自称「保険マニア」の長尾さん(左)(写真=DAILY ANDS編集部)

ドル建ての年金型保険は本当におトク? 専門家に聞いてみた

「保険マニア」にとことん聞く!<前編>

「ぜひ紹介したい人がいるんだけど」。ある日、アラサー独女、DAILY ANDS編集部のスマホに女友達からLINEのメッセージが届きました。なんだろう…! と好奇心をふくらませていると、紹介されたのは某保険会社の営業担当者でした。

そこで勧誘を受けたのが米ドル建ての保険。なんでも、今のうちから毎月一定額を積み立てておけば、60歳になったとき、積み立てたお金が130%となって返ってくるとのこと。

すごくおトクに聞こえるけれど、本当にこれは大丈夫なものなの? 何か落とし穴があるんじゃない? 本当にコレは自分にとって必要なものなの?? ……不安に思ったので、思い切って保険の専門家に聞いてみました。

お話を伺ったのは、「保険マニア」のこの方!

今回、お話を伺ったのはファイナンシャル・プランナー(AFP)であり、出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生み出した経験のある長尾義弘さん。

画像② 著書を手に笑顔の長尾さん(写真=DAILY ANDS編集部)

自称「保険マニア」でもあり、保険に関する著書も豊富です。DAILY ANDSでもこれまでに難しい話ナシ! これでわかる保険の選び方や、カンタン比較で保険の種類がまるわかりを執筆いただいています。

DAILY ANDS編集部(以下、DA編集部)「こんにちは、今日はよろしくお願いします」

画像③ 保険の勧誘を受け、長尾さんに相談するDAILY ANDS編集部(写真=DAILY ANDS編集部)

長尾「よろしくお願いします」

DA編集部「早速なんですけど、こちらの保険の商品を見てもらってもいいでしょうか。私はいま保険の勧誘を受けていまして、老後の資金のためにとこの商品を紹介されたんです」

長尾「P社の養老保険(年金型の保険のこと)ですね。こちらの営業マンは説明が上手ですよね」

DA編集部「はい。私は持っているお金のほとんどが銀行預金なんです。営業の方からは、いま、銀行の金利はものすごく低いので、保険にも一部の資産を預けてみませんか? っていう提案をされました。老後に向けて、今のうちから月々積み立てておいた方がいいですよと。そんな話の中で設計書がでてきたんです」

画像④ (写真=DAILY ANDS編集部)

……ここで、長尾さんに保険の設計書をお見せします。現在28歳の筆者が勧誘されたのは、29歳から31年間、一定額を積み立てておくと、60歳以降、年金がもらえるというものです。

積立額は3パターンあり、米ドルで月120ドル、480ドルのほか、年間9000ドルというパターンもありました。

積み立てている間に死亡した場合は死亡保障がついています。途中で解約したとしても、45歳以降であれば元本割れはしないという内容です。

DA編集部「さすがに月々480ドル(約5万円)、年間9000ドル(約100万円)は生活が苦しくなるので無理かなとは思っています……。

ただ、結構びっくりしたのは、60歳になったときに戻ってくるお金が126%〜133%とすごく高いんですよね。これは確かに友人が勧めるのも無理ないな、と思いました。でも、今までいろんなお話をお聞きしてきたので、何かあるんじゃないかなって」

長尾「そうですね。実は、この商品、悪くはないんです」

DA編集部「えっ!」

長尾「というのも実は、僕も入っているんです」

DA編集部「えーっ!?本当ですか?」

長尾「はい。P社の場合、社員も加入しているケースが結構多いんですよ」

DA編集部「なんと……!(さすがは保険マニア、裏事情もよく知っていますね!)じゃあ、やっぱり加入した方がいいんでしょうか」

長尾「でも、突っ込みどころはあります」

ドル建て年金保険の「突っ込みどころ」って?

DA編集部「突っ込みどころってどこですか?」

長尾「まず、『返戻率』ではなく『年利』で見る、ということが一つポイントになります」

DA編集部「なぜですか?」

長尾「ほかの金融商品と比較するためです。たとえば銀行の定期預金の利率は0.001%といわれていますが、この数字は1年間でどれくらいの利益があるかを示したものです。一方、返戻率の方の120%や130%は、積み立てを開始してから30年後どうなっているかを見るものなので比較しづらいんです」

画像⑤ (写真=DAILY ANDS編集部)

DA編集部「なるほど。それで言うと、営業の方は年利も教えてくれましたよ。今回は確か2.75%でした」

長尾「ここで、もう一つこの保険を見るポイントがあります。それは、米ドルではなく日本円で計算し直すということです」

DA編集部「どういうことですか?」

長尾「ドル建ての保険料を払うには、円を米ドルに替える必要がありますよね。ここで、手数料がかかるんです。正確に言うと、保険金を払うときと、年金を受取るときの2回、通貨を変えないといけませんので、往復で為替の手数料がかかるんです。それを加味すると、実際の利率はもう少し低くなります。どれくらいなのか。ちょっと計算してきてみました」

