持ち、複数の活動をして複数から収入を得る、そんな働き方が多いのも彼女たちの特徴です。例えば月収20万円を稼ごう、と思ったら月5万円の仕事を4つ掛け持ちする、といったように。みんなの助けになるとか、役に立つとか、好きなこととか楽しいことが自然と仕事になり、収入にもつながっていくんです。

地域との関係を大切にして地域に貢献しながら、自分の夢もかなえていく。そうしたバランス感覚が、移住の成功につながるようです。冒頭で申し上げたように、「自分の未来と地域の未来を重ねる」と私はよく言うんですけれど、とても素敵な生き方だなと思います。

ーー仕事はどうやって見つけるんですか?

一概には言えませんが、仕事の依頼は住民の同士の、信頼のネットワークの中で生まれることが多いようです。

ある女性は、地方の風習「お茶飲み」に呼ばれたら足を運ぶようにして、ネットワークを築いていったと言っていました。地域の信頼を得れば、口コミで評判が広がり、次々と仕事が回ってくる、と言う人によくお会いします。

人のつながり、豊かな自然を背景にした「シェア」の文化

移住女子4 (写真=筆者撮影)

ーーいくら仕事があるとは言え、地方だとどうしても月収は下がってしまうのではないか、という気もしますが……。

収入は減ったけど支出が減ったので可処分所得は増えた、という方が多いんですよ。

例えば、都会の暮らしで、生活に響いてくるのは居住費ですよね。1LDKで10万円といった家賃を普通に支払っています。ところが地方では、場所にもよりますが、庭付きの一戸建てが家賃3万5千円とか、全然あります。地域によっては1万円だったりもします。

年間120万円の家賃を払っていた人の家賃が、地方に移住して月々1万円で年間12万になるとします。その差額は108万円。かなりのコストダウンですよね。

それから、子育て費用も全然違います。共働きの夫婦が都市部の保育園に子どもを預けると、月6万円ほどの保育料がかかる場合があります。

地方では自分たちで自主保育をしているグループもあり、月5000円くらいの保育料で済むこともあるんです。子どもは宝、という考え方だから、みんなが子どもを見てくれたり、あちこちから服のお下がりが回ってきて洋服代がかからないとか。子育てがしやすいという声もよく聞きます。

また、季節の野菜から、狩猟で獲ったジビエ肉まで、豊富な食料がご近所から「おすそ分け」として届く特有の文化もあります。「自分の畑でも作物を作るし、たくさん友達がいて漁師さんにもネットワークがあるから、本気を出せば食費は0円になる、そんなうらやましい声も聞きました。

余裕ができた部分で東京にも遊びに来ますし、旅行もしている。みなさん、自分の使いたいところにはちゃんとお金を使うという楽しみ方も知っています。

ーーお話を伺っていると、移住先には地域の方とのネットワークや、地域の恵みがとても身近にあって、「お金」ではない別の豊かさのようなものを手に入れているようにも思えます。

地方に行くということは、「相対的な若さ」を獲得するということも含めて、自分の相対的な付加価値が高まる、というのは事実としてあります。

場所を変えることで自分も変わるといいますか、自分の見えない能力に気付く一つのきっかけになると。自分の可能性がほり起こせる、それが地方という舞台なのではと思います。

地方では、ものの物々交換のほかに、スキルの交換みたいなものも行われています。家に不具合が出たら、修繕できる人が修繕してくれる。そのお返しとして、私のような編集者であればブログを書くのを手伝ったり写真を撮ったり。そういう物々交換や交流から発展して、次のビジネスが生まれることもあるのではないかと思います。

「移住女子」に学ぶ、豊かに暮らすコツ

移住女子5 (写真=筆者撮影)

ーー「移住女子」たちが実践している豊かに暮らすコツって何かありますか?

「希望は、なるべく口に出すといい」というアドバイスをよく聞きました。

例えば、「今度、薪ストーブに挑戦してみたいんです」と話した女性が、後日、なぜかその場にいなかった人のお宅から、使わなくなった薪ストーブを、しかも薪とセットでいただいたことがあったそうです(笑)。近所のウワサが回り回って届くようです。

あとは、常日頃から「いいことも、よくないことも、起こることは全て楽しむ」ことも大切かと思います。もともとそういう素質があった人たちが移住を選ぶ傾向もあるかもしれませんが、みなさん経験の中でその価値観を培っていった気がします。でも、こうしたマインドって、都会で暮らしながら持つこともできますよね。

すぐに移住はできないかもしれないけれど、移住女子のマインドを私たちも持ってみる、そうすることで、今まで見えなかった世界が見え、聞こえてこなかった情報が耳に届くかもしれません。

ーー地方は人や資源などの「資産」が豊かである、というお話を先程お聞きしましたが、都心にも人的ネットワークが築かれている場所ってありそうな気がします。

東京の中にも、ご近所づきあいのあるエリアってすごくありますよね。『灯台もと暮らし』で品川宿を取材したことがあります。東海道の宿場町、その始まりの場所が品川にあります。駅で言えば北品川なんですよ。

品川の隣で、景色の中には超高層ビルが見えたりするのですが、とにかく下町なんです。もともと人が行き交う宿場町ですから、外部の人を受け入れやすいということもあるのでしょうね。もちろん商店街もあって地域の人同士のふれあいもあり、物々交換や「ちょっとご飯を食べに来なよ」と家同士を行き来するとか。人と人とのお付き合いで仕事が回っていたりするところも、地方と似ています。北品川、いいですよ。

ほかにも、中野や西荻窪、蔵前など、昔ながらのコミュニティが残っている場所は、挙げていけばかなりの数になりますよね。ですから、東京にいながらコミュニティの中に入って、ディープに豊かに暮らすこともできるかもしれません。

まだ「投資フェーズ」。人的資産を築きたい

ーーちなみに伊佐さんご自身、今後、築いていきたい「資産」は何ですか?

そうですね、私自身は、自分をまだ「投資フェーズ」だと思っています。

まず、旅が大好きなので、旅をしながら書くということがどうしてもしたい。自分のやりたいことに 近づくことでまず自分に投資をして、旅の連載(『ことりっぷ』での『伊佐知美の世界一周さんぽ』)の仕事をいただくといったように、少しずつ好きな分野での仕事が積み上がっていったらいいなと。その後がきっと、回収フェーズに入るのでしょう。

ただ、旅には現金も必要になりますので、資金を貯めるのも私の中では大切なことです。仕事の効率を上げていくのも大事なことですね。

ーー現在、海外版『移住女子』の取材も進めているとか。

はい、日本人の女性で、移住先として海外を選んだ方のインタビューをライフワークとして続けています。

自分の好きなことをする中で出会う人的資産も含めて、増やしたり育てたりすることで、結果的に経済的にも回っていくサイクルが生まれればいいなと思っています。

私が、会社員のときと違うと感じているのは、自分の「なりたい未来」を自分でちゃんと考えて、一歩踏み出していること。やってみると、なりたい未来との距離が測れたりすると思っているので、今はまさにそのトライをしているところです。

ーーどんな出会いがあるのか、そして伊佐さん自身がどこに移住し、どんな暮らしを選んでいくのか、楽しみです。ありがとうございました!

移住女子2 (写真=筆者撮影)

伊佐知美 (いさ・ともみ)さん
1986年新潟県見附市生まれ。これからの暮らしを考えるウェブメディア『灯台もと暮らし』編集長、オンラインサロン「編集女子が“私らしく生きるため”のライティング作戦会羲」主宰。

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