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これから何に注目したらいいの?投資家が見る消費増税延期

なるほど、こういうことだったのか。

2017年4月に予定されていた消費税の8%から10%への引き上げが、2019年10月まで延期されることになりました。「ショッピングも旅行も値上がりしなくて済む」、「よかった!」とお思いの方が多いでしょう。税金をたくさん取られたくないですからね。でも、コトはそう単純ではありません。

ここでは、消費増税延期の意味、世の中の投資家は今回の延期をどう見ているのかを解説し、貴女がお金の運用や今後の生活プランを考える際の参考にしていただければと思います。

延期は2回目。消費増税これまでの経緯

今から約2年前、2014年4月に消費税は5%から8%へ引き上げられました。その後、2015年10月に8%から10%への引き上げが予定されていたのですが、8%への引き上げ後の消費の落ち込みが予想以上であったことから、2017年4月まで1年半延期されることになりました。これが1回目の延期です。

2014年11月、安倍首相は1回目の延期を決めた際、「リーマンショックや大震災のような事態が起きない限り、消費税の再増税を延期しない」と言っていましたが、先ごろ2016年6月1日、再度の延期を表明しました。2回目は2年半の延期です。

そもそも、なんのために増税するつもりだったの?

日本の政府は国も地方も莫大な借金を抱えています。そのうえ、人口の高齢化で社会保障への出費は増える一方です。具体的には、お年寄りに払う年金、医療費などです。また、少子化対策のため、子育て支援にも費用がかかります。これをまかなうために国は新たな借金を毎年重ねています。

消費税, 増税, 再延期, 意味 (写真=Thinkstock/GettyImages)

借金が増えていけば、日本という国への信用がなくなるので、どこかで歯止めをかけなければなりません。そこで、増収分を、低所得の高齢者への給付金、子育て支援、介護労働者の待遇改善などの社会保障の充実に使うとして、政府は消費税を2段階に分けて増税することにしました。

なぜまた延期することになったの?

安倍首相は、「世界経済は大きなリスクに直面している」と述べ、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の「あらゆる政策を総動員する」との合意を踏まえた新たな判断だと説明しました。

世界経済のリスクがどれくらい大きいかは議論の分かれるところですが、日本の景気は低迷していて、2%の消費増税でさらにひどい状況になると首相は考えました。世論調査では消費増税の反対派が優勢となっていたので、延期すれば、7月の参議院選挙にも有利に働き、東京オリンピックが近づけば景気が良くなって、増税しやすくなるという読みもあったことでしょう。

増税が延期されると、私たちの生活にどんな影響があるのか

私たちは誰もが日常あまり意識することはありませんが、様々な生活の場面で、政府支出の恩恵を受けています。これが将来、削られるかもしれないというのが、今回の増税延期で最も心配なことです。

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なぜなら、セオリーから行けば、消費増税延期は、国債の信用低下につながり、金利が上がるからです。将来、国債の金利が上がれば、政府は今のように借金に依存できなくなり、支出を切り詰めざるを得なくなります。

格付け会社の今後の動向に要注意

ところが、日銀は大量に国債を買い入れる政策を続けているので、国債の金利は低水準で安定しており、増税延期を受けても状況に変化はありません。債券市場の投資家は、金利上昇は当面ないと見ているわけです。

日本国債の金利が上がる可能性、言い換えれば、日本国債の信用度のことなのですが、その評価を表している格付けはどうなるでしょうか?

大手格付け3社は今のところ静観しています。増税を延期すると、借金だらけの財政の健全化が遅れるという懸念と、増税すると景気がさらに悪くなって、税収が減り、かえって財政の健全化が遅れるという見方が交錯しています。2014年に消費増税が延期されてから1年の間に、3社は日本国債の格付けを引き下げていますので、今後の動向は要注意です。

格付けが下がれば、国債の金利が上がるトリガーになりかねないだけでなく、日本の企業がお金を借りるために支払う金利も上がってしまい、多方面に影響が広がるのです。

株式市場の投資家はどう見ているか?

増税が延期されれば、個人消費が増え、内需企業の業績が向上し、賃上げもしやすくなるので、株価は上がりそうなものですが、そうはなっていません。安倍首相が消費増税の延期を考えているという報道が以前からされていることもあって、株式市場全体としては、すでに増税延期は織り込み済みだったのです。

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増税延期が表明された日とその翌日、国内企業の株価は下がっていますが、これは、為替が円高に進んだ影響のほうが大きかったと言えます。

株式市場の投資家は、個別の銘柄を選択するうえでは、消費増税延期の影響を考えて売買します。増税が短期的な利益にプラスになる企業、マイナスになる企業さまざまありますから。しかし、市場全体として見ると、多数ある材料のなかの小さなひとつでしかないということです。

投資家にとって消費増税は小さな材料

最近、株式市場の動向を決めているかに見える外国為替市場ですが、増税延期で日本国債の信用度が下がることが材料になって、円安になりそうなものですが、結果は逆でした。

投資家が為替市場での行動を決める際のひとつの材料ではありますが、アメリカの景気指標、原油価格、中国経済の動向などと比べると、影響度は小さいということです。

これからなにを見ていればいいの?

ここまで読んでこられて、「なーんだ」と思われた方も多いでしょう。消費増税延期は大きなニュースでしたが、投資家の見方はとても冷めています。

消費増税延期だけではなく、次に増税するかしないかを決める2年先までに、日本の景気を上向かせる施策が実施されるかが重要です。わたしたちも、国債金利、株価、為替を広い視野で見ていくことが必要です。

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