(写真=Thinkstock/Getty Images)

【連載】「税理士の告白」

第8話 優秀な人ほど自由がない!? その根底にある○○とは

キラキラ輝いている優秀な人の心理をのぞくと、意外な一面が見えました。

職業柄、若い頃から会社の社長、弁護士や司法書士といった数多くの優秀な人と接してきたという税理士ライターの鈴木さん。 彼らは何事にも自信があり、何の悩みもなく輝いているように見えたそうですが、心理学を学んでいくうちに実は彼らがそれほど自由ではなく、むしろ自らを縛っていることに気づいたのだとか。彼らの心の内を縛っているもの、それは「達成しなくてはいけない」「強くなければいけない」という思い込みの根底にある「恐怖」だと鈴木さんは言います。

優秀な上海人の知人の一言

30代の頃、上海人の知人が私に「ちょっと会計を手伝ってくれない?」と声をかけてきました。彼女は、日・英・中の3か国語を自由に操るキャリアウーマン。日本の大学を卒業した後、アメリカの有名大学を卒業し、日本人の夫と共に世界中でビジネスを行う事業家でした。卓越したキャリアとは裏腹に、人懐っこい笑顔を見せる彼女が大好きだった私は、二つ返事でOKし、翌週から彼女の事務所に通いました。

作業そのものはExcelに領収書のデータを打ち込んでいくという、とても単純な作業でした。大好きな彼女と一緒に仕事ができる嬉しさで最初は喜んでいましたが、作業に慣れた頃、ある疑問が私の脳裏に浮かびました。「これほど単純で片手間でできそうな仕事を、わざわざ日当と交通費を払ってまで私にやらせる必要があるのだろうか?」。その疑問を彼女に伝えてみました。すると、彼女はポツリと答えたのです。

「私、実はExcelができないの。でも、妹たちも友人たちも、私が『何でもできる人』だと思い込んでいる。そんな彼女たちにダメな部分を知られたくない。恥ずかしい」。

中国人は特に面子を大事にする人たちです。彼女もその一人。できないことを知られるのは、「恥」というよりむしろ恐怖に近いものだったのでした。

優秀な人に多い「5つのドライバー」とは?

彼女に限らず、優秀な人には「我慢強い完璧主義」な人が少なくありません。なかには、倒れるまで働く人もいるほど。彼らは心の内に駆り立てるものがあるため、過剰なまでにがんばるのです。

心理学の交流分析では、この「駆り立てるもの」を「ドライバー」と呼び、次の5つに区分しています。

1.完全でなくてはいけない
テストで100点満点を強要されていた場合、完ぺき主義に陥りやすい傾向にあります。

2.他人を喜ばせなくてはならない
いつも笑顔でいることや「自分よりも他人を優先しなさい」と教えられてきた人は、自分を犠牲にしてでも他人に尽くす傾向にあります。

3.一生懸命やらなくてはならない
どんなときでも努力を強いられてきた人は、手抜きがなかなかできません。

4.強くなくてはいけない
泣くことや弱音を吐くことを禁じられてきた人は、自分自身の疲労やしんどさに気づかず、倒れるまで突っ走る傾向にあります。

5.急がなくてはいけない
「早くしなさい!」を言われ続けてきた場合、大人になってものんびりできず、いつもそわそわしていることが多いです。

実は、5つのドライバーのどれもが「本人がしたくてしていること」ではありません。ドライバーの原動力となっているのは「恐怖」であり、そしてそれは幼少期に身につけたものとされています。

根底にあるのは親に見捨てられるかもしれない「恐怖」

税理士の告白第8話2 (写真=Thinkstock/Getty Images)

この5つのドライバーがインプットされる背景は、その幼少期にあるとされています。夫は仕事で家族を顧みず、夫に言いたいことを言えない妻が、子どもに過剰に期待を寄せてコントロールする過程で起こります。

「ちゃんとしなさい!」 「何よ、この成績は!満点でなくてはダメでしょう!」 「何をもたもたしているの、急ぎなさい!」 「泣くだなんてみっともない!我慢しなさいよ!」

子どもは、大人である親に見捨てられたら生きていけないことを本能で知っています。同時に、自分を犠牲にしてでも親を幸せにしたいと感じています。死の恐怖は親への愛と絡み合って罪悪感となるのです。

その結果、子どもは「本当はのんびりしたい」「本当はあそびたい」「本当は思いっきり泣きたい」という気持ちをすべて押し殺して、親の気に入るようにひたすら努力するのです。

子ども本人に何ら責任はなく、むしろお互いに良好な関係を築こうとしなかった両親に責任があります。しかし、多くの場合、親を悪く思いたくないがために、そこと向き合おうとしません。同時に、ドライバーで得られる成功体験(評価や収入、居場所など)が増えてゆくため、ますます自分の本心を置き去りにし、無理してでも「デキる人でいよう」とするのです。

優秀な人こそ「ダメな自分」と向き合うことが大切

働き盛りの現役世代ならば、これは大して問題とはなりません。しかし、第一線からしりぞき、肩書や収入ではなく、本人の人柄や生き方そのものが問われるときが来ます。それまで自分を支えてきた周囲の評価が一気にはぎ取られた瞬間、人は恐怖でもがくか、震えおののくか、あるいは無気力に陥るかもしれません。

こうならないためには、優秀な人たちがもっとも見ないフリをしている「ダメな自分」と向き合い、そこを見つめることで湧き出てくる恐怖を癒すことが不可欠なのです。

この記事をシェアする

個性的な連載で「投資」を身近に