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「実は二重国籍だった人」納税義務はどうなる? 税理士ライターに聞きました

税理士が、二重国籍と税金について解説します

蓮舫氏の「二重国籍」問題をキッカケに「自分も調べてみたら二重国籍だった!」という人が相次いでいるようです。

参考:確かめてみたら自分の二重国籍が発覚した話(つなぽんのブログ)

グローバル化が進んだこの21世紀で、「日本人に見えても外国籍」、「外国人に見えても日本国籍」というケースはよく見ますが、二重国籍という事態はそれほど話題になったことはありませんでした。

なぜこのようなことが起こるのでしょうか? そして、海外にも国籍があった場合、その海外の国でも納税義務は発生するのでしょうか? 税理士ライターの筆者が解説します。

「実は二重国籍」という人が相次ぐ2つの原因

日本で「二重国籍」という事態が発生するのには、二つの原因があります。

①各国で国籍法の調整がされていない

まず、国籍に対する考え方が国ごとに違うにも関わらず、国家同士の国籍法の調整がなされないことが挙げられます。

国籍は身分的なテーマなので、国の文化や宗教、慣習を色濃く反映しています。しかし、お金の動きと違い、国籍は日々の生活の重要事項となりにくいため、国家間の調整がなされないのです。

②日本の国籍法が「罰則なし」

そして二つ目の原因は、日本の国籍法で二重国籍に対して罰則がないことにあります。

日本の国籍法では、重国籍の人については、未成年のときは国籍留保(国籍を選択しなくてよいこと)が認められています。国籍留保した場合、成人して初めて国籍を選択するわけですが、もし、この時点で既に他国で国籍を保有している場合は、その外国籍を離脱しなくてはならないことになっています。

ところが、もし外国籍を離脱をしないまま、重国籍を放置したからといって罰則があるわけではありません。また、日本国政府も重国籍であることを認識していない場合もあります。

つまり、「罰則なしの法律」であるため、二重国籍が発生してもおかしくない状況なのです。

蓮舫氏の二重国籍はなぜ起きたのか?

ちなみに蓮舫氏の場合、日本の国籍法の改正(1985年)の時期にちょうど未成年でした。

このため、それまで「父方の国籍=子どもの国籍」となっていたのが、両親のいずれかが日本人ならば日本国籍を付与するという制度に変更されました。

この改正以前に生まれた子供で、父方の外国籍になっていた人も、届け出れば日本国籍が取得できました。父が台湾人で母が日本人の蓮舫氏もその一人。

ただ、先述の台湾籍の離脱をし忘れたために、二重国籍になったものと思われます。

二重国籍だった場合、海外でも納税義務が発生するのか?

では、二重国籍だった場合、日本だけでなく、国籍のある外国においても税金を払わなければいけないのでしょうか?

二重国籍, 納税義務 (写真=Thinkstock/GettyImages)

外国と一口に言っても様々な国があり、一概には断定できませんが、日本を含めた多くの国では、「どこに住所または居所があるか」そして「どこで所得が発生しているか」を実質で判断し、課税を行っています。

そのため、現実には、どの国を生活の拠点としているかで納税義務を考えます。だからこそ、日本国籍があっても米国に長期滞在し、そこで稼得した所得しかない場合については米国で納税するのが原則なのです。

「では、二重国籍であっても日本に住んでいて、日本でしか稼いでいないから、外国では何もしなくていいんだ!」

と叫びたくなるところなのですが、実は法律はそう単純ではありません。納税がないからといって手続きまでしなくていいわけではないのです。

アメリカの場合、形式上は「納税義務あり」

米国を例に考えてみましょう。

米国の税法は国籍基準(属人主義)を採用しています。つまり、「米国の国民ならば、世界のどこに住んでいようと米国で申告納税をすべきだ」という制度なのです。

ただし、これは立法上、つまり形式上の話です。実際にその通りに執行すると、日本に在住する米国籍の人で日本でしか発生していない所得についても課税徴収することになってしまいます。これは日本の課税権の侵害だけでなく、日本の領域侵害にもつながり、「各国の主権は平等であり、各国は他国の主権を尊重する義務がある(内政不干渉義務)」という国際法のルールに米国が違反してしまうことになります。

したがって、日本にしか住んでおらず、日本の公的サービスしか受けていない人間に対して、米国籍だけを理由に「米国で税金を納めろ」ということはできません。

そのため、実際の課税の執行については居住地基準(本国の居住者か非居住者かに分け、それぞれの課税対象となる所得を区分するための基準)に従っています。

アメリカでは「確定申告の義務」が発生する

ただし、居住地基準が適用されるのはあくまでも「納税」に関する話で、税金の「申告」になると話は別。米国の「税法の論理」はあくまでも国籍基準で、米国籍があるならば、たとえ米国での所得がゼロであっても、申告義務は発生します。

米国には日本と違って年末調整というシステムはなく、原則として全員に確定申告の義務があります。もし、日本と米国とで二重国籍状態の場合には、日本から米国の税務当局に向けて毎年確定申告を行わなくてはなりません。

二重国籍、もっと面倒なのは相続

さらに、もっと面倒なのは相続です。

「日本の法の適用に関する通則法」によると、「相続は、被相続人の本国法による(第36条)」と定められています。

つまり、出生から死亡まで日本を一歩も出たことのない日本人が米国籍だった場合、法定相続人の範囲や順位、法定相続分といった相続の仕方は全て米国法に従うことになります。この場合、一般人で片づけられる問題ではなくなり、現地の専門家を探さざるを得なくなります。

さらにこれが二重国籍だった場合は厄介です。米国と日本のダブルスタンダード状態で相続が行われることになるためです。この場合、手続きの煩雑さは通常の倍以上にもなるでしょう。

気になるのなら、早めに対処を

この他、パスポートの問題など、いざというときに足を引っ張る原因になりかねないのが二重国籍の問題です。

そのため、仮に現時点で日常生活に支障がないとしても、「そういえばウチは両親が国際結婚で…」と気になるのならば、早めに対処をしておくことが望ましいでしょう。

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