(写真=DAILY ANDS編集部)

「海外でも自分の哲学貫く」Wantedly社長仲暁子さんの信念とは

Tech in Asia Tokyo 2016より<前編>

「私、ジェンダー・カードは使わないって決めているんです」。ビジネスSNS「Wantedly(ウォンテッドリー)」の創業者でCEOの仲暁子さんに今後のキャリアプランについて問うと、こんな返答がありました。

東南アジアにもサービスを拡大し、国内外で注目を集めるIT企業を率いる仲さんの信念とは。 アジア最大級のスタートアップ向けカンファレンス「Tech in Asia Tokyo 2016」から、仲さんが登壇した1日目(2016年9月6日)のステージイベントと、直接インタビューの様子を紹介します。

【Tech in Asia Tokyo 2016より<後編>はこちら】
YouTuber「バイリンガール」に聞く、好きなことを仕事にするってどういうこと?

採用で重視するのは3つの素質

ステージイベントで仲さんは、Tech in Asia Tokyo 2016を主催するインターネットメディア「Tech in Asia」のインド人編集者、Nivedita Bhattacharjeeさんからインタビューを受けました。

Wantedly,仲暁子,採用,人材,転職 (写真=DAILY ANDS編集部)

――Wantedlyは人の仕事探し・採用に関わるサービスですが、Wantedly自身が採用において大事にしていることは何ですか?

ビジョンとバリュー、スマートで賢いこと、そして遂行力です。

たとえば「アフリカで人を助けたい」といっている人がいたら、それは私たちの会社とはビジョンが違っているということになりますよね。またインターネットの市場は動くスピードがすごく早いです。スマートで賢ければ、どんどん新しい知識を吸収するので、変化についていくことができます。あとは、とにかく遂行力、やり遂げられるかどうか。何かをお願いしたときに、とにかく「やれる人」です。

そして中途だと、ここまで挙げたことにスキルがセットになります。それだけ高い給料を支払うわけですから。

――利益を出すときに大事なことは?

利益はあくまで結果です。大事なのは、ユーザーがサービスを使ってハッピーになれるかどうか。つまり、プロダクトにフォーカスすることが大切だと思っています。ユーザーが何を必要としているか、お金を払ってでもそのプロダクトを使いたいと思うか。ユーザーにフォーカスするということ。利益だけ考えていると、いろんなことに足をとられてしまいます。

サービスをどうローカライズさせるか

――Wantedlyは海外進出をしていますが、どうやってサービスをローカライズしますか?

私たちのコア・バリューである「仕事と人をマッチングする」「ビジョンと情熱を大切する」という部分は変えません。「仕事選びで決め手となるのは給与が大半」という国もありますが、ローカライズと自分のスタンダードのバランスを取っていくことが大切です。

例えばFacebookは日本進出したときに、あまりローカライゼーションしませんでした。少し細かいところではデザインを変えたりもしましたけど、ほとんどはそのままです。

ローカライゼーションとスタンダードのバランスを取ることが大切なんです。つまり、自分の哲学をどれくらい貫き通せるか、じゃないかと思います。哲学を曲げると理想が表現できなくなってしまいます。

Wantedly,仲暁子,採用,人材,転職 「コンバージョン率を上げるためにはどうしたらいいですか」という来場者の質問に、仲さんは「ランディングページをシンプルにすること」と回答していました(写真=DAILY ANDS編集部)

――多くの企業は有料会員を獲得するのに苦労します。コンバージョン率を上げるためにしていることは何ですか?

コンバージョンはサイエンス。小さな戦略がたくさんあります。まずはクライアントの数を増やすこと、そしてABテストをすごくよくやっています。また電話もよくかけます。これはプッシュ型ではなく、プル型だと考えています。

――仲さんはカンファレンスによく出ていますが、それはなんのためですか? 自分が表に出るためですか、それとも会社の認知度を拡大するため?

自分に対して注目を集めることは重視していません。会社をもっと多くの人に知ってもらいたいからです。

――ということはIPOもあり得ますか?

もしかしたら、何年後かには、ってことですかね。今言えるのはここまでです。

――今後2年間、拡大したい市場はどれくらいですか。具体的な数字を教えてください。

12カ国です。東南アジアです。

――5年後はどうなりたいですか?

社会人にとってのジョブ・プラットフォームのナンバーワンです。つまり、Facebookですよね。Facebookはすでに、個人のIDという感じになっています。海外ではLinkedInというサービスがありますが、日本にはありません。LinkedInの日本版になりたいと思っています。

次にフォーカスするのは「ヤシマ作戦」

――Wantedlyは、グローバル展開しようとしている日本の企業ですか? それともグローバル企業であって、たまたま日本にあるというだけ?

グローバルカンパニーと考えたいですよね。たまたま日本で生まれただけ。

私はユニバーサルな商品をつくっていきたいと思っていて、それがたまたま日本で開発された、という風にしたい。もしそれが達成できたら、自分を誇りに思えると思います。

Wantedly,仲暁子,採用,人材,転職 会場の様子。国内外のスタートアップ企業と投資家たちの熱気にあふれていました(写真=DAILY ANDS編集部)

――現在の大きな収益源は何ですか?