長尾さんはここで、keisanという、計算サイトの用紙を見せてくださいました。

長尾「1ドルあたり50銭の手数料がかかると考えると、お金を積み立てている間の年間の利回りは1.41%になるんです」

DA編集部「あれ? 意外と普通、というか低いですね…」

長尾「外貨建ての保険を正しく見るためには、いったん円で計算し直すことが大切なんです」

DA編集部「これ、もし自分で計算できなかったらどうしたらいいんでしょうか?」

長尾「優秀な営業マンなら計算できます。なので、『円に直した時、月々の積立額はいくらで、円換算で年利はどれくらいですか』と質問したら良いと思います。もし営業マンが計算できないのであれば、保険に詳しいファイナンシャル・プランナーに相談するのが良いかと思います」

この商品の一番のキモは為替リスク

DA編集部「円で計算しなおした場合、返戻率はどれくらいになりますか?」

長尾「この商品は120%くらいにはなります」

DA編集部「おお、やっぱりすごい」

画像⑥ (写真=DAILY ANDS編集部)

長尾「ここでもう一つ気を付けたいのは為替リスクです。つまり、年金を受け取るときに円高になると損をするということです」

2016年8月18日時点で、1ドルあたり約100円です。もしこれが30年後、1ドルあたり70円になっていたとすると、受け取る金額が結果として少なくなってしまう、ということだそうです。

DA編集部「なるほど…。積み立てた金額が120%になっても、ドル円の相場が円高に変わっちゃうと帳消しになっちゃうってことですね。そういえば、ついこの間まで1ドル120円だったのが今は100円になっているわけですから、結構微妙ですね」

長尾「為替は20%や30%ぐらいすぐ変わっちゃうんですよ。

つまり、この保険はリスクのある『金融商品』と思った方がいいんです。金融商品に死亡保障がくっついている、と考えてください。その上で、為替リスクをどうとらえるか、という問題だと思いますよ」

DA編集部「保険っていうのは万が一のことがあったときにお金で自分の身を守るもの、だと思っていました。なので、こういう貯蓄ができる商品があると、良いのか悪いのかわからなかったんですが、これは比較対象は投資商品なのですね」

長尾「そうです、これは『金融商品』だと思ってください。それに死亡保障がついている、ということです。

返戻率じゃなくて、やっぱり、年間の利回りで一回計算してみることが大切。これ学資保険にもいえますね。学資保険も同じことなんですよ。パンフレットには返戻率ばかり強調されていますが、まず利回りを計算してみることです」

保険会社はどうやってもうけているの?

DA編集部「ところで、保険会社側はどうやってもうけているんですかね?たとえば、この商品は死亡保障はついているし、最終的に120%もお金が返ってくるので、為替リスクを考えなければ私はトクをすることになりますが、保険会社は損をするんじゃないかと思うんですけど……」

長尾「これくらいの利率であれば、米国の30年国債で十分まかなっていると思いますよ。」

DA編集部「保険会社っててっきり、保険金でもうけているのかと思ったら、意外とそうではないのですね」

長尾「はい。今回の商品は利率が良いので問題ないのですが、他社の保険では、金融機関側の"サヤ抜き"がすごく大きいものもありますので注意してくださいね。(参考:豪ドルの「一時払い変額個人年金保険」はボッタクリですよね?)

ちなみに、保険を1本売ると、営業マンに保険金の20%くらいの報酬が入るんですよね。つまり、それくらい保険会社は運用でもうけているということです」

画像⑦ (写真=DAILY ANDS編集部)

為替リスクはどう考えたら良い?

DA編集部「今回の保険では、為替リスクをどう考えるか、がものすごく重要ということが分かりました。

ちなみにYahoo!知恵袋で『これから為替は円高になりますか』という質問がありまして、ベストアンサーに選ばれていた回答は、日本は少子高齢化社会なので、デフレになりやすく、デフレになったら円高になる、と言っていました。実際どうなんでしょう」

長尾「それがわかれば、もう誰も苦労しませんよ(笑)。日本の少子高齢化だけが為替に影響するわけではなくて、もっとたくさん為替を動かす要因はあります。米国の状況にもよりますし、これだけは分かりません。プロでも無理ですし、僕もわかりません。予想するのはまず無理と思った方がいいでしょう」

DA編集部「確かに、そうですよね。……ということを考えると、なぜ長尾さんはこの保険に加入したんですか?」

長尾「まずは営業マンがよかったというのはあります。あとですね、たぶん見たらビックリしますよ……」

とここで、長尾さんご自身の設計書を見せてくださいました。すると、そこには驚きの事実が……!(後編に続く)

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