
(写真=Antonio Guillem/Shutterstock.com)
所得税率は何%?自分の年収で計算する方法を解説
税金にいくら払っているのか知ってますか?
個人には所得税が課せられていますが、所得税率の計算方法をご存じの方はどれぐらいいるでしょうか。
サラリーマンは年末調整という仕組みを通じて税金計算が完結しているので、所得税を意識していない方も多いかもしれません。しかし、所得税率の仕組みを知っておくことは、節税対策にも役立ちます。
ここでは、日本の所得税の制度と所得税率の計算方法を見ていきながら、年収300万円、600万円、1000万円、5000万円ごとに順に税金を計算していきます。
年収別!支払うべき税金を計算してみよう
早速、年収300万円、600万円、1000万円、5000万円の人を想定して、所得税を計算してみましょう!
計算には次の表A、表Bを使いますが、いったん表の意味がわからなくても今は大丈夫です。表A、表Bの詳しい解説は記事の下の方にありますので、興味ある方は読んでみてください。
払うべき所得税の金額は次の通りです。
年収300万円の場合
- 表Aから、①給与所得控除は「年収の30%」+「18万円」。つまり108万円です。年収(300万円)からその金額を差し引くと、給与所得は192万円となります。
- 社会保険料は約44万円で、誰でも使える「基礎控除」は38万円。両者を足すと②所得控除の合計は82万円となります。
- ①192万円から②82万円を差し引いた110万円が課税所得です。表Bから、課税所得195万円以下であれば所得税率は5%ですので、所得税は5万5000円と分かります。
年収600万円の場合
- 表Aから、①給与所得控除は「年収の20%」+「54万円」で174万円です。年収(600万円)からその金額を差し引くと、給与所得は426万円となります。
- 社会保険料は約85万円で、基礎控除が38万円。②所得控除の合計は123万円です。
- 課税所得は①から②を引いた303万円で、表Bから所得税率は10%。控除額は9万7500円ですので、税金は303万円×10%で30万3000円。そこから9万7500円を引いた20万5500円です。
年収1000万円の場合
- 表Aから、①給与所得控除は「年収の10%」+「120万円」で220万円です。年収(1000万円)からその金額を差し引くと、給与所得は780万円となります。
- 社会保険料は約118万円で、基礎控除38万円と合わせて②所得控除は合計156万円。
- ①から②を引いた624万円が課税所得です。表Bから所得税率は20%で、控除額が42万7500円。よって税金は82万500円です。
年収5000万円の場合
- 表Aから、給与所得控除は「230万円」。年収(5000万円)から230万円を引いた4770万円が①給与所得となります。
- 社会保険料は約151万円で、基礎控除が38万円。所得控除の合計は189万円です。
- ①から②を引いた4581万円が課税所得です。表Bから税率は45%(最高税率!)と分かり、控除額が479万6000円なので、税金は1581万8500円となります。
所得税はこうやって計算する
それでは、所得税の計算方法を紹介します。手順は次の通り。
- 「所得」の計算
- 「所得控除」の計算
- ①と②を使って「税額」の計算
- ③で求めた「税額」から「税額控除」を差し引く
それぞれを詳しく見ていきましょう。
1. 「所得」の計算
「所得」の計算方法は次の通りです。
- 「所得」=「年収」ー「給与所得控除」
給与所得控除額は、年収に応じて額が決められていますので、「表A」を参考にしましょう。
この表は、国税庁ホームページ「No.1410 給与所得控除」にも掲載されています。
2. 「所得控除」の計算
「所得控除」とは扶養控除、配偶者控除、生命保険料控除など、国民にとって税金の負担が平等になるように設けられた制度のこと。
人によって使える制度や金額が異なりますので、今回は
・40歳未満の会社員 ・扶養家族なし ・社会保険:東京の協会健保で厚生年金加入
という前提で計算してみました。
確定拠出年金をしている人は、掛け金の合計金額をここに組み入れることができます。
3. 「税額」の計算
「税額」は、①から②を差し引いた金額に所得税率をかけて求めます。
- 「税額」=(「所得」ー「所得控除」)✕「所得税率」
所得税率は、表Bを使って計算します。①で求めた「所得金額」によって求めることができます。
4. 「税額控除」を差し引く
もし寄附金などを支払っていれば、③までに求めた金額からその寄付金額を差し引くことができます。ただし今回は計算を簡単にするために税額控除は「ない」ものとします。
あなたはいくら税金を支払っていたでしょうか?
年収が高い人は税金も高い!所得税の累進課税制度とは?
もう一点、同じ条件の人を見ても、所得税は年収が上がれば上がるほど高くなることも知っておくとよいでしょう。
これは、日本における所得税計算では「累進課税制度」を採っているからです。平たく言うと、年収が高ければ高いほど、税金計算での税率が上がる制度です。反対に、年収にかかわらず税率が変わらない制度を「一律課税」といい、香港などで採用されています。
累進課税制度のメリットとしては、所得格差の緩和、高所得家系の世襲の防止、不況時の税負担の緩和――などが挙げられます。
高額年収の人は所得に応じて払う税金が多くなり、逆に、年収が低い人は所得に応じて税金も少なくて済みます。その税金をもって、年金・医療などの社会保障や、教育・交通・警察など公共サービスの提供がなされ、富の再分配が行われています。
また、高所得世帯に多く課税することで世襲にならないようにし、生まれの差による不平などの緩和にも務めています。さらに、不況で所得が減ってしまったときには税率が下げられるため、不況の負の影響も緩和されます。
累進課税制度のデメリット
一方、累進課税制度のデメリットとしては、必至に働いて高所得者となっても、年収が上がるほど税率が上がり税金も増えるため、意欲を減退させる一因になっているとも言われています。
ちなみに、2014年度までは所得税の最高税率は40%でした。ところが、2015年度より4000万円を超える所得者の税率が上がり、所得税の最高税率は45%となりました。反面、法人税率は減少傾向にあり、所得税増税へと進んでいるのが日本の現状です。
なお、日本でも全ての所得税が累進課税というわけではなく、株や不動産を売却して得られた収入や株式などの配当所得などは、金額にかかわらず税率は一定です。これを「申告分離課税」といい、通常の計算とは切り離して計算する制度です。
自分の年収と税金を意識しよう!
アメリカでは誰もが確定申告をおこないます。
しかし日本では、副業をしていたり個人事業主であったりしなければ、所得税を自分で計算する機会は少なく、意識もしていないでしょう。
このような税金に対する関心の薄さが、納税意識を低くしている一因だとも言われています。
所得税率は年収300万円の人だと10%、1000万円以上の高所得者の場合は33%〜45%にもなり、高所得になればなるほど税金も取られることを改めて見直してみると、税金に無関心ではいられなくなるのではないでしょうか。
自分がいくら納税しているか、その税金は正しく計算されているか――を確認するためにも、税金のいろはと計算方法を知っておきましょう。
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