北野さん(右)のインタビューに答える大山さん(写真=DAILY ANDS編集部)

「資産運用は大人のたしなみ」元金融アドバイザーが思う、お金との正しいつきあい方

FP北野琴奈が訪ねる『ファイナンス』な女性たち①<後編>

「実践型FP」として活躍する北野琴奈さんが、金融業界にゆかりのある女性へインタビューをする「FP北野琴奈が訪ねる『ファイナンス』な女性たち」。

第1回として、「ファイナンシャル・コンサルタント」として国内・海外の金融業界で7年間仕事をし、その後アフリカで起業をされた大山知春さんにお話しを伺っています。金融業での独立を見据えてオランダのビジネススクールに入学した大山さんですが、アフリカ人のクラスメイトとの出会いから、思いがけない方向に人生が動き出します

【前編はこちらから】
資産運用アドバイザーを辞め、ガーナで起業するまで。大山さんが金融機関で感じた疑問

大山さんが、ガーナ出身のクラスメイトと仲良くなった理由

元々、「学ぶことが好き」で行動的な大山さん。経営についての見識を深めるためにオランダに渡り1年間勉強しMBAを取得、そこで仲良くなったのがガーナ出身のクラスメイトだったそうです。

ファイナンスな女性 (写真=DAILY ANDS編集部)

「ヨーロッパの人は礼儀正しいけれど、ちょっと冷たいなと感じるところもたまにあって。やっぱり個人主義だから。でもアフリカの人は違うんです。日本人と似ていて、例えば飲みに行くのも、誘われると『嫌だ』と言えない。(笑)

また、ヨーロッパや先進国出身の人たちは、自分の生活の向上やキャリアアップのために学びに来ていますが、新興国出身、特に、アフリカ出身の人たちは、それだけでなく、自分の国をより良くしたい、雇用を増やしたい、自分の国の発展に貢献したいという思いを抱えて学びに来ていました。それが私にとっては衝撃的で。同じくらいの年の人たちが、自分にできることは何なのか、ということを考えている。そういうのがなんかいいなと」(大山さん)

確かに日本では、仕事は自分や家族のためという方が大半でしょう。それがアフリカでは、自分にもまだ余裕があるわけではないにも関わらず「国の発展」を考える、この違いに深く考えさせられたそうです。

前職での縁が、起業につながる

とはいえ、会社を興し軌道に乗せるには、最初にある程度の資金も必要。どうしたものかと思案していたところ、前職から付き合いのあった個人投資家の方から資金協力を受けることができました。

「日本に一時帰国した時にその方にお会いして、ガーナでやっていることやパートナーと今後どういうことがしたいか、という話しをしたんです。その時、投資家の方から、ビジネスプランを見るでもなく、『(大山さんに)やりたいことがあるんだったら、投資しようと思っていたんだ。それが、例え、“たわし”を売ることだとしても』とおっしゃっていただきました。この言葉は今も忘れられません」(大山さん)

ガーナの天然素材から生まれたスキンケアを日本で展開

大山さんはその後、ガーナで起業し、ファッションオンラインショップを開始しましたが、途中、体調を崩し、日本に帰国を余儀なくされます。

この療養経験から、日本の化学物質に依存した生活に疑問を抱き、ガーナで出会った植物を使った伝統医療の価値や、天然素材を豊富に使ったシンプルなスキンケアの良さを実感するように。現在は、都内にオフィスを構えて、ガーナで「奇跡の木」と呼ばれるモリンガのオイルなどを使ったスキンケアブランドを日本で立ち上げて、販売する事業を行っています。

それがこちらの商品。 JUJUBODY。

JUJUBODY (画像=大山さん提供)

ガーナ現地で原料を作るサプライヤーの選定から、パッケージのデザインまで、大山さんがゼロから携わった「オールナチュラル・スキンケアブランド」です。

天然素材、オーガニックなどとうたわれるスキンケア商品は多いですが、原材料の一部に使われているだけのものも少なくないとか。 ガーナで現地の人が使っているのと同じアフリカの自然の恵みを、彼らの豊かな文化を伝えたい、との思いで、JUJUBODYを展開されています。

金融から小売へ。効率は悪くとも、続ける理由

現在は、金融とは全く別の分野の仕事をされている大山さん。「お金に・投資に対しての考え方は変わりましたか?」という問いに、「お金、投資に関しては、興味がなくなりました」との返答が。

「お金や投資はもともと、自分の生活を守るために必要だと考えていたのですが、アフリカに住んでみて、なくてもどうにかなると。お金に対する恐怖心がなくなったからかもしれません。金融業界は確かに、お金を稼ぎやすく、効率も良いですが、今はそれとは真逆の、効率の悪いアフリカとのビジネスに自分の経験が活かせるのではないかと魅力を感じています」(大山さん)

確かに、資産運用のアドバイスという仕事はお客様から手数料をいただくビジネスなので、運用成績がよかろうが悪かろうが、アドバイザーが受け取る金額に変化はありません。つまり、リスクが低く、効率よくお金を稼げると言えます。

「以前は、在庫を抱えるようなリスクの高いビジネスを自分がやるとは思いもしなかった」という大山さんですが、そうした経験を経てなお、現在は小売というビジネスにやりがいを見出しているそうです。

「今、嬉しいのは、使ってくれた人が、むしろ、作ってくれてありがとう、肌がきれいになりましたと言ってくれること。大変なこともあるけれど、始めて良かったなと思う瞬間です。金融の世界に足を踏み入れた時には、思いもしなかった世界にたどり着きましたが、金融の仕事を経たからこそ、今のビジネスに繋がっていると思います。それがなければ、今はないですね」(大山さん)

「資産運用」をとことん追求したことがある方の、含蓄のある言葉だと感じます。

資産運用は大人のたしなみです

「金融業界におられたご経験も含め、運用・投資に関しての考え方や留意点など、読者にむけて何かアドバイスが欲しい」と伺うと、「金融の世界でビジネスをしているわけではなく、個人の運用であるならば、それで儲けようとは思わない、ということですかね」という答えが返ってきました。

ファイナンスな女性 (写真=DAILY ANDS編集部)

資産運用はあくまでも社会とつながるツール、大人のたしなみです。株を持つと、株価・世の中の動きなんかに興味を持つようになって、楽しいと思えるようにもなります。やった方がいいとは思うけど、全員がやらなければいけないわけではありません。欲をかきすぎるのではなく、自分ができる範囲で行うことを考えることです」(大山さん)

資産運用は、「社会とつながるツール」「大人のたしなみ」という大山さんの言葉が印象的で、私も同感です。

現役時代は一生懸命働きほとんど貯蓄しかしてこなかった方が、退職金を一度に運用商品につぎ込み、こんなはずではなかったとなる話しは珍しくありません。

そのリスクを少しでも避けるには、若い時に少しずつ練習を積み重ねることが大切です。長い目で見て着実に「たしなみ」を身につけていくという考え方をベースに、お金と向き合っていきたいものです。(FP北野琴奈が訪ねる『ファイナンス』な女性たち①、おわり)

取材協力/JUJUBODY

【前編はこちらから】
資産運用アドバイザーを辞め、ガーナで起業するまで。大山さんが金融機関で感じた疑問

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個性的な連載で「投資」を身近に