企業のサブスクリプションチャネル(定期契約料)ですね。オプションもたくさんあります。

――今後はどうなりますか?

今後2年ぐらいはこのままですが、5年という軸だと変わってくると思います。今まいている種がたくさんあるので、それが芽がでるかどうかというところです。今やっているプロジェクトは「ヤシマ(作戦)」と呼んでいます。

これは私の好きな「エヴァンゲリオン」からきています。詳細については、11月に発表されると思うので、それまでのヒミツです。

ビジョンでつながらないと、本当に面白い仕事には出会えない

ステージイベントの後、メディアによる直接インタビューが行われ、さらに深いWantedlyのビジョン、そして仲さん個人の目標が見えてきました。

――東南アジアを攻めるのは、東南アジアの人材を流動的にしたいという思いからですか?

国境超えて、というより、「ビジョンで人をつなぐ、仲間と出会える」というバリューをほかの国にももっていきたいと思っています。結局、給料や福利厚生で仕事を選ぶことになると、本当に面白い仕事には出会えません。

「ビジョンでつながる」というWantedlyの価値観は、アジアなど海外でも広がると思っているんですね。給与などで採用するよりは、ビジョンでつながったほうが働く人の生産性が高くなって、会社もよりパフォーマンスが上がります。

――ローカライゼーションをするときに、スタンダードとのバランスが難しいというお話がありました。一方でユーザーフォーカスも大事という話もあります。スタンダードとユーザーフォーカスは一見すると相反すると思いますが、判断基準はどうしていますか。

そこはバランスですね。たとえば、インドネシアでサービス展開するときに、インドネシア人の問題解決しなくてはいけない。問題解決はユーザーフォーカスなんだけど、問題解決の方法が、Wantedlyのやり方とずれていたくはありません。

たとえば、インドネシアの人が給与だけを判断基準に転職するから、インドネシアのWantedlyは年収しか書いていないとします。そうすると、問題解決してるのかもそもそもわからないし、Wantedlyでやる意味はなくなります。

Wantedlyは、ユーザーの問題を解決していると思っています。ユーザーも最初は楽しいから遊びに来てたかもしれないけれど、そのうち実際に利用するようになったので。新しい概念を導入した上で、最終的にはユーザーに使われないと意味がありません。

ユーザーファーストじゃない会社、つまり「もうかればいい」という会社もありますが、そういうのはちょっと違うかなと。

Wantedly,仲暁子,採用,人材,転職 (写真=DAILY ANDS編集部)

今後のキャリアプランに対する考えは

――規模が小さい企業は、Wantedlyをどう活用したらいいですか?

最近の事例でいうと、大阪の小さな石鹸工場がWantedlyを使ってビジョンを語ったところ、有名大学を出てグローバル企業でマーケティングを学んだ若者がその会社に転職したケースがあります。最近の20代はビジョンやパッションを求めているので、企業がビジョンを語れば意外と興味を持ってもらえます。ただ、そもそもビジョンがない企業は難しいと思います。

――Wantedlyを使うことによってビジョンを語ることができたらいいですね。

そうですね。Wantedlyを使うときに、そもそもなぜその事業をやるのかということを書く必要があるので、そこで結構啓蒙されるかもしれません。

――地方や女性、IT系以外の分野など、Wantedlyがまだ広まっていないところに対しては、どういう風にサービスを広げていきますか?

今は特にこちらから広告を打つといったアウトバウンド営業をするつもりはありません。インバウンドでも結構、成長性はあるので、来る問い合わせを一つ一つ丁寧に対応していきます。

――仲さん個人の今後のキャリアプランはありますか?

あまりないんですよね。まだ起業して5年なので、3年後もわからない状態です。

ひとつ方針としては、ジェンダー・カードは使わないと決めていて、女性向けのメディアには一切出ないようにしています。別に「女性押し」をしなくてもいい、と思っています。ジェンダーカード使うと、その壁を超えられなくなると思うんです。

――海外だとどうなんでしょうか。

海外は女性のイニシアティブが強いですね、海外は黒人、白人などいろんなダイバーシティがあり差別もあります。その中で女性というカテゴリもある。でも、日本は均一なので、女性の権利を無理に言わなくてもいいと思っています。

……と、ここでタイムアップ。

どの質問に対しても答えがクリアーで、過去や枠にとらわれず、理想実現のために前を向き続ける姿が印象的でした。また、11月に発表されるという、新たな収益源となるかもしれないプロジェクト「ヤシマ作戦」がどのような内容なのか今から楽しみです。

Tech in Asia Tokyo 2016より<後編>では、ユーチューバー「バイリンガール」こと、吉田千佳さんのインタビューをお届けします。

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YouTuber「バイリンガール」に聞く、好きなことを仕事にするってどういうこと?

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