
(写真=Ruslan Guzov/Shutterstock.com)
株の配当金は確定申告でお得に!? ポイントを解説
配当金にかかる税金を取り戻す方法があるんです
株に投資している人の中には、配当金(☆)を受け取るのを楽しみにしている方も多いのではないでしょうか。
しかし、実は株の配当金に税金がかかっていること、気付いていましたか?以前はそのままにしている人が多かったのですが、2013年末で軽減税率10%の特例措置が終了してから、配当金にかかる税金は無視できないものになりました。しかし、実はうれしい節税の可能性もあるんです!
今回は配当金にかかる税金と、配当金を受け取った人が確定申告の手続きすることで節税できる「配当控除」の制度についてご紹介します。
☆配当金とは? 企業が行う事業活動から出た利益の一部を、株主に分配すること。配当金は1株あたりで定められていることがほとんどで、例えば、1株あたりの配当金が8円の株を100株保有している場合、もらえる配当金の額は800円となります。(参考:株式投資でよく聞く「高配当」「配当利回り」。でも、配当って一体何?)
配当金は課税対象
株式の配当金には、預金の利息と同じように税金がかかります。税率は20.315%。所得税15%、復興特別所得税は2013年~2037年の25年間課税で0.315%、住民税5%という内訳です。この税金は通常源泉徴収で天引きされます。
配当控除とは?
そもそも配当金とは、企業が出した利益の分配です。企業も利益に対して法人税を払っているわけですから、分配である配当金からも税金を徴収すると二重課税になってしまいます。その調整のために、「配当控除」という所得税や住民税から一定額を還元してくれる制度があります。ただし、自分から申告しないと戻してくれません。知っている人だけが得する制度なのです。
「配当控除」は主に以下のものが対象です。
・国内株式(非上場株式を含む)の配当金 ・国内上場株式投資信託(不動産投資信託「J-REIT」(☆)を除く)の分配金 ・国内優先出資証券の配当金
二重課税の有無が問題であるため、法人税のかからない外国株式や実質免除となるREITは対象外となるわけですね。
☆REIT(不動産投資信託)とは? 読み方は「リート」。多くの投資家から集めた資金で、オフィスや商業施設、マンションなど複数の不動産に分散させて投資を行い、家賃収入や売買益を投資家に分配する商品のこと。(REITについて詳しく知りたい人は、こちらの記事もチェック!→はじめての不動産投資信託(REIT) どんな商品?)
配当金の納税方法は?配当控除の適用がある方法とは
配当金の納税方法は次の2通りです。
源泉徴収で済ませる
1)税金の天引きで課税関係を終了させる =税率20.315%で配当控除の適用なし
確定申告する
1)源泉徴収のあと確定申告で「総合課税」とする 2)配当金を他の所得と合算して、累進課税(下図参照)に基づき税金を計算し直す =配当控除の適用あり
確定申告すると配当控除はいくらになるの?
確定申告して総合課税にする場合、注意点もあります。他の所得と合算されるため、配偶者控除や扶養控除などの有無、国民健康保険料の金額が変わる、税金が増える――といったことも起きる可能性があります。源泉徴収か確定申告(配当控除の申告)か、自分の年収や家族の状況からお得なほうを選択しましょう。
配当控除で引き下げられる税率(配当控除率)は、課税総所得金額1000万円以下の部分に対し、所得税は配当所得の10%、住民税は同2.8%です。
課税総所得金額1000万円を超えた分に対し、所得税は配当所得の5%、住民税は同じく1.4%です。例えば、配当控除率が10%の場合、本来の適用所得税率が20%なら「20%-10%」で10%納税となります。
では、課税所得金額250万円の人が配当金を2万円受け取ったとして、支払うべき所得税を試算してみましょう。
源泉徴収の場合
・所得税および復興特別所得税=15.305%
・2万円×15.305%=3061円
確定申告(総合課税)の場合
・所得税および復興特別所得税=10.21% ・2万円×10.21%=2042円 ・2042円-2万円×10%[配当控除]=42円 ※別途、この計算に含まれない住民税が地方自治体から還付されます。
この計算式に当てはめると、あくまで目安ですが、課税所得金額695万円以下の場合は確定申告したほうがお得になるようです。
配当控除のために確定申告するなら、ココに注意!
確定申告は、毎年1年間(1月1日~12月31日)の所得金額や税額について、納税者自身で計算して申告書を作成します。それを、翌年の2月16日~3月15日の申告期間内に税務署に提出して納税します。
申告書の入力はインターネットでもおこなえます。国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で、指示どおり進めていけばスムーズに作成できますし、実際に提出するまでは何度でも修正できます。分からないことがあれば、税務署に電話して教えてもらいましょう。
確定申告をオンラインで済ませる「e-Tax」もありますが、利用にはICカードリーダライタなどの機器やセットアップが必要です。利用したい方は国税庁の特設サイトで確認し、あらかじめ準備しておくといいですね。
確定申告の際には配当金の「支払い通知書」を添付する必要がありますので、保管しておきましょう。
なお、NISA(少額投資非課税制度)口座で株式投資信託を運用する場合は非課税となるので確定申告の必要はありません。ただし、NISA口座でEFT(上場投資信託)やREIT(不動産投資信託)を含む上場株式を運用している場合、確実に非課税になるのは、配当金の受け取り方法に「株式数比例配分方式」を選択したときのみ。違う場合は証券会社に確認して変更するか、確定申告をしましょう。
源泉徴収と確定申告、どちらがお得になるかは人それぞれです。自分の場合はどうなのか、確定申告の時期には税務署に相談窓口も設置されますので、遠慮せずに聞いてみましょう。
確定申告の手間を惜しまず、配当控除にチャレンジしよう
ややこしくて面倒が多そうと思われがちですが、給与所得者が配当金の申告をするだけなら意外と簡単です。ちょっとの手間でお得になる配当控除に、あなたもチャレンジしてみませんか。
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