(写真=Thinkstock/Getty Images)

【連載】「税理士の告白」

第5話 浪費をやめられた、たったひとつのコツ

浪費癖を根っこから絶つ!税理士の鈴木さんが成功した方法とは?

学生時代、そして就職してからも浪費をやめられなかったという、税理士の鈴木まゆ子さん。自身の経験から見出した、浪費をやめるための方法とはどのようなものだったのでしょうか。お金に苦労してきた過去を持つ鈴木さんが浪費癖の心理に迫ります。

わかっていてもやめられない浪費癖

「かわいいお洋服を見つけて、ついつい衝動買いをしてしまった」、「ネットの占いにハマって、気づいたら7万円使っていた」、「仕事帰りについついスイーツを買っちゃうのよね。『ごほうび』がないと生きていけない」

こんなふうに、自分の浪費を知りながらも、なかなかやめられない女性は多いのではないでしょうか。

うんうん、それ、すっごくよく分かります。なぜなら私もかつて、お金の使い過ぎが止められなかったから。浪費の結果、学生時代に全財産が3000円になったことがあり、真っ青になってあわててバイト先に前借りしたこともあります。

社会人になってもお給料がよかったので、なかなか浪費はやめられませんでした。でも、ある出来事を通して浪費ストップのコツを発見。それからは、細かく家計簿をつけなくてもムダ遣いを減らせるようになりました。

大丈夫なはず…浪費家の特徴は「カード払い」

ムダ遣いが減らない、衝動買いがやめられない…こういうタイプに多い特徴のひとつとして「カード払いが中心」というのがあげられます。

ここでいう「カード払い」には、クレジットカード払いのみならず、デビットカード払いや口座引落も含みます。「明細で使いみちが分かるからレシートをためこまなくていい」「欲しいものを欲しいと思ったときに買える」「振込という作業にエネルギーを使わなくていい」というメリットがあり、今やカード払いをしない人はごくわずか、といっていいでしょう。

ただし、メリットを享受できるのは「計画的に利用できている」「使う本人が目的やルールを自分で決めて使っている」など、きちんと収支の管理ができる場合に限られます。そしてそれは、かなり理性的なオトナの行為です。

もしこれが、収支管理のできない感情的なコドモマインドの人だったらどうでしょうか?

「『今だけ』『ココだけ』、そして『私だけ』のためにこの商品が用意されているのだから、買わないと私は一生後悔する!」という言い訳を毎回の衝動買いで繰り返し、借入残高がどんどん増えていきます。

同時に、購入するその場では「次の夏のボーナスが○○円のはずだからまかなえるはず!」「今月の給料は△△円で、家賃と水道光熱費の引落を除いたらあと残高これくらいのはずだから大丈夫なはず!」と、すべて「~のはず」で思いこみ、自分にとって有利な状況をイメージしようとします。実際の預金通帳やカード明細の利用額を見ることはしません。無意識に「現実を見るのが怖い」と本当は感じているからです。無論、この場合、家計簿をつけるといった細かい作業もかなり難しいといってよいでしょう。

浪費, 税理士, 鈴木まゆ子 (写真=Thinkstock/GettyImages)

現金払いが浪費をストップ!理由は「○○を使うから」

では、浪費はやめることができないのでしょうか?そんなことはありません。ちょっと工夫するだけで、浪費をストップすることができます。その工夫とは「カード払いをやめて、現金払いにする」――これだけです。

なぜ現金払いがよいのでしょうか?その理由は「支払う時に私たちが無意識に『何を』感じ取っているか」にあります。

現金払いとは、言い換えれば「紙幣や硬貨をお財布から取り出し、支払う作業」です。一見きわめて単純な作業ですが、このとき私たちは五感をフルに使っています。

紙幣や硬貨を出すとき、触覚でお金が出ていくのを察知しています。お財布を振れば、ジャラジャラとした硬貨のぶつかりあう音やサラサラと紙幣がこすれあう音を聴覚で感じとっています。無意識に、嗅覚で硬貨や紙幣のニオイも把握しているかもしれません。嗅覚はときに味覚に訴えることもあります。意識の上では、目、つまり視覚だけで支払いを確認しているように思いこんでいますが、実は現金払いは五感すべてを使う行為なのです。

一方、カード払いはどうでしょうか。カード払いは現金払いほど五感を使いません。確かに、視覚で数字を把握し、カードの暗証番号の入力やサインなどで触覚や聴覚は使います。けれど、支払いは現金ほど時間がかかりませんし、嗅覚や味覚までも使うことはありません。つまり、五感に訴えるチカラが現金より弱いため、支払いにリアリティが伴いません。

五感を使うということは、無意識にも「お金が出ていく痛み」を強く感じ取っているということです。つまり、現金払いはカード払いよりも、よりリアルに、より意識の深いところで「大事なものが出ていく痛み」を感じ取っているのです。

痛みは恐怖につながります。同時に、人間はいつまでも恐怖に耐えうるほど強い生き物ではありません。結果、「お金を使うのは痛いし怖い」という感覚になり、理性に訴えかけて「ムダ遣いはもったいない」という思考をめぐらすことにつながるのです。

なぜ現金払いの効果に気づいたの?私の経験談

ここまで「現金払いは五感を使うため、浪費の防止につながる」と書きました。私がこの現金払いの効果に気づき、活用するようになったきっかけは、会計事務所時代の年金支払いにあります。

新卒入社した会社から個人の税理士が経営する会計事務所に転職することにより、年金保険料の支払い方法が変わりました。その会計事務所は厚生年金に加入していなかったため、前職では給与から天引きだった年金保険料を、国民年金保険料として自らの給料から支払うことになったのです。

それまで私は、「給料=手取り額」でしか考えず、天引きされている税金や保険料はいくらなのかをまったく意識しませんでした。それが、自らお財布を開いて、もともと少ない給料から更に万単位の年金保険料を支払うようになってから、年金制度のありように関心をもつようになりました。

現金払いの「痛み」が、国の制度への疑問を私にもたせるようになったのです。そこから、源泉徴収制度がもつ国民の心理面への効果や、国の政治や政策のありようを考えるようになりました。それほど、現金払いの五感へ訴える効果は大きかったのです。以後、この効果をうまく使い、プライベートの浪費を控えたいときは、あえて現金払いをするようにしています。

浪費をやめるのは難しくない

「現金払いか、カード払いか」、それ自体に良いも悪いもありません。その効果をしっかりと把握し、自分の目的に合った上手な活用ができればそれでよいと思います。もし、あなたが「浪費を止めたい、でも止められない」と感じているのならば、むずかしいことをあれこれ考えず、現金払いにシフトしてみることをオススメします。

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