
(写真=Thinkstock/Getty Images)
ライターは見た!欧州パパの華麗なるワークライフバランス術
「仕事が忙しい」は理由にならない!
先進国の中でも日本のワークライフバランスが問題になっているのは言うまでもありません。OECDのワークライフバランス・インデックス(OECD Better Life Index)では、調査した38カ国中日本は34位でした。
OECDの調査の上位には、オランダ、デンマーク、フランス、スペインなど、ヨーロッパの先進諸国が並びます。このような国々の人々は、具体的にどのようにして、ワークライフバランスを実現しているのでしょうか。
外資系企業勤務経験4年、アジア在住歴12年の筆者が、かつての上司や友人の「華麗なるワークライフバランス術」を紹介します。
欧米のパパたちのワークライフバランス術3選
ケース①時間休を活用
国際機関に勤務する筆者の夫は、様々な国籍の上司や同僚と働いてきました。そしてこれは5年ほど前、フィリピンに住んでいた時、筆者たちのマンションの向かいの部屋に、夫の上司が住んでいたときのことです。
このスペイン人男性上司は、週末や平日夜には、自宅のドアの下から書類を滑り込ませてくるようなワーカホリックな方でしたが、朝は必ず娘を学校に送ってから出勤し、娘のディナーまでに帰宅するようなワークライフバランス・パパでもありました。
この男性は、子供の学校行事には、よく時間休を取って参加していました。
「時間休」とは、有給休暇を1時間単位で取得できるものです。筆者の子供が通うインターナショナル・スクールでは、働く親への配慮もあり、三者面談を朝7時半に設定してもらうこともできれば、学芸会は平日の午後6時半から、ということも。朝か夕方に1時間休をとれば、なんとかなったりします。
学校側が、なるべく多くの親が学校行事に参加できるよう工夫する一方で、時間休をとる側の親も、職場の同僚に負い目を感じるようでは困ります。ですが、たいてい、時間休をとれるような職場に勤めている人というのは、仕事は裁量制だったり、年俸制だったりします。
つまり、時間休のせいで職場の誰かにしわ寄せが行くのではなく、休んでも自分の仕事は減らないので、「自分で取り戻すしかない。」のが実情です。
この男性を思うと、「仕事が忙しい」はワークライフバランスを大切にしない理由にはならないと実感します。
ケース②「妻の仕事優先」も厭わない
筆者の近所のスイス人夫婦は、「妻の方が先によい仕事が取れたので」夫は前の仕事を辞め、スイスからスリランカへ移住をしてきました。
現在、妻は通勤ラッシュを避けるため、朝6時には家を出ます。夫は息子二人の幼稚園の送り迎えなどをして日中を過ごし、夕方5時頃に妻が帰宅すると、子供たちの世話を、妻とバトンタッチ。夫は部屋にこもって資格試験の勉強に励むのだそうです。
日本でも夫婦で役割分担をしながらワークライフバランスを整える家庭は少なくないと思いますが、「妻の仕事優先」をするケースについては、ヨーロッパが群を抜いて多いように感じます。
ケース③歓送迎会は職場で済ませる
国際機関で、形式的な「職場の飲み会」は存在しません。歓送迎会などは、ランチタイムか夕方に、さっと1時間ほどで終わらせるのが常識。これなら、仕事仲間との歓談の時間を確保しつつも、ダラダラと「おつきあい」せずに済みます。
仕事上の雑談が必要なら「ちょっとコーヒーでも行く?」が定番です。行きたくない飲み会に、プライベートな時間を割いてまで行く必要もないという訳です。
一方、仕事仲間とのプライベートな集まりは大歓迎。筆者も、先述のスペイン人上司宅へ、夜8時を過ぎてからの大人のディナータイムに夫婦でよく行きましたし、夫の職場の同僚宅にお酒を持ち寄って、それぞれ得意な楽器演奏を披露しつつ夜が更けるまで飲み明かす、なんてこともありました。
理想のワークライフバランスとは
ワークライフバランスの大切さは、日本では少子化問題とセットで語られることが多いのが現状です。ですが、ワークライフバランスが大切なのは、既婚者に限ったことではありません。ワークライフバランスは、労働者のメンタルヘルスに大きく関わってくる問題だからです。
イギリスのメンタルヘルス・ファウンデーション(Mental Health Foundation)によると、イギリスの労働者の10人に3人近くが、1年間に一度はメンタルヘルスの問題を経験し、労働時間の増加によって増えていくだろうと言われています。仕事上のストレスが原因の何らかの悪影響から、メンタルヘルスを守るためには、健全なワークライフバランスを保つことが何よりも大事なのだそうです。
仕事上のストレスが原因で、大事なもの…恋人や家族、もしかしたら、健康や仕事そのものを失ってしまう前に、仕事のやり方を見直してみてはどうでしょう。
自分にとって大切なものが何なのか、よく分かっていれば、自信をもってワークライフバランスを追求できるのでは、と思います。