(写真=Thinkstock/Getty Images)

【連載】「マネー相談は人生相談。女性FPたちのホンネ日誌」

#06 キャッシュフローはギリセーフ。でも、「家は買わない方がいい」理由

寺野裕子のつぶやき<後編>

夫の死亡保険金を原資に、住宅購入を希望するB美さん。キャッシュフロー表を作成したところ、その計算は「ギリギリ」というもの。通常ならば、なんとか住宅購入へ向けて方策を練るところですが、ファイナンシャル・プランナー(FP)の寺野さんは「買わないことを強く勧める」という選択をしました。その理由とは?

【前編はこちらから】
「夢のマイホーム」の落とし穴。夫の死亡保険金で住宅購入を希望するB美さん

決断を後押ししたのは、娘の進路

正直、買いたいと夢を持っている方に「急ぐ必要はない!」と言い切ることはFPとしても勇気がいります。B美さんは欲しい物件まで、ほぼ決めている訳ですから。

私も住宅購入を急がせないことがB美さんにとって最善なのか少しは迷いがありました。それでも、決断を後押ししたのは娘さんの今後の進路が未確定だったからでした。

当時、2人の娘さんはまだ高校生と中学生で、長女は東京の大学進学を目指していました。次女の進路はまだ決まっていなかったのですが、B美さんは「妹は県外で一人暮らしができるタイプではないので、大学進学となっても県内になるだろう」と考えていました。

しかし、ヒアリングを重ねるうちに、私は「どうも、下の娘さんが県外の大学に進学したら、B美さんは徳島から出ていく可能性もあるな」と感じたのです。

「夢のマイホーム」がお荷物となる可能性

仮に、住宅購入後、B美さんが徳島から出ることになったら、「夢のマイホーム」が大きなお荷物となってしまう可能性があります。

住宅購入, キャッシュフロー, 家を買わない方がいい, 理由 (写真=Thinkstock/GettyImages)

都合よく売却できればよいのですが、徳島という土地柄を考えると、そう上手く希望の価格、タイミングで売却できるかどうかは分かりません。

この判断は物件にもよるかと思います。B美さんの場合、古くても、小さくてもよいので1000万円位の家が欲しいということでしたが、売りに出した時、果たして、そのようなお家の買い手がすぐに都合よく見つかるのか、ということです。

一度は分かったはずだけど、面談を繰り返した

資金的には「ギリギリ」ですので、下の娘さんの進路が決まってからでも、住宅購入を再検討しても遅くないということをお伝えしました。

B美さんからその時は「そうですね。分かりました」とお返事をいただいたのですが、ここから、まだ1か月ほど、今となっては笑い話ですがコントのようなやりとりが続きます。

1週間おきにB美さんから「先生〜、また良い物件見つけたのでこれならどうでしょう?」と連絡が入り面談を繰り返します。その度に私は「だからね〜、急がなくても、お家は逃げないですよ。いつでも買えます」となだめることになります。結果的に、B美さんは住宅購入を急がないことを決めました。

「今は住宅を買わない」と決断した結果

その後は急いで住宅購入はしないことになり、B美さんには予算内での家計管理、パートでの収入確保に努めていただきながら、娘さんの進学サポートに専念していただきました。

結果、長女は無事希望の大学に合格し東京へ。するとどうでしょう。「性格的に県外で一人暮らしをすることはない」とB美さんが見込んでいた次女は、お姉ちゃんの影響を受け、東京の大学に進学することになりました。B美さんはどうしたかと言いますと、次女と一緒に生活することになり東京へ。

現在、娘さんは既に2人とも大学を卒業し、立派に東京で就職することができました。B美さんは娘さんの扶養に入るかどうかで悩み、再び私のもとへ相談に来てくださいました。今後は、娘さんからの助けも期待できますので一安心といったところです。

しかし、それでもライフプランは万全ではないため、私からは60歳までの予定だったお仕事をできたら65歳まで頑張ってほしいと提案しています。この提案も人生何があるか分かりませんので、“心を鬼にして”の提案です。

人生の分岐点の「道しるべ」でありたい

現在も、B美さんとのご縁は繋がっていて、定期的なフォローをさせていただいています。お会いするたびに「本当に買わなくって良かったね〜」と笑っています。

人生の分岐点で熟慮の上なのか、軽はずみなのかはどうであれ、その時の決定がその後の景色を大きく変えてしまうこともあります。

今回の嬉しい問い合わせで改めて、そのような分岐点で冷静な道しるべとなり、これからもお客様と一緒にたくさんの「今となっては」の笑い話を作っていければと感じました。

次回は、DINKSのマネープランを応援する辻本さん

次に登場するFPは辻本ゆかさん。奈良県でDINKS、シングルの方向けに精力的に活動しているFPです。

辻本さん自身、お子さんがいらっしゃらないことにより、いろんな思いや将来に対する不安を抱えていたこともあり、DINKSの方、シングルの方のご相談に力をいれているそうです。お客様の心に寄り添った誠実な相談で定評のある辻本さん。一体、どんな相談を紹介してくれるでしょうか。(寺野裕子のつぶやき、おわり)

【これまでの相談事例はこちらから】
#01 「悩みは保険」はウソ? マネー相談の本当の問題
「保険を見直したい」と相談に来た、アラサー独身の保育士さん。話しを伺っていると、本当の問題はもっと別のところ、多くの女性が悩み「あること」だと判明しました。

#03 独女が「家を買うと結婚できない」に惑わされる理由
独身高収入OLのA子さんは「家を購入したいけれど、結婚できなくなるのでは?」という悩みを抱えていました。それに対し、FPさんが優しくアドバイスをします。

#05 「夢のマイホーム」の落とし穴。夫の死亡保険金で住宅購入を希望するB美さん
B美さんは夫の死亡保険金を原資に、住宅購入を希望しています。本来ならば、なんとか購入を勧めるところですが、「購入しないことを強く勧めた」とFPさん。さて、その理由は?

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