(写真=いずれもThinkstock/Getty Images)

専門家に直撃!トランプ大統領が就任するけど、投資初心者は何に注目したらいい?

専門家に聞いてみました

2017年1月20日(日本時間21日)、トランプ氏がアメリカ大統領に就任します。

日本でも連日、トランプ大統領のニュースが流れていますが、私たちは一体どういったところに注目したらよいのでしょうか?

専門家に質問してみました。

取材に協力してくれたのは…

今回、取材に協力してくれたのは、証券会社でトレーディング経験のある平田和生さんです。

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平田和生(ひらた かずお)
慶應義塾大学卒業後、証券会社の国際部で日本株の小型株アナリスト、デリバティブトレーダーとして活躍。ロンドン駐在後、外資系証券に転籍。国内外機関投資家、ヘッジファンドなどへ、日本株トップセールストレーダーとして、市場分析、銘柄推奨などの運用アドバイスをおこなう。現在は、主に個人向けに資産運用をアドバイスしている。

――トランプ氏の大統領就任に注目している投資家は多いと聞きます。その理由は何ですか?

2017年の世界景気がトランプ氏の政策にかかっていると言っても過言ではないためです。

例えば、2016年11月の大統領戦で勝利した後、NYダウは過去最高値を更新するほど上昇しました。これは、トランプ大統領の政策に対する期待の大きさが影響しているとも言えます。

トランプ大統領は、10年で1兆ドル(約114兆円、2017年1月19日付)という巨額のインフラ投資、約5.9兆ドル(約676兆円)という減税をして、景気を拡大すると公言しています。米景気拡大は世界景気拡大につながるため、世界中の株式市場が買われ、日経平均も昨年来高値を更新しました。

1月20日の大統領就任式後は、さらに具体的な政策が発表されていきますので、発表に伴ってまた株価が動くのでは? と皆さん注目しているわけですね。

――うーん、世界経済にとってトランプ氏の影響力が大きい、ということはなんとなくわかりました。でも、具体的にはどうなんでしょう?

例えば、先進国や新興国の株式・債券・不動産など、世界全体にバランスよく投資するような投資信託を毎月積み立てている人は、トランプ大統領就任に絡んで、気を付けたほうがいいことはありますか?

投資額を増やしたり減らしたり、投資する割合を変えたりする必要はありますか?

バランス型の投信は、長期的な分散投資として優れたものですので基本的には問題はありません。

しかし、トランプ氏の大統領就任に絡んで大きく売られたのは「債券」です。政策の財源として大量に債券が発行されるのではないか(それによって価値が下がるのではないか)と思われたからですね。

実際、米国債の利回りは、大統領選挙の前は1.8%でしたが、2017年1月18日現在、2.3%まで上昇しています。

金利が上昇すると債券価格は下がります。金利が上昇すると、不動産を調達するコストが上がりますから、不動産市場にとってもマイナスの影響が考えられます。

バランス型の投信には、こうした債券や不動産が含まれているかもしれません。念のため、保有投信の主要アセットへの投資比率を確認しておくことをおすすめします。

――では、日経平均に連動するような投資信託を持っている人はどうでしょう?

日経平均連動型の投信については、トランプ氏の発言によって日経平均株価が上昇すれば、そのメリットをフルに享受できますよ。

ただ、1月11日のトランプ氏初の記者会見後でもそうだったのですが、トランプ氏への期待が高い分、政策が公言通りに実行されなかった場合、むしろ「逆回転」(株価が下がってしまうこと)する可能性もあります。

――トランプ氏に対する期待はすでにかなり高くなっているので、このハードルを超えないと、さらに株価が上がるのは難しいとも言える、ということですね。トランプ大統領の政策の中で、特に日本の企業にとって影響のあるものは何ですか?

トランプ大統領は「リフレ政策(※1)」とともに、「アメリカ・ファースト」として貿易不均衡の是正、規制緩和、自由貿易から保護貿易への回帰、アメリカでの雇用増、米企業の海外利益の自国環流などを推し進めると言っています。

TPPは離脱すると公言していますし、すでにメキシコで生産体制を敷いている大手自動車メーカーに対し、海外生産はアメリカ本国での雇用を奪う行為であり、海外生産するならば国境税などの関税を課すると発言しています。

※1:リフレ政策とは「リフレーション政策」の略。不況下で生産活動が停滞しているときに、インフレ(景気過熱)を避けながら、金利の引き下げや財政支出の拡大によって景気を刺激し、景気回復をはかろうとする政策のこと。(野村證券より)

――トランプ氏の大統領就任によって、日本企業で影響がありそうなのはどんな業界・あるいはどのような企業ですか? 教えてください!

トヨタがトランプ氏に名指しで非難されたように、自動車業界は、メキシコの生産拠点を米国内に動かす戦略変更が必要になりそうです。

現在、中国や台湾などで生産されることの多い携帯電話や民生用機器、産業用機器も、アメリカ国内での生産に切り替える必要が出てくるかもしれません。こういった戦略の変更は企業にとってはコスト増要因となります。

一方、ソフトバンクの孫社長はトランプ氏と個別で会見し、アメリカへの500億ドル投資と5万人の新規雇用を創出すると約束してきました。今後のソフトバンクの動きは注目されます。

――自分の好きな業界の株を長期保有する株式投資(日本株)をしている人に向けて、 これから投資先を選ぶとき、トランプ大統領就任絡みで気を付けたほうがいいことはありますか?

1月5日に、トランプ大統領がツイッターでトヨタのメキシコ工場について指摘し、翌日の株価が3%安と急落しました。自動車やハイテクなど、アメリカの貿易不均衡の原因となるような産業は非難される可能性があります。

しかし、一方で自動車やハイテクはアメリカの景気拡大のメリットを受けることも間違いありません。リスクを理解したうえで株式を保有するのがいいでしょう。

また、トランプ氏のリフレ政策で米金利が上昇するのなら、日米金利差の拡大で円安になるとの見方が増えてきています。

自動車、ハイテクといった円安メリットの出やすいセクターは注目されますが、政策が公約通りにいかず、逆の動きになった場合のことも想定しておいたほうがいいでしょう。

――いち投資家として、平田さんが個人的に注目していることがあれば教えてください。

トランプ大統領の誕生による株の急騰、債券の急落は、「グレート・ローテーション(大転換期)」を引き起こすかもしれません。30年間以上続いた世界的な金利の低下傾向が終わり、「債券から株式へ資金の大量シフト」が起こる可能性を秘めているのです。

そうなれば、投資の世界において何十年かに一度起こる大きなパラダイムシフトです。ここは、皆さんもぜひ注目しておいたほうがいいと思います。

――これから資産運用をはじめようとしている女性たちに、アドバイスがあればお願いします!

運用の基本は、長期運用と複利運用です。今回の「トランプトレード」は、資金のシフトが起こった事象として、資産運用のとても良いワークスタディーとなることでしょう。

「トランプトレード」を復習し、理解できるようになれば、資産運用についてかなり理解度が高まると思います。分からないことは専門家や経験者にどんどん聞いて、ぜひ学習していってください。

――ありがとうございました!

